映画を観ているみたいに小説が読める イメージ読書術 -7ページ目

映画を観ているみたいに小説が読める イメージ読書術

小説の世界に没入して
“映画を観ているみたいに” リアルなイメージが浮かび
感動が胸に迫り、鮮やかな記憶が残る。
オリジナルの手法「カットイメージ」を紹介します。
小説を読むのが大好きな人、苦手だけど読んでみたい人
どちらにもオススメです。

 映画『ラブレター』(1995 岩井俊二監督 中山美穂 豊川悦司)は二度観たが、私の好きな映画としては五本の指に入る。

 今もラストシーンの記憶が鮮明に残っている。

 

 その続編を思わせる、岩井監督の『ラストレター』(2020)がAmazon Prime Videoの見放題に出ていたので、これは観るしかないと思った。

 
 
 

 これには原作がある。しかし、作者は岩井俊二監督自身である。

 単なるノベライズ本なのか。

 それで原作と言えるのかなと思いつつ、Amazonで注文しておいて、映画を観始めた。

 

 うつ病が高じて自ら命を絶った女性 遠野美咲の葬儀から映画は始まる。

 離婚した美咲が身を寄せていた宮城県の実家に、高校生の娘 鮎美(広瀬すず)が遺された。

 

 美咲の妹 裕里(松たか子)が葬儀を終え、仙台市内の自宅に戻ろうとすると、中学生の娘 颯香(そよか 森七菜)が、しばらくここにいたいという。

 鮎美の“話し相手”として。折しも夏休みである。

   

 裕里は、実家を出る間際、鮎美から美咲あての高校の同窓会(同期会)の通知を預かる。

 その会に出むいた裕里は、姉と間違われてしまう。

 

 真実を言えずにそそくさと会場を後にするが、追いかけてきた同級生 乙坂鏡史郎(福山雅治)に声をかけられ、連絡先を交換する。

 それから裕里は、姉の名前で乙坂に手紙を送ることになる。

 

 乙坂は売れない小説家で、唯一出版し受賞した作品の題名は、『美咲』。

 大学時代の彼女との恋の顛末を描いた小説だった。

 

 高校時代、乙坂と裕里は部活の先輩と後輩の間柄だったが、乙坂は同級生の美咲に恋をしており、美咲あての恋文を何通も書いては、裕里に託していた。

 高校時代の乙坂鏡史郎を演ずるのは神木隆之介だが、美咲は広瀬すず、裕里は森七菜で、二人の娘たちと瓜二つの設定である。

 

 高校時代と現代との交錯、手紙のやりとりというロマンチックな展開は、やはり『ラブレター』を連想させる。

 2時間の映画の半分、約1時間観て一度中断し、小説を読み始めた。     ②へつづく

 

 

  

 

 

 

 映画『小説の神様』(2020)がAmazonPrimeVideoで公開されていたので、例によって“読んでから観よう”と思い、原作の相沢沙呼『小説の神様』(講談社タイガ)を開いた。

 ライトノベルなので、映画の助けを借りず自由にイメージして読み、そのあとで映画を観ればいいと思ったのだ。

 

 

 高校2年の千谷一也は、千谷一夜というペンネームを持つ覆面作家だ。

 中学2年のとき、新人賞で「日本刀のような」切れ味を持つ文章の才能を称えられ、デビューを飾った。

 しかし、その後、本を出すごとに売れ行きは落ち、読者レビューでも酷評されて、すっかり自信を無くしている。

 

 そんなとき、編集者に共作の話を持ち掛けられる。

 同じ高校生作家で、ベストセラーを連発し、華々しく活躍している不動詩凪(ふどうしいな)が考えるストーリーを一也が文章にする企画だという。

 しかし、会ってみると、不動詩凪の正体は、同じクラスの転校生小余綾(こゆるぎ)詩凪だった。

 

