彷徨う「米住宅市場」
年末年始は高熱が出て、せっかく予定していた正月旅行も計画
倒れに終わってしまった。 正月の墓参りも行けず仕舞い。
「傷だらけの1年」を象徴するような年末だったんだけど、今年は
大多数の人にとって 「極めて困難な年」になるのは容易に想像が
付く。
とりわけ電機・自動車産業を中心とする輸出産業の人達にとって
は「明けましておめでとう」 等の挨拶をするにも一瞬躊躇してしま
ったのではないだろうか? それほどの難局が待ち受ける1年と
なる。
頼り所なきマーケット
毎年、年が明けるとこぞってアナリスト達が市場の行方を予想
する事になるんだけど、今年に限っては楽観的な予想をする事
は、それ自体が不真面目な態度のように映る。
マーケットの資金は、輸出産業から小売・陸運等の内需関連、
公益産業である電力・ガス・薬品などにシフトされるんだろうけど、
下半期には 「冴えない2010年3月期の業績」を織り込んでいく事
を考えると、日経平均に対して到底楽観的にはなれない。
アメリカ市場においても、何か確信的な希望がある訳ではない
んだけど、NY株価は昨年末より「ジリ上げ傾向」となっている。
これは20日に圧倒的支持率を誇るオバマ次期大統領の就任式
を控えている事は当然なんだけど、ホワイトハウスとFRBの「泥臭さ」
に何か期待をしているように思える。
要するにアメリカでは、国民が政治に何かしらの期待をしていると
いう事なんだけど、この辺は日本と大きく違う。
麻生首相の不支持率とオバマの支持率が同じような数字(80数%)
なんだけど、日米における「リーダー」の存在感の違いを顕著に表し
ていて、株価に限っては今年も日本の投資家は、アメリカのリーダー
に期待をするしかないように思える。
住宅価格下落の難題
そんな手掛かりの掴めない金融情勢のさ中、米政府及びFRBは
民間企業の救済という経済悪化の「食い止め行為」に奔走している
んだけど、今年は住宅価格の下落と真剣に向き合う事になる。
昨年末にもFRBは、GSE等が保証した住宅ローン担保証券(MBS)
の買取りを始めると発表したんだけど (約45兆円)、住宅の差し押
さえが記録的な水準に達しているさ中、住宅価格は今後、さらに
20%は下がるといわれている。
FRBが更なる買取を始めるMBSにしても、ABX指数を見てみると
反発傾向にあるのは 「AAA」のものばかりで、それ以外の「AA~
BBB」のものとなると、たったの2.9~5というお粗末なものとなって
いる。
「AA~BBB」はほぼ同様の水準 (ABX-HE-BBB 07-2)
昨年末から、住宅ローン金利の低下と共に 「住宅ローン申請数」
もぐんと上昇しているらしいアメリカなんだけど、米財務省は今後、
1部の住宅ローン金利を4・5%、さらにはそれ以下の水準まで引き
下げる事を検討していて、金利低下によって住宅購入者を増やし、
その結果住宅価格を押し上げる事を目論んでいるようだ。
しかし景気後退の中での「金利引き下げによるローン申請の誘発」
は、ローンで住宅を購入したのはいいものの、さらなるローンの滞り
を招く可能性もあるって事で、住宅所有者が返済可能なローンに
修正できるように、何らかの対策を講じなくてはいけない。
そうでなければ、申請数を増やすだけで根本的な解決には至らない。
要するに住宅ローン関連資産を買い入れ、金利を引き下げるだけ
では住宅市場の底入れは遠いって事で、それ以外のプラスアルファ
が求められる事になる。 民間企業の救済と共に、住宅市場の底入れ
が注目される1年となる。