パトリック・ヒューズ監督、シルヴェスター・スタローン主演の『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』。



傭兵部隊“エクスペンダブルズ(消耗品軍団)”のリーダー、バーニー・ロス(シルヴェスター・スタローン)は古参メンバーの“ドクター・デス”(ウェズリー・スナイプス)を脱獄させ彼を加えたおなじみのメンバーたちとともにCIAからの依頼でミンズという男を始末しようとするが、その正体はかつてバーニーとエクスペンダブルズを作ったコンラッド・ストーンバンクス(メル・ギブソン)だった。


前作のジャン=クロード・ヴァン・ダムに続いて、今回はメル・ギブソンを悪役に迎えての「エクスペンダブルズ」シリーズ第3弾。

さらにはヴァンパイア・ヒーロー物の「ブレイド」シリーズの主演や『デモリションマン』では悪役としてスタローンとも共演済みのウェズリー・スナイプス、『デスペラード』や『マスク・オブ・ゾロ』のアントニオ・バンデラス(彼も『暗殺者』でスタローンと戦っている)、そしてご存知インディ・ジョーンズやハン・ソロ役でおなじみハリソン・フォードも加わって、今回も豪華アクションスターが勢ぞろい。

一方では前作まで出演していたブルース・ウィリスはギャラのことで揉めたんだったかで欠席。1作目のミッキー・ロークと同様にこのまま不在が続く可能性も。

劇中、台詞の中で何度も「チャーチ」という名前が出てくるけど、シリーズを観続けてる人でないとこのチャーチというのがブルース・ウィリスが演じてたキャラだということがわからない。

観る前からすでにどんな感じの映画なのかはほとんど予想できるというか、これまで1~2作目を観てれば何を目的に観るべきで何に期待しちゃいけないのかはわかるから、とにかくかつて映画館で観たアクション映画の主役たちが一堂に会するという目の快楽を味わうために劇場へ。

この映画の少し前にデンゼル・ワシントン主演の『イコライザー』を観ましたが、あの映画とはすべてが対照的なアクション物でしたね。

『イコライザー』はもともと期待してなかっただけにより面白さを感じたんだけど、一方こちらの「エクスペンダブルズ」最新作は意外性は一切ない、だからガッカリもしないけど特別アガることもない、「うん、まぁ、こんな感じね」といった、若干マンネリも覚えつつの鑑賞と相成りました。

個人的には2作目が格闘や銃撃戦などアクションのバランスが取れてて(やりすぎ感も含めて)ちょうど80~90年代のアクション映画を観ているような心地良さがありけっこう好きだったんで、それに比べてこの3作目はおとなしめというか、こじんまりした印象も。

「ワールドミッション」なんていう、まるでヴィン・ディーゼル主演の「ワイルド・スピード」シリーズみたいな邦題がついてるわりにはワールドワイドでもなければミッションというほどでもないし。

ストーリーにはツッコんじゃいけない。ツッコみきれないのでw

ようするに、殺そうとした相手が死んだはずのかつての仲間で、しかし今や完全に犯罪者となった彼によってエクスペンダブルズの新メンバーたちが捕らわれてしまったためにその救出に向かうという、アクション映画としてはこれまでにいくらでもあったパターン。

そのこと自体は別に構わないと思うんですが。

ただしこのシリーズ、1作目も2作目も上映時間は103分(DVDで全長版もあるが)なのに対して、今回は126分と長め。

長いけど別にその分いつもよりアンコがたくさん詰まってるというわけでもないので、正直観てる途中で晩ご飯のことなんかをちょっと考えてしまった。

この内容ならやっぱり100分前後に収められたんでは。

スタローンの映画って、特に「ロッキー」シリーズに顕著だけど主人公がまわりの仲間に松岡修造イズムあふれる熱き説教をカマしたりすることがしばしばあって、「エクスペンダブルズ」もその系譜に属している。

