欧州債務問題~3つのグループ
4連続コラム、二日目の今日はユーロ圏の債務問題を大きく3つのグループに分けてみたいと思い
ます。欧州債務問題は複雑に入り組んでいて解決の糸口を見出すことが難しい問題ですが、そも
そも欧州債務問題はその時その時で取り沙汰される国の、一見財務問題には違いが無いのですが、
その発生原因は大きく分けて3つに分類できると考えられます。
第一のカテゴリーは、政府の信用が失墜した国です。それに該当する国はギリシャです。そして
第二のグループは、不動産バブルの崩壊で経済が急速に悪化した国です。該当する国はアイルラ
ンドやスペインなどです。そして第三グループは、金融危機とは関係なく万年低成長に甘んじて
いる国です。それに該当するのはイタリアなどがあげれます。
このように3つのカテゴリーは、それぞれ抱える問題が異なりますので、当然求められる処方箋
も異なってきます。私は以前のコラムでECBの金融政策に言及しましたが、これらに関しても
同様の事が言えると思います。金融・財政政策は当然この3つのカテゴリーの国に対して全く別
のアプローチが採用されるべきですが、EUという組織として共通の経済政策を採用している手
前、すべての加盟国に共通の目標値等を課します。これでは風邪をこじらした人間に対して、全
く見当外れな薬を注入し続け最終的に違う病気を併発させてしますようなものです。つまり、ど
んどん悪い方向に向かっているといえるでしょう。
ではここで、最初に話題になったギリシャとアイルランドの状況を一度振り返ってみましょう。
2009年の10月にギリシャで総選挙があり全ギリシャ社会主義運動党が勝利しました。新政
権が発足後、最初にしたことは前政権の経済運営の失敗を暴く事でした。財政赤字がGDPの6%
ではなく12.7%だという爆弾発言をして世界の投資家を「あっ」と言わせました。その後、ギリ
シャは国の借金の借り換えをすることがだんだん困難になり、5月にはドイツなどが中心となり
1兆ドルの欧州救済プログラムが発表されました。これで一旦は危機が収まりました。しかし
今度はアイルランドの銀行が不動産デベロッパーに対する貸付の焦げ付きから相次いで経営危機
に瀕し、アイルランド政府がこの救済に乗り出したことからアイルランドの財政赤字が一挙に
GDPの11.6%から32%へと増えました。同国の悲劇は自国の通貨が強かったことから、
住宅ローンの金利を低くするためが、日本にいると想像しにくいですが、外貨建ての住宅ローン
というものを多くの国民が活用して、住宅ローンバブルを増大させていました。悲劇と言うのは
危機が起きる前までは海外の安い金利を活用して低コストで借入を行っていましたが、危機が表
面化し、自国通貨が大幅に下落したため(対ドルで1/10に下落)、この住宅ローンを活用し
た人々は借金額が倍増しました。(ある日突然住宅ローンの返済額が倍になるという衝撃が国民
に与える心理的影響の大きさは計り知れないものがあると思います。)
アイルランドは、このようなどうにもならない状況に陥ったため欧州連合や国際通貨基金などに
支援の申し入れを行いました。
Ken
欧州債務問題~ポルトガルが逝っちゃいました。
ニューヨーク市場が引けた後にポルトガル政府が欧州連合(EU)に支援を要請しました。これはギリシャ、
アイルランドに次ぐ3番目の救済になります。ソクラテス首相はテレビ演説で公式に欧州連合からの救済をお
願いする旨を発表しました。ポルトガルは3月24日に議会が財政赤字削減案を否決したのでソクラテス首相
は辞意を表明し、欧州連合(EU)からの救済は時間の問題と思われてきました。
そこで今週の4連続コラム、1日目の本日は、簡単にポルトガルのファンダメンタルズを点検してみましょう。
ギリシャの危機の際、同国の国民が怠けていたから、はたまた公務員天国だったから、などなどの批判があり
ましたが、あまりにも枝葉末節な批判で、本質を見逃していたように思えます。ポルトガルの今年のGDP成
長率は-1%が予想されています。これはアイルランド(-3%)に次いで悪い数値です。財政赤字はGDP
の1.2%程度であり規模の面でスペイン(-4.1%)に比べると小さいです。公的負債はGDPの88.8%
でギリシャの150%、イタリアの120%よりは少ないです。失業率は11.1%です。(データの参照先は
欧州委員会)これらのデータから見る限り、ポルトガルのファンダメンタルズが破綻懸念で取り沙汰されている
欧州国家群の悪いという印象はありません。むしろ問題なのは万年経済の低迷が続き、しかも全く成長戦略が
描けないことが世界の投資家から愛想を尽かされた理由です。なお各国のポルトガルへの貸付残高は以下の通り
です:スペイン 983億ドル・フランス 485億ドル・ドイツ 443億ドル・米国 356億ドル・その他
212億ドル(データの参照先はBIS)
日本は地震や原発で欧州問題を過去のもののように考えがちですが、欧州の財務問題は依然として存在し、これ
までの悪い流れ、つまり破綻の懸念がされていた国家が現実的に次々と倒れています。次回から3日にわたって、
欧州経済圏の問題を3つに分類して欧州、つまりはユーロが抱える問題に対して、踏み込んで考えてみたいと思