 ……と、読み進む。 しかし、予想に反して、この小説はかなりしんどかった。

 ストーリー自体は興味深い。この二人がこれからどうしていくのかと先が気になる。

 だが、一也のあまりに自虐的で、全否定的な内面語りとか、それに対して、高飛車すぎる小余綾詩凪の言動など、読むのがだんだん苦痛になっていく。

 歳のせいか、ライトノベルの世界との距離を感じた。

 

 とうとうあきらめて本を閉じ、本棚に戻してしまった。

『キミスイ』を観てから読んだときは、その文章の軽さに少し違和感を感じたが、やがて慣れた。

 しかし、この作品の文章は無理かもしれないと思った。

 

 そして何日かが過ぎた。

 ……が、ふとひらめいた。

 自分は、小説を読むのが苦手な人、もっと楽しく読みたいと思う人のため、『イメージ読書術』を広めているし、映画を観ながら読む方法も伝えている。

「読むのが苦痛」と感じた今こそ、自らそれを試すチャンスではないか。

 

 そう思って、映画を観始めた。

 『小説の神様 ~ 君としか描けない物語』 2020年

 監督:久保茂昭  

 主演:佐藤大樹 橋本環奈

 

 

 前半、ほぼ原作通りで映画は展開していく。

 小説の中で私が抵抗を感じた主人公の自虐的独白やヒロインの高慢な言動も、あまり気にならない。

 実写人物たちの行動として、自然に観ることができた。

 

 ただ、この映画、最初はモノクロで始まるが、それが長い。

 どこかでカラーになるだろうと思って観ていくが、なかなかならない。

 ヒロイン小余綾詩凪が共同で書く小説のストーリーを語るシーンから、世界は鮮やかな色彩に染め出される。

 その映像の変化は鮮烈で印象的だが、そこまでが長い(約20分)。

 これから観る方は、そのつもりでいてほしい。

 

 映画はとても楽しく、そのまま最後まで観たい気持ちになったが、約2時間の映画の半分でいったん観るのをやめた。

 そこまでで、だいたい小説を中断したあたり(文庫本で約120ページ)だった。

 

 そうして、小説の続きを読み始めた。――

 

 物語はさらに紆余曲折の展開を見せていく。

 主人公千谷一也とヒロイン小余綾詩凪の感情の浮き沈み、ぶつかり合いは激しく、共感しにくい点もあるが、最初のような苦痛はなく、自然に物語の流れに乗っていく。

 

 そして、読み終えると、「なかなかいい話じゃないか」という読後感が残る。

 

 実は、私のように小説が好きな人間、小説を書きたいと思っている人間には、とても共感できる世界がそこにはあった。

 途中で投げ出しかけたが、最後まで読んでよかった。正直、そう思った。

 

 その余韻を味わいながら、映画の残りを観た。

 映画の後半も、よくできていた。

 

 脇役の成瀬秋乃(文芸部新入部員)、九ノ里正樹(文芸部部長)にも光を当てる場面を作り、一也と詩凪の物語をより立体的に際立たせいている。

 そして、一進一退の波をくり返しつつ、結末へと進んでいく終盤、セリフ回しだと冗長になりがちなストーリー展開を、声のない人物の映像と音楽でテンポよく見せていく。 

 

 主演の佐藤大樹はEXILEのパフォーマーだが、地味で内省的な高校生作家の雰囲気をうまく出している。

 ヒロイン橋本環奈は、高飛車さの反面、優しく傷つきやすい内面をもつ複雑なキャラクター小余綾詩凪を、ツンデレに堕ちず、深みをもって演じている。

 喜怒哀楽の豊かな表情がとても魅力的だ。

 

 最後まで観終えて、「なかなかいい映画じゃないか」という感慨が残る。

 

「小説を書く」というきわめて内面的で画になりにくい題材を、みごと興味深く、感動的な物語に仕立て上げた。

 その意味で、小説も映画もよくできていると思う。 

 

