5個目の夢 4
視点はまた、俺、シンに戻る。
結局誰も来てくれることはなく、地べたにぐったりと座り込んでいると、突如声がした。
「アンタは白神様なんかじゃない。でも、凄い力を秘めているってのは俺には分かるんだ。」
「へ?」
顔を上げると、そこには黒い風車を持った男の子がいた。
いつの間にこの子は来たのだろうか?
「ごめんね、俺にはアンタを助けることが出来ない。」
「・・・いや、でも、誰かが来てくれただけでも嬉しいよ。」
「・・・今アンタを救おうとアンタの仲間、動いてる。きっとその内助けはくると思う。けれど、言っておかないといけないことがある。聞いてくれる?」
「ああ。」
頷くと、男の子は喋りだした。
この村では今夜の0時から明け方4時にかけて『憑神祭』が行われるらしい。
その祭では白神の血を死者の遺体にかけることによって、死者が蘇るとされている。
憑神祭とは、簡単に言えば、白神を殺して、代わりに死者を蘇らせるという等価交換儀式。
この祭が行われるのは100年に1回。
それまでの間は白神は祠の中で遺体たちと一緒に囚われ、遺体の親族が参拝に来る度に死者と遺族が会話できるように死者の言葉を代弁する翻訳機同然の扱いをされるという伝統が今まで続いてきたという。
「今宵はその100年に一度の日。しかも今まで白神はいなかった。誰も代弁してくれる神がいないため、何処にもぶつけられない思いを抱えて過ごしてきた。今年はもう無理なのかもしれない。そう思っていたときに、白神が現われた。逃がすはずがない。」
「・・・それじゃあ・・・俺は今白神扱いされていて・・・何処かに閉じ込められていて、ここには木箱が・・・―――。」
「アンタが思っているので正解。そこにある木箱は全てここ100年間に死んだ者の遺体の入った棺。」
「―――ッ!!!!」
じゃあここはその遺体と白神が囚われているという祠?!
いやだ!ここから出たい!!!
「嫌だ!!嫌だ!!!」
「ごめんね。俺にはどうすることも出来ない。」
「わかってる・・・けど・・・遺体と一緒なんて・・・!!」
「・・・・・・俺の名前は楓。もうすぐ深夜0時。村人がアンタを儀式の生贄として迎えに来るだろう。逃げて、逃げて逃げて逃げて。決して捕まらないで。」
それだけ言うと、楓は消えてしまった。
「逃げるったって、どうやって逃げれば・・・。」
ふと、遠くから声が聞こえた。
何か不吉な歌を歌いながら近寄ってくる無数の足音。
暗闇の中でも分かる。
森の置くの方から、松明を揺らしながらこちらへ人が近寄ってきているのが。
彼らの手には、鍬や包丁、高切りばさみ、鎌、ナイフ、日本刀。
「嘘・・・マジかよ・・・!!!」
背筋に嫌な汗が流れた。
結局誰も来てくれることはなく、地べたにぐったりと座り込んでいると、突如声がした。
「アンタは白神様なんかじゃない。でも、凄い力を秘めているってのは俺には分かるんだ。」
「へ?」
顔を上げると、そこには黒い風車を持った男の子がいた。
いつの間にこの子は来たのだろうか?
「ごめんね、俺にはアンタを助けることが出来ない。」
「・・・いや、でも、誰かが来てくれただけでも嬉しいよ。」
「・・・今アンタを救おうとアンタの仲間、動いてる。きっとその内助けはくると思う。けれど、言っておかないといけないことがある。聞いてくれる?」
「ああ。」
頷くと、男の子は喋りだした。
この村では今夜の0時から明け方4時にかけて『憑神祭』が行われるらしい。
その祭では白神の血を死者の遺体にかけることによって、死者が蘇るとされている。
憑神祭とは、簡単に言えば、白神を殺して、代わりに死者を蘇らせるという等価交換儀式。
この祭が行われるのは100年に1回。
それまでの間は白神は祠の中で遺体たちと一緒に囚われ、遺体の親族が参拝に来る度に死者と遺族が会話できるように死者の言葉を代弁する翻訳機同然の扱いをされるという伝統が今まで続いてきたという。
「今宵はその100年に一度の日。しかも今まで白神はいなかった。誰も代弁してくれる神がいないため、何処にもぶつけられない思いを抱えて過ごしてきた。今年はもう無理なのかもしれない。そう思っていたときに、白神が現われた。逃がすはずがない。」
「・・・それじゃあ・・・俺は今白神扱いされていて・・・何処かに閉じ込められていて、ここには木箱が・・・―――。」
「アンタが思っているので正解。そこにある木箱は全てここ100年間に死んだ者の遺体の入った棺。」
「―――ッ!!!!」
じゃあここはその遺体と白神が囚われているという祠?!
