前記事、X(JAPAN)の名盤『BLUE BLOOD』のレビュー(思い出話)に続きまして…

X(JAPAN)の更にバラエティ豊になったメジャー2ndにしてまたまた名盤『Jealousy』を、しゃぶり尽くすとか尽くさないとか!


X(JAPAN) - Jealousy

エックス - ジェラシー

1991年7月1日リリース


トラックリスト

  1. Es Durのピアノ線
  2. Silent Jealousy
  3. Miscast
  4. Desperate Angel
  5. White Wind From Mr.Martin〜Pata's Nap〜
  6. Voiceless Screaming
  7. Stad Me In The Back
  8. Love Replica
  9. Joker
  10. Say Anything
赤字表記は後にリカットされたシングル曲。


前作『BLUE BLOOD』よりも更にバラエティに富んだ本作、やはり名盤と誉高い『Jealousy』。初動で60万枚を売り上げ、最終的にはミリオンを達成。

バラエティに富んでいる理由の一つとして、コンセプトの一つに「YOSHIKI以外のメンバーが担当した詞や曲を入れて、前作から約2年の間の個人の成長を見せる。」というものがあり、結果として実際バラエティに富んだ作風となっている。

YOSHIKI個人のテーマとしては『殺気』を追求することに徹したらしく、2週間ドアも窓もカーテンも閉めた家に閉じ籠り、楽器も演奏せず、只管譜面と睨めっこしたらしい。

そして、「自分が音とセックスできているかの気持ちでプレイできるか」などと意味の解らないことを供述しており←

いや、意味解らんことなんかない。実際ガチってオリジナルの曲を演奏する際には、その曲の音とセックスできているのか否かは兎も角、陶酔することができか否かというのは非常に重要なことである。それができるか否かの違いで、実際のLIVEでの温度差も変わる。何より、自己満足もできないようなものでは観客を真に陶酔させることなどできないと、似非アーティスト気取ってた私は考える。


ということで狂気に取り憑かれたアルバム『Jealousy』のレビューやっちまうぞこらぁ!

1曲目、Es Durのピアノ線

アルバムの導入となるピアノインスト。ロスから帰国する前に1日で制作された楽曲で、非常に物悲しく美しいメロディと緊張感を持っている。そしてその緊張の糸が突然…ピーン…ぐにゃあ…


2曲目、Silent Jealousy

はい。皆んな大好きSilent Jealousy。言わずと知れたスピードメタルチューン。


美しいピアノの旋律から、戦慄の旋律へと←

もう何も言うことがない楽曲ですね。YOSHIKの暴走ドラム、TAIJIのベースライン、ツインギターのリフ、ツインリード、TOSHIのボーカルと全てが素晴らしい。

私は声を大にして言いたい。Xのメタルチューンの中での一番の代表曲は、紅ではなくSilent Jealousyやろうがいと。(それは個人の嗜好によるやろがいと。)

この曲も中々に思い出深い曲で、県外にお呼ばれしてバンドで遠征LIVEした際に、他のバンドのメンバーたちと唐突にセッションしますよぉってなってやったのがこの曲で、会場大盛り上がり。

この曲はね、難しそうかもしれんけど実際そうでもなくて、ギターに関して言えばバッキング自体はそこそこ速いけど、ギターソロに関してはXの楽曲中テクニック的には一番簡単と言うか、弾きやすい感じってのが個人的にはあります。素晴らしいソロなんですけどね。


間奏に入る前のYOSHIKIによるセリフパートの英詞和訳。


“I just wanted to stay with you

I just wanted to feel your breath of grace

I didn’t know what to do

I couldn't say anything

When consciousness returnd

Everything had been washed away by the tide of time, even you

But the scars of memory never fade away

I can't stop loving you

Stop my tears

Stop my loving

Kill my memories”


“私はただ、あなたと一緒にいたかった

あなたの優しさの息吹を感じたかった

どうしたらいいのかわからなかった

何も言えなかった

意識が戻ったとき

すべては時の流れに流されていた、あなたさえも

でも記憶の傷跡は決して消えない

あなたを愛することを止められない

私の涙を止めて

私の愛を止めて

私の記憶を殺して”