います。ちなみに欧州(ユーロ参加国)が抱える構造的な問題については以前私が書いたコラムの記事にまとめ
ていますので、そちらの方も是非ご覧ください!→ 「欧州債務問題、ユーロは同じ道を辿るのか?」
Ken
東京電力株の行方~東電株と東電債、どちらが生き残るか?~
多くの証券アナリスト達は政府が全面的に東電に対して、補償に必要な資金を供給するとい
う『事実上の国有化』が最終的にはベストなシナリオになると指摘しています。この理由と
して、どこまでが原発オペレーターとしての東電の責任で、どこからが監督者としての国の
責任で、どこからが「予見不可能な自然災害」と認定することは、現実問題として不可能だ
からとコメントしています。ただ、ハッキリ言えることは、原発の被害を地元住民のみが負
担する理由はないということです。少なくとも東電から配電を受けてきた東電管内の受益者
は何らかの形で負担を求められる事になるのは当然といえるでしょう。
しかし、その負担が株式や債券の保有者まで広がっていくとなると、話は非常に複雑になって
来るように思います。東電は金融機関を除くと最大の社債発行者であり、債券のデフォルト
は日本国内のみならず国際金融市場に大きなインパクトを与えます。また、これまで東電の
ような電力株は鉄道株と並んで、株式というカテゴリーではリスクアセットに間違いはない
のですが、公益事業性の高い株として倒産しない事を前提に多くの国内外の個人投資家や様々
な国際的な投資信託運用会社が自身のポートフォリオに組み込んでいる銘柄である点などを
考慮すると、日本航空の際のような100%減資処理をあっさり行うことは激しい反発、具
体的には国内外の投資家からの株主代表訴訟が起こされると考えられます。一つの方法とし
ては総論では「事実上の国有化」以外ないのかもしれませんが、個々の債権債務がどうなる
か?という各論に入っていくと極めて複雑な問題になりそうです。日本航空の破綻処理の際
に見られた、一旦は「潰さない」と言ったかと思えば、翌日には「日本は資本主義経済だか
ら」と破綻を容認する発言をしたりして、マーケットに不要な混乱を起こしたりした前科が
あるので、今回は政治家には、このようにマーケットが極めてセンシティブになる問題を議
論させることは私はナンセンス以外の何物でもないと思っていますが、現実問題として今の
民主党政権はこの問題に向き合わなければなりませんので、ぜひこの問題には複眼的思考を
もって慎重な判断と発言が求められると思います。
Ken
ついに始まる。 Horizon ProⅢ
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東京電力株の行方~東電経営陣は見せしめ?~
東電は原発事故に対して法的な賠償責任を負いますが、この責任には「例外的な自然災害を
除く」という例外規定があることは先週のコラムで指摘しました。感情論は別として東電が
この例外規定を根拠に賠償責任の大幅な回避を求めることは十分考えられます。そうしない
と現在の経営陣は既存の東電株主(特に東電クラスの規模の会社の場合、東京電力株や東京
電力社債の海外投資家の保有割合も少なくないため)から「善管注意義務」違反として責任
を問われる可能性があります。
福島原発事故の内、民間・政府の保険でカバーされると思われる金額は1,200億円です。
この1,200億円と言う数字の根拠は原子力損害賠償法で明記されています。現時点で
原発被害の金額を想定することは不可能でしょうし、最終的に様々な金額を含めると、この
金額とは一桁の違う金額になる事は間違いないでしょう。
ニューヨークタイムズによると、社団法人会社役員育成機構のトップBenes氏などは「菅首
相は恐らく国有化を避けて、東電をarm's length(つかず離れず)の距離に置くことを好む
だろう」と解説しています。民主党政権は国会運営に行き詰っており、マニフェストを実行
しようとすると参院で多数派の野党の猛反対で廃案に追い込まれ、2/3を衆院で確保した
くとも、少数野党から賛同得ることに大変苦労しています。そうした理由から、東電を政府
に対する国民の批判の「避雷針」にしておきたいため、と指摘しています。
Ken
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中国で風説より塩買い占め、返品者続出
3月福島の原発事故発生以降、”海が放射能で汚染され、塩が使えなくなる”、”ヨウ素を含む塩には放射能汚
染を防ぐ効果がある”など風説が中国大陸で散布され、東沿海から内陸都市まで、市民が塩買い占めに走り出
した、大量の買いより供給が緊迫され、一時スーパーなどで売り切れが続出する現象が起きた。塩が買えない
市民たちが不安がさらに感じて、醤油まで買い占めるひとも出たと報道された。
民衆による塩の買い占めに対して、各地方政府は塩生産、販売を拡大する一方、一部風説を利用して一時塩
を値上げしたスーパーを摘発した。3月下旬この騒ぎはほぼ落ち着いた。ただ、一部の地域では大量に買った塩
を返品しようとする消費者も現れている。そのなかで約20万円の塩を買い占めたひともいるようだ。
Robin