2個目の夢 3 | PLUTO KISS

2個目の夢 3

真っ暗な空間の中、ぼんやりと浮かび上がるのは、地下牢。

地下牢の中には両手足を拘束された執事。

入口には母親と父親、そして少女。

  『どうして!?ねぇ!!お母様!お父様!』

  『黙っていなさい!アウラ!』

  『アウラ、彼にはここで長い休暇を与えるんだよ?決して悪いことじゃないんだ。』

  『違うよ!これは悪いことだよ!!』

いつまでたっても2人の言うことに納得いかないアウラを父親は無理矢理お屋敷の中へと連れ戻す。

地下牢に反響するアウラの悲鳴がとても痛々しかった。

残った母親は、地下牢に鍵をかけ、地上へと出ると、地下への入口を閉じ、外からバルブを回した。

回されたバルブは、地下牢に水を注入するためのもの。

回されたのと同時に、地下牢には水が溜まり始める。


  『・・・さようなら・・・。』


溜まっていく水を見ながら執事は微笑んでいた。

まるで満足したかのように。

でも、どこか悲しげで。

・・・・・・何処か悲しげ?

そういえば、この表情・・・。


「わかった。」

突然口を開いた俺に、2人が何が分かったというのだ。というような眼差しでこちらを見ている。

それもそのはずなのだが・・・。

「彼女の見ているこの悪夢。これは、アウラと、その両親。そして、クリスさん。貴方たちが過ごしてきた時間じゃないか?」

俺がそう言うと、クリスさんは固まっていた。



ひらり。ひらり。


視界に入る黒。

カラスの羽?いや、カラスの羽とは少し違う。かなりふわふわしている。

「正解です。名も無き少年。貴方にはネウロとしてUGで活躍して欲しい限りですね・・・。」

そう言いながら空から黒いローブを纏った黒い天使が舞い降りた。

否、悪魔?

「アンタは・・・?」

「私は死に神。さて、クリスさん。貴方の記憶の鎖はこれで繋がった。もう彼女の悪夢に苦しまなくて住むんですよ。」

死に神は宙で不思議な文字を1つ浮かべると、ソレをクリスさんの額に押し付けると、クリスさんが目を見開いてしばらく動かずにいたが、何故か肩を震わせて瞳に涙をうっすらと溜めていた。

額から手を話し、死に神はそのままローブの袖から卒業証書のように丸められたものを取り出した。

そしてそれをクリスさんへ差し出した。

「これは・・・?」

「彼女が貴方を待っていますよ。」

そう言って死に神が俺たちの背後を指差した。

振り返ってみると、西洋人形の彼女・・・アウラが、クリスと同じ卒業証書のようなものを持って立っていた。

「・・・お嬢様!」

「クリス。ごめんなさいね。私1人の力では、バラバラに成ってしまった貴方の記憶の鎖を修復することが出来なかったの。だから、こんなにも時間が掛かってしまって、貴方を天屍にしてしまった。許されることではないのは分かっているわ・・・。」

「そんなこと気にしていません!私はお嬢様のお傍にいられるのなら、それで構いません!」

クリスはアウラを抱きしめてそう言う。

アウラはやはり納得できないという表情。

「私は、お嬢様が、奥様と旦那様に良くされていないのを見ていて、大変心が苦しゅうございました。私は執事という身分。お2人に歯向かうことの出来ないということは重々承知で歯向かい、お嬢様を1人にしてしまったことが大変気にかかっておりました。」

「構わないわ。こうしてまた、貴方といられるのだから。」

「お嬢様・・・。」

「今度は身分も親も関係ないわ。2人で新しい時間を作りましょう。」

「はい・・・。」

感動的なシーン。それに思わず見入っていた俺たちの前に再び死に神が立ちはだかる。

空気読めよ。

と、思ったが、死に神的にはそうも言っていられないようだ。

「お二方。申し訳ございませんが、もうお二方の時間が来たようです。葬送させてもらいます。これから黄昏の聖域という場所へ送ります。向こうへ着きましたらその死亡証明書を正門にいる天使に渡してください。すぐに手続きが受理されるでしょう。」

それだけ言うと、死に神は手をぐっと握り締め、ゆっくりと開いた。

開いた手の平から青薔薇が現れ、それにゆっくりと息を吹きかけた。

ひらりひらりと花びらは宙を舞い、床に落ちると、クリスさんとアウラを囲むように円を描いて、輝きだした。

「ありがとう、シン、シェリル。君たちのおかげだ。」

「貴方たちのおかげで私たち、逝けるのよ。また、会いましょう。」

輝きが一層増し、辺りが見えなくなった。

眩しくて目を瞑っていたが、輝きが落ち着いたと思い開くと、もう2人の姿は無くなっていた。

「・・・消えた。」

「ええ。黄昏の聖域に向わせました。新たな魂の転生のために。」

死に神がそう言う。

魂の転生?なんだそれ・・・。それじゃあまるで・・・。

「まるで俺たちが死んでいるような・・・。」

「はい。貴方がたは死亡なさっている魂ですよ。」

はっきりといわれた言葉に俺は愕然とした。

俺、死んでるのか・・・?

でも、記憶がないからそんなこと全然気がつかなかった。

「貴方がたにも死亡証明書を渡さなければいけないのですが、貴方は記憶不十分。まだ渡せる状態ではない。そちらは・・・ああ、神の化身の1人ですね。貴方は死亡証明書よりも先に記憶の鎖の修復と使命を果たすこと。そして、覚醒が必要ですね。・・・あ、そうだ!忘れないうちに・・・。先程執事の彼が貴方の記憶の破片を落としていかれましたよ。」

「俺の?!」

俺の記憶の破片。それがあれば俺のことが少しでも分かるのかもしれない!

なんてありがたいことだろう。

「ええ。では、準備はいいですか?」

「え?」

「人の記憶の破片や記憶・・・クロニクルメモリーズを再生・取り込むことができるのは私だけですから。」

よくわからないが・・・まぁ、取り入れてもらえるならそれでいい。

俺に記憶が戻るんだ。

わくわくとして死に神に記憶を入れてもらえるのを待っていると、何故かシェリルが俺の腕を引いた。

どうしたのか分からないけど、物凄く顔色が優れない。

「シェリル?」

「駄目。」

「え?何が?」

「駄目。駄目・・・駄目!!」

叫びだしたシェリルに俺はどうすればいいのか分からなかった。

とりあえず、落ち着かせようか。

そう思って背中に触れた時だった。

「?!」

シェリルの体が発光し、俺までもその光りで包み込んだ。

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!??」










「・・・ちっ。俺が死に神じゃないことがばれていたのか。」

1人取り残された死に神がそう呟いた。否、偽りの死に神だが。

その背後にいた別の人影がおかしそうにクスクスと笑う。

その笑い声に偽りの死に神は振り返る。

「おやおや、それで私になりきったつもりですか?それにしても、葬送予定者をどうして奪ったのか・・・教えていただきたいですね。」

黄緑色の長髪をなびかせながら近寄る死に神は大鎌を片手に近寄ってきた。

偽りの死に神も、双剣を手にし、死に神を睨む。

互いに加速し始め、誰もいない空間で鋼の音が響いた。