ここの歌詞なんですけれども、これも一つのYOSHIKIの狂気に繋がっている歌詞だと解釈しています。

というのも、YOSHIKIは父親を自殺で亡くしているのですが、その父親を凄く愛していた上に、そんな父の姿を最初に目撃したのがYOSHIKIだったんですね。

だから、これは後の名バラード『Tears』の歌詞にも繋がるものなのですが、父親の死を受けてそれがトラウマとなってYOSHIKIを狂気に駆り立て、その狂気と愛が書かせた歌詞だと考察しときます。


3曲目、Miscast

HIDEちゃん作詞作曲によるご機嫌なハードロックチューン。


音作りはXにはなかったロックンロールを目指したらしいですけど、そのコンセプトの通りの曲となっていますね。

歌詞はアルバムコンセプトのJealousy(嫉妬)から、金や地位に対するジェラシーと栄枯盛衰がモチーフになっているらしいです。

昔はそんなに好きじゃなかったけれども、今聴くとかっちょいい!


4曲目、Desperate Angel

TAIJI作曲、TOSHI作詞によるアメリカンハードロックな一曲。こちらも昔はそんなに好きじゃなかったんですけど、今聴くのめちゃくちゃかっこいい!

アメリカンハードロックというか、LAメタルっぽさが凄くありますよね。間奏のキメとかめちゃめちゃカッコいい。


5曲目、White Wind From Mr. Martin 〜Pata's Nap〜

PATAが作曲した数少ない楽曲の一つでギターインスト。

凄く優しい感じのアコースティックギターのインストで、なんならビートルズとかにありそうな楽曲。尚、使用しているギターはマーティンのアコースティックギターである。

次曲、Voiceless Screamingのための繋ぎとしてTAIJIが気に入ったために採用された楽曲。


6曲目、Voiceless Screaming

完全に隠れたXのアコースティックバラード。TAIJI作曲、TOSHI作詞。


個人的にこの曲は、ずっとアコースティックな展開ではあるけれど、XのStairway to Heaven(天国への階段/Led Zeppelin)だと思っている。

そして、原曲ではこの曲でYOSHIKI、HIDE、PATAは参加していない。ピアノもドラムもない曲なのでYOSHIKIは当然であるとして、HIDEとPATAに至っては、TAIJIほど上手くギターが弾けないという理由により参加していない。よって、殆どの演奏をTAIJIがこなしている。流石は元ギタリスト。というか、才能の塊すぎるんだよ。

歌詞はTOSHI自身をモデルとしたものとなっている。そしてその歌詞も中々の悲しみと狂気を帯びている。

以下、Voiceless Screamingの英詞と和訳。


“I'm drawing in sadness

Falling far behind

I feel there is just no way out

Is there anyone there?

Where am I?


Insanity and loneliness

Tear my painful heart

Broken heart keeps of going to beat

But it never stops bleeding


I've been waiting for love to come

Someone who wants to touch me inside

Memory of my yesterday

Careless words and deeds

Masquerade of love

Gotta find my way outta here


I was blinded by dark desire

Over time

I've been through it all

I'm crying my share of tears

What can I do

Will I make it through

I must be true to myself


Voiceless screaming

Calling to my inside of me heart

Voiceless screaming

Now is the time

I got speak out


Voice of faith,

I'm starting to realize

Now my eyes can see

I have gone so far

I'm feeling breath fo life


And I'm looking for love to reach

Someone I want to touch deep inside

Light shines on my sight of doubt

Don't be afraid

Move forward one step

Willing mind is what

I have found at last


Voiceless screaming

Calling to me inside of my heart

Voiceless screaming

Now is the time

I got to speak out

Voiceless screaming

Calling to me inside of my heart

Knockin' on my soul's door

I believe in myself and trust what I do

Voiceless screaming

Pain of the past still hurts me inside

Knockin' on my soul's door

I climb the stairs that lead me to heaven…”


“悲しみに引き込まれる

遅れをとっている

出口がないように感じる

誰もいないのか?

ここはどこ?


