監督:ケイシー・マン、声の出演:エイミー・ポーラー(ヨロコビ)、マヤ・ホーク(シンパイ)、ケンジントン・トールマン(ライリー)、フィリス・スミス(カナシミ)、ライザ・ラピラ(ムカムカ)、トニー・ヘイル(ビビリ)、ルイス・ブラック(イカリ)、アヨ・エデビリ(イイナー)、リリマー(ヴァル)、グレース・ルー(グレース)、Sumayyah Nuriddin-Green(ブリー)、アデル・エグザルコプロス(ダリィ)、ポール・ウォルター・ハウザー(ハズカシ)、ジェームズ・オースティン・ジョンソン(ポーチー)、ロン・ファンチズ(ブルーフィー)、ヨン・イェア(ランス・スラッシュブレード)、スティーヴ・パーセル(クライヒミツ)、イヴェット・ニコール・ブラウン(コーチ・ロバーツ)、ダイアン・レイン(ママ)、カイル・マクラクラン(パパ)ほかのピクサーのアニメーション映画『インサイド・ヘッド2』。

 

少女ライリーを子どもの頃から見守ってきたヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリの感情たちは、転校先の学校に慣れ新しい友人もできたライリーが幸せに暮らせるよう奮闘する日々を過ごしていた。そんなある日、高校入学を控え人生の転機に直面したライリーの頭の中で、謎の警報が鳴り響く。戸惑うヨロコビたちの前に現れたのは、最悪の未来を想像してしまう「シンパイ」、誰かを羨んでばかりいる「イイナー」、常に退屈&無気力な「ダリィ」、いつもモジモジして恥ずかしがっている「ハズカシ」という、大人になるための新しい感情たちだった。(映画.comより転載)

 

ネタバレがありますので、これからご覧になるかたは鑑賞後にお読みください。

 

2015年の『インサイド・ヘッド』の続篇。

 

僕は前作は映画館では観ていなくて、それは日本のミュージシャンのMV付きだったという日本語吹替版しかやってなかったからで、公開が終わってからDVDで観たのでした。

 

主人公の“ヨロコビ”の声を竹内結子さんがアテられた吹替版の本篇自体はとてもよかったし、だから俳優さんたちの声の演技のことをとやかく言いたいのではなくて、僕は日本公開版でしばしばオリジナルのエンディング曲を「日本版エンドソング」というのに差し替えるのに抵抗がある、というか嫌いなので。

 

日本のミュージシャンのかたがたは求められて曲を提供しただけでしょうし、もしかしたらそれはディズニーやピクサーから直接そういう要請なり指示があったのかもしれませんが、いずれにせよもとの曲を別のものに替えてしまうとオリジナル版にあったせっかくの余韻が消えてしまうので、アニメに限らず実写でも個人的には受けつけない。

 

で、今回は1館でだけ字幕版をやっていたので上映が終わってしまう前に(こういう場合の字幕版は早めに終わってしまいがちだから)観ておこうと思って、吹替版しかやってない近場のシネコンではなく街なかの映画館まで公開初日に行って鑑賞。

 

今回も吹替版にはエンドクレジットで予告篇にも流れている「日本版エンドソング」が使われていたようだけど、そもそもオリジナル版には歌は流れないんですよね。インストゥルメンタルのエンディング曲だけ。本来それで正解だと思う。

 

前作から9年後に作られた本作品、前作で11歳だった少女・ライリーは高校前の思春期で、心身ともに成長期にある彼女の中にさまざまな新しい感情が生まれることでまわりとの関係に変化が起きたり、情緒面でも振り幅が激しくなって、それがヨロコビたちのいる指令室での混乱に繋がる。

 

新たにシンパイやハズカシなどの感情たちが加わることに。

 

 

 

 

まず、僕は前作を2017年にTVの地上波でやってたのを観て以来一度も観返していないので、細かいストーリーは忘れていたし(“ビンボン”が出てくるくだりはなんとなく覚えてるけど)、今度また「土曜プレミアム」で8/3に放送されますが、やっぱり2作続けて観た方がよりグッときただろうな、と思いました。

 

なので、これからご覧になるかたは1作目をまだ観たことがないなら必ず予習を、僕のように長いこと観てなくて忘れかけている人は復習で観直しておくことをお勧めします。

 

ライリーは前作からずっとアイスホッケーを続けていて、この続篇では高校生になる直前のアイスホッケーの合宿キャンプの3日間が描かれる。

 

前作で転校先の学校に馴染めず苦戦したライリーは、今ではそこで仲良しの友人2人がいて、3人は同じアイスホッケーのチームメイトとして友情を育んできたが、ライリーの父親が運転するキャンプに向かう車の中で、その友人たち──グレースとブリーから自分と違う高校に行くことを告げられて、寂しさのあまり一人涙をこぼす。

 

