PLUTO KISS -17ページ目

4個目の夢 

気がついたら、全く知らない場所だった。

ぬいぐるみが沢山置かれた子供部屋だろう。

俺はそのぬいぐるみの中に同じ人形として椅子に座らせられていた。

いつの間にか学ランもゴスロリ系の衣装に着せ替えられていた。

膝の上には黒いウサギのぬいぐるみなんか置かれてるし・・・。

「・・・あれ?2人は?」

自分の状況を確認してから、2人がいないことに気がついた。

この部屋には俺とぬいぐるみしか見当たらない。

もしかしたら、いつの間にか空間を越えてしまったのかもしれないな。

1人推測していると、部屋の扉が開いた。

「・・・。」

「あ、だめだよぉ。私のお人形さんなんだから、勝手に逃げちゃ。」

扉を開けて俺に逃げるなと訴えながら抱きついてきたのは、小さな女の子だった。

お人形さんのように可愛らしい女の子。

俺はどうやらこの子のお人形になっているらしい。

女の子は俺の手を引いて、自分のベッドだと思われる小さなベッドに無理矢理座らせる。

そして俺の膝の上に乗ってきて俺の銀色の髪の毛を梳いて右側の横髪で小さな三つ編みを3本ほど作り、後ろへ向って伸ばし、ピンで留めはじめる。

窓ガラスに映る俺の髪型は完全にヴィジュアル系になっている。なんてこったい。

「うふふ。私だけのお人形さん。お名前は何にしようかな?」

「ちょっと待て待て。俺は君の人形じゃないよ。それに俺の名前はシン。勝手に名前をつけるな。」

「何よ。私のお人形さんは随分とお喋りね。その声をまずは失くしてあげるわ。」

そう言って女の子は俺の喉に触れると、不思議な模様を描いた。

(おい!何描いて・・・!!・・・あれ?)

どんなに声を振り絞ろうとしても声が出ない。

その様子を見て女の子はおかしそうに笑っていた。

「その模様がある限り、貴方は喋ることなんて出来ないわ。」

くそっ・・・忌まわしいものつけやがって。

必死に袖で拭ってふき取ろうとするが、全然消えない。

「無駄よ。消えることはないわ。それは私の呪いみたいなものだから。」

くすくす笑いながら女の子は俺の手を掴むと、ぬいぐるみの中にまた戻された。

その時、ふと窓から庭の風景が見えた。

庭にある薔薇園。その中にかかしのようなものが見える。

(なんだ・・・アレは?)

目を凝らしてみてると・・・十字架に貼り付けられた人形。

(ッ・・・!)

思わず息を呑む。

貼り付けられた人形はどれも錆びていたり、バラバラになり、手足がもぎ取れていたりと悲惨な状態だった。

「あら、お庭のお人形さんたちが気になるの?ふふふ。みんな貴方と同じ私のお人形さんだったのよ。みんな可愛いお人形さんだった。このお屋敷に来てからしばらくは混乱していたみたいだったけど、私が体の全部をお人形さんのパーツに替えてあげたの。そしたらね、みんな可愛い可愛いお人形さんになった。でもね、どうしても逃げ出そうとするの。だから、すこしづつ、すこしづつ、魂を削っていったの。使い物にならなくなったお人形さんは可哀想だから、ああやってお庭に飾っているのよ。」

悪気も無く言う女の子。

無邪気な笑顔が恐ろしかった。

(俺も逆らったら、あの姿になってしまうのか・・・?)

そう思うと怖くて動けなくなった。

「あら、怖いの?大丈夫よ。私がいるから何も怖くないでしょ?お化けなんて出やしないし、怖い人なんていないわ。私が守ってあげるからね。」

違う。俺が怖いのはお前だ。

この女の子は何を考えている?

何を考えて俺を人形にする?

「さぁ、お腹が空いたでしょう?お人形遊びにはミルクって決まってるのよ?」

そう言って差し出されたのは哺乳瓶でなかったのが幸いだが、コップの中にあるのは明らかにミルクではない何か。

赤いもの。

「はい、ごっくんしましょうね?」

鋭い目つきで無理矢理流し込まれる。

それを拒もうと女の子を押しのけようとするのだが、どんなに押しても女の子の腕が離れない。

寧ろ、押しのけようとするたびに力強く抑えられる。

首を掴み壁に押さえつけられているため、息が出来ない。

そのため、無理矢理飲まされていたものを吐き出し、女の子の洋服を汚した。

それを見て、女の子の目つきが変わった。

「どうして言うことが聞けないの?悪い子はお仕置きよ。」

ガシャンッ

右手に冷たく重いもの。

ふと、右手を見ると、そこには手錠。壁際にあったピアノの足に繋がれていた。

(嘘!?)

