五感を切り裂くXの狂気!インディーズ最大の売り上げを誇った怒涛の名盤!


 X(JAPAN)がインディーズ時代に出したアルバム『Vanishing Vision』を怒涛のレビュー!



X(JAPAN) - Vanishing Vision
エックス - ヴァニシング・ヴィジョン
1988年4月14日リリース
オリコン週間19位(インディーズバンドとしては初の快挙)
(本来のアルバムジャケットが少々露骨に過激なため、画像は差し替えてあります。)

トラックリスト
  1. DEAR LOSER
  2. VANISHING LOVE
  3. PHANTOM OF GUILT
  4. SADISTIC DESIRE
  5. GIVE ME THE PLEASURE
  6. I'LL KILL YOU
  7. ALIVE
  8. KURENAI
  9. UN-FINISHED…

逸話/解説

X(JAPAN)インディーズ時代初にして唯一のフルレンスアルバム。YOSHIKIによる自主レーベル、エクスタシーレコードからリリースされており。そのエクスタシーは後にLUNA SEAやGLAY等を見出し輩出している。
初動で当時としては異例である一万枚以上のセールスを上げ、最終的な売り上げは41万枚以上を記録。
当時のレコードショップでは海賊盤も出回り、本当はもっと売れているとかいないとかという逸話がある。

レコーディングが予定よりも延びたり、TAIJIが一回録っていたベースのテイクをTAIJIは気に入っていたものの、YOSHIKIが気に入らず没にしたり、HIDEは腱鞘炎になったり、TOSHIは声が出なくなったりという状況に嵌り、「今日までに録り終えないと明日のスタジオ代をまかなえない。」という切迫した状況下で録られたため、YOSHIKIは「レコーディングなんて嫌いだ!」と言い放ったという。どうりで一向にアルバム出す出す言うて出ない。そろそろというかとっくに飽きた。完璧主義者だから仕方ないね!


『Vanishing Vision』一曲ごとのレビュー/解説

1曲目、DEAR LOSER

TAIJI作曲によるアルバムのオープニングを飾る妖しげで不穏なインストナンバー。のっけのアルペジオからして不穏であり、『Vanishing Vision』の狂気を感じさせる。コンセプト通り、何かが襲ってきそうな感じである。ドラムがボレロのリズムに入ってからのパームミュートによるギターのメロディはHIDEが作ったらしいけど、HIDEさん腱鞘炎のために弾くことができず、巨人大好きおじさん(PATA)が担当。


2曲目、VANISHING LOVE

DEAR LOSERの不穏感を受けてからの狂気の高速スピードメタルナンバー。


I don't want Vanishing love!


アルバム屈指の名曲であり、初期Xにおいて非常に重要な楽曲(※凄く個人的な感想です)

イントロの暴力的なギターリフからは想像できないくらいにはメロディも展開も美しく、そのギャップが更に美しい楽曲である。

ツインリードの絡みが素晴らしく、更にそれを引き立てつつ間を縫うようなTAIJIのベースラインも素晴らしいし、YOSHIKIのドラムもワンパターンではなく要所で遊びを入れたりフィルインだらけだったりで、カッコいい上に面白い。更に歌詞も面白い上にかっこいい!6分ある楽曲だけれど、冗長な感じは全くしない。


3曲目、PHANTOM OF GUILT

TAIJI作曲、TOSHI作詞による16ビートのダンサブルな楽曲。TOSHIとTAIJIは仲良し。

歌詞はTOSHI自身のコンプレックスと、人間の心の葛藤の世界をテーマにしている。

意外とツインリードが中々にがんばってる楽曲であり、初期RACER XとかCacophonyのようなギターメロディが飛び出してくる。個々のパートの難易度以前に、バンドでのアンサンブルが非常に難しい楽曲かと思われる。


4曲目、SADISTIC DESIRE

HIDE作曲の、のっけのドラムから炸裂しているハードロックチューン。


狂った女を 壁に吊るして Hanging on the wall

(壁に吊るして壁に吊るすって大事なことやから2回言うたに違いない。)


はい。この曲はHIDEちゃんがX以前に在籍していたバンド、横須賀サーベルタイガーの楽曲『SADISTIC EMOTION』をXでリメイクした楽曲であり、初期どころか(解散前の)後期に渡ってまで演奏された、X(JAPAN)において、非常に重要な楽曲である。(二度目まして。)