 この作品、 やはりまず小説を読み、それから映画を観るのがおススメだ。

 私と違って、この小説の文章タッチに違和感を感じることがないのであれば……。

 

 

 

 

 織守きょうや『記憶屋』(角川ホラー文庫)

 

 前回、映画はあと回しにして予告編も観ず、さらで読んだ。

 すると、SFファンタジーとして純粋に楽しみ、結末の感動を味わうことができた。

 

 

記憶屋 (角川ホラー文庫)

 

 映画は、2020年 平川雄一朗監督、出演:山田涼介、佐々木蔵之介、芳根京子ほか。

 さっそく、PrimeVideoで楽しみに観始めた。

 

 

記憶屋 あなたを忘れない DVD通常版

 

 弁護士高原役が佐々木蔵之介なのは、原作よりもだいぶ年齢が上なので、おや、と思いながら観ていく。

 すると、登場人物名は原作を踏襲しているが、細かな設定やストーリー展開は原作とはだいぶ違うのがわかってきた。

 

 このブログシリーズ(観るか読むか)を書くうち、私が心掛けるようになったのは、「原作小説と比較せず、映画は映画自体として楽しむ」ということだ。

 

 そう思って観ていくと、映画独自のテーマも見えてきて、小説とは異なる結末にも、やはり別の意味での「哀しみ」が流れていることに気づいた。

 もしかしたら、原作を読んでいるからこそそう感じたので、映画だけを観たら結末の意味には気づきにくいかもしれない。

 

 この作品、「観てから読む」と、中途半端なネタバレで感動が薄れてしまうので、もったいない。

 小説自体は読んでイメージしやすく、ビジュアル的に特別な設定はないので、予告編や映画のチラ観も必要ない。

 

 やはり「読んでから観る」のがおススメだが、「映画独自の世界を楽しむこと」を忘れないでほしい。

 

 

 

 織守きょうや『記憶屋』 角川ホラー文庫

 

 

記憶屋 (角川ホラー文庫)

 

 映画は2020年公開。

 PrimeVideoで見放題になっていたが、今回は予告編も観ずに読み始めた。

 読み終えてみて、小説として純粋に楽しめたので、この選択はよかった。

 

 大学生の吉森遼一は、1年先輩の澤田杏子と知り合うが、彼女は痴漢被害にあった過去の記憶がぬぐえず、夜道を一人で帰ることができない。

 飲み会のたびに杏子を家まで送るうち、遼一は彼女を好きになり、その悩みを何とかしてあげたいと思う。 

 そんなおり耳にする、忘れたい記憶を消してくれる「記憶屋」の都市伝説。

 

 しかし、ある晩、遼一が久しぶりに見かけた杏子は、あれほど怖れていた夜道を平気で歩いている。

 声をかけると、遼一のことを知らないという――。

 杏子は「記憶屋」に嫌な記憶を消してもらうと同時に、その悩みに寄り添おうとしていた遼一の記憶まで失ってしまったのか。

 

 「記憶から消された側は堪らない」。

 遼一はその思いから、「記憶屋」の正体を追っていく。

 

 「忘れたい嫌な記憶を消す」ことは、果たしていいことなのか?

 人間は、嫌な記憶、つらい記憶を抱えつつ、それを乗り越えて生きていく存在だ。 

 だから、記憶を消すことはいけないことではないか。

 

 その考えは 「記憶屋」への本質的疑問として、くり返し語られる。

 その後、記憶屋をめぐるさまざまな人物の物語が交錯し、意外な真相が明らかになる。

 

 しかし、真相のさらに向こうに見えてくるのは、「記憶屋」の行為の是非を超えた、哀しい真実――。

 

 ジャンルとしてはSFファンタジーだろう。

 物語全体はリアルな世界だが、「記憶屋」の存在だけがファンタジー的SF設定。

 その中で人物の心情に感情移入していくと、結末、深い真実に涙する。

 最後の場面の味わいが格別なので、とくに終盤、結末を焦らずにじっくりと読んでほしい。

 

