夜になると、少しだけ静かになる。
店の灯りは、まだ落ちていない。
明日も、たぶん変わらず開いている。
少しだけ、やさしい色が残っている。
カウンターの端に、ころりと丸い影。
誰かが置いていったのか、
それとも、最初からそこにあったのか。
指先にのせると、
ほんのりとした重みと、淡い香り。
思い出すほどでもないのに、
どこか懐かしい。
「……まあ、うちはこんなもんです。
お腹も心も、また明日で。」
明日は、少しだけ
その丸い色の話になるかもしれない。
夜になると、少しだけ静かになる。
店の灯りは、まだ落ちていない。
明日も、たぶん変わらず開いている。
少しだけ、やさしい色が残っている。
カウンターの端に、ころりと丸い影。
誰かが置いていったのか、
それとも、最初からそこにあったのか。
指先にのせると、
ほんのりとした重みと、淡い香り。
思い出すほどでもないのに、
どこか懐かしい。
「……まあ、うちはこんなもんです。
お腹も心も、また明日で。」
明日は、少しだけ
その丸い色の話になるかもしれない。
— 甘さは、あとから来る —
深めの皿に、ひとつだけ沈んでいる。
形はそのままなのに、
輪郭だけが、少しやわらかい。
横に、小さく切ったパンが添えられている。
ロクは何も言わずに置く。
湯気だけが、ゆっくり上がっている。
「これ、崩していいやつですか」
クゥーがスプーンを当てる。
すっと入る。
「あ、これ……」
言いかけて、止まる。
しばらくして、横のパンに手を伸ばす。
カリ、と小さな音がした。
スープに少しだけ浸して、口に運ぶ。
「……あれ」
さっきより、少しだけはっきりする。
でも、何が変わったのかは言わない。
ロクは火を見たまま、何も言わない。
カウンターの端、いつもの席。
最初の一口では、何も起きない。
二口目で、少しだけ違う気がする。
パンを挟んで、もう一度。
さっきの一口が、少しだけ遠く感じる。
客は手を止めて、
皿の中を見ている。
何の味だったのか。
それはまだ、ここにあるはずなのに、
うまく掴めない。
「……まあ、うちはこんなもんです。お腹も心も、また明日で。」
今日の注意書き
・甘さは、あとから来ることがあります
・はっきりしたと思っても、すぐ戻ります
・最後の一口が、一番わからないかもしれません