一方で、キャンプ先で憧れの選手であるヴァレンティーナ(ヴァル)に声をかけられて舞い上がったライリーは、彼女たちのチームに入ることを夢見るが、そのために友人二人との間に溝ができてしまう。

 

なんていうか、どちらを選ぶのかを迫られて板挟みになる子どもや思春期あるあるな感じで、こちらは大学の話だけど『モンスターズ・ユニバーシティ』でも描かれた、イケてるグループに入って今後も上を目指すか、それとも自分の身の丈に合ったグループで満足するのか、ということで悩むアメリカのティーンのお話に。

 

 

アメリカって日本とは学校の形態が違うし(なんか小学校と中学校が一緒だったりして)、できる子はどんどん飛び級で年上の人たちと一緒に学んだりするようだから僕にはよくわかんないのと、これは以前からいろんな映画の感想で述べてきたように、あちらの人って「イケてるかイケてないか」で人生が大きく変わってしまうような、それは上昇志向や能力があって努力家の人にはチャンスがあるということでもあるから夢を目指す者たちには素晴らしい環境なのかもしれませんが、逆に言えばそういう過酷な競争からこぼれ落ちた人にとっては非常に生きにくそうな世界でもあって、つくづくアメリカ人じゃなくてよかった、と思うんですよね。

 

で、ライリーもまたそういう競争の中に身を置くことになる。

 

頑張ってコーチにアイスホッケーの実力を認められてチーム入りできれば活躍の場が得られて成功への道が開けるが、失敗したら奈落の底。「負け犬」の人生が待っている。

 

 

 

だから、競技の腕を上げるための努力はもちろんのこと、喋り方一つ、立ち居振る舞いや誰とツルむか、ということを誤らないようにしなければならない。

 

少なくともあちらの人たちはそう思い込んでいるし、そういう社会のシステムになっている。

 

僕はそういうの大の苦手なんで、ライリーがどんどん焦って背伸びして懸命に年上のお姉さんたちの会話の輪に入ろうと無理をしたり、そのために友人二人をないがしろにして彼女たちから距離をとったりする姿に痛々しさとともに苦々しさも感じたのでした。

 

大好きなアイドルグループのことをわざと嘲笑うような素振りを見せたり、興味のない音楽のことを褒めて「イケてる」自分を猛烈アピールする。

 

どんどん「イヤな子」になっていくんですね。

 

そういう失敗は身に覚えのある人はいるだろうけど、僕なんかはもともと人とツルむのが苦手だし、ほんとはわからないことをわかってるフリしたところで早々にお里が知れるのが関の山なので、結構早い段階で無理はしないことに決めたんですよね。

 

だから、イケてる集団と仲間になりたい、という欲求自体があまりない。一緒にいてもしんどいだけの人たちとツルむぐらいなら一人で好きなことをやっていたい。

 

ライリーは体育会系でチームで戦うことをずっとやってきた人だから、集団内でどうやりくりしていけばいいのかを常に考えているのかもしれないし、学校にしろ職場にしろ、まわりの目を気にしながら生活する、というのは別に思春期に限らない、おとなになってもずっとついてまわることではある。

 

だけど、なんていうんでしょうね、スポーツを楽しむ、というよりも、とにかく成功だとかこれからの自分の居場所の確保のために上を目指す、みたいな、なんか釈然としないものを感じてしまう。素直に彼女を応援できないんです。

 

最後の最後まで、ライリーがアイスホッケーをすることの本当の喜びを取り戻したのかどうか疑わしくて。もちろん、一応のハッピーエンドはあるんですが。

 

アメリカの人たちって、「成功」に取り憑かれているんじゃないだろうか。

 

今、ちょうどオリンピックをやってるし、映画の中でもオリンピックのことを台詞の中でも言ってたりしますが(アイスホッケーは冬季だけど)、スポーツマンシップってなんなんだろうな、と考えてしまう。

 

いや、アスリートだったら頂点を目指すのは当たり前で、負けてもいいや、なんて思って競技をやってる人はいないだろうけど…でもさぁ、オリンピックに出場するような人たちはほんとにひと握りの超エリートたちで特殊な人たちなわけでしょう。

 

スペシャルな人たちには彼らなりの苦労と戦いがあるでしょうが、そして、そういう人たちが他の人たちにはけっしてできないことをやり遂げる姿に感動を覚える、というのもわかるんですが、ほとんどの人はそんな選び抜かれた強者ではなくて、途中で自分の限界を知ったり、挫けて路頭に迷ったり自暴自棄になったり、でもそこからほんのちょっと這い上がったりするものでしょう。

 

まぁ、ライリーはまだ10代だし、可能性をどんどん広げて力を伸ばしていく時期だから、そういう若い人を応援するような映画ということでしょうけどね。

 