 ひとつだけひっかるのは、タイトルである「記憶屋」ということば。

 「○○屋」は「○○する人」だから、「記憶屋」は「記憶する人」。

 記憶を消す人なら 「消去屋」だと思う。

 「記憶」を使うなら「記憶喰らい」なんて妖怪っぽい名前も思い浮かぶが、この物語にはそぐわないか。

 

 それはさておき、映画を楽しみに観よう。

 

 

 

映画を観ているみたいに小説が読める 超簡単! イメージ読書術

 

 

 映画は、2020年、武正晴監督作品

 主演:波留  

 原作:桜木志乃『ホテルローヤル』(集英社文庫)

 

 この映画が公開されたとき、一度、ブログを書いた。

 桜木紫乃『ホテルローヤル』をカットイメージで読む 2020年11月21日

 

 

ホテルローヤル (集英社文庫)

 

 桜木志乃の小説はけっこう好きで、数多く読んでいるが、『ホテルローヤル』は直木賞を受賞したにしては地味なストーリーで、あまり印象深い作品ではなかった。

 北海道の湿原に面したラブホテルをめぐる7つの連作短編。

 

 映画化をきっかけに再読し、ひとつひとつの物語を丁寧にイメージして味わってみた。

 すると、「ホテルローヤル」の30年の歳月が確かに感じられたし、実際に描かれた7つのエピソードの背後に、「ホテルローヤル」で起きた無数の物語が浮かんでくる気がした。

 …… それが前回のブログ。

 

 地味な作品だという印象は変わらないが、カットイメージを意識して再読することで、自分にとって心に残る作品にはなったと思う。

 

 けっきょく映画は観ないままで過ぎたが、今回、AmazonPrimeVideoの見放題になっているのを見つけた。

 

ホテルローヤル

 

  例によってジムで走りながら、iPadで前半を観て、一度中断した。

  いくつかのエピソードが忠実に映像化されているが、やはり映画も地味である。

 

  主演の波留には、あまりにも地味すぎる役柄。

  一方、個性的な脇役たちの存在感が大きい。

  松山ケンイチ 安田顕 夏川結衣 余貴美子 伊藤沙莉 友近 ……

 

  翌朝、原作をパラパラめくったり、このブログを書き始めたりした。

  そのあと、またジムへ行き、映画の続きを最後まで観た。

  大きな盛り上がりはないが、ホテルローヤル開業時に遡る場面は、その後の年月と終焉を思うと、しみじみとくる。

 

  やはり脇役俳優たちの演技で観せる映画であると思った。

  意外なストーリー展開を期待してはいけない。

 

  そのつもりで観ると、なかなか味があり、観終わったあとには、30年の歳月への思いが残る。

  ホテルローヤルをあとにする雅代(波留)の新たな人生の展開を、静かに応援したくなる。

 

  やはり、「少し観てから読む」のがおススメだが、映画だけ地味に浸って味わうのも悪くない。

 

 

 

映画を観ているみたいに小説が読める 超簡単! イメージ読書術

 

 綿矢りさ『私をくいとめて』朝日文庫

 映画(2020年) 監督・脚本:大九明子  出演:のん 林遣都 中村倫也(声のみ)

 

 例によって、映画を途中まで観てから小説を読んだ。

 しかし、この作品は、“読んでから観る” のが正解だ。

 

 映画では主人公役  “のん”の演技がすばらしく、それを観てしまうと、小説はもう “のん”のイメージでしか読めない。

 

 映画を観る前だったら、この小説をどんなイメージで読んだだろう。

 それはもう体験できない。映画を観る前の私には戻れないのがくやしい。

 

 

 

 今回は、2時間10分の映画を最初の50分ほど観たのち、小説を読み始めた。

 映画で観たより先まで読んだころ、20分ほど映画を観て、また小説に戻り、最後まで読み終えた。

 その後、映画の続きを最後まで観た。

 