歌詞はデヴィッド・リンチの映画『ブルーベルベット』に触発されて書いたものであり、壁に吊るして壁に吊るしちゃうという不条理さに加え、狂気が漂いまくっている。TOSHIは歌詞の主人公としてカリスマ気分で歌ったらしい。

個人的な雑感として、ギタープレイに関して、PATAはポップだけどやってることはとても複雑と言っているけれど、多分演奏難易度に触れて発言していることではないんじゃないかなと思う。確かに色んなことをやってはいるんだけれど、プレイしていてそんなに難しいということはない。ただし、ツインリード含めて非常にカッコいい!そして何よりこの曲もTAIJIのベースがカッコ良すぎる。Cメロにあたると思われるパートのスラップに、サビ後の指弾きによるベースソロ、更にギターソロ中のハーモニクスにメロディの間を縫うベースラインと、余す所なくカッコいい。クールである!

1991年にリメイクされシングル『Silent Jealousy』のカップリング曲として収録されている。


5曲目、GIVE ME THE PLEASURE

作曲はTAIJIとHIDEによるフュージョンナンバー。

TAIJIが偶々見た殺人事件のニュースをモチーフにしているらしく、殺人事件の悲惨な情景を思い起こさせるようにとのテーマどおり、非常に狂気に満ちた楽曲である。TAIJIのベースは全編に渡ってスラップ(チョッパー奏法)で演奏されている。めちゃめちゃカッコいい。

民族音楽を思わせるパーカッシブなドラムも何気にカッコいい。ボーカルパートというか声のパートは全てYOSHIKIの朗読にエフェクト加工を施しているものであり、その内容は精神の快楽は何か?であるため、色々とやばい。(語彙力)


6曲目、I'll KILL YOU

初期Xを代表する殺傷力の高いキラースピードメタルチューン。


Oh,go to the grave together!(ひぇっ…)


インディーズ期の1stシングルとしてリリースされた楽曲のリメイク。

非常に高速な楽曲であり、YOSHIKIは普通の精神状態では叩けず、イラついた時になんとなく叩いたらそれがOKテイクとなった結果、TAIJIは合わせるのが大変と愚痴り、HIDEは二度とやりたくないと抗議したという。

兎に角突進力、殺傷力の高い曲であるため、聴くにしても演奏るにしても、細かいことは気にせずやりゃいいらしい。とYOSHIKI先生もそのように言うているとかいないとか。


7曲目、ALIVE

ベートーヴェンのピアノソナタ『月光』をモチーフにしたバラードですね。


最初の儚く悲しい雰囲気からは一転、ドラムが入ってからはどこか狂気混じりの普遍的ではないバラードである。にしてもツインリード及びギターソロのクラシカルなメロディラインが美しい。

後半になってからは更に狂気の世界観である。

「夢の中で生死の追い込まれ、生きるか死ぬかで葛藤している時、ふと目を覚ましたら身体中から血が流れていて、自分が生きていることを認識する」というストーリー仕立ては歌詞世界。

うーん。インセプション。夢の何階層目?狂気!狂気でしかない!


8曲目、KURENAI

そう。『BLUE BLOOD』に収録されているあの有名な『紅』のアレンジ違いの全英詞Verである。

この曲は本来、一度はボツ曲になっていた。(一人で納得)

しかし、HIDEが気に入っていたため、YOSHIKIがHIDEに加入を打診した際に、「紅のあのイントロが弾けるなら入ってもいい」と言ったため、再びセットリストに加わることとなり、更にはTAIJI主導でリアレンジされたという楽曲。それが紅。

この曲に関しては『BLUE BLOOD』に日本語Ver.が収録されているため、特に言うこともないです。


9曲目、UN-FINISHED…

アルバムラストを飾る楽曲であり、タイトルの通り、意図的にいきなり途切れて終わる。意味がわからない。

完成Verは『BLUE BLOOD』のラストに収録されている。


『VANISHING VISION』の総評

V系ファン、そしてX(JAPAN)ファンにとっては間違いなく必聴の一枚であり、インディーズにおける歴史的名盤。初期Xの狂気、破滅の美学を体感することごできる。てか体感せよ!


『VANISHING VISION』からのオススメ曲

2.VANISHING LOVE、4.SADISTIC DESIRE、6.I'LL KILL YOU、7.ALIVE



VANISHING VISION縲EXC-001 by X Japan (1991-07-28)