狂気と孤独苦しい心が引き裂かれる

傷ついた心は鼓動を打ち続ける

しかし出血は止まらない


愛が来るのを待っていた

私の内側に触れたい人を

昨日の記憶

不注意な言動

愛の仮面舞踏会

ここから抜け出す方法を見つけなければ


暗い欲望に目がくらんだ

時を超えて

私はすべてを経験した

涙を流しながら

私はどうすればいいのか

私はやり遂げることができるだろうか

私は自分自身に忠実でなければならない


声なき叫び

心の内側に呼びかける

声なき叫び

今こそ

私は声を上げる

信仰の声

私は気づき始めた

今、私の目は私はここまで来た

私は生命の息吹を感じている


愛が届く場所を探している

心の奥底に触れたい誰かを

疑いの視界に光が射す

怖がらないで

一歩前へ

その心こそ

やっと見つけた


声なき叫び

心の中で叫んでいる

声なき叫び

今こそ

私は声を出さなければならない

声なき叫び

心の中で叫んでいる

魂の扉をノックする

自分を信じ、自分のすることを信じる

声なき叫び

過去の痛みはまだ私を心の中で傷つけている

魂の扉をノックする

天国へと続く階段を登る…”


7曲目、Stad Me In The Back

前曲とうって変わって完全なるスラッシュメタル。(激速)

X史上最も速い曲であり、BPMは200を超えている。YOSHIKI殺しの曲である上に、他のパートの演奏難易度もX史上最上位クラスである。バンドスコアにコピーするやついんのか?って書いてるけど、コピーするやついるんです。

ただ例によって例の如くなんですけど、個人的には別にそんなに好きじゃない。

スラッシュメタルは好きだけれど、Xには別にスラッシュメタルを求めてないんですよ。っていう。


8曲目、Love Replica

HIDEちゃん作曲による三拍子のインストナンバー。大好きです。

ハンマービートのリズム音は、HIDEがスタジオの外にあった大きなゴミ箱を持ち込んでパイプで叩いた音らしい。

いろいろな音がサンプリングされていてインダストリアル感は勿論あるんだけれど、それ以上にね、お人形さんがワルツを踊っている感があるよね。

フランス語によるナレーションは、ナルシストが自分で自分の美しさに嫉妬するがコンセプトらしい。まんまギリシャ神話のナルキッソスである。


9曲目、Joker

前作『BLUE BLOOD』収録のCELEBRATIONの姉妹曲。HIDEちゃん作詞作曲によるアメリカンハードなロックンロールナンバー。

HIDEちゃんは何かとソドム好きである←

そしてこの曲に関してはごめんなさいけど、今も昔もそんなに好きじゃないし思い入れもないとです。オレには明るすぎるんや。


10曲目、Say Anything

アルバムラストを飾る壮大なバラード。


そもそも、このアルバム『Jealousy』は本来、次作となる『ART OF LIFE』と合わせて2枚組でリリースされる予定であり、その『ART OF LIFE』はSay Anythingの第二章という位置付けであったという逸話がある。しかしYOSHIKIが倒れてみたり、ボーカル録りの難航や契約上の問題などのトラブルが相次ぎ、2枚組として出すことは叶わなかった。

よって、この曲Say Anythingも、一つの芸術作品として見た場合、未完成だと言ってもいいのかもしれない。

とは言え素晴らしいバラードであり、大好きな曲なんですけどね。


以下、最後のYOSHIKIによる英語での語りパートと和訳。


“I believed 

If time passes everything turns into beauty

If the rains rain stop, tears clean the scars of memory away

Everything starts weaning fresh colors

Every sound begins playing a heatfelt melody

Jealousy embellishes a page of the epic

Desire is embraced in a dream

But my mind is still in chaos and…”


“私は信じている

時が過ぎれば、すべてが美しさに変わる

雨が止み、涙が記憶の傷を洗い流せば

すべてが新鮮な色彩を放ち始める

すべての音が熱を帯びた旋律を奏で始める

嫉妬は叙事詩の1ページを飾る。

欲望は夢に抱かれる 

しかし、私の心はまだ混沌としている...。”


最後の一節からも分かる通り、まだ完結していないということで、


『Jealousy』の総評

キラーチューンも美しいバラードもアコースティックナンバーもあり、その一曲一曲が素晴らしい輝きを放っている。が、しかし、よく言えばバラエティに富んでいる。悪く言えば散漫な印象である。

いや、凄く好きなアルバムなんですけれどもね。しかし、トータルとして『BLUE BLOOD』には劣るかなといった印象。


『Jealousy』収録のお勧め曲

2.Silent Jealousy、3.Miscast、6.Voiceless Screaming、10.Say Anything