 小説も映画も、どちらもとてもよかった。

 だから、最初は小説を小説として、純粋に楽しみたかったのだ。

 

 アラサー女子の黒田みつ子は、会社でお局様になりつつ、休日はおひとり様ライフを楽しんでいる。

 その内面が、心の中の独り言で語られる。

 と同時に、自分の中に男の声 “A” が登場し、彼との対話が展開する。

 

 やがて、取引先の営業マン多田くんと家が近所であることがわかり、ときどき晩ご飯を作ってあげるようになる。しかし、部屋には上がらずテイクアウトで。

 二人の恋のゆくえが物語の柱だが、小説では、主人公みつ子の内面に入り込んで読んでいくのが楽しい。小説を読むおもしろさを実感できる。 

 

 私にはよくわからないが、今の独身アラサー女性の内面はこうなのか、と思わせるリアリティがある。

 いわゆる「奥手」とか「自意識過剰」とか、私が若いときに使っていたことばでは説明しきれない、当世的な心のありよう。

 それをうまく描き出している気がする。

 身近にいる独身のアラサー女子を思い浮かべて……、ムムム。

 

 

 一方で映画は、この小説の持ち味を生かした映像づくりに、みごと成功している。

 

 何しろ、のんの演技がすばらしい。

 彼女の顔のアップがものすごく多く、ほとんど一人芝居の映画だが、その表情の豊かさ、独白セリフの迫力にグイグイと引き込まれてしまう。

 

 のん(能年玲奈)は、NHK朝ドラ『あまちゃん』(2013)の印象が鮮烈だった。

 しかし、バラエティ番組で見る彼女は無口で、気の利いた受け答えができず、タレント性は低いと見えた。

 案の定、その後の俳優としての活躍は今ひとつだったと思う。

 

 しかし近年、厚生労働省の「最低賃金」啓発ポスターモデルに、2年連続で採用されている。

 何だか存在感が増してきたなと思っていたが、やはりこの映画で評価されたのか。

 

 映画の中では、『あまちゃん』当時の舌足らずのしゃべり方のまま成熟した女性になり、アラサー女子の複雑な心の内を、体当たりで表現している。

 

 それにしても、映画の後半、『あまちゃん』で「潮騒のメモリーズ」のデュオを組んだ、親友役の橋本愛が登場したのもうれしかった。

 イタリア人と結婚した、学生時代の親友。

 イタリアの空気感の中で、息の合った二人の場面は心に残る。

 

 この作品はぜひ、“読んでから観る”、それがおススメだ。

 

パラレルワールド・ラブストーリー

 

 前回取り上げた、東野圭吾原作の映画『パラレルワールド・ラブストーリー』のエンディングに流れるテーマ曲は、宇多田ヒカルの『嫉妬されるべき人生』だった。

 

 

嫉妬されるべき人生

 

 「運命の人」だと直観でわかり、その人と添い遂げるという歌で、映画とのつながりが意味深である。

 なぜか私の心の奥深いところに触れてくるものがあり、その後、くり返し聞いている。

 

     今日が人生の最後の日でも
     五十年後でも あなたに出会えて
     誰よりも幸せだったと
     嫉妬されるべき人生だったと
     言えるよ

                      『嫉妬されるべき人生』(作詞・作曲・歌唱 宇多田ヒカル)より

 

 これがメインテーマで、言い換えられ、くり返される。

 その流れの中で、1か所だけ違和感のあるのが次の一節だ。

     人の期待に応えるだけの
     生き方はもうやめる
     母の遺影に供える花を
     替えながら思う

 『嫉妬されるべき人生』(作詞・作曲・歌唱 宇多田ヒカル)より

 

 自分の直観を信じて愛し続ける、ブレない生き方と思っていたら、「人の期待に応えるだけの生き方はもうやめる」とある。

 それまではブレる生き方だったので、これは、信じた愛に生きる宣言なのか。

「母の遺影」も謎であった。

 

