3個目の夢
何処かの草原にたどり着いた。
しかし、未だシェリルは錯乱というか、混乱している。
「駄目!駄目だ!!ああぁぁぁっ!!!」
「シェリル!落ち着け!」
どんなに揺さぶっても、声をかけても聞いてくれない。
仕方ない・・・。
「ごめんっ!」
俺は思いっきりシェリルの頬を殴った。
「・・・っ・・・え?あ・・・あれ?ここは?」
「シェリル、何も覚えていないのか?」
「・・・すみません。何も・・・。」
「・・・仕方ない・・・。いいよ。気にしないで。それと、殴っちゃってごめんな。シェリルに落ち着いて欲しかったから。」
「いえ、構いません。ありがとうございました、マスター。」
何処かでシェリルを休ませよう。まだ息が上がっているようだし。
しかし、ここは草原。何も見当たらない。
休むとしたら、近くに見えるあの木の下がいいだろう。
「シェリル、あの木の下まで我慢な。そしたらちょっと休もう。」
頷いたシェリルの手を引いて俺は木の下まで向った。
離れて見ると小さかった木は、近くまで行くと案外大きかった。
シェリルを木を背にして座らせると、俺も一息をついた。
そういえば、記憶の破片がどうこう言われてたけれど、結局俺には何も戻ってこなかったな・・・。
ふぅ・・・。と一息ついていると、少し眠気に襲われた。
・・・結構動いてるもんな。俺も少し・・・休もう。
甘い香り。何か甘い香りがした。
それと、何か優しい手つきで誰かが俺の髪を撫でている。
「・・・?」
目を覚ますと、知らない天井。知らない部屋。
ふかふかのベッドで俺は寝ていた。
「起きましたか?」
ふいに横から聞こえてきた声。
そちらに振り向けば、ダークブルーの短髪が印象的な優しい顔をした青年がいた。
彼の腕はこちらに伸びて、俺の髪を撫でていた。
ああ、優しい手つきは彼だったのか・・・。
「貴方は?」
「俺はウェルダー。2人ともあんな所で寝てるから心配で俺の家に連れてきたんだ。友人ならお隣のベッドだよ。まだ起きないみたいです。」
指を刺された隣のベッドでは、シェリルがまだ眠っていた。
ずいぶんと眠りが深いようだ。
「ちなみに、俺たちどれくらい寝て・・・ました?」
「うん?そうですね・・・8時間?」
そう言いながらウェルダーさんはキッチンの方へと消えていった。
しかし8時間も眠っていたとは・・・。
それだけ俺たちは疲れていたっていうことだな。
シェリルは俺よりも疲れているの・・・か?何か能力的なもの使っていたみたいだし、それを使うことで体力削っているのかも・・・。
この様子だと、しばらく起きそうにはないな。
「さて、お腹すいてませんか?よかったら、俺の料理でよろしければ食べませんか?」
テーブルに並べられたお袋料理。すごいおいしそう。
もちろん断ることなく、おいしくいただきました。
「そういえば、お名前は?」
「あ、俺シン!本名じゃないんだけど・・・。あっちで眠ってるのはシェリルっていうんだ。」
「シンさんとシェリルさんですね。お2人だどうしてこの空間に?」
俺、何も言っていないのに・・・。
「俺たちが別の空間から来たって、どうして分かったんですか?」
俺がそう言うと、ウェルダーさんはくすりと笑って、シェリルを指差した。
シェリルが一体どうしたというんだろう。
「俺も彼と同じ神の化身。このUGでは1つの空間に神の化身が一体以上存在することは極めて少ない。存在するとすれば、以前の空間でなんらかの以上があり飛び越えてきたということ。また、もうひとつ。今回はこちらの手法で探らせてもらいました。」
そう言い、ウェルダーさんは眠っているシェリルに近づき、胸元に手を突っ込み何か円盤のようなものがついた首飾りを引き出した。
そして、自分の首にも下げていた首飾りを掴み、こちらに見せた。
「俺たち神の化身は、一体に一つ、『シネマティック・メモリー』という、この円盤状のものがあります。俺たちは互いにこの円盤をどんなに遠くに離れていてもリンクしている状態なので、何処にいようが他の仲間たちの現状が分かります。」
「・・・ん?ってことは、神の化身って、まだまだたくさんいるの?」
「はい。空間の数だけ存在します。流石に俺も一体何人いるのかはよくわかりませんが。」
そういい、シェリルに首飾りを戻すと、俺の向かい側の椅子に座り、俺に青色の小さなビー玉のようなものを渡してきた。
「これは?」
「シェリルが休止状態にあるので、私がその間シェリルの代わりをさせていただきますね。指に当ててください。指輪になりますので。仮契約になりますので。」
「・・・仮契約・・・。シェリルは契約とかしてなかったよ?」
「・・・おかしいですね。シネマティック・メモリーには契約した状態になっているのですが・・・契約の口付けは?」
・・・・・・ん?今ウェルダーはなんて言ったのかな・・・?
契約の・・・なんだって?
いやいやいや・・・そんなはずはない。
「してないのですか?口付け。」
「うぉぉぉぉおおおおおぉぉぉい!!してねぇよ!そんなんしてねぇぇぇええ!!俺ホモじゃないからぁぁぁぁああああ!!!!」
全力で否定させていただきます!!!
俺ホモなんかじゃないからね!
「おや?安心なさってください。シェリルは両性具の神の化身です。お望みならば、女性の体にも。」
「そういう問題でもねぇよ。」
ウェルダーさん。貴方の今の発言は素なんですか?
だとしたら貴方は空気を読まないタイプの人間ですね。
「・・・異常なまでの消耗状態。契約の状態が不完全。これは・・・彼に報告したほうがいいですね。」
ウェルダーは目を瞑ると、何かと交信しているかのように、小さく呟いている。
俺がそれをしばらく眺めていると、終わったのか、目を開けた。
それと同時に、玄関の扉が物凄い音を立てて吹き飛ばされた。
そこに立っていたのは、スーツを着た黒い人影と、ゾンビみたいな人たち。
なんだアレ・・・!!!気色悪ッ!!