いやだ!ここから出たい!!!
「嫌だ!!嫌だ!!!」
「ごめんね。俺にはどうすることも出来ない。」
「わかってる・・・けど・・・遺体と一緒なんて・・・!!」
「・・・・・・俺の名前は楓。もうすぐ深夜0時。村人がアンタを儀式の生贄として迎えに来るだろう。逃げて、逃げて逃げて逃げて。決して捕まらないで。」
それだけ言うと、楓は消えてしまった。
「逃げるったって、どうやって逃げれば・・・。」
ふと、遠くから声が聞こえた。
何か不吉な歌を歌いながら近寄ってくる無数の足音。
暗闇の中でも分かる。
森の置くの方から、松明を揺らしながらこちらへ人が近寄ってきているのが。
彼らの手には、鍬や包丁、高切りばさみ、鎌、ナイフ、日本刀。
「嘘・・・マジかよ・・・!!!」
背筋に嫌な汗が流れた。
5個目の夢 3
その頃シェリルはというと。
「若紫様にはこちらにいてもらいますよ。」
貴方に会って話したいというご老人がいる。そう言ってシェリルが連れてこられたのは大きな蔵だった。
中には長年使われていないような農機具や、古い着物の入っているであろう箱が沢山放置され、埃被っていた。
「・・・ここは?」
「貴方の永遠のお部屋です。」
そう言って背後で蔵の扉を閉められ、南京錠を外側からかけられた。
しまった!そう思ったときにはもう時既に遅く。
シェリルは逃げ場を失った。
「・・・困りましたね。」
無理矢理力を使って風をおこし、扉を破壊し脱出を試みたのだが、何故か扉は壊れることなく、風は無効化されてしまった。
「・・・これはこれは・・・どうしましょうか。」
何処からか脱出できないだろうかと見渡すが、柵のついた小さな窓がひとつあるだけで、それ以外は何も無い。
ため息交じりに座り込み、脱出方法を考えていると、窓の向こうから声がした。
「・・・シェリル。」
「えっと・・・貴方は・・・。」
「ノエル。」
窓の外にいたのはノエルだった。
隣からウェルダーも顔を出す。
「2人とも無事だったのですね。」
「ええ、問題ありません。ただ、空間を移動した際に着地地点がズレてしまったようで。で、本題に入らせてもらいますが、貴方もシンも囚われています。その理由がよくわかりませんが、なんとかお2人を救出してみせます。」
「シェリル・・・扉・・・強い力・・・開かない。」
「強い力が扉にかけられているのですか?だから風が弾き返されたのですね・・・私にはどうすることもできません。お2人共、申し訳ございませんが、よろしくお願いします。」
シェリルの言葉に頷いて、2人は早々に飛び去った。
「・・・それで、貴方は何か?」
シェリルが振り返ると、そこには最初に出会った白い着物を着た男の子の内、赤い風車を持った方の子がいつの間にか蔵の隅に座り込んで風車をくるくると回していた。
「僕には貴方を助けることが出来ない。でも、今外にいたお兄ちゃんたちの手助けならできる。」
赤い風車はくるくると回っていたのに、突然ぴたりと止まった。
「これは、僕と楓のせいだから。みんなは、ここに来ちゃいけなかったんだけど、どうしても、僕らを救って欲しかったから。ごめんね、迷惑かけて。」
「いえ、私たちは迷惑などと思っていませんよ。どうすれば、私たちは貴方を救えますか?」
シェリルが問うと、男の子は赤い風車をシェリルへと差し出した。
シェリルがそれにそっと触れる。
「そのまま瞳を閉じて。説明すると長いから、映像で見せるね。」
そう言って男の子が瞳を閉じるのと同時に、シェリルも瞳を閉じた。
すると、シェリルの脳に直接流れ込んでくる映像。
何かの祭りの中、村人の手によって囚われる2人の男の子。
黒い風車と赤い風車を持って。
互いの胸をその風車で刺し、共に散る。
その遺体を村人は運び出し、赤い風車を持った男の子は村の井戸の中へ。
これで農業に必要な水に困ることなく、100年は過ごせると村人は歓喜に湧く。
一方で黒い風車を持った男の子は何者かに連れ去られ、村人は行方を捜しきれず、これから作る農作物には呪いが掛かってしまうと嘆いた。
連れ去った誰かは村の廃墟の中へと駆け込み、その家屋の畳の下にある地下へと繋がる階段を駆け下り、広い地下空間へ。