 その点の理解があいまいなまま、くり返し聞いていたが、ふと、この「嫉妬されるべき人生」とは、亡くなった母の生き方であり、そこから学んでこれからそうあろうと娘が自分に宣言している歌なのでは、と気づいた。

 

 聴き始めたころから、私の心に浮かぶ女性のイメージは和服姿で、舞台は戦前か少なくとも高度経済成長前の日本である。 

 親が決めた結婚か。

 あるいは、「軽いお辞儀と自己紹介でもう」という歌い出しで、お見合いか紹介による出会いの印象がある。

 だが、直観を信じ、その人を運命の人として添い遂げた。

 

 そんな母の生き方を、「誰よりも幸せだった」、「嫉妬されるべき人生だった」と胸に刻んで、娘は「人の期待に応えるだけの生き方はもうやめる」と、自身の愛を貫く気持ちを固める。

 だから、全編くり返されることばは母の生き方であり、同時に娘である自分の今の思いでもある。

 

 そんなふうに考えて、この歌詞の世界は私の中で腑に落ちた。

 

 とはいえ、他の部分の歌詞も、曲調も、そして宇多田の歌い方も神秘的で、謎めいた味わい深い曲であることに変わりはない。

 

 東野圭吾原作の映画『パラレルワールド・ラブストーリー』を、AmazonPrimeVideoで見つけた。

 2019年 森 義隆 監督 

 主演;玉森裕太  共演;吉岡里帆、染谷将太

 

 例によって映画を途中まで観てから、原作を読むことにした。

 

 

 映画のプロローグとして、象徴的なシーンがある。

 隣り合う線路を同じ方向に走る電車。

 ドアのガラス越し、向こうの電車でいつも見かける女性に主人公は惹かれる。

 しかし、2つの世界は並行しつつ、互いに交わらない。――

 

 ストーリーが始まると、それは過去のシーンで、主人公はそのときの女性と一緒に暮らしている。

 二人は同じ脳科学の研究所に勤め、彼女は知的で優しい。

 なぜか、彼の願望がかなった世界。――

 

 しかし、ふと場面が変わると、似て非なる世界が展開する。

 そこでは彼女は、親友の恋人として現れる。

 それが昔、並行する電車で見詰めていた女性だと気づき、 彼女への思いが再燃する。

 彼女も親友も同じ研究所に勤める同僚で、彼は複雑な感情に悩む。 ――

 

 2つの世界は場所や人物は同じだが、いくつかの点で異なる、パラレルワールドに見える。

 彼女と暮らす世界がリアルの世界だが、主人公はときおり夢の中でもう一方の世界に入り込み、それが現実の記憶であるような、不思議な感覚に悩まされる。

 

 パラレルワールドの不思議感を楽しみながら、前半を観て映画を中断した。

 

 さて、これはSFなのか、ファンタジーなのか、それともミステリーなのか。

 映画を半分観ただけでは、それがまだよくわかならい。

 その疑問をもったまま、原作を読み始めた。

 東野圭吾『パラレルワールド・ラブストーリー』講談社文庫

 

 

 小説では、彼女と暮らす世界が主人公崇史の三人称で、もう一つの世界が「俺」の一人称で区別されている。

 崇史の世界はクールだが、「俺」の世界は、かなわぬ恋に悩み、親友への嫉妬に苦しむ姿がリアルに描かれる。

 これはやはり小説ならではの深みである。

 

 読んでいくと、ときおり2つの世界がごっちゃになりかけるが、映画のイメージの助けも借りながら、どちらの世界か、ときどき読み返して確かめながら読み進めた。

 

 すると、記憶の迷宮に迷い込む崇史の不安定な感覚と、ストーリーのサスペンス感を持続することができた。

 そして、明らかになる真相と結末が哀しくも切ない。

 これはラブストーリーだが、友情ストーリーでもあるというのが、読み終えた感想である。


 そして、映画に戻り、残りを観終えた。

 結末のまとめ方が、小説とは少し違っている。

 