「おやおや。お早い到着ですね。これは厄介だ。」
ウェルダーは彼らに背を向けてベッドにいるシェリルを抱えると、片手で俺の手を掴み、窓ガラスを突き破り外へ出た。
「あれは?!」
「スーツの方はシェリルを狙っているエネミー。醜い彼らはUGに長く居座り、回収されなかった魂・・・貴方の魂を狙っている。」
「俺とシェリルを?!」
「詳しい話は後です。俺の手を決して離さないで。そして、恐れないで。さぁ、走って!」
背後から俺たちを追いかけてくる奴らから視線を前方へ向け、走り出すと、なにやら違和感。
地面が、ないような。
ゆっくりと視線を足元へと向けると、そこには広がる森。
「うっそぉぉおお!!俺空歩いてるし!!!なんで?!」
「俺が飛んでいるからです。さ、森の中に穴が開いているところがあるでしょう?あそこまで走って!そこから撒きますからね!」
「お、おう!」
確かにウェルダーを見ればいつの間にか背中に黒い6翼を生やして飛んでいた。
俺は、ウェルダーの手を決して離さず、穴目掛けて走っていった。
穴の中に入れば、ウェルダーは一気に加速して森の奥深くに入っていく。
そして、指を鳴らすと、目の前に広がる木々たちが小さな入口を作る。
その中に飛び込み数メートル進むと、広々とした空間にでた。
そこは、白い石で作られた、大きな神殿のようだった。
足音もなく降りるウェルダーに続き、俺も静かに着地する。
上から入ってきたみたいだが、入口は何処にも見当たらなかった。
「入口は封じています。奴らはしばらく俺たちを見つけることはできないでしょう。」
「そうか・・・。」
ウェルダーはシェリルを近くに降ろすと、俺にさっきの話しの続きをはじめた。
「貴方はこの世界・・・UGに来てからまだ何も詳しい説明は聞いていないのですね。本来なら、死に神の助手が受付で説明をしてくれているはずなのですが・・・貴方には記憶が一切ないようですね。もしかしたら、死亡直後に何者かに襲われて、記憶の鎖がバラバラになり飛び散ってしまったのかもしれません。」
「襲われた・・・のかな・・・。」
「ええ。恐らく。本来人の魂とは死亡すると、UGの世界にやってきます。しかしUGの世界に来てすぐ受付に向うわけではなく、49日間生前の世界とUGの間を彷徨います。そして、49日が過ぎた頃に、助手のもとへ向う電車が来て、助手のもとで受付をし、死に神から死亡証明書を受け取り旅立つとされているのですが・・・。」
「そうなんですよ。実は俺も彼の魂を無害で回収できずに・・・本当に申し訳ございません。」
「いえいえ・・・って、え?」
突然2人の会話にシェリル以外の声が入ってきた。
驚いて振り返ると、俺たちの背後に、バーテンダーのような格好をした金髪の男性が立っていた。
片手に分厚い本。胸ポケットに異様な数の万年筆。頬に薔薇のフェイスペイント。
果たしてこの人は・・・?
「えっと・・・どちら様ですか?」
「ああ、申し訳ございません。俺は死に神の助手で、カイトと申します。死に神の助手ですが、俺は天使なので、勘違いをなさらないように。」
そう言って彼、カイトは頭を深々と下げた。
しかし、未だシェリルは錯乱というか、混乱している。
「駄目!駄目だ!!ああぁぁぁっ!!!」
「シェリル!落ち着け!」
どんなに揺さぶっても、声をかけても聞いてくれない。
仕方ない・・・。
「ごめんっ!」
俺は思いっきりシェリルの頬を殴った。
「・・・っ・・・え?あ・・・あれ?ここは?」
「シェリル、何も覚えていないのか?」
「・・・すみません。何も・・・。」
「・・・仕方ない・・・。いいよ。気にしないで。それと、殴っちゃってごめんな。シェリルに落ち着いて欲しかったから。」
「いえ、構いません。ありがとうございました、マスター。」
何処かでシェリルを休ませよう。まだ息が上がっているようだし。
しかし、ここは草原。何も見当たらない。
休むとしたら、近くに見えるあの木の下がいいだろう。
「シェリル、あの木の下まで我慢な。そしたらちょっと休もう。」
頷いたシェリルの手を引いて俺は木の下まで向った。
離れて見ると小さかった木は、近くまで行くと案外大きかった。
シェリルを木を背にして座らせると、俺も一息をついた。
そういえば、記憶の破片がどうこう言われてたけれど、結局俺には何も戻ってこなかったな・・・。
ふぅ・・・。と一息ついていると、少し眠気に襲われた。
・・・結構動いてるもんな。俺も少し・・・休もう。
甘い香り。何か甘い香りがした。
それと、何か優しい手つきで誰かが俺の髪を撫でている。
「・・・?」
目を覚ますと、知らない天井。知らない部屋。
ふかふかのベッドで俺は寝ていた。
「起きましたか?」
ふいに横から聞こえてきた声。
そちらに振り向けば、ダークブルーの短髪が印象的な優しい顔をした青年がいた。
彼の腕はこちらに伸びて、俺の髪を撫でていた。
ああ、優しい手つきは彼だったのか・・・。
「貴方は?」
「俺はウェルダー。2人ともあんな所で寝てるから心配で俺の家に連れてきたんだ。友人ならお隣のベッドだよ。まだ起きないみたいです。」
指を刺された隣のベッドでは、シェリルがまだ眠っていた。
ずいぶんと眠りが深いようだ。
「ちなみに、俺たちどれくらい寝て・・・ました?」
「うん?そうですね・・・8時間?」
そう言いながらウェルダーさんはキッチンの方へと消えていった。
しかし8時間も眠っていたとは・・・。
それだけ俺たちは疲れていたっていうことだな。
シェリルは俺よりも疲れているの・・・か?何か能力的なもの使っていたみたいだし、それを使うことで体力削っているのかも・・・。
この様子だと、しばらく起きそうにはないな。
「さて、お腹すいてませんか?よかったら、俺の料理でよろしければ食べませんか?」
テーブルに並べられたお袋料理。すごいおいしそう。
もちろん断ることなく、おいしくいただきました。
「そういえば、お名前は?」