そこで木箱に男の子の遺体を入れて、夜中に山奥にある祠の中へと木箱を置いた。
そこには元から多くの同じ形状の木箱が多々置かれている。
「そうか、君たちは殺されてしまったんだね。村の繁栄を願う生贄として。」
「そう。殺された。でも、そんなことはもうどうでもいいんだ。僕らの願いは、ただひとつ。」
「それは?」
「・・・僕の名前は薫。待ってる・・・ずっと、待ってる。」
薫は、答えることなく消えてしまった。
「・・・・・・ウェルダー、ノエル。早く・・・。」
「若紫様にはこちらにいてもらいますよ。」
貴方に会って話したいというご老人がいる。そう言ってシェリルが連れてこられたのは大きな蔵だった。
中には長年使われていないような農機具や、古い着物の入っているであろう箱が沢山放置され、埃被っていた。
「・・・ここは?」
「貴方の永遠のお部屋です。」
そう言って背後で蔵の扉を閉められ、南京錠を外側からかけられた。
しまった!そう思ったときにはもう時既に遅く。
シェリルは逃げ場を失った。
「・・・困りましたね。」
無理矢理力を使って風をおこし、扉を破壊し脱出を試みたのだが、何故か扉は壊れることなく、風は無効化されてしまった。
「・・・これはこれは・・・どうしましょうか。」
何処からか脱出できないだろうかと見渡すが、柵のついた小さな窓がひとつあるだけで、それ以外は何も無い。
ため息交じりに座り込み、脱出方法を考えていると、窓の向こうから声がした。
「・・・シェリル。」
「えっと・・・貴方は・・・。」
「ノエル。」
窓の外にいたのはノエルだった。
隣からウェルダーも顔を出す。
「2人とも無事だったのですね。」
「ええ、問題ありません。ただ、空間を移動した際に着地地点がズレてしまったようで。で、本題に入らせてもらいますが、貴方もシンも囚われています。その理由がよくわかりませんが、なんとかお2人を救出してみせます。」
「シェリル・・・扉・・・強い力・・・開かない。」
「強い力が扉にかけられているのですか?だから風が弾き返されたのですね・・・私にはどうすることもできません。お2人共、申し訳ございませんが、よろしくお願いします。」
シェリルの言葉に頷いて、2人は早々に飛び去った。
「・・・それで、貴方は何か?」
シェリルが振り返ると、そこには最初に出会った白い着物を着た男の子の内、赤い風車を持った方の子がいつの間にか蔵の隅に座り込んで風車をくるくると回していた。
「僕には貴方を助けることが出来ない。でも、今外にいたお兄ちゃんたちの手助けならできる。」
赤い風車はくるくると回っていたのに、突然ぴたりと止まった。
「これは、僕と楓のせいだから。みんなは、ここに来ちゃいけなかったんだけど、どうしても、僕らを救って欲しかったから。ごめんね、迷惑かけて。」
「いえ、私たちは迷惑などと思っていませんよ。どうすれば、私たちは貴方を救えますか?」
シェリルが問うと、男の子は赤い風車をシェリルへと差し出した。
シェリルがそれにそっと触れる。
「そのまま瞳を閉じて。説明すると長いから、映像で見せるね。」
そう言って男の子が瞳を閉じるのと同時に、シェリルも瞳を閉じた。
すると、シェリルの脳に直接流れ込んでくる映像。
何かの祭りの中、村人の手によって囚われる2人の男の子。
黒い風車と赤い風車を持って。
互いの胸をその風車で刺し、共に散る。
その遺体を村人は運び出し、赤い風車を持った男の子は村の井戸の中へ。
これで農業に必要な水に困ることなく、100年は過ごせると村人は歓喜に湧く。
一方で黒い風車を持った男の子は何者かに連れ去られ、村人は行方を捜しきれず、これから作る農作物には呪いが掛かってしまうと嘆いた。
連れ去った誰かは村の廃墟の中へと駆け込み、その家屋の畳の下にある地下へと繋がる階段を駆け下り、広い地下空間へ。
そこで木箱に男の子の遺体を入れて、夜中に山奥にある祠の中へと木箱を置いた。
そこには元から多くの同じ形状の木箱が多々置かれている。
「そうか、君たちは殺されてしまったんだね。村の繁栄を願う生贄として。」