「しばらく反省してね。お人形さん。」

女の子は俺をそのままに、部屋から出ていってしまった。

(・・・ッ!!なんでこんなことに!!)

必死に動かして逃走を図るが、外せそうに無い。

どうやったら・・・。

(そうだ・・・さっきあの女の子が俺の髪の毛をいじった時にヘアピンをつけたよな・・・。)

横髪に手を伸ばして、一本ヘアピンを抜き、それをまっすぐに伸ばすと、手錠の穴に刺しこみ、回してみる。


カシャンッ


外れた。

(・・・何とか外れたけど、シェリルとウェルダーを見つけなきゃな。)

扉のドアノブをまわすが、鍵が開かない。

どうやら外側から施錠されているようだ。

・・・となると。

出口は窓しかない。

窓を開け、窓辺に足をかけて身を乗り出す。

(・・・うっ・・・高ッ!!)

5階くらいはあるだろうか・・・。むっちゃ高い。

がくがくしつつも、意を決して俺は外に出て、落ちないように隣の部屋の窓へと近づく。

中を確認し、誰もいないことを確認すると、首に巻かれていたリボンを手に巻きつけて、窓ガラスを叩き割って侵入した。

(なんだここは・・・?倉庫?)

薄暗く、誇りっぽい。

足元に気をつけながら、出口の扉を探していると、薄暗い室内できらりと光る2つの何か。

(・・・?)

ゆっくり近寄ると、それは、全体的に黄緑色をした人形だった。

瞳を閉ざして、鎖で壁に飾られた美しい装飾の施された剣に撒きつけられながら、ぶら下がっている。

何処か表情が悲しそうだ。

この人形も庭にいた彼らと・・・俺と同じ生きてた人なのかな。

(この人形可哀想・・・。あの女の子にされたんだな。)

鎖は壁に杭で打ちつけられている。これを抜けば、きっと降ろせるに違いない。

何か・・・杭を引き抜ける道具はないだろうか・・・。

辺りを見渡すが、杭を抜けそうなものは何も無い。

(ごめん、今は助けられない。何か、杭を抜けるようなものを見つけてまた戻ってくるから、それまで待っていてくれ。)

言葉が出ない口でそう声をかけて、俺は部屋から出て行った。

その時俺は気がつかなかった。

その人形がこちらを見ていたことに。

3個目の夢 3

シェリルは手を合わせて、離しながら広げていく。その動作に合わせて光が出現し棒のように伸びていく。

それは輝きを失うと、薄紫色のロッドになった。

ウェルダーも手を合わせて離すと、手の内から2つの光を出現させ、両方の手の平の上で少し伸びていく。

それも輝きを失うと、薄い青のトンファーになった。

「さぁてやりますよシェリル。」

「私の足手まといにならないでくださいねウェルダー。」

ロッドとトンファーがカツンッと音を立てると共に、2人は走り出した。

あの黒い奴らは一斉にシェリルに向って飛び掛る。

シェリルはロッドの先端についている宝石を向けるように縦に振る。すると、凄まじい風が吹き上げて、数体が吹き飛ばされる。

残った数体はなおもシェリルに向って飛び掛る。

シェリルはまず蹴り倒し、大きくロッドを振り、叩き潰す。

ウェルダーもゾンビみたいな奴を大方倒し、シェリルが吹き飛ばした黒い奴をトンファーで次々と叩き潰す。

なんて素早い動きで戦うんだ・・・まるで人離れしている。

思わず2人の戦いに見入っている俺は、すぐ傍まであのゾンビみたいな奴が近づいてきているのに気がつかなかった。

「・・・!シン!危ないッ!!」

「え?」

シェリルの声でやっと気がついた頃には、もう目と鼻の先まで敵は来ていた。

ヤバイ!そう思って、思わず目を瞑ってしまった。

・・・・・・あれ?

痛くない。

むしろ、何かに覆われていて苦しい・・・。

目を開けると、真っ暗。

え?何これ?どうなったの?