若い人たちが観る作品なのに、そんな挫折だとか暗い展開ばかりでは気が滅入っちゃいそうだから、前向きに明るく歩んでいく主人公を見たい、という人も多いのでしょうし。

 

僕は前作でのライリーのイマジナリーフレンド“ビンボン”との別れにカナシミばりに大泣きしたクチなので、それに比べるとわずか3日間に起きるライリーの失敗とそこからの回復を描いた本作品には、よく宣伝文句で言われている「おとなが号泣」みたいなことはなかったですが、逆に両親目線で見ているような、あんな小さかった子がもうこんなことで悩んだり荒れたりして…と、遠い目をしてしまったのだった。

 

ライリーの顎のとこに小さなニキビができてたり、芸コマで(笑)

 

自分の匂いを嗅いで「くさっ」とかw

 

前作では前歯が左右非対称でそこがチャームポイントでもあったんだけど、それも矯正器具つけて歯列矯正中だし。まるで、どんどん成長して変わっていく我が子を見ているよーな(わたしゃ結婚もしてないし子どももおらんが)。

 

 

 

前作ではところどころ幼かった頃の彼女の姿が挟まれながら進んでいく形だったから、今回も日常的な描写で物語が紡がれていくと思っていたら、こちらでは合宿の3日間という、スクールカーストの要素も含みつつ家や学校とは違った環境でのスポーツパーソンの物語になっていたので(たとえばこれが音楽の世界などでも似たようなことはできるでしょうが)、体育会系を憎んでいる僕はちょっと入り込めないところもあって、あぁ、前作では大好きだったオモチャとか、そういう世界だったのが、だんだん違う世界へ行ってしまうんだな、という寂しさも覚えたりして。

 

逆に、ヨロコビたちの健気さ、一所懸命さにグッときましたが。

 

もろアジア系のゲームキャラ、といったデザインのランス(あのカクついた歩き方や丸まってコロコロ転がってく姿とかw)、いかにもあちらのカートゥーン・キャラっぽいブルーフィーに、ポーチのアニメキャラで目つきがヤバいポーチーとか、彼らの存在が心の中がまだ思春期以前の時点で止まってる僕にはとても楽しかった。

 

 

 

 

恥ずかしがり屋で手が汗でびっしょりで、背中を向けてしゃがんで前屈みになると半ケツになる“ハズカシ”の声を担当したのがポール・ウォルター・ハウザーだったのを鑑賞後に知って笑った。ほとんど台詞ないのに。ぴったりの配役ですけどね。

 

ヨロコビがほんとに可愛いんだよなぁ。

 

かつて「トイ・ストーリー」シリーズで主人公のウッディが持ち主のアンディに示したように、ヨロコビは他の感情たちと協力し合ってライリーのために働く。

 

ヨロコビがいなくなれば、彼女の働きがなくなればライリーが明るい人生を送れなくなってしまう。

 

ヨロコビが持つ明るさと楽天性がライリーを救っている。

 

 

 

そして、前作でカナシミが大切な感情であることがわかったように、思春期にさしかかって暴走してしまう危うさを抱えた感情たちもまた、ライリーに必要な心の動きであることがわかる。ヨロコビを追放したシンパイが、物凄いスピードで指令室のパネルを操作する場面の狂気、それを鎮めるのもヨロコビのハグと慰めの言葉。

 

みんな、ライリーのために働いていた。それがわかっているから、ヨロコビはシンパイたちも受け入れる。とりあえず、普段は椅子に座っててもらいながらw

 

ヨロコビのそのブレなさに頼もしさと愛おしさを感じる。

 

この作品は、今現在思春期(脳内年齢含む)真っ只中だったり、そういう子どもさんを持つ親御さんだったり、ある程度以上の年齢層向けですね。上映会場には幼い子どもさんを連れたご両親もいらっしゃったけれど、たとえば『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のような小さな子どもでも楽しめるものを期待して行くと、ちょっと内容が難しいかもしれない。もう少しおとなになってからね、ということで。

 

1作目と続けて観ると、一人の少女の成長物語を見るような感動があるかも。

 

心の奥の保管庫にいた「クライヒミツ」、結局彼が隠していた秘密はなんだったのかというと…めっちゃ他愛無いものでしたw ライリーがほんとに闇を抱えるのはもっとあとのことなのかも。

 

ちなみに、去年公開のディズニー映画『ウィッシュ』では2Dアニメっぽい絵柄だったけど、この『インサイド・ヘッド2』はこれまで通りの3DCGアニメの見た目だったし、本篇前に流れた今年12月公開予定のディズニーの新作アニメ『モアナと伝説の海2』も、同じく以前のものと同様のCGの質感だった。

 

『ウィッシュ』だけちょっと変えてみたのかな。

 

『インサイド・ヘッド2』の吹替版はどうなんだろうなぁ。

 

チャンスがあったら観てみたいです。

 

 

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