「そう。殺された。でも、そんなことはもうどうでもいいんだ。僕らの願いは、ただひとつ。」
「それは?」
「・・・僕の名前は薫。待ってる・・・ずっと、待ってる。」
薫は、答えることなく消えてしまった。
「・・・・・・ウェルダー、ノエル。早く・・・。」
5個目の夢 2
村人に無理矢理連れられてきたのは村一番の家だった。
村民の住宅は昭和の雰囲気漂う日本住宅なのに、この屋敷だけは西洋住宅なのにはちょっと疑問。
屋敷の中へと連れてこられると、明治時代の雰囲気が漂う室内で、衣裳部屋へと通されると、俺とシェリルは着物に着せ替えられた。
俺は白地に赤いなんか・・・花が咲き乱れるもの。シェリルは薄紫の生地に藍色の蛇が泳いでいるもの。
「シェリル、格好いいよ。」
「マスターは女の子みたいですね。」
「ん?なんだって?殴るよ?殴っちゃうよ?俺の鉄槌はいたいぞぉ♪」
あまり穏やかではない会話をしながら椅子に腰掛けて呆然としていると、1人の村人がお茶と和菓子を俺たちの目の前にこれでもかっ!!ってくらいに置いて、ニコニコしながら下がっていった。
「あの、おじさん。ちょっといいかな。」
「はい、何でしょう。白神様。」
「・・・あの、何で俺たちここに連れてこられたのかな?全く状況が掴めないんだけど・・・。」
俺がそう聞くと、おじさんは丁寧に説明してくれた。
その昔のこの村では、白神と呼ばれる神様と若紫と呼ばれる神様がいたという。
白神様には死んだ者の魂を呼び出し、会話をする能力があるらしい。
そのため、白神様の祠へと死者の遺体を運び、その魂を預かってもらい、時折死者との会話をさせてもらうことを約束してもらったという説があるらしい。
でも、いつからか、白神様が祠から消えてしまった。
それでもなお、今でもその信仰は熱く、死者が出た際には祠へと遺体を運んでいるそうだ。
若紫様については、その昔、村に若菜と呼ばれる少年が1人いたそうだ。
その少年は村で起きた少女神隠し事件の際、それが妖怪の仕業であると気がつき、勇敢にも妖怪に剣1つで立ち向かい、妖怪を倒し、少女たちを救出したとされる。
だが、妖怪を倒した際に呪いに掛かり、若菜は半妖怪となってしまった。
その姿を見た八百万の神々が可哀想に思い、人間に戻すことが出来ない代わりに、神様に変えた。
その神様の姿になった若菜を神々が若紫を名づけ、以後若紫は守護神として人々から崇められたとされているらしい。
「では、ごゆっくりと。」
村人が室内から去ると、俺とシェリルだけになり、静寂がやってきた。
シェリルは和菓子を不思議そうにみている。
「食べたら?」
「小さな魚ですね・・・でも生は・・・。」
そう言ってシェリルが突いていたのは、京菓子の魚だった。
まさかそれを本物の魚と思っているとは・・・。
流石に笑うしかなかった。
それをお菓子だと説明してやると、恐る恐ると口にして、嬉しそうな顔をした。
シェリルは京菓子が好きということが判明した瞬間だった。
(さて、ウェルダーとノエルを探したいんだけど・・・。)
窓から外を様子を伺うと、入口付近には村民が数名見張りをしているようだ。
これではここからは出られそうにない。
仕方ないな・・・。
「しばらく出られそうにないね・・・もう少し様子を見てからにしよう。それまでちょっと休むね。」
「はい。マスター。」
俺は隣の部屋に備え付けられた寝室で夢の世界へと落ちることにした。
『賢吾ォッ!!逃げろ!!』
『 !!でもお前は・・・!!』
『生きてたら、会おうぜ!』
『・・・ッ!絶対だからな!!生きて帰って来いよ!!』
賢吾という人物が走り去る中、俺の視界は目の前に広がる爆弾の山。
明らかに1人では解除しきれない量が設置されていた。
その爆弾に向かいひたすら銃弾を打ち込み、爆弾の時間を止める。
打ち続けることで減る銃弾。
リロード時間も惜しいため服のしたから次々に予備の銃を取り出しては使いきり、投げ捨てる。
そして最後はレーザーガン。
そいつで最後のひとつを打ち抜こうとした瞬間、視界は赤々と染まった。
「・・・ぁぁあああッ!!!」
息切れが激しい。どうしてこんなに苦しいの?
