しかし、著者は、ハウツー的な答えを用意はしていないが、考えるヒントは盛り沢山に示している。
例えば、「人工知能」は無限ともいえる現実社会の情報に対しては、その処理の仕方が分からず機能停止するという。
「ビックデータ」と言われる情報も結局は人間が処理の仕方「フレーム」(枠組)は作っている。
「人工知能」は、この「フレーム」作りが苦手であり、人間こそができる役割だという。
「フレーム」作りには、人の「身体能力」「好み」「価値観」などが重要とされる。
そうであれば、「AIに負けない教育」も人としての「夢や目標」を育み、その具体的なフレームを作ればよい。
これなら私にも理解できる話だと胸をなでおろした。
従来通りの「心身を健康に育てること」や「本人の主体性を大切にした良い習慣」を継続することこそが良い「フレーム」作りに貢献できることになる。
人間と「人工知能」との対比で、重度の自閉症児・晋平君の治療・成長記録は、人間の能力の本質を明らかにしている。
「人工知能」はフレーム問題で躓いたが、晋平君は言葉さえ理解できなかったのに今では作業所のハイキングを企画実行し、フレーム問題を乗り越え成長している姿は感動的だ。
日本の伝統芸能と人工知能の学び方の共通性も面白い。
どちらも答えを示してやり方は考えさせる。
技(答え)は見て(やり方は)盗めである。
伝統芸能の教え方が現代科学の最先端と結びついている。
まことに痛快だ。
そもそも「人工知能」に「勝とう」と著者は言ってはいない。
本の表題からして「負けない」であり、「人工知能」をよく理解し共生することを示唆している。
これまでの「産業革命」においても「機械」の進歩を敵視したのではなく「共存」「活用」して社会を発展させてきたのが現実の歴史だ。
将棋の藤井七段も「人工知能」の成果を積極的に自己の研究に取り込んでいると聞く。
これも共生を実現している一つの姿ではあるまいか。
本書は、主に学校教育のために執筆されたものだと思うが「人工知能」の「最新の知見ができる限りわかりやすく紹介」されており、「人工知能」の入門書としてもお薦めだ。
孫の教育に役立てればと読み始めたが、「生涯現役」を目指している自分自身の方が「自分のフレーム」を持つ大切さなど今後の生き方へのヒントを数多く得ることになった。
また、「人工知能」問題を契機として自らの人間性や人間力とは何かを考えさせられた。
そして、人間も「人工知能」も自然の一部であり続ける限り、日本人が古来より大切にしてきたような、その共生にしか未来はないとの思いを抱きつつ本を閉じた。
(2019年8月)
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AIに負けない「教育」(認知科学のフロンテイア)
2018年7月
著:渡辺信一
出版社:大修館書店
いったんは折り合い(分かったつもりになる)をつけたテーマだが
最近の生成AIの急速な展開
とくに利用方法をめぐっては
AIは
所詮、人間の作った大量のデータを
統計処理してるだけ
というだけでは済まない世界が近づいているかしら
真の愛情など人間的感情をも理解し表現できるAIができるとしたら
世界はどうなるのだろうか
残り少ない寿命というのに
再び心安らがない日々が続くことになった
ま~ボケ防止にはなりそう(笑い)
それにつけても5年前に比べて頭の回転はますます鈍くなってきたな(笑っておれないな)