「あ、俺シン!本名じゃないんだけど・・・。あっちで眠ってるのはシェリルっていうんだ。」
「シンさんとシェリルさんですね。お2人だどうしてこの空間に?」
俺、何も言っていないのに・・・。
「俺たちが別の空間から来たって、どうして分かったんですか?」
俺がそう言うと、ウェルダーさんはくすりと笑って、シェリルを指差した。
シェリルが一体どうしたというんだろう。
「俺も彼と同じ神の化身。このUGでは1つの空間に神の化身が一体以上存在することは極めて少ない。存在するとすれば、以前の空間でなんらかの以上があり飛び越えてきたということ。また、もうひとつ。今回はこちらの手法で探らせてもらいました。」
そう言い、ウェルダーさんは眠っているシェリルに近づき、胸元に手を突っ込み何か円盤のようなものがついた首飾りを引き出した。
そして、自分の首にも下げていた首飾りを掴み、こちらに見せた。
「俺たち神の化身は、一体に一つ、『シネマティック・メモリー』という、この円盤状のものがあります。俺たちは互いにこの円盤をどんなに遠くに離れていてもリンクしている状態なので、何処にいようが他の仲間たちの現状が分かります。」
「・・・ん?ってことは、神の化身って、まだまだたくさんいるの?」
「はい。空間の数だけ存在します。流石に俺も一体何人いるのかはよくわかりませんが。」
そういい、シェリルに首飾りを戻すと、俺の向かい側の椅子に座り、俺に青色の小さなビー玉のようなものを渡してきた。
「これは?」
「シェリルが休止状態にあるので、私がその間シェリルの代わりをさせていただきますね。指に当ててください。指輪になりますので。仮契約になりますので。」
「・・・仮契約・・・。シェリルは契約とかしてなかったよ?」
「・・・おかしいですね。シネマティック・メモリーには契約した状態になっているのですが・・・契約の口付けは?」
・・・・・・ん?今ウェルダーはなんて言ったのかな・・・?
契約の・・・なんだって?
いやいやいや・・・そんなはずはない。
「してないのですか?口付け。」
「うぉぉぉぉおおおおおぉぉぉい!!してねぇよ!そんなんしてねぇぇぇええ!!俺ホモじゃないからぁぁぁぁああああ!!!!」
全力で否定させていただきます!!!
俺ホモなんかじゃないからね!
「おや?安心なさってください。シェリルは両性具の神の化身です。お望みならば、女性の体にも。」
「そういう問題でもねぇよ。」
ウェルダーさん。貴方の今の発言は素なんですか?
だとしたら貴方は空気を読まないタイプの人間ですね。
「・・・異常なまでの消耗状態。契約の状態が不完全。これは・・・彼に報告したほうがいいですね。」
ウェルダーは目を瞑ると、何かと交信しているかのように、小さく呟いている。
俺がそれをしばらく眺めていると、終わったのか、目を開けた。
それと同時に、玄関の扉が物凄い音を立てて吹き飛ばされた。
そこに立っていたのは、スーツを着た黒い人影と、ゾンビみたいな人たち。
なんだアレ・・・!!!気色悪ッ!!
「おやおや。お早い到着ですね。これは厄介だ。」
ウェルダーは彼らに背を向けてベッドにいるシェリルを抱えると、片手で俺の手を掴み、窓ガラスを突き破り外へ出た。
「あれは?!」
「スーツの方はシェリルを狙っているエネミー。醜い彼らはUGに長く居座り、回収されなかった魂・・・貴方の魂を狙っている。」
「俺とシェリルを?!」
「詳しい話は後です。俺の手を決して離さないで。そして、恐れないで。さぁ、走って!」
背後から俺たちを追いかけてくる奴らから視線を前方へ向け、走り出すと、なにやら違和感。
地面が、ないような。
ゆっくりと視線を足元へと向けると、そこには広がる森。
「うっそぉぉおお!!俺空歩いてるし!!!なんで?!」
「俺が飛んでいるからです。さ、森の中に穴が開いているところがあるでしょう?あそこまで走って!そこから撒きますからね!」
「お、おう!」
確かにウェルダーを見ればいつの間にか背中に黒い6翼を生やして飛んでいた。
俺は、ウェルダーの手を決して離さず、穴目掛けて走っていった。
穴の中に入れば、ウェルダーは一気に加速して森の奥深くに入っていく。
そして、指を鳴らすと、目の前に広がる木々たちが小さな入口を作る。
その中に飛び込み数メートル進むと、広々とした空間にでた。
そこは、白い石で作られた、大きな神殿のようだった。
足音もなく降りるウェルダーに続き、俺も静かに着地する。
上から入ってきたみたいだが、入口は何処にも見当たらなかった。
「入口は封じています。奴らはしばらく俺たちを見つけることはできないでしょう。」
「そうか・・・。」
ウェルダーはシェリルを近くに降ろすと、俺にさっきの話しの続きをはじめた。
「貴方はこの世界・・・UGに来てからまだ何も詳しい説明は聞いていないのですね。本来なら、死に神の助手が受付で説明をしてくれているはずなのですが・・・貴方には記憶が一切ないようですね。もしかしたら、死亡直後に何者かに襲われて、記憶の鎖がバラバラになり飛び散ってしまったのかもしれません。」
「襲われた・・・のかな・・・。」
「ええ。恐らく。本来人の魂とは死亡すると、UGの世界にやってきます。しかしUGの世界に来てすぐ受付に向うわけではなく、49日間生前の世界とUGの間を彷徨います。そして、49日が過ぎた頃に、助手のもとへ向う電車が来て、助手のもとで受付をし、死に神から死亡証明書を受け取り旅立つとされているのですが・・・。」
「そうなんですよ。実は俺も彼の魂を無害で回収できずに・・・本当に申し訳ございません。」
「いえいえ・・・って、え?」
突然2人の会話にシェリル以外の声が入ってきた。
驚いて振り返ると、俺たちの背後に、バーテンダーのような格好をした金髪の男性が立っていた。
片手に分厚い本。胸ポケットに異様な数の万年筆。頬に薔薇のフェイスペイント。
果たしてこの人は・・・?