 もしかして映画だけを観たら、一度では理解できない部分が残るのかもしれない。

 しかし、小説のストーリーをどうアレンジしたか、という視点で観られたので、映画独自の展開に入り込み、ラストの不思議な余韻、一抹の希望を味わうことができた。

 

 さて、ではこれは、ファンタジーか、SFか、それともミステリーか……。

 

 このブログで何度か書いているが、人が生き返ったり、運命が変わったりする“ファンタジー”の展開が,、私はあまり好きではない。

 私たちが悩む現実世界の制約をいとも簡単に捨てて、要するに「何でもあり」になってしまうと、感動できない。

 

 ままならない現実から自由になって想像世界に遊ぶのが、ファンタジー・ファンの心理かもしれないが、私は「非現実」と思うと、どこか冷めてしまう。。

 東野圭吾の作品で言えば、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』がそれだと思う。

 だから映画を観ただけで、原作を読む気にはまだなれないでいる。

 

 SFはリアルの世界に足を置きつつ、「今より科学が進歩したら、ありうるかもしれない」という世界を描く。

 東野圭吾の作品で言えば、『人魚の眠る家』はこのジャンルに入る。

 現実に立脚しつつ、その延長で想像をふくらませるので、私はけっこう楽しめる。

 

 それらに対してミステリーは、リアルの世界そのものである。

 現実にはありえない不思議と思えたできごとの謎が、次第に紐解かれて、結末でみごとにつながる。

 だから素直に感動できる。

 東野圭吾の作品の多くはこれに属するが、その典型は、『ガリレオ』シリーズであろう。

 天才科学者湯川は、不可思議な現象を科学で解明する。

 だから、これはSFではない。 

 

 では、この作品『パラレルワールド・ラブストーリー』は、けっきょくファンタジーなのか、SFなのか、それともミステリーなのか……。

 その答え自体がネタバレになってしまうので、ここでは控えておこう。

 

 ぜひ、ご自身で確かめてほしいが、映画だけではちょっと物足りなさが残るかもしれない。

 ここは、まず映画の予告編を観て、イメージの材料と期待感を得てから、小説を読むことを勧めたい。

 

 

映画を観ているみたいに小説が読める 超簡単! イメージ読書術

 

 発達障害当事者会イイトコサガシ代表で、コミュニケーションのワークショップを全国で開催してきた冠地情(かんちじょう)さんとは、10年近いお付き合いです。  

 彼がパーソナリティを務める地域局のラジオ番組にゲスト出演し、私自身の発達障害?体験を語りました。

 

 

 幼いころからの劣等感(生きづらさ)を、どう乗り越えて、ポジティブ、クリエイティブな教師に変貌できたのか。

 そこで、私の自律訓練法による瞑想体験が関わってきます。

 教育エジソン 「瞑想・イメージ」 のページにリンクをがあるので、お聴きください。

春休みに2つのカットイメージ・セミナーを開催します。

 

3月26日(土) 10:00~11:30  カットイメージ初級90分セミナー

4月 2日(土) 10:00~11:00  カットイメージ超入門60分セミナー

 

“映画を観ているみたいに小説が読める”と評判の“イメージ読書術”(カットイメージ・リーディング)を、短時間で体験していただけるセミナーです。

教育エジソンのブログをお読みいただき、興味を持ってくださった方は、この機会にぜひ体験してみてください。

 

申込みは、セミナータイトルをクリックして、こくちーずのイベントページから。

 

 

セミナーの詳細は、「教育エジソン」 セミナー・研修会のページをご覧ください。

 

 

読んでから参加するか、参加してから読むか。

本当は、「参加してから読む」が理想です。

本ではできないセミナーならではの体験があるので、それで実感をつかんでから読めば、本の内容がスラスラと腑に落ちます。

 

「カットイメージ」について、より詳しく知りたい方は、教育エジソン カットイメージのページで.。