あれは8月初旬、主人が夜勤で家にいなかった時のことです。
その晩も、隣のトレーシーのフロントガーデンには、いつものように若者達が集まっていました。
一応テレビの音で、外の騒音が気にならないようにしていたのですが、すでに眠ってしまっているヨシヨシと一緒に二階の寝室に上がって行ったのが、夜中の12時頃だったかと思います。
いつもだったら、若者達も10時ぐらいにはいなくなっているはずなのに、その日に限って夜中を過ぎても解散する気配がありません。
それどころか、益々うるさくなるばかり...。
トレーシーは、私の主人がその晩留守で、家には私とヨシヨシだけだというのを知っていたので、この時とばかりに、彼女と仲間達は思いっきり騒いでいるような感じがしました。
私は、その騒ぎがとても怖くて、カーテンをちょっと開けて外の様子を伺うことすら出来ない状態でした。
そして、最悪なことに、フロントガーデン側の寝室の狭い上窓が、開けっ放しではありませんか。
勇気を持って閉めようと思ったのですが、閉める時の微かな音に彼等が気付いて、この家に何か危害を加えてくるのではないかと思い、私は仕方なくその窓を閉めるのを諦めました。
もうそうなると、外の話し声と騒ぎが、リビングにいる時よりもよく聞こえて、とても眠りにつくどころではありません。
幸いにもヨシヨシは、そんな騒ぎなど関係なくスヤスヤ眠ってくれています。
しかしそれとは逆に、外の騒ぎはどんどんエスカレートしていくばかり...。
何かをバンバン叩いたり蹴ったりする音が、時々聞こえてきます。
そんな騒ぎの傍らで、その若者達のリーダーらしき男性とトレーシーが、親しげに話している声が聞こえました。
その声の落ち着き具合からして、決してそんなに若くはない感じがしました。
そして時折り、その声の持ち主が、若者達を先導するかのように、何か掛け声をかけていました。
でも、私には何を言っているのか、はっきりと聞き取ることは出来ません。
その傍には、大声で笑っているトレーシーの声が...。
これでは怖すぎて、ベッドで落ち着いて眠ることなど出来る訳もありません。
そんな恐怖の時間がどれくらい続いたことでしょう...。