「えっと・・・どちら様ですか?」
「ああ、申し訳ございません。俺は死に神の助手で、カイトと申します。死に神の助手ですが、俺は天使なので、勘違いをなさらないように。」
そう言って彼、カイトは頭を深々と下げた。
2個目の夢 3
真っ暗な空間の中、ぼんやりと浮かび上がるのは、地下牢。
地下牢の中には両手足を拘束された執事。
入口には母親と父親、そして少女。
『どうして!?ねぇ!!お母様!お父様!』
『黙っていなさい!アウラ!』
『アウラ、彼にはここで長い休暇を与えるんだよ?決して悪いことじゃないんだ。』
『違うよ!これは悪いことだよ!!』
いつまでたっても2人の言うことに納得いかないアウラを父親は無理矢理お屋敷の中へと連れ戻す。
地下牢に反響するアウラの悲鳴がとても痛々しかった。
残った母親は、地下牢に鍵をかけ、地上へと出ると、地下への入口を閉じ、外からバルブを回した。
回されたバルブは、地下牢に水を注入するためのもの。
回されたのと同時に、地下牢には水が溜まり始める。
『・・・さようなら・・・。』
溜まっていく水を見ながら執事は微笑んでいた。
まるで満足したかのように。
でも、どこか悲しげで。
・・・・・・何処か悲しげ?
そういえば、この表情・・・。
「わかった。」
突然口を開いた俺に、2人が何が分かったというのだ。というような眼差しでこちらを見ている。
それもそのはずなのだが・・・。
「彼女の見ているこの悪夢。これは、アウラと、その両親。そして、クリスさん。貴方たちが過ごしてきた時間じゃないか?」
俺がそう言うと、クリスさんは固まっていた。
ひらり。ひらり。
視界に入る黒。
カラスの羽?いや、カラスの羽とは少し違う。かなりふわふわしている。
「正解です。名も無き少年。貴方にはネウロとしてUGで活躍して欲しい限りですね・・・。」
そう言いながら空から黒いローブを纏った黒い天使が舞い降りた。
否、悪魔?
「アンタは・・・?」
「私は死に神。さて、クリスさん。貴方の記憶の鎖はこれで繋がった。もう彼女の悪夢に苦しまなくて住むんですよ。」
死に神は宙で不思議な文字を1つ浮かべると、ソレをクリスさんの額に押し付けると、クリスさんが目を見開いてしばらく動かずにいたが、何故か肩を震わせて瞳に涙をうっすらと溜めていた。
額から手を話し、死に神はそのままローブの袖から卒業証書のように丸められたものを取り出した。
そしてそれをクリスさんへ差し出した。
「これは・・・?」
「彼女が貴方を待っていますよ。」
そう言って死に神が俺たちの背後を指差した。
振り返ってみると、西洋人形の彼女・・・アウラが、クリスと同じ卒業証書のようなものを持って立っていた。
「・・・お嬢様!」
「クリス。ごめんなさいね。私1人の力では、バラバラに成ってしまった貴方の記憶の鎖を修復することが出来なかったの。だから、こんなにも時間が掛かってしまって、貴方を天屍にしてしまった。許されることではないのは分かっているわ・・・。」
「そんなこと気にしていません!私はお嬢様のお傍にいられるのなら、それで構いません!」
クリスはアウラを抱きしめてそう言う。
アウラはやはり納得できないという表情。
「私は、お嬢様が、奥様と旦那様に良くされていないのを見ていて、大変心が苦しゅうございました。私は執事という身分。お2人に歯向かうことの出来ないということは重々承知で歯向かい、お嬢様を1人にしてしまったことが大変気にかかっておりました。」
「構わないわ。こうしてまた、貴方といられるのだから。」
「お嬢様・・・。」
「今度は身分も親も関係ないわ。2人で新しい時間を作りましょう。」
「はい・・・。」
感動的なシーン。それに思わず見入っていた俺たちの前に再び死に神が立ちはだかる。
空気読めよ。
と、思ったが、死に神的にはそうも言っていられないようだ。
「お二方。申し訳ございませんが、もうお二方の時間が来たようです。葬送させてもらいます。これから黄昏の聖域という場所へ送ります。向こうへ着きましたらその死亡証明書を正門にいる天使に渡してください。すぐに手続きが受理されるでしょう。」
それだけ言うと、死に神は手をぐっと握り締め、ゆっくりと開いた。
開いた手の平から青薔薇が現れ、それにゆっくりと息を吹きかけた。
ひらりひらりと花びらは宙を舞い、床に落ちると、クリスさんとアウラを囲むように円を描いて、輝きだした。
「ありがとう、シン、シェリル。君たちのおかげだ。」
「貴方たちのおかげで私たち、逝けるのよ。また、会いましょう。」
輝きが一層増し、辺りが見えなくなった。
眩しくて目を瞑っていたが、輝きが落ち着いたと思い開くと、もう2人の姿は無くなっていた。
「・・・消えた。」
「ええ。黄昏の聖域に向わせました。新たな魂の転生のために。」
死に神がそう言う。
魂の転生?なんだそれ・・・。それじゃあまるで・・・。
「まるで俺たちが死んでいるような・・・。」
「はい。貴方がたは死亡なさっている魂ですよ。」
はっきりといわれた言葉に俺は愕然とした。
俺、死んでるのか・・・?
