アンディ・サーキス監督、トム・ハーディ、ウディ・ハレルソン、ナオミ・ハリス、ミシェル・ウィリアムズ、スティーヴン・グレアム、リード・スコット、ペギー・ルーほか出演の『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』。

 

地球外生命体シンビオートの“ヴェノム”と共生関係を続ける記者のエディ・ブロック(トム・ハーディ)は、クエンティン刑務所に収監中のシリアルキラー、クレタス・キャサディ(ウディ・ハレルソン)に指名されて彼と面会し、クレタスの指示通り新聞に彼の語った言葉を載せる。それはレイヴンクロフト刑務所に収監中の恋人フランシス(ナオミ・ハリス)に向けた合図だったが、ヴェノムの推理によりかつてクレタスが起こした殺人事件の犠牲者の遺体が発見されて彼の死刑が確定する。再び刑務所を訪れたエディの手に噛みついたクレタスは、身体に取り込まれたシンビオートの力によって死刑執行の場で変異して怪物“カーネイジ(大殺戮)”と化す。

 

ソニー・ピクチャーズ配給の2018年公開のマーヴェル・コミック原作のダークヒーロー映画『ヴェノム』の続篇。

 

 

僕は前作を「かなり微妙な出来」と散々酷評して、続篇は多分観ないだろうと思っていたんですが、1作目の作品の評価は今でも覆す気はないものの、ヴェノムとトム・ハーディ演じる主人公エディのキャラは面白かったし、またすぐあとで述べますが、このシリーズにはいろいろと仕掛けがあるらしいことがわかってきたので、予告篇を目にしてからはとりあえず押さえておこうと鑑賞候補に入れていました。

 

なお、以降は作品の重大なネタバレがありますので、これから鑑賞される予定のかたは映画をご覧になってからお読みください。

 

 

予告でほぼどんなお話なのか、今回の敵は誰なのかといったことはわかるし、実際の映画もその通りに展開するのでネタバレも何もないんですが、この映画の前に流された同じソニー・ピクチャーズによる来年公開予定のマーヴェル映画『モービウス』の予告で早くもヒントが示される。

 

 

 

『モービウス』の他に『ヴェノム』本篇の前にはディズニーによるMCU(マーヴェル・シネマティック・ユニヴァース)の最新作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(22年1月7日公開予定)の予告も上映されていて、この3本はそれぞれの作品が微妙に繋がっている。

 

 

 

今回、僕が前作『ヴェノム』にあまりノれなかったにもかかわらず、その続篇を観た意味はそこにある。

 

映画館で用途不明の厚紙をもらった虹

 

前作のミッドクレジット(エンドクレジットの途中で挟まれる映像)で、アニメーション映画『スパイダーマン:スパイダーバース』(こちらも続篇が待機中)の本篇の一部が映し出されて、劇場公開時にそれを観た僕は無関係な映画の宣伝に腹が立ってその旨を感想に書いたんですが、『スパイダーバース』はさまざまな並行世界のスパイダーマン&ウーマンが一挙に勢揃いする内容で、つまり「多元宇宙=マルチヴァース」を描いたお話だった。

 

異なる作品の主人公たちが集うのはアベンジャーズDCコミックスの実写化作品ですでに行なわれていたわけだけど、そこにさらに次元の異なる主人公たち、いろんなスパイダーマンが同時に存在する、という──たとえば、日本テレビ版ドラえもんテレビ朝日版ドラえもんが共演するような、あるいはモノクロ版の怪物くんオバQカラー版の彼らと一緒に出てくるような(わかりやすく藤子不二雄作品で説明しましたw)、そういうカオスな状態。

 

で、今思えば『スパイダーバース』の一部を『ヴェノム』のエンドクレジットに挿入したことにはちゃんと意味があったんですね。

 

そういえば確か、以前、これも配給会社が異なる「X-MEN」シリーズの本篇の一部がMCU作品のエンドクレジットの途中で流されたこともあった。

 

要するに、あれらはその後の各作品のシリーズや会社の枠を越えたクロスオーヴァーを示唆していたんだな。

 

で、ようやくここでそれらの試みが実現しようとしているのだ、と。

 