ああ・・・でも目の前の何かは呼吸しているみたい。

それじゃあまさか・・・!

俺は急いで顔を出す。

すると。やはり俺を覆っていたのは・・・。

「シェリル!!」

「よかった・・・間に合って。」

そういうシェリルの口からは赤黒い液体。

黒い・・・液体・・・。


               『綺麗な血を与えてあげようね。』


誰の言葉?

嫌だ。俺はこの言葉が嫌いだ。

血を見たくない。

「・・・っは・・・あっ・・・!!嫌・・・!シェリ・・・ル!!」

「シン!落ち着いてください!」

その時呼びかけるウェルダーの声など俺には聞こえていなかった。

どうしてか分からない。

シェリルが傷つくのは嫌だ。

血を見るのも嫌だ。

でもどうして?どうして?教えてよ!どうして!!!




「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああッ!!!!!」




俺はそこから先は何が起きたのか覚えていない。

だけど、何か暖かな存在がずっと呼びかけていたような気がする。















「互いに呼び合っているのでしょうね・・・だから彼は副作用のように記憶が混乱し始める。」

「それ彼も同じなのでしょうか。」

「さぁ・・・お互い呼び合うことで響き合い、そして拒絶する。どうして彼らは同じなのに混ざり合えないと思う?」

死に神が天使にそう質問する。

「魂の質は互いに同一。でも混ざりきれないのには差異があるから・・・でしょうか。」

その回答に死に神はクスリと笑う。

「そう。魂はそれぞれ個性がある。その個性は必ずしも一致するとは限らない。1人に魂は1つ限り。」

死亡者リストを片付けながら、死に神は更なる死亡者リストを引き寄せる。

その腕には抉られたような傷・・・。



死に神は貴方に向って囁く。

「貴方の魂は、本当に本物ですか?」

囁いた死に神は再び執務に戻る。

何かを見透かしたように。

3個目の夢 2

「貴方にはこれからのことを説明しなければなりません。お時間よろしいでしょうか?」

「ああ、勿論。」

俺の確認を取った後、カイトは説明を始めた。

「貴方は、俺の元に来る前に確かに何者かによって襲われています。その相手が誰なのかは俺にも分かりませんでしたが・・・。その際に貴方の記憶の鎖がバラバラになったのは確かです。それで、ここからが本題なのですが・・・。」

カイトは真剣な眼差しでこちらを見つめ、こう言った。

「貴方がUGから旅立つ・・・つまり、魂が新たな生を受けるためには、俺の上司、死に神のヘルから死亡証明書を受け取らなければなりません。しかし、貴方は死亡証明書を今はまだ受け取ることが出来ない。」

「受け取れない・・・何故?」

「記憶の鎖がバラバラだと、次に生を受けたとき、貴方は記憶を正常に記録していくことが出来ません。恐らく知的障害や記憶障害が出てきます。そうなると、1人で生きていくことは出来ません。それに・・・一番確立として発症する確立が高い症状が・・・生まれて3年たつと、恐らく昏睡状態に陥ることです。」

「え・・・。」

それじゃあ次の人生は殆ど何もしないまま終わってしまうのか・・・?

そんなのいやだ・・・。

「どうすればいい?!どうすれば俺の記憶は戻るんだ?!」

「飛び散った記憶を集めなければなりません。貴方の首から提げている宝石の欠片のついた首飾りがありますよね?」

言われて自分の首元を見て、初めて気がついた。

確かに宝石の欠片がついた首飾りがあった。

「それは貴方の記憶の欠片です。今はまだ自身を動かすためだけのひとかけらしかありません。それが戻るたびに貴方に関する記憶がひとつひとつ戻っていくでしょう。混乱することがあるかもしれません。しかし、恐れないで。」

「ああ。わかった。だけど、どうやったら記憶の欠片は集まるんだ?」

「はい。様々な空間に貴方と同じように記憶の鎖がきちんと繋がっていない、欠片だけ持っている人物がいます。彼らの欠片を組み合わせて鎖を繋いであげてください。他人の欠片は他人の欠片に反応して引き寄せられるので、繋げたときに、余分となる貴方の欠片が飛び出してくるはずです。ひとつひとつの空間には俺が自動的に飛ばすようにしておきます。」