でも、記憶がないからそんなこと全然気がつかなかった。
「貴方がたにも死亡証明書を渡さなければいけないのですが、貴方は記憶不十分。まだ渡せる状態ではない。そちらは・・・ああ、神の化身の1人ですね。貴方は死亡証明書よりも先に記憶の鎖の修復と使命を果たすこと。そして、覚醒が必要ですね。・・・あ、そうだ!忘れないうちに・・・。先程執事の彼が貴方の記憶の破片を落としていかれましたよ。」
「俺の?!」
俺の記憶の破片。それがあれば俺のことが少しでも分かるのかもしれない!
なんてありがたいことだろう。
「ええ。では、準備はいいですか?」
「え?」
「人の記憶の破片や記憶・・・クロニクルメモリーズを再生・取り込むことができるのは私だけですから。」
よくわからないが・・・まぁ、取り入れてもらえるならそれでいい。
俺に記憶が戻るんだ。
わくわくとして死に神に記憶を入れてもらえるのを待っていると、何故かシェリルが俺の腕を引いた。
どうしたのか分からないけど、物凄く顔色が優れない。
「シェリル?」
「駄目。」
「え?何が?」
「駄目。駄目・・・駄目!!」
叫びだしたシェリルに俺はどうすればいいのか分からなかった。
とりあえず、落ち着かせようか。
そう思って背中に触れた時だった。
「?!」
シェリルの体が発光し、俺までもその光りで包み込んだ。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!??」
「・・・ちっ。俺が死に神じゃないことがばれていたのか。」
1人取り残された死に神がそう呟いた。否、偽りの死に神だが。
その背後にいた別の人影がおかしそうにクスクスと笑う。
その笑い声に偽りの死に神は振り返る。
「おやおや、それで私になりきったつもりですか?それにしても、葬送予定者をどうして奪ったのか・・・教えていただきたいですね。」
黄緑色の長髪をなびかせながら近寄る死に神は大鎌を片手に近寄ってきた。
偽りの死に神も、双剣を手にし、死に神を睨む。
互いに加速し始め、誰もいない空間で鋼の音が響いた。
地下牢の中には両手足を拘束された執事。
入口には母親と父親、そして少女。
『どうして!?ねぇ!!お母様!お父様!』
『黙っていなさい!アウラ!』
『アウラ、彼にはここで長い休暇を与えるんだよ?決して悪いことじゃないんだ。』
『違うよ!これは悪いことだよ!!』
いつまでたっても2人の言うことに納得いかないアウラを父親は無理矢理お屋敷の中へと連れ戻す。
地下牢に反響するアウラの悲鳴がとても痛々しかった。
残った母親は、地下牢に鍵をかけ、地上へと出ると、地下への入口を閉じ、外からバルブを回した。
回されたバルブは、地下牢に水を注入するためのもの。
回されたのと同時に、地下牢には水が溜まり始める。
『・・・さようなら・・・。』
溜まっていく水を見ながら執事は微笑んでいた。
まるで満足したかのように。
でも、どこか悲しげで。
・・・・・・何処か悲しげ?
そういえば、この表情・・・。
「わかった。」
突然口を開いた俺に、2人が何が分かったというのだ。というような眼差しでこちらを見ている。
それもそのはずなのだが・・・。
「彼女の見ているこの悪夢。これは、アウラと、その両親。そして、クリスさん。貴方たちが過ごしてきた時間じゃないか?」
俺がそう言うと、クリスさんは固まっていた。
ひらり。ひらり。
視界に入る黒。
カラスの羽?いや、カラスの羽とは少し違う。かなりふわふわしている。
「正解です。名も無き少年。貴方にはネウロとしてUGで活躍して欲しい限りですね・・・。」
そう言いながら空から黒いローブを纏った黒い天使が舞い降りた。
否、悪魔?
「アンタは・・・?」
「私は死に神。さて、クリスさん。貴方の記憶の鎖はこれで繋がった。もう彼女の悪夢に苦しまなくて住むんですよ。」
死に神は宙で不思議な文字を1つ浮かべると、ソレをクリスさんの額に押し付けると、クリスさんが目を見開いてしばらく動かずにいたが、何故か肩を震わせて瞳に涙をうっすらと溜めていた。
額から手を話し、死に神はそのままローブの袖から卒業証書のように丸められたものを取り出した。
そしてそれをクリスさんへ差し出した。
「これは・・・?」
「彼女が貴方を待っていますよ。」
そう言って死に神が俺たちの背後を指差した。
振り返ってみると、西洋人形の彼女・・・アウラが、クリスと同じ卒業証書のようなものを持って立っていた。
「・・・お嬢様!」
「クリス。ごめんなさいね。私1人の力では、バラバラに成ってしまった貴方の記憶の鎖を修復することが出来なかったの。だから、こんなにも時間が掛かってしまって、貴方を天屍にしてしまった。許されることではないのは分かっているわ・・・。」
「そんなこと気にしていません!私はお嬢様のお傍にいられるのなら、それで構いません!」
クリスはアウラを抱きしめてそう言う。
アウラはやはり納得できないという表情。
「私は、お嬢様が、奥様と旦那様に良くされていないのを見ていて、大変心が苦しゅうございました。私は執事という身分。お2人に歯向かうことの出来ないということは重々承知で歯向かい、お嬢様を1人にしてしまったことが大変気にかかっておりました。」
「構わないわ。こうしてまた、貴方といられるのだから。」
「お嬢様・・・。」
「今度は身分も親も関係ないわ。2人で新しい時間を作りましょう。」
「はい・・・。」
感動的なシーン。それに思わず見入っていた俺たちの前に再び死に神が立ちはだかる。
空気読めよ。
と、思ったが、死に神的にはそうも言っていられないようだ。
「お二方。申し訳ございませんが、もうお二方の時間が来たようです。葬送させてもらいます。これから黄昏の聖域という場所へ送ります。向こうへ着きましたらその死亡証明書を正門にいる天使に渡してください。すぐに手続きが受理されるでしょう。」
それだけ言うと、死に神は手をぐっと握り締め、ゆっくりと開いた。
開いた手の平から青薔薇が現れ、それにゆっくりと息を吹きかけた。
ひらりひらりと花びらは宙を舞い、床に落ちると、クリスさんとアウラを囲むように円を描いて、輝きだした。
「ありがとう、シン、シェリル。君たちのおかげだ。」
「貴方たちのおかげで私たち、逝けるのよ。また、会いましょう。」
輝きが一層増し、辺りが見えなくなった。
眩しくて目を瞑っていたが、輝きが落ち着いたと思い開くと、もう2人の姿は無くなっていた。
「・・・消えた。」
「ええ。黄昏の聖域に向わせました。新たな魂の転生のために。」
死に神がそう言う。
魂の転生?なんだそれ・・・。それじゃあまるで・・・。
「まるで俺たちが死んでいるような・・・。」
「はい。貴方がたは死亡なさっている魂ですよ。」
はっきりといわれた言葉に俺は愕然とした。
俺、死んでるのか・・・?
