
Here is love, vast as the ocean
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by Robin Mark

Here is love, vast as the ocean
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by Robin Mark
あれは8月初旬、主人が夜勤で家にいなかった時のことです。
その晩も、隣のトレーシーのフロントガーデンには、いつものように若者達が集まっていました。
一応テレビの音で、外の騒音が気にならないようにしていたのですが、すでに眠ってしまっているヨシヨシと一緒に二階の寝室に上がって行ったのが、夜中の12時頃だったかと思います。
いつもだったら、若者達も10時ぐらいにはいなくなっているはずなのに、その日に限って夜中を過ぎても解散する気配がありません。
それどころか、益々うるさくなるばかり...。
トレーシーは、私の主人がその晩留守で、家には私とヨシヨシだけだというのを知っていたので、この時とばかりに、彼女と仲間達は思いっきり騒いでいるような感じがしました。
私は、その騒ぎがとても怖くて、カーテンをちょっと開けて外の様子を伺うことすら出来ない状態でした。
そして、最悪なことに、フロントガーデン側の寝室の狭い上窓が、開けっ放しではありませんか。
勇気を持って閉めようと思ったのですが、閉める時の微かな音に彼等が気付いて、この家に何か危害を加えてくるのではないかと思い、私は仕方なくその窓を閉めるのを諦めました。
もうそうなると、外の話し声と騒ぎが、リビングにいる時よりもよく聞こえて、とても眠りにつくどころではありません。
幸いにもヨシヨシは、そんな騒ぎなど関係なくスヤスヤ眠ってくれています。
しかしそれとは逆に、外の騒ぎはどんどんエスカレートしていくばかり...。
何かをバンバン叩いたり蹴ったりする音が、時々聞こえてきます。
そんな騒ぎの傍らで、その若者達のリーダーらしき男性とトレーシーが、親しげに話している声が聞こえました。
その声の落ち着き具合からして、決してそんなに若くはない感じがしました。
そして時折り、その声の持ち主が、若者達を先導するかのように、何か掛け声をかけていました。
でも、私には何を言っているのか、はっきりと聞き取ることは出来ません。
その傍には、大声で笑っているトレーシーの声が...。
これでは怖すぎて、ベッドで落ち着いて眠ることなど出来る訳もありません。
そんな恐怖の時間がどれくらい続いたことでしょう...。
閉じ篭ることが多くなったそんな7月のある日、私とヨシヨシは伯母さんと一緒に出かける機会があり、空が暗くなりかけた頃に帰宅した時のこと。
伯母さんの車から降りて家の方を見た瞬間、私の体に緊張感が走りました。
なぜかというと、家の前、厳密に言うと、隣のトレーシーの家のフロントガーデンに男女10人くらいの、決してガラがいいとはいえない様相の若者達が、ビール瓶を片手にたむろしているではありませんか。
彼等は、勿論トレーシーの仲間なのでしょう。
トレーシーはというと、いつものように彼女の家のドアの所に座っていました。
伯母さんと私が、家のドアに向かって歩いている傍らで、いかにも酔っ払った状態のハスキーボイスの女性が私に話しかけてきました。
"Hey! Are you Chinese?"
"No. I'm Japanese."
彼女は、その後にご機嫌な感じで何か言っていたようでしたが、何を言っていたのか覚えていません。
一応、伯母さんと私は"See you."と言って家の中に無事入ることが出来ました。
伯母さんも当然の如く、この状況をよく思っていなかったようです。
もともと引っ越して来た当初から、トレーシーに対して何となく良い印象を持っていなかったのですが、これで益々あまり関わりたくない存在になってしまいました。
とは言うものの、外で顔を合わせる時は勿論、ごく普通に挨拶は交わしていた訳ですが...。
オレンジハウスでの新生活が始まり、これで落ち着いた暮らしが出来ると思っていたのです...が、そうは問屋がおろしてはくれませんでした。
実は、まだ私とヨシヨシがこの家に通いで来ていた時から、一つ気にかかっていたことがあったのです。
それは、私達が二週間程通っていた間、両隣の子供達とママさん達は、朝早くから夕方(ん、夜)の8時近くまで、雨の日以外は殆ど、毎日のように家のドアを開け放ち、外に出ずっぱりだったということにです。
この時期のイギリスは、夜の10時ぐらいまで明るいので、8時前といってもそんなに遅く感じられないのは事実です。
この長屋のフロントガーデンは、隣同士の低い柵はあるものの、殆どあってないような状態で、子供達は平気で私達のフロントガーデンもちょくちょく使って遊んでいました。
今考えると、間に挟まれた家というのは、状況によっては良くも悪くもなるのです。
それはそれで別によく、最初の内はご近所付き合いだと思い、私達も外に出て一緒に遊んだりしていたのですが、それが毎日ともなると、そんな状況に慣れていない私としては、だんだんと苦しくなってきました。
そんなある日、こんな事がありました。
ドアを開けっ放しにしていると、いつの間にか23番に住む一人っ子のケイルブが、勝手に入って来て、家の中を色々と探索しだしたではありませんか。
こんな事があったのも重なり、私はたった1、2週間でこの状況に嫌気が差し、その後は、殆どドアを開け放つこともなく、主人がいない昼間は、家の中に閉じこもるようになってしまいました。
私としては、「こんな筈じゃなかったのに~
」という思いでいっぱいだったのですが...。
さて、オレンジハウスでの生活について詳しく書く前に、ここで少しご近所さん達のことに触れておこうかと思います。
私達の家番は25だったのですが、まず23番に住んでいたお隣さんについて。
当時26歳だったトレーシーは、見た感じ強気系の体格のいいショートカットのシングルマザーで、3歳のケイルブと二人暮らしでした。
彼女の旦那さんは、その数年前に、訳ありの喧嘩か何かで刺されて亡くなってしまったらしいのですが、その話を聞いた時点で、私の中で何か嫌な感じ(予感)を受けたのは確かです。
そして、息子のケイルブ、この子がまたくせ者で、ちょっとばかり痛い子だったのですが、最初の頃は、それなりに普通に彼等とも接してはいました。
そして、次に27番の家族について。
こちらの家には、どちらも恰幅のいいスティーブとリーという夫婦、それに3歳のジャックと1歳になるベンの4人が住んでいました。
彼等はどちらかというと、おっとりとした気のいい感じの家族だったと思います。
本当は、もう一軒29番のお宅があるのですが、そこのご夫婦は娘のエイミー以外、どちらかというと、あまり近所とは関わらない感じだったような気がします。
このようなご近所さん達が、私達の住む長屋の住人でした。