いや、この曲を前にしてレビューとかそんな上等な言葉使ってられへんのんですけれども。
様々な苦境を乗り越え、XからX JAPANに改名後、世界進出の足がかりとして初めてリリースされたオリジナル音源、神曲『ART OF LIFE』を控えめに語る!
X JAPAN - ART OF LIFE(アート・オブ・ライフ)
1993年8月25日リリース
前記事『Jealousy』のレビューでも書いているけれど、本作は本来『Jealousy』との2枚組でリリースされる予定だったが、様々な問題によりリリースすることごできず、結果として制作からアルバムリリースまでの間に3年7ヶ月を要した。
基本的にはクラシック音楽であるシューベルトの『未完成』をモチーフとしており、『未完成』のフレーズが随所で聴かれる。
そして、YOSHIKIの半生をモチーフとした壮大な楽曲となっている。
始めはTAIJIのベースも録音されていたが、TAIJIの脱退により、新ベーシストであるHEATHによって新録された。
という事前情報はさて置き、30分にわたるこの壮大な楽曲『ART OF LIFE』、それはそれは筆舌に尽くし難く。私の語彙力ではもうどうにもなりまへん。
それくらい私にとっては凄まじく物凄い(素晴らしい)楽曲であります。
強いて自分でギターを弾いていて、作曲面で凄いなと思う特徴。まず冒頭のアルペジオがあり、歌が入ってからのコード進行上で、クリシェがめちゃめちゃ使われている点。譜面、特にTAB譜しか読めないと、この凄さはあまり解らないかもしれないけれど、耳コピしてみると、この半音ずつルートがズレていく気持ちよさが凄く分かるように思う。
そして、これもTAB譜だけ読んでいたら気づき難いかもしれないことなけれど、曲中めちゃめちゃ転調しまくっているという点。
これが聴くと弾くとでは大違いで、転調している箇所によっては、視覚的にギターがめちゃめちゃ弾きにくいっていう。だから、基本的にはギターをメインでしか扱えない、他の音楽の素養は嗜む程度で殆ど皆無と言っていい私としては、この作曲能力はとんでもないものだと感じる。ソロ・ギターのパートではHIDEもフレーズを作ったりして貢献しているらしく、YOSHIKIだけではなく、HIDEの凄さも感じる。
勿論、バッキングギターを担当したPATAも、TAIJIの後任という重圧を担ったHEATHも、何より難航したボーカル撮りを完遂したTOSHIも凄い。
何せ私の語彙力では、凄いとか美しいとかいう言葉しか出てこないのである。ごめんなさい。
中盤、凡そ10分間のピアノソロに関しては、退屈だという声も勿論聞かれるであろう。実際長いし、ピアノソロ後半に至っては早速不協和音に塗れたカオスであり、悪く言えば無茶苦茶、よく言えば現代音楽、前衛音楽的である。何せカオスになっていく様子も、YOSHIKIの狂気が表現されていて、逆に分かり易くて、それもいいじゃないかと。
“昨日の絵は描けないから、血で心を描く
"ノー "とは言えない
首の縄で時の輪を回すだけ
道徳の壁を築き、レンガの間から息を吸う
架空の敵を作り、彼らに追われる
自殺しようとしている
あなたはプロローグに満足している
今度は第一章を黒く塗りつぶす
あなたは人生の擦り傷をまとめ、自分のための隔離施設を作ろうとしている。
あなたは舞台の端で鐘を打ち、私を殺そうとしている”
これはYOSHIKIが父親の自殺に取り憑かれ、自分も父親と同じ年齢で死ぬから、人の倍のスピードで行かなければならないという思いがあることからの、焦燥感であったりの被害者意識の現れだと思われる。ただし自覚もしている。
と言ったように、決して明るくはない、寧ろ狂気に彩られた楽曲である。だがそれがいい。破滅の美学というやつである。
モチーフが未完成かもしれないが、この段階でのYOSHIKIの人生も、まだ未完成のままなのである。
『ART OF LIFE』の総評
長いし英詞だし一般リスナー置いてけぼりの難解さ、下手すりゃ独りよがりかもしれないけれど、兎に角少しでも興味があったら、暇な時にでも一度は聴いてみてほしい。個人的にはX時代含め、X JAPAN史上、これ以上に素晴らしい楽曲はない。