欧州債務問題、ユーロは同じ道を辿るのか? | マーケットの今を掴め!FX・CFD東岳ライブ情報

欧州債務問題、ユーロは同じ道を辿るのか?

現在金融業界に身を置く私にとって、日々耳にする言葉が「欧州債務危機」です。今回はそもそも欧州債務危機がどうして起こったか、そもそもの原因にアプローチしてみたいと思います。



まずEUの起源は、第2次世界大戦で荒廃した西欧諸国が、第二次世界大戦の欧州での発生原因が歴史的な対立構図を抱えるドイツとフランスにあるとして、対立構図の解消から始めます。それがECSCであり、その後さまざまな条約を積み重ねて現在のEUとなり、99年には経済統合の結晶としてユーロが誕生します。



通貨ベースで欧州は結束を始めますが、内に大きな歪みを抱え込むことになります。それは金融政策が縛られてしまうことです。EUを一つの国家として考えると、すべての地域が同一の経済状況であるならば、金融政策は状況に応じて実施すれば何も問題は起こりませんが、ドイツとフランスの2国をサンプルに考えてみれば分かりやすいと思いますが、ドイツは工業国家であるのに対してフランスは農業国家です。景況感に誤差が生じやすいことは想像しやすいと思います。ましてドイツとスペインやギリシャなど経済規模も異なれば、核となる産業、そして景気サイクルも必然的に異なってきます。ECB(欧州中央銀行)の悩みは、どこの国を参照して金融政策を実行していけばよいか、判断がつかないことです。結果として、域内で発言力のある国々を目安に金融政策を実施することで、取り残される国々にそのプレッシャーがのしかかることになります。



今回の欧州債務危機は、このような体制が抱える根本的な問題を放置し、欧州周辺諸国の受ける経済的なプレッシャーが長年積もり積もった結果、今回のタイミングで表面化したものと言えるでしょう。このプレッシャーは米国が先に不況に突入し、FRBが利下げを実施することでECBの政策金利を下回った時に、そのプレッシャーは極大化します。直近では、今回の金融危機の時は、まさに当てはまりますし、また2001年の同時多発テロの際のFRBの大幅な利下げの際にも生じました。(2001年の際は期間が短かったため、表面化には至らなかったものと思います。)



ユーロが売り込まれているのは、その状況の下で現在も根本的な問題にユーロが解決策を示せず、表面的な援助策しか提示していないことです。ギリシャに続きアイルランドも援助を受け入れなければならない状況に追いやった投機筋の戦果であり、この流れは、現在はスペインにも向かっており、スペインの株価指数は最近暴落しております。この状況は1992年のEMS危機、97年のアジア通貨危機などの際にもみられた現象です。



こうした現象の結果生じたことは、問題としてあげられている歪んだ構造の是正です

。(EMS危機の場合では最終的にイングランド銀行は通貨切り下げに追い込まれ、アジア通貨危機の時はマレーシアのドルペッグ制が攻撃にされ、韓国は瀕死の状況に追い込まれ、インドネシアは政権が崩壊しました。)



欧州諸国は当面は、こうした圧力に対応していかなければならないのですが、これに屈せずユーロの経済構造の根本的な問題を解決することができるのか、または、このままユーロを解体させ、1970年代以前の状況に戻るのか、どうなっていくか注目してみていきたいと思います。





Ken