でも、記憶がないからそんなこと全然気がつかなかった。
「貴方がたにも死亡証明書を渡さなければいけないのですが、貴方は記憶不十分。まだ渡せる状態ではない。そちらは・・・ああ、神の化身の1人ですね。貴方は死亡証明書よりも先に記憶の鎖の修復と使命を果たすこと。そして、覚醒が必要ですね。・・・あ、そうだ!忘れないうちに・・・。先程執事の彼が貴方の記憶の破片を落としていかれましたよ。」
「俺の?!」
俺の記憶の破片。それがあれば俺のことが少しでも分かるのかもしれない!
なんてありがたいことだろう。
「ええ。では、準備はいいですか?」
「え?」
「人の記憶の破片や記憶・・・クロニクルメモリーズを再生・取り込むことができるのは私だけですから。」
よくわからないが・・・まぁ、取り入れてもらえるならそれでいい。
俺に記憶が戻るんだ。
わくわくとして死に神に記憶を入れてもらえるのを待っていると、何故かシェリルが俺の腕を引いた。
どうしたのか分からないけど、物凄く顔色が優れない。
「シェリル?」
「駄目。」
「え?何が?」
「駄目。駄目・・・駄目!!」
叫びだしたシェリルに俺はどうすればいいのか分からなかった。
とりあえず、落ち着かせようか。
そう思って背中に触れた時だった。
「?!」
シェリルの体が発光し、俺までもその光りで包み込んだ。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!??」
「・・・ちっ。俺が死に神じゃないことがばれていたのか。」
1人取り残された死に神がそう呟いた。否、偽りの死に神だが。
その背後にいた別の人影がおかしそうにクスクスと笑う。
その笑い声に偽りの死に神は振り返る。
「おやおや、それで私になりきったつもりですか?それにしても、葬送予定者をどうして奪ったのか・・・教えていただきたいですね。」
黄緑色の長髪をなびかせながら近寄る死に神は大鎌を片手に近寄ってきた。
偽りの死に神も、双剣を手にし、死に神を睨む。
互いに加速し始め、誰もいない空間で鋼の音が響いた。
2個目の夢 2
「こちらです。」
そう言ってクリスさんに案内されたのは彼女の元ではなく、お客を接待するための客室。
豪華なテーブルにお菓子と紅茶が用意されていた。
俺たちが椅子に腰掛けたのを確認すると、すぐに紅茶の茶葉をポットに入れて、用意を始める。
手際がいいのはいいとは思うが・・・。
「・・・あの、彼女は・・・?」
「彼女、ですか。」
クリスさんは何処か悲しそうな表情で俯き、少し何か考えていたようだったが、すぐに笑顔に戻してこちらにやってくると、ティーカップに紅茶を注いだ。
「彼女は、ここにいますよ。」
「え?」
何処に?明らかに今テーブルを囲んでいるのは俺とシェリルとクリスさんだけ。
部屋の何処にも俺たち以外の姿は見えない。
「ふふっ。そんなに彼女に会ってみたいのですね。」
「だって・・・彼女が俺たちをわざわざ招待してくれたんだろう?」
「・・・では、彼女にご挨拶してくださいますか?彼女も大変喜ぶと思います。」
「勿論!」
そう返事を返すと、紅茶を淹れ終わったクリスさんは部屋の隅にあったカーテンを開いた。
しかし、それはカーテンではなく、天蓋だったようで、中にふわふわとしたクッションがいくらか見える。
「どうぞこちらへ。」
俺とシェリルはクリスが開けた天蓋の前まで向った。
「・・・彼女って・・・。」
天蓋の中を見て驚いた。
可愛らしい椅子に腰掛けていたのは、明らかに西洋人形。
でも、不思議なことに何かが伝わってくる。
この人形は・・・生きている。
「彼女の名前はアウラ。この世界の悪夢を生み出している張本人。」
「悪夢・・・?」
恐らく、そのことを効かなければ俺たちはまだ幸せだったのかもしれない。
「ええ。ここに呼び寄せられた者は、二度とこの世界から出ることが出来ないとされています。彼女、アウラの悪夢から抜け出せず、一生無限地獄を味わうのです。」
クリスが言い切ると同時にアウラが物凄い速さで天蓋の中ごと何処か遠くへと遠ざかっていく。
「ああ、彼女の悪夢が始まった・・・無限地獄がまた新たな犠牲を生み出す。」
俺たちの隣に残ってしまったクリスさん。
アウラと離れたとたんに彼の体に変化が起きていた。
整った綺麗な顔には、無数の青い刺青のようなものが広がり、それがまるで、花を咲かせているようになっていく。
肌の色は悪くなり、下唇に青色の口紅が塗られたようになった。
そして、綺麗な青とも緑ともいえない瞳に若干の黄色が混じった。
これは一体・・・?