トム・ホランド主演の「スパイダーマン」シリーズ第3弾『ノー・ウェイ・ホーム』の予告では、ベネディクト・カンバーバッチが演じるドクター・ストレンジの力で他の次元とMCUの世界が接続されてしまい、来年公開予定の「ドクター・ストレンジ」の新作も監督しているサム・ライミがトビー・マグワイア主演で撮った「スパイダーマン」3部作(2002~07年)でスパイダーマンが闘ったヴィラン(悪役)たちと、マーク・ウェブ監督、アンドリュー・ガーフィールド主演の「アメイジング・スパイダーマン」2部作(2012~14年)のヴィランたちが次々出現する。

 

一方で、『モービウス』の予告にはスパイダーマンのポスターが映っていたり、主人公モービウスがならず者に自分のことを「俺はVenom(毒)だ」と名乗る。

 

今回の『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』では、カーネイジとの闘いののちに南の島でくつろいでいたエディとヴェノムが謎の光の照射のあと、TVのニュースでデイリー・ビューグルのニュースキャスター、ジェイムソン(J・K・シモンズ)が「スパイダーマンの正体はピーター・パーカー(トム・ホランド)だ」と発表するのを観る。

 

この場面はMCUの「スパイダーマン」シリーズの前作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の最後に描かれたもので、そこから『ノー・ウェイ・ホーム』が始まる(『ファー・フロム・ホーム』では物語の中でマルチヴァースの可能性に触れられていた。J・K・シモンズはライミ版スパイダーマンでは新聞社の編集長を演じていた)。

 

現時点で作り手側の方ではどこまで企画が進んでいるのか知らないけれど、すでに以前から『モービウス』には『スパイダーマン:ホームカミング』のヴィラン、ヴァルチャー(=エイドリアン・トゥームス)役のマイケル・キートンが同キャラクターとして登場することがわかっていたし、「ヴェノム」シリーズの主演のトム・ハーディはここ最近になってMCUへの合流を熱望するような発言をしていたから、いずれヴェノムとスパイダーマンの激突は大いに期待できるかもしれませんね。

 

前述した作品群をこれまでにずっと観続けてきた人たちにとってはこの20年間に撮られたスパイダーマン映画を全部ぶちまけて混ぜ合わせたお祭りのようなイヴェントだろうし、過去のスパイダーマン映画をほとんど観てなくて思い入れがまったくない人たちにとっては何が何やらでしょう。

 

僕が文句垂れたヴェノムの映画も、お茶目なヴェノムのキャラや“むく犬”みたいなトム・ハーディは人気があるようで、前作もこの続篇もTwitterや映画レヴューサイトでベタ褒めしてる人たちが大勢いる。

 

 

 

だから、「好きだ」というかたがたのことをとやかく言うつもりはないのでそのあたりはご了承いただきたいんですが、ストーリーの本筋そのものは前作同様にたわいないというか、あまり大真面目に観るようなものではない。

 

強敵が現われてそいつと闘う、というただそれだけで、物語的な面白さってほとんどない(※個人の意見です)。

 

ハッキリ言ってしまえば、先ほどの主人公キャラたちへの愛着を除けば、他作品とのコラボ、クロスオーヴァーだけが見どころ、といった感じ。

 

前作でも思ったことだけど、身体を自在に変形させて闘うヒーローって、バトルシーンに映像的なヴァリエーションがありそうで意外とそんなにないんだよね。

 

 

 

ドツき合って長い舌や触手を伸ばして相手にからまったり、建物や乗り物を破壊しまくったり、だいたいそれぐらいしかやることがない。

 

今回は敵の体色が赤でわかりやすいし、“カーネイジ”という名前もなんだかカッコイイんでそんなに退屈はしなかったけど、カーネイジになった殺人鬼クレタス・キャサディの方のドラマがなんとも中途半端で、彼が若い頃に知り合って以来愛し合っている“シュリーク”ことフランシス・バリソンも、なんで口からあんな超音波を出せるのかなんの説明もないし、クレタスがそうだったようにただ「子どもの頃に虐待されていた」という説明があるだけなので彼らに共感することもできなければ、その死に同情を覚えることもない。

 

クレタスとフランシスの殺人鬼カップルは、90年代にウディ・ハレルソンが主演した『ナチュラル・ボーン・キラーズ』の安っぽいパロディみたい。

 

 

 

 

フランシスは、007シリーズでジェームズ・ボンドの同僚役を務めたり演技力にも定評のあるナオミ・ハリスが演じる役としてはあまりにキャラがスカスカ過ぎて、ヴィランとしての魅力もない。

 

カーネイジにしても、大仰なネーミングのわりにはそんなとんでもなく凶悪な敵には見えなかった。

 