「わかった。」

「では最後に。」

そう言ってカイトは俺に近づくと、顎をくいっと持ち上げてきた。

何されるんだろう。

「本来は俺の元に来て通常は受付で受けるはずなのですが、今になって申し訳ございません。これはUGでの貴方の識別番号です。こちらがなければ街などに入ることが出来ない場合がありますので。」



うん。


それはよしとしよう。


だが何故頬にキスされにゃならんのじゃ。


顔綺麗でも許せることと許せないことがあるんだぞ。



「・・・・・・ん・・・う・・・。・・・シン?」

やっとシェリルが起きたようだ。

まだ眠そうに目を擦りながら起き上がってきた。

ああ、そんなしたら肌傷つくぞ。

「・・・おや?そちらの方も記憶の鎖が繋ぎきれていないようですね。」

「はい。だから長時間マスターをお守りすることが出来ません・・・。」

カイトが起きたシェリルにそう言った。

シェリルも分かっているようで、辛そうな顔をしていた。

「・・・あ!そういえば!シェリル、俺と契約してるってウェルダーが言ってたけど、俺、してないよな!?してないよな?!」

「・・・契約・・・。しているはずだから、マスターと呼んでいるのですが・・・。誤作動ですかね・・・。」

シェリルは俺の手を取ると、何かを確認し始めた。

「爪が私の色に染まっていない・・・。契約できていませんね。すみません。では、失礼。」

「だぁぁぁぁぁぁぁっ!!?いいっ!!いらない!キス強要されるのはいい!!そのままでいいから!」

「ですが・・・。」

「要らないったら要らないの!!!」

必死の拒否にシェリルは渋々受け入れ、おとなしくした。

・・・あれ?そういえば一つだけ疑問があるんだが・・・。

「カイトさんって何処から入ってきたんですか?」

「あ。確かに。どうやって・・・。」

入口は封じたはずなのに・・・。と、呟くウェルダーを横目に、カイトはクスクスと笑い出す。

「俺と死に神、最高神たちは、この程度の魔法壁くらいすり抜けられます。何処にいようとも・・・俺たちに歯向かった者は決して逃げられないようにね・・・。」

そう言いながらカイトは黒く微笑んだ。

天使だと言った彼からは想像も出来ないほど、天使とはかけ離れたその微笑に俺は恐怖すら感じた。

天使って皆こんな人ばかりなのかな・・・。

所詮俺たち人間が想像上で思い浮かべる天使って単なる理想でしかすぎないしな・・・。

「仕方ありませんね。シェリルと契約しないとなると、シェリルは貴方を守れません・・・。ウェルダーとの仮契約を今はしていてください。ウェルダーから宝珠を受け取りましたよね?」

「ああ、あのビー玉みたいなやつ?」

「はい。それを指に当ててください。」

そういえばウェルダーにも言われてたけど、急いでいたから忘れていた。

ウェルダーから受け取った宝珠を指へと当ててみる。

すると、宝珠の下からシルバーが飛び出し、俺の指に絡みつき、指輪となった。

「すっげ・・・。」

1人指輪になったことに関心していると、ウェルダーが背後で虚ろな表情で呟きだした。

まるでシェリルと同じ・・・。

『・・・マスター認証開始・・・・・・マスター認証完了。』

なんだろう・・・。

彼らを見ていると、まるで人間じゃないみたいだ。

いや、まぁ俺たち確かに死んでいるからもう人間じゃないのだけど・・・。

「カイトさん、何で俺はシェリルと契約しなくちゃならないんだ?なんだか、どうしてもシェリルと契約しなくちゃいけないみたいに聞こえるんだけど・・・。」

「ああ、それですか。それについては、いずれ分かります。貴方とシェリルの記憶が修復しきれる頃には、きっと・・・ね。」

では、失礼。と一言言うと、カイトは白い翼を生やして空へ向って飛んでいった。

その姿は次第に光となって消えてしまった。

「・・・おや、入口が突破されてしまったようだ・・・。」

ウェルダーが上を見ながら呟く。

はっとして上を見上げると、まるで空間を食い破るようにして黒い奴とゾンビみたいな奴が、蟻がお菓子を見つけて集るようにこちらへ向って走ってくる。

「気色悪ッ!!」

「シン、下がっていて。」

そう言ってシェリルとウェルダーが俺の前に立ちはだかる。

何で2人は俺を守ろうとするんだ?

シェリルだってあの黒い奴に狙われているはずなんだろ?

なのに              何故?