クリス・マッケイ監督によるCGアニメーション映画『レゴバットマン ザ・ムービー』。

 

レゴブロックの世界。悪徳の街“ゴッサム・シティ”で孤独なヒーロー、バットマンは今日も宿敵ジョーカーの凶悪犯罪を阻止するが、バットマンに冷たくあしらわれたジョーカーは一計を案じ、街中の悪人を集めて再びバットマンに挑戦してくる。

 

2014年の『LEGO(R)ムービー』が面白かったのと(あれからもう3年経つのか…早ぇ)、この最新作もまた評判がいいので鑑賞。

 

僕は時間の都合で前作同様に今回も吹き替えで観ましたが、このシリーズってしっかり字幕版と吹替版の両方やってるのが好感持てますね。

 

いつかどちらも字幕版でまた観たいな。

 

オリジナル版の吹き替えはバットマン役が前作と同じウィル・アーネットで、ジョーカーは「ハングオーバー」シリーズなどのザック・ガリフィアナキス、ヒロインのバーバラ・ゴードンはロザリオ・ドーソン、ロビン役がマイケル・セラ。

 

 

 

それから主要キャラじゃなくてほんの脇役だけど、トゥーフェイス役が「スター・ウォーズ」シリーズのランド・カルリジアン役のビリー・ディー・ウィリアムズ。彼は1989年のティム・バートン監督の『バットマン』で、まだトゥーフェイスになる前のハーヴィー・デント検事を演じていた。

 

その他にも、市長役がマライア・キャリーだったりスーパーマン役がチャニング・テイタムだったりキャスティングもなかなか凝っている。

 

一方で吹替版の方は、バットマン役がお馴染み山寺宏一。ジョーカーは子安武人。バットガールが沢城みゆき。ロビン役はお笑い芸人の小島よしお。市長役は、おかずクラブのオカリナ。

 

僕は吹き替えの配役を知らずに観たんだけど、出番がそんなに多くはないオカリナはともかく、ロビンが「だいじょぶだいじょぶ~」とか「そんなのカンケーねぇ!」とかやたらと小島よしおの持ちネタをやるので彼と気づいて、かなりイラッとしました。

 

こういうの誰も得をしない。

 

確か『LEGO(R)ムービー』ではお笑い芸人は一切使ってなかったので(お笑い芸人のギャグを散りばめたふざけた予告篇がめちゃくちゃ叩かれてたし、映画本篇の方ではすべてプロの声優が声を担当して台詞もまともだった)、ほんとガッカリ。今回はついになんかの圧力に屈したんでしょうか。

 

小島よしお以外はまともな吹き替え台詞だったから翻訳担当者の苦闘ぶりがうかがえますが、芸能事務所なのかどこだか知らないけど、映画の吹き替えにお笑い芸人をムリヤリねじこんできて映画の内容と関係ないクソつまらんギャグをカマさせる奴らってほんとに死んじまえばいいのに。それかまとめてファントム・ゾーンに飛ばされてしまえ。

 

吹き替えって今ではソフト化されても劇場公開版がそのまま収録されるしTV放映の際にも使われたりしてずっと残るものだから、しょーもない流行ギャグとかすぐ風化して(ってゆーか、すでに現時点で風化してるギャグだし)ほんとにサムいだけの代物になってしまうんだよね。

 

せっかく他のプロの声優さんたちの声の演技はちゃんとしてるのに、ただもうお笑い芸人だけが余分。あんなの小学生だって喜ばないよ。どんだけ観客を舐めてんだ。

 

もっとも、そこにさえ目を瞑れば小島よしおは声の演技そのものはそこそこ達者だったし、ロビンのノーテンキで幾分不憫な感じはよく出ていた。

 

バットマン役の山ちゃんは前作でも同じ役だったし安定した巧さで、ヒロイン役の沢城みゆきも同様。

 

この映画は、バットマンやバットマン映画が好きな人にはこたえられない作品でしょうね。

 

僕は原作の方はまったく知らないんだけど、一応これまでに作られたバットマンの実写映画はほぼ観ているので(アダム・ウェスト*主演のTVドラマの劇場版はほとんど記憶にないが)、それらのパロディに溢れたこの『レゴバットマン』は実に愉快で、そしてちょっと感動もした。