今のは何?
「訳分かんない・・・なんなんだよ・・・。」
ため息と共にうな垂れながら背中からベッドへ落ちたつもりが、なにやら硬いものが背中に当たった。
俺ってベッドで寝てたはずなんだけどな・・・。
そう思いながら振り返ると、そこにベッドなんかなく、よく見渡せば、ここは岩肌のむき出した薄暗い場所だった。
よく見れば、奥のほうには蝋燭がたくさん立てられていて、炎が足元にある何かを照らしていた。
木の箱?だろうか。暗くてよくわからない。
「出口何処・・・?ここなんだか息苦しい。」
光の刺すほうへと歩みを進めると、外に緑が見えた。
しかし・・・
「なっ・・・柵?!」
何故か牢獄のように柵があった。ご丁寧にも逃げられないように南京錠つきだ。
「おい!誰か!!!誰かいないのか!!」
どんなに叫んでも誰も呼びかけに答えてくれない。
「シェリル!!ウェルダー!!ノエル!!誰かぁぁぁあああああ!!!」
叫び続けること数時間。
柵の向こうの空はもう橙に闇を刺し始めた。
叫び続けた俺の喉は枯れてしまい、もう声が出ない。
疲れてしまい、俺はその場に座り込んで考える。
何故こんな場所に罪人のように囚われないといけないのか。
どうして誰も助けてくれないのか。
昔にもこんなことが・・・。
「え・・・昔って何時のことだ?俺、何時こんなことがあった?」
思い出そうとすると、何処かで拒絶する脳。
どうして?
「どうして?」
俺しかいない暗闇の中、寂しく反響した。
村民の住宅は昭和の雰囲気漂う日本住宅なのに、この屋敷だけは西洋住宅なのにはちょっと疑問。
屋敷の中へと連れてこられると、明治時代の雰囲気が漂う室内で、衣裳部屋へと通されると、俺とシェリルは着物に着せ替えられた。
俺は白地に赤いなんか・・・花が咲き乱れるもの。シェリルは薄紫の生地に藍色の蛇が泳いでいるもの。
「シェリル、格好いいよ。」
「マスターは女の子みたいですね。」
「ん?なんだって?殴るよ?殴っちゃうよ?俺の鉄槌はいたいぞぉ♪」
あまり穏やかではない会話をしながら椅子に腰掛けて呆然としていると、1人の村人がお茶と和菓子を俺たちの目の前にこれでもかっ!!ってくらいに置いて、ニコニコしながら下がっていった。
「あの、おじさん。ちょっといいかな。」
「はい、何でしょう。白神様。」
「・・・あの、何で俺たちここに連れてこられたのかな?全く状況が掴めないんだけど・・・。」
俺がそう聞くと、おじさんは丁寧に説明してくれた。
その昔のこの村では、白神と呼ばれる神様と若紫と呼ばれる神様がいたという。
白神様には死んだ者の魂を呼び出し、会話をする能力があるらしい。
そのため、白神様の祠へと死者の遺体を運び、その魂を預かってもらい、時折死者との会話をさせてもらうことを約束してもらったという説があるらしい。
でも、いつからか、白神様が祠から消えてしまった。
それでもなお、今でもその信仰は熱く、死者が出た際には祠へと遺体を運んでいるそうだ。
若紫様については、その昔、村に若菜と呼ばれる少年が1人いたそうだ。
その少年は村で起きた少女神隠し事件の際、それが妖怪の仕業であると気がつき、勇敢にも妖怪に剣1つで立ち向かい、妖怪を倒し、少女たちを救出したとされる。
だが、妖怪を倒した際に呪いに掛かり、若菜は半妖怪となってしまった。
その姿を見た八百万の神々が可哀想に思い、人間に戻すことが出来ない代わりに、神様に変えた。