「可哀想なクリス。貴方は天屍になってしまったのですね。」
シェリルがそう言った。
それが一体どういったことなのか分からなかったが、クリスさんは静かに頷いた。
「天屍って?」
「・・・天屍とは、私みたいな者のことです。UGに来て、彼女の悪夢に迷い込んでからずっと彷徨い続けている内に、生きることも死ぬこと許されない・・・表現が難しいですが、簡単に言うと、死んでも死ねない状態になってしまった者をUGでは天屍と呼びます。私は、もう彼女のそばにいないと、人型を保てないのです。」
「だから、こんな姿に?」
「ええ。彼女の力で、辛うじて私はここで生きながらえているのです。彼が来るのを待ち続けているのです。」
「彼?」
彼女だとか彼だとか。どうしてこう曖昧な表現ばかりするのだろう。
でも、彼って・・・?何故だろう、彼を俺は知っている気がする。
名前も姿も知らないのに、ただ、「彼」という言葉だけで。
「シン。とにかく今はこの悪夢から脱出することを考えないと、私たちはここから先に進むことは出来ませんし、このままでは彼女のおもちゃになってしまいますよ。」
「ああ、そうだな。・・・ほら、クリスさん。行こう。」
手を差し伸べる。
クリスさんはその手を不思議そうに見つめながら、恐る恐る俺の顔を見る。
「ありがとう。」
俺たちはクリスさんを率いて、彼女の悪夢の中を進んだ。
まず、最初に見つけた扉を開けると、そこは暖かな面影の残るお屋敷の一室。
影のような人影が楽しそうにしている。
父親と母親、そして小さな少女。
傍らには1人の執事が。
次の扉を開けると、父親と誰か客人が話しているようだ。
明かりもあまり頼りにならない室内でひそやかに。
「聞き取れないな・・・。」
「彼らはずっと昔の思いの香。今では聞き取れるわけもありません。ですが、マスターのためとあれば、ノイズを取り除いてみますが。」
「シェリル。どうして君はそんなことが出来るの?」
「私は神の化身ですから。」
なんだか納得いかない答えを返された。
『セーフティ解除。幻影雑音発動。』
やっぱり、この機械的な声を発しているときのシェリルは様子がおかしい。
・・・なんだろう、なんだか引っかかる。
1人そう考えていると、終わったのか、シェリルは正気に戻り、ノイズを取り除いた人影の声を再生した。
『どうして、あの子は・・・。』
『仕方ないですよ。貴方様は職務に追われ、奥様は奥様で社交期には夜会に。お断りすることもできませんし。』
『・・・全てあいつが悪いんだ。』
『まさか、また後始末を?』
『アウラのためだ・・・。』
「今のは・・・?」
「人影の父親と知り合いのやり取りの一部です。これ以上は拾いきれませんでした。」
「後始末って・・・何のことでしょうね・・・。」
クリスの言う通り、後始末とは一体何のことなのか。
これだけではよくわからない。
「かなり扉あるけれど・・・これ全部あけてみる?」
「全部・・・まぁ、そうですね。この悪夢と解くためのヒントにはなるでしょう。」
「それじゃあ次はこっち・・・。」
俺は足元にあった扉を開けてみた。
そこから滑り落ち、床に着地すると、今度は庭園。
庭園には執事の人影と少女の人影があった。
『お父様はね、ちっとも遊んでくれないの。』
『お仕事がお忙しいのですよ。お嬢様がもう少しいい子でお待ちになられていれば、きっと遊んでくださいますよ。』
『でも、お父様はいつもそう言って私をほったらかしているのよ。』
『では、お嬢様。私と遊びましょうか。』
『本当?!嬉しい!さ、私のお部屋で遊びましょう!―――!』
どうやらこの少女は父親には遊んでもらえていないようだ。
だからこの執事と遊んでいるときが幸せなのだろう。
次にシェリルが庭園の中にあった扉を開ける。
すると、母親が少女を叩いているシーンだった。
それを必死に止めようとする執事。
『どうしてちゃんとできないの!アウラ!!』
『ごめんなさい!ごめんなさい!!』
『奥様!何も打たなくても!!』
『貴方は黙っていなさい!アウラに気に入られて媚を売っているのか知りませんが、アウラの教育方針を貴方に曲げられては、我が家に泥を塗るも同然!!』
アウラ・・・そうか、この少女はアウラなんだ。
『お母様!お父様!やめて!!―――をいじめないで!』
刹那、俺の頭に少女の悲鳴が響いた。
同時にこのシーンに大きな亀裂が入って辺りは真っ暗になった。
そう言ってクリスさんに案内されたのは彼女の元ではなく、お客を接待するための客室。
豪華なテーブルにお菓子と紅茶が用意されていた。
俺たちが椅子に腰掛けたのを確認すると、すぐに紅茶の茶葉をポットに入れて、用意を始める。
手際がいいのはいいとは思うが・・・。
「・・・あの、彼女は・・・?」
「彼女、ですか。」
クリスさんは何処か悲しそうな表情で俯き、少し何か考えていたようだったが、すぐに笑顔に戻してこちらにやってくると、ティーカップに紅茶を注いだ。
「彼女は、ここにいますよ。」
「え?」
何処に?明らかに今テーブルを囲んでいるのは俺とシェリルとクリスさんだけ。
部屋の何処にも俺たち以外の姿は見えない。
「ふふっ。そんなに彼女に会ってみたいのですね。」
「だって・・・彼女が俺たちをわざわざ招待してくれたんだろう?」
「・・・では、彼女にご挨拶してくださいますか?彼女も大変喜ぶと思います。」
「勿論!」
そう返事を返すと、紅茶を淹れ終わったクリスさんは部屋の隅にあったカーテンを開いた。
しかし、それはカーテンではなく、天蓋だったようで、中にふわふわとしたクッションがいくらか見える。
「どうぞこちらへ。」
俺とシェリルはクリスが開けた天蓋の前まで向った。
「・・・彼女って・・・。」
天蓋の中を見て驚いた。
可愛らしい椅子に腰掛けていたのは、明らかに西洋人形。
でも、不思議なことに何かが伝わってくる。
この人形は・・・生きている。
「彼女の名前はアウラ。この世界の悪夢を生み出している張本人。」
「悪夢・・・?」
恐らく、そのことを効かなければ俺たちはまだ幸せだったのかもしれない。
「ええ。ここに呼び寄せられた者は、二度とこの世界から出ることが出来ないとされています。彼女、アウラの悪夢から抜け出せず、一生無限地獄を味わうのです。」
クリスが言い切ると同時にアウラが物凄い速さで天蓋の中ごと何処か遠くへと遠ざかっていく。
「ああ、彼女の悪夢が始まった・・・無限地獄がまた新たな犠牲を生み出す。」
俺たちの隣に残ってしまったクリスさん。
アウラと離れたとたんに彼の体に変化が起きていた。
整った綺麗な顔には、無数の青い刺青のようなものが広がり、それがまるで、花を咲かせているようになっていく。
肌の色は悪くなり、下唇に青色の口紅が塗られたようになった。
そして、綺麗な青とも緑ともいえない瞳に若干の黄色が混じった。
これは一体・・・?