 

*アダム・ウェストさんのご冥福をお祈りいたします。17.6.9

 

『バットマン オリジナル・ムービー』(1966)

出演:バート・ウォード シーザー・ロメロ バージェス・メレディス フランク・ゴーシン リー・メリーウェザー 

 

 

キラー・モスみたいなマイナーなヴィラン(悪役)を登場させていちいち紹介しているところも、作り手のバッツ愛を感じさせますね。

 

エンドクレジットで流れる曲がもろ『ダークナイト』風だったり、ペンギンが『バットマン リターンズ』仕様だったり。

 

子ども連れのご家族も観にきていたし、もちろんバットマンに詳しくなくても楽しめると思うけど、知ってるとより入り込めるのは間違いない。

 

きっとほんとにバットマンやDCコミックスに詳しい人たちにはさらに楽しみどころがあるんでしょう。

 

この映画でスーパーマンの宿敵ゾッド将軍は過去にヴィランたちが収容される“ファントム・ゾーン”に送られた、ということだったから、きっと終盤にまた再登場するんだとばかり思ってたら、まったく出てこなかったのは少々肩すかしだったけど。

 

さて、この映画で描かれているのは、「家族」や「仲間」について。

 

常に孤高で単独行動を好み、このシリーズでは自分大好きなオレ様キャラでもあるバットマンが、“ぼっち”を克服して他者と手をとりあって生きていく喜びを知るまでを描く、まるで『アナ雪』みたいなお話。

 

正直、何度も何度も「家族」の大切さが強調されるのがちょっとしつこい気もしたんだけど、それだけ今人と人との結びつきが重要視されているということでもあるんだろうか。

 

僕はバットマンというのは家庭的なところから隔絶されたヒーローだからこそ魅力を感じるので、そのバットマンが家族や仲間を持ったらもう別のキャラになっちゃうんじゃないかと思うんですが。

 

この映画観ていて、ロビンやバットガールが登場する共通点もあるけど、ちょっとジョエル・シュマッカー監督がジョージ・クルーニー主演で撮った『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』を思い浮かべたんですよね。

 

『バットマン&ロビン』(1997)

出演:アーノルド・シュワルツェネッガー ユマ・サーマン クリス・オドネル アリシア・シルヴァーストーン 

 

 

これはあの映画のリメイクなんじゃないかとw

 

もっとも『バットマン&ロビン』は「史上最悪のヒーロー映画」の1本に数えられたり、ジョージ・クルーニーのフィルモグラフィの中では黒歴史扱いされていたりと、ちまたでは結構散々な評価なんですが。

 

でもあの映画では『レゴバットマン』のように家族とかパートナーシップの大切さみたいなものを訴えていたので、テーマが同じでも作り方によってこんなにも完成度や評価が違ってくるんだな、と。

 

そういうテーマは、マーヴェル・コミックのアベンジャーズ・シリーズの成功によってハリウッドの実写映画でのヒーローたちの共演がお馴染みになった現在だからこそより多くの観客に受け入れられたのだ、ということもあるんでしょうけど。

 

比べる必要もないんだけど、僕自身は予備知識を一切必要とせず最後のオチも秀逸だった『LEGO(R)ムービー』の方がわずかに好きなんですけどね。

 

でも、とにかく笑いながらちょっとホロリとしたりもする、評判通りに痛快な映画でした。

 

これに倣って、今後公開される実写のバットマン映画の方もぜひ頑張っていただきたいですが。

 

春休み中だったこともあって平日の昼間でも親に連れられた子どもたちが何人もいて、バットマンが食事を電子レンジでチンしている間に暇をもてあまして口で「パッ・パッ」とやってふざけてる姿に僕の隣の席で観ていた小学生が大ウケしてたり客席でも素直な反応があって、大人しかいない映画以上に楽しめたかな。

 

パスワードが「アイアンマンのバ~カ!」だったりするんだけど、『LEGO(R)ムービー』の時にも思ったように、この映画のバットマンはアイアンマンといろいろキャラがカブってるし、今回はスーパーマンのこともライヴァル視してるから、なんかもう目立つヒーローはみんな目の仇にしてるみたいでw