このシリーズって「残虐」とか「殺戮」とか禍々しい単語を連発しておきながらそういう具体的な描写はないので、結局は口の悪い(でもFワードは絶対に使わない)スライムたちが暴れてるだけでアクションとしてはやっぱり単調なんだよな。

 

前作はPG12だったけど、今回はさらにユルいG指定。つまり年齢制限なし。

 

これでは「大殺戮」なんて見せられないし、連続殺人鬼という設定なのにクレタス=カーネイジの残酷さを実感することもできなくて、「邪悪」な強敵を倒すカタルシスもない(まぁ、最後にヴェノムがあっけなくクレタスの頭を食っちゃうところはなごんだけど)。

 

ヴェノムの暴力性やカーネイジの残虐さをちょっと黒い笑いを含めて描くには、やっぱりR指定でないと。そこんとこでやっぱり『デッドプール』に負けてるんだよなぁ。

 

しかも夜の場面ばかりだから(IMAX版は観てないから知りませんが)通常のスクリーンだと暗くて肝腎のアクションシーンがよく見えない。

 

監督のアンディ・サーキスは「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのゴラムの人で、リブート版「猿の惑星」3部作の主役シーザー、そしてMCUでは悪役ユリシーズ・クロウを演じていた人でもあるけれど、正直なところ監督としての手腕がどうなのかは僕にはちょっと判断できなかった。どんなに優れた監督だって脚本がイマイチではなぁ。

 

脚本作りにトム・ハーディがかかわってるけど、『スーパーマンIV』がそうだったように、スーパーヒーロー物で主演俳優が脚本に絡むとあまりよい結果にならないような気が…(;^_^A

 

…あ、また前作と同じようにディスりだしてしまった。

 

上映時間は100分弱だし、だからこの中身の映画としては下手に長ったらしくせずに観やすくなっているから、軽く楽しむにはちょうどお手頃だとは思います。

 

ミシェル・ウィリアムズ演じるアンも、元彼のエディを呼び出して現在の彼氏のダン(リード・スコット)との結婚に祝福の言葉を求めるとか、相変わらずだけど^_^; それはもう前作で知ってるし、だからもはや腹が立つとかはなかった。

 

 

 

ここでエディにアンと寄りを戻させるためにダンをヘタレに描いたりせずに、ちゃんとアンを助けようと勇敢に敵に立ち向かう男性として描いたのはよかったし(いきなり油と火での攻撃は唐突だったが)、アンの方もエディに未練があるような素振りは一切見せなくて、そこんところは一貫しててくれたので観ていてストレスは溜まらなかった。

 

別れてもああいう関係もあるのね。

 

エディがアンを想いながらもこれ以上は縮まらない、二人のあの微妙な距離感は今後も続いていくんだろうか。

 

エディとヴェノムが喧嘩別れするきっかけや仲直りしてまた一体になる過程がちょっと雑に感じてしまったんだけど、あの二人のやりとりは愉快だし(傍から見ると二重人格者だが)、悪態をつきながらもエディのことを心配したり意外と頭がキレたりパーティではゴキゲンなヴェノムはプリティだし、だからこれはアクションよりもエディとヴェノムが巻き起こすドタバタ・コメディの部分をもっともっと強調するといいんじゃないだろうか。どうせヴァイオレンスは徹底して描けないんだから。

 

パーティでヴェノムの姿を見てコスプレだと思った人たちが「日本のキャラ?」と尋ねてきて、ヴェノムが「オリジナルだ」と答える場面が可笑しかったんだけど、そういや、なんか似たようなのがいますよね、日本にw

 

 

 

以前、デッドプールにクリソツなのもいたけど、もしかして東映はマーヴェルから正式に許諾を得てるのかな?そうでないならそろそろ怒られるんじゃないか^_^;

 

まぁ、東映はかつてスパイダーマンを映像化してるから、そのよしみで見逃されてるとか?w

 

主人公の身体に寄生して共存する生物、というのも、アメコミにも日本の漫画にも詳しくないんでどちらが先とか僕はわからないですが、似たような設定の作品はいろいろあるから、互いに持ちつ持たれつというかパクりパクられ、みたいなところはあるんでしょうけど。

 

DCコミックスもそろそろまた実写映画で複数のヒーローたちによるシェアワールドを再開するようだし、マーヴェルの世界もますます「なんでもあり」になってきてますが、しばらくはこのお祭りに参加してみようと思います(^o^)

 

 

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