説教までいかずとも、友情に厚くいつもダメな奴の面倒を見ているバーニー・ロスの姿勢はスタローンの生き様そのものだ。

ご本人も一時期低迷した経験があるだけに、その言葉には妙な説得力がある。

だけど、今回そもそも仲間たちを危険に晒した張本人はスタローン演じるバーニーなのだ(以下、ネタバレあり)。

もうそれは観てりゃ観客の誰もがツッコむレヴェルで。

彼が冒頭でメル・ギブソン演じるストーンバンクスをさっさと殺しておけばミッションは無事終了していたのに。

また、バーニーは何を思ったかいきなり古くからのメンバーたちを全員解雇して新しく若手たちを仲間に引き入れる。

これも意味不明。

新人を育成したいのなら古株の仲間たちと協力しあった方がどう考えたって有利だし、実際終盤は古参とルーキーたちがともに手をとりあって敵と戦う展開になる。




最初からそうしろよ、と^_^;

主人公がわざわざ仲間同士の諍いの原因を作ってどーする。

だからもはや説得力もへったくれもないんですが、まぁそういうスットコなとこも含めてオッサンたちが中坊みたいに後輩に向かってパイセンヅラしたり、メンバー同士でキャッキャキャッキャと仲睦まじい様子を愛でればよろしいかと。


出会ったらまずナイフで挨拶


バーニーとクリスマス(ジェイソン・ステイサム)のアツアツぶりは露骨すぎるほどだし、ラストではシュワルツェネッガーとジェット・リーのカップル成立という、誰を喜ばすためにやってるんだか皆目不明な展開にまで悪ノリが暴走。

ハリソン・フォードが操縦するヘリにシュワちゃんとジェット・リーが乗り込んで敵の軍隊と銃撃戦、しかもその敵を率いるのはメル・ギブソンという夢のコラボ。

また、スタローン相手に躁病のように喋り倒すアントニオ・バンデラスというのも意外。

 


80年代に『グーニーズ』でフラッテリー一家のゴツい兄貴や『ダイ・ハード』では「ヴェトナムを思いだすぜ!」と言いながらヘリごと爆死するFBI捜査官などを演じていたロバート・ダヴィがワンシーンだけ出てきてすぐ退場。

バーニーが若手を率いるところなんかは、ちょっとジャッキーの『香港国際警察/NEW POLICE STORY』を思い浮かべたりした。

中でも新メンバーの紅一点ルナを演じる格闘家のロンダ・ラウジーは90年代にアクション映画などでよくヒロインを演じていたディナ・メイヤーにちょっと雰囲気が似ていて、カワイイ顔してムッチムチの太ももとか吊るされて腋見せながらの泣きそうな表情とか最高。

 


もうちょっと彼女の格闘シーンをじっくり見たかったけど。

それとこの作品の最大の不満材料は、年齢制限をはずしたためにヴァイオレンス・シーンがゼロで血しぶきも上がらず敵がミンチになることもなく撃たれたら倒れるだけという、アクション物としてのカタルシスが大いに不足気味なところ。

1作目の『ランボー 最後の戦場』みたいな揺れまくりでブレブレの映像は好みではないけれど、どうせならシュワちゃんの『コマンドー』での腕チョンパや人間ボイラーみたいなアクション映画ならではの面白残酷描写をやってもらいたかった。

2作目のヴァン・ダムとのタイマンの決着もそうだったけど、クライマックスでのメルギブとの闘いはもっともっと燃えさせてくれてよかったと思うし。




あっちゃり撃たれて終わり、ってもったいないなぁ。

だって、ランボーVSマッドマックス(ロッキーVSリーサル・ウェポンでも可)だよw

不敵な面構えのメル・ギブソンが最後に倒されるところはいろんな意味で感慨深いものになったはず。

その辺があまりにあっさりめなんだよな。

そりゃ夢の共演が実現しただけでも素晴らしいことなんですが。

もうこのシリーズはとにかくこういうかつてのアクションスターをキャスティングしてくること“だけ”が目的で、中身の方は二の次三の次。

新春かくし芸大会」の大御所同士の共演、みたいな。

次こそセガール出してほしいなぁ。すでに『マチェーテ』で悪役はやってるけどあれも決着に不満が残ったんで、スタローンとのガチバトルを熱烈希望。

それとニコラス・ケイジもね。



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