 

ロブスターを殻ごとバリバリ食ってる引きの画とか、『ザ・エージェント』でトム・クルーズとレネー・ゼルウィガーが真面目な芝居をしている場面をホームシアターで独りで観ながら大笑いしている場面など、可笑しさとなんともいえない寂しさが同居していてツボでした。

 

また、悪役のジョーカーが可愛いんだw

 

 

 

オバQみたいな赤い唇に牙みたいなギザギザの歯、バットマンの気を引きたくて悪さをするんだけどつれなくされて、「オレにお前はまったく必要ない」と言われた時のジョーカーの哀しげなウルウル顔がなんともラヴリーでw

 

ジョーカーにとっては「お前が嫌いだ」という言葉こそが愛情表現らしくて、だからバットマンからなんとかその言葉が聞きたくてちょっかいを出す。

 

アンパンマンとばいきんまんみたいな、ヒーロー物における正義の味方と悪役の関係。

 

バットマンは執事のアルフレッドからも家族を持つことを勧められるが、頑なに拒む。

 

しかし、ジョーカーが手下である大勢のヴィランたちを引き連れて警察に自首してきたために、倒すべき敵を失ってアイデンティティが揺らぐ。

 

スーパーヒーローが輝けるのは、悪役がいるから。

 

世の中にとって自分が用無しになったと感じて落ち込みかけるが、何を企んでいるのかわからないジョーカーを完全に無力にするため、自分を慕う(そして養子候補として売り込んでくる)少年ディックとともにスーパーマンの住処に潜入して、悪人をファントム・ゾーンに送り込むプロジェクターを入手する。

 

ところがジョーカーの右腕のハーレイ・クインの手によってプロジェクターが奪われてしまい、ジョーカーとともにファントム・ゾーンにいた極悪なヴィランたちが復活して街に押し寄せる。

 

スーパーマンをはじめとする“ジャスティス・リーグ”の面々、DCコミックスのスーパーヒーローたちに対して若干悪意を感じさせるようなテキトーな描写がなんとも可笑しい。いや、バットマンだってジャスティス・リーグの一員なんだが。

 

何しろ、北極にあるスーパーマンの家で踊ってるだけで、クライマックスの戦いにヒーローたちは誰も参戦しないし^_^;

 

劇中でバットマンたちに最終的に加勢するのは、ジョーカーに見捨てられたゴッサム・シティのヴィランたち。

 

これはヴィランたちがチームを組んで敵と戦う『スーサイド・スクワッド』(劇中でも言及されるが)への、「アンチヒーローチーム物はこのように作るべし」という返答のようにも思える。

 

 

僕たちはほんとは『スーサイド~』でこういう感動を味わいたかったんだよな。

 

この映画でバットマンだけでなくドラキュラや『オズの魔法使』の西の魔女、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの冥王サウロンの目や「ハリポタ」シリーズの名前を言ってはいけない「あの人」、「マトリックス」シリーズのエージェント・スミス、『ジュラシック・パーク』のラプトル、現在公開中のあのデカいゴリラのモンスターなど、アメコミヒーロー物というジャンルさえも飛び越えて映画界の悪役たちが集結する終盤の展開には胸が熱くもなった。

 

スポーツ好きな人たちが贔屓のチームや選手たちの活躍に燃えるように、映画の中で戦うスーパーヒーローやヴィランたちに、単に作られた世界の架空の登場人物以上の存在感と愛着を感じるんですね。

 

 

 

バットマンが操るバットウィングも、変形の仕方とかこれまでのシリーズ中で一番かっこよかったほど。

 

前作がお気に入りだった人はもちろん、まったくのノーマークだった人もバットマンやアメコミヒーロー物に興味があればぜひご覧になってみてください。

 

お一人でもご家族連れでもどちらでも大丈夫ですので。

 

個人的には、『チーム★アメリカ/ワールドポリス』のようにブラックなギャグ満載でやりすぎなアダルト・ヴァージョンもぜひ観てみたいですが。

 

 

関連記事

『ジョーカー』

『ダークナイト ライジング』

『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』 

『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』

 

 

 

 

 

 

にほんブログ村 映画ブログへ にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