その神様の姿になった若菜を神々が若紫を名づけ、以後若紫は守護神として人々から崇められたとされているらしい。
「では、ごゆっくりと。」
村人が室内から去ると、俺とシェリルだけになり、静寂がやってきた。
シェリルは和菓子を不思議そうにみている。
「食べたら?」
「小さな魚ですね・・・でも生は・・・。」
そう言ってシェリルが突いていたのは、京菓子の魚だった。
まさかそれを本物の魚と思っているとは・・・。
流石に笑うしかなかった。
それをお菓子だと説明してやると、恐る恐ると口にして、嬉しそうな顔をした。
シェリルは京菓子が好きということが判明した瞬間だった。
(さて、ウェルダーとノエルを探したいんだけど・・・。)
窓から外を様子を伺うと、入口付近には村民が数名見張りをしているようだ。
これではここからは出られそうにない。
仕方ないな・・・。
「しばらく出られそうにないね・・・もう少し様子を見てからにしよう。それまでちょっと休むね。」
「はい。マスター。」
俺は隣の部屋に備え付けられた寝室で夢の世界へと落ちることにした。
『賢吾ォッ!!逃げろ!!』
『 !!でもお前は・・・!!』
『生きてたら、会おうぜ!』
『・・・ッ!絶対だからな!!生きて帰って来いよ!!』
賢吾という人物が走り去る中、俺の視界は目の前に広がる爆弾の山。
明らかに1人では解除しきれない量が設置されていた。
その爆弾に向かいひたすら銃弾を打ち込み、爆弾の時間を止める。
打ち続けることで減る銃弾。
リロード時間も惜しいため服のしたから次々に予備の銃を取り出しては使いきり、投げ捨てる。
そして最後はレーザーガン。
そいつで最後のひとつを打ち抜こうとした瞬間、視界は赤々と染まった。
「・・・ぁぁあああッ!!!」
息切れが激しい。どうしてこんなに苦しいの?
今のは何?
「訳分かんない・・・なんなんだよ・・・。」
ため息と共にうな垂れながら背中からベッドへ落ちたつもりが、なにやら硬いものが背中に当たった。
俺ってベッドで寝てたはずなんだけどな・・・。
そう思いながら振り返ると、そこにベッドなんかなく、よく見渡せば、ここは岩肌のむき出した薄暗い場所だった。
よく見れば、奥のほうには蝋燭がたくさん立てられていて、炎が足元にある何かを照らしていた。
木の箱?だろうか。暗くてよくわからない。
「出口何処・・・?ここなんだか息苦しい。」
光の刺すほうへと歩みを進めると、外に緑が見えた。
しかし・・・
「なっ・・・柵?!」
何故か牢獄のように柵があった。ご丁寧にも逃げられないように南京錠つきだ。
「おい!誰か!!!誰かいないのか!!」
どんなに叫んでも誰も呼びかけに答えてくれない。
「シェリル!!ウェルダー!!ノエル!!誰かぁぁぁあああああ!!!」
叫び続けること数時間。
柵の向こうの空はもう橙に闇を刺し始めた。
叫び続けた俺の喉は枯れてしまい、もう声が出ない。
疲れてしまい、俺はその場に座り込んで考える。
何故こんな場所に罪人のように囚われないといけないのか。
どうして誰も助けてくれないのか。
昔にもこんなことが・・・。
「え・・・昔って何時のことだ?俺、何時こんなことがあった?」
思い出そうとすると、何処かで拒絶する脳。
どうして?
「どうして?」
俺しかいない暗闇の中、寂しく反響した。