「可哀想なクリス。貴方は天屍になってしまったのですね。」
シェリルがそう言った。
それが一体どういったことなのか分からなかったが、クリスさんは静かに頷いた。
「天屍って?」
「・・・天屍とは、私みたいな者のことです。UGに来て、彼女の悪夢に迷い込んでからずっと彷徨い続けている内に、生きることも死ぬこと許されない・・・表現が難しいですが、簡単に言うと、死んでも死ねない状態になってしまった者をUGでは天屍と呼びます。私は、もう彼女のそばにいないと、人型を保てないのです。」
「だから、こんな姿に?」
「ええ。彼女の力で、辛うじて私はここで生きながらえているのです。彼が来るのを待ち続けているのです。」
「彼?」
彼女だとか彼だとか。どうしてこう曖昧な表現ばかりするのだろう。
でも、彼って・・・?何故だろう、彼を俺は知っている気がする。
名前も姿も知らないのに、ただ、「彼」という言葉だけで。
「シン。とにかく今はこの悪夢から脱出することを考えないと、私たちはここから先に進むことは出来ませんし、このままでは彼女のおもちゃになってしまいますよ。」
「ああ、そうだな。・・・ほら、クリスさん。行こう。」
手を差し伸べる。
クリスさんはその手を不思議そうに見つめながら、恐る恐る俺の顔を見る。
「ありがとう。」
俺たちはクリスさんを率いて、彼女の悪夢の中を進んだ。
まず、最初に見つけた扉を開けると、そこは暖かな面影の残るお屋敷の一室。
影のような人影が楽しそうにしている。
父親と母親、そして小さな少女。
傍らには1人の執事が。
次の扉を開けると、父親と誰か客人が話しているようだ。
明かりもあまり頼りにならない室内でひそやかに。
「聞き取れないな・・・。」
「彼らはずっと昔の思いの香。今では聞き取れるわけもありません。ですが、マスターのためとあれば、ノイズを取り除いてみますが。」
「シェリル。どうして君はそんなことが出来るの?」
「私は神の化身ですから。」
なんだか納得いかない答えを返された。
『セーフティ解除。幻影雑音発動。』
やっぱり、この機械的な声を発しているときのシェリルは様子がおかしい。
・・・なんだろう、なんだか引っかかる。
1人そう考えていると、終わったのか、シェリルは正気に戻り、ノイズを取り除いた人影の声を再生した。
『どうして、あの子は・・・。』
『仕方ないですよ。貴方様は職務に追われ、奥様は奥様で社交期には夜会に。お断りすることもできませんし。』
『・・・全てあいつが悪いんだ。』
『まさか、また後始末を?』
『アウラのためだ・・・。』
「今のは・・・?」
「人影の父親と知り合いのやり取りの一部です。これ以上は拾いきれませんでした。」
「後始末って・・・何のことでしょうね・・・。」
クリスの言う通り、後始末とは一体何のことなのか。
これだけではよくわからない。
「かなり扉あるけれど・・・これ全部あけてみる?」
「全部・・・まぁ、そうですね。この悪夢と解くためのヒントにはなるでしょう。」
「それじゃあ次はこっち・・・。」
俺は足元にあった扉を開けてみた。
そこから滑り落ち、床に着地すると、今度は庭園。
庭園には執事の人影と少女の人影があった。
『お父様はね、ちっとも遊んでくれないの。』
『お仕事がお忙しいのですよ。お嬢様がもう少しいい子でお待ちになられていれば、きっと遊んでくださいますよ。』
『でも、お父様はいつもそう言って私をほったらかしているのよ。』
『では、お嬢様。私と遊びましょうか。』
『本当?!嬉しい!さ、私のお部屋で遊びましょう!―――!』
どうやらこの少女は父親には遊んでもらえていないようだ。
だからこの執事と遊んでいるときが幸せなのだろう。
次にシェリルが庭園の中にあった扉を開ける。
すると、母親が少女を叩いているシーンだった。
それを必死に止めようとする執事。
『どうしてちゃんとできないの!アウラ!!』
『ごめんなさい!ごめんなさい!!』
『奥様!何も打たなくても!!』
『貴方は黙っていなさい!アウラに気に入られて媚を売っているのか知りませんが、アウラの教育方針を貴方に曲げられては、我が家に泥を塗るも同然!!』
アウラ・・・そうか、この少女はアウラなんだ。
『お母様!お父様!やめて!!―――をいじめないで!』
刹那、俺の頭に少女の悲鳴が響いた。
同時にこのシーンに大きな亀裂が入って辺りは真っ暗になった。