東京電力株の行方~日本航空の二の舞?~
東京電力債の価格の急落は投資家にとって一見すると一つの買い場とも見えますが、ブルン
バーグによると三菱UFJアセットマネジメントのチーフファンドマネージャーは「我々は
東電社債には手を出さない」と述べていると報道しています。原発事故に関する東電の負担
額とそれに伴う東電の命運が今の段階では予測の汎にを超えている事を理由に挙げているた
めです。
もし東電が国有化されるとすると、東電は恐らく新しい株式を発行し、国の引き受け発行株
数が増えるので、全体として稀釈化が起きます(一株当りの配当が下がり、株価も下がる事
になります)。その一方で国有化されると社債の償還は日本政府が引き受けることになるた
め、社債の投資家は保護される事になりますが、現段階でここまで予測することは不可能だ
と思います。
ニューヨーク・タイムズは「国有化は、東京電力の配電エリア以外の納税者も東電の救済資
金を税金投入という形で負担することになるので彼等の反対が起こる可能性が高い」と分析
しているようです。しかし、今のところ解決の目処が見えない福島第一原発の状況を考える
と東電が国への依存度を高めざるを得ないということは避けがたい事実といえるでしょう。
Ken
ついに始まる。 Horizon ProⅢ
新たに米ドル口座 もスタート。 Windows + Mac
東京電力株の行方~震災前後のパフォーマンス~
3月29日の株式市場を揺さぶったのは、玄葉国家戦略担当相の「東京電力の国有化も選
択肢の一つ」という発言でした。福島3区選出の玄葉大臣の発言はまもなく読売新聞が報
道しました。一方、枝野官房長官は記者会見で「政府が今のところ国有化を検討している
ことはない」と玄葉発言を否定しましたが、このニュースは海外メディアも大きく取り上
げています。
東電の株価は46年ぶりの安値を付けましたが、株式と同様に大切な、保有者で無い我々
は見落としがちですが、金融機関や機関投資家にとってもう一つの頭痛の種は東電の社債
の金利急上昇(価格は急落)でしょう。東電が発行している社債残高は5.02兆円で、ブルン
バーグによると、この金額はニュージーランドの年間生産額の半分に達する規模です。
震災前は日本国債の利回りに0.1%程度の上乗せスプレッドで取引されていた東電社債
(つまり日本人に対する徴税権を担保にしている日本国債の次に発行体が安定しているこ
とを意味します)は、25日時点では上乗せスプレッドが0.67%程度と6倍以上に拡
大しています。バンクオブメリルリンチのデータによると、7つの東電の社債は最低でも
価格が5.64%下落しました(債券価格の変動は、「利回りの変化×残存期間」です)。
ブルンバーグによると、東電社債の今月のパフォーマンスは世界の投資適格債券の中で最悪
のパフォーマンスだったと報道しています。
Ken
ついに始まる。 Horizon ProⅢ
新たに米ドル口座 もスタート。 Windows + Mac
3.11の大地震の影響~東京電力株(9501) その4~
3.11の大地震の影響~東京電力株(9501) その4~
最近のニュースの論調で、原発被害や電力供給を早期に回復させることが難しい事が鮮
明になりつつあるため、東京電力の「国有化」を唱える人もいますが、これは事件処理
の方法論の話が多いようです。
日本では沖縄電力以外の電力会社はすべて原子力発電所を保有しております。もしも東
京電力の株主が出資金額全てを提供させられる(我々は直近の事例で日本航空保有株者
の末路がどのようなものであったか、を目の当たりにしています。)のであれば、他の
電力株へも大きく影響を及ぼすでしょう。地震地帯に発電所を持たざるを得ない日本で
は、電力株保有のリスクプロファイルが全く別の物になってしまうからです。そうなる
とあるいは電力料金が安すぎるのかも知れませんので、電力株を保有する投資家は、原
発事業というハイリスクビジネスのエクイティに投資している分、電気料金を値上げし
て増配政策を迫ることになるのかも知れません。
このように考えると、原子力発電事業は東京電力のスパン・オブ・コントロールを超え
た事業であったと言うべきかもしれません。つまり一民間企業の負担できるリスクを越
えているといえるかもしれません。
最終的には国にすがりつく以外に、このリスクを処理する事が出来ないことが明白にな
りつつある今、日本の電力政策において原子力発電のみ国有事業で実施し、火力・水力・
風力等その他の発電や送配電事業は今まで通り各電力会社の事業領域とするなどして、
原子力発電事業を他の電力事業とは分離する事が必要なのかもしれません。
Ken
3.11の大地震の影響~東京電力株(9501) その3~
3.11の大地震の影響~東京電力株(9501) その3~
損害賠償がどの程度の規模になるのかは現状ではわかりませんが、東京電力による補償
額は天災など不可抗力条項による政府補償契約の定める1200億円を超えれば「原子
力事業者による無限責任の賠償負担+必要と認めるときの政府の援助」となっています。
従って東京電力の負担はネゴシエーションというよりは政府がどう考えるかに依存する
でしょう。政府負担の主眼はあくまで被害者救済です。もはや賠償額が1200億円以
内で済むとは誰も考えていないでしょう。福島県の原発付近の住民への補償、周辺農家
への補償など直接的な被害だけでも膨大なものですし、補償の範囲に入るかどうか分か
りませんが、首都圏の計画停電の対象になった工場などの操業停止で生じる経済的損失
など、非常に大きなものになっております。
こうした負担の分担は言い換えれば損害賠償を、電力料金で支払うか、税金で支払うか、
つまり東京電力の受益者負担かあるいは東電と関係のない地域(日本中)も含めた国民
負担かという違いとも言えるでしょう。株価はこうした議論の中で株主の権利をどこま
で主張できるかにかかっているのではないでしょうか。こうした諸々の事を考えると解
らなくなってしまいます。日本の論調ですと、ここで東京電力株株主が大声で主張して
も世論の賛同を得ることは非常に難しいように思えます。
Ken
3.11の大地震の影響~東京電力株(9501) その2~
3.11の大地震の影響~東京電力株(9501) その2~
昨日のコラムで東京電力の財務基盤が大幅に悪化する見通しを伝えましたが、3/25のニュース
では3メガバンクの銀行団が東電からの緊急融資要請に応じて2兆円規模の融資を実施する方
向で検討に入ったことが伝えられました。日本の生命保険各社もこれに応ずるとのニュースも
出ています。三井住友銀広報部の戸川智佳氏は、「東京電力は日本で必要不可欠なインフラを
担っており、主力行として最大限サポートする」とコメントしていました。当然政府系金融機
関によるバックアップもあるでしょう。
日本の電力事業は地域独占(首都圏の東京電力や関西の関西電力、九州の九州電力など)であ
るがゆえに電力供給の停止はありえません。競合他社がいないがゆえに究極的には電気料金
の値上げで賄い、大幅な財務悪化に対処していくことになると考えられます。(消費者として
は納得いきませんし、まして、計画停電対象に頻繁に該当している世帯からすれば、通常より
電気の消費量が強制的に減らされた上に、電気料金が上がるというおかしなことになります)。
方法論ベースで考えれば、値上げできるので財務体質は改善できそうですが、実行できるか?と
なれば監督官庁からの許可が必要になるので、安易な値上げは非常に難しいように思えます。
Ken