私の考える中東情勢~中東ドミノで世界経済はどうなるか?~
4連続コラム最終日の本日のテーマは、今週のコラムの3日間のメインである中東情勢の
世界経済に与える影響、言うなれば「中東ドミノで世界経済はどうなるか?」を考えてみ
たいと思います。
現在もリビアは内戦状態です。そのために石油価格が高騰し、1バレル=100ドルを超
えています。考えなければならない事は、これで世界経済はどうなるのだろうか?と言う
事です。
チュニジアやエジプトでの暴動は、宗教対立や反米、反イスラエルなどの動きとは全く無
関係に発生しました。最大の原因は、穀物価格の高騰と言えるでしょう。今回、暴動が発
生しているアルジェリア(2 位)、エジプト(3 位)、イラン(7 位)、モロッコ(8 位)
などは、そろって小麦の輸入国です。
ロシアの不作や豪州の洪水なども手伝い、穀物価格は天候不順による供給量の減少と、新
興国を中心とする需要の拡大という2つの理由で上昇しています。これに加えて、「先進
国の金融緩和による投機的マネー」が犯人とされ、パリでのG20会議(2/18-19)でも
「米国のQE2批判」が飛び出しました。しかし、穀物価格は先進国ではあまり上がって
おらず、おもに新興国で上昇している点に注意が必要です。実際、米国では超量的緩和政
策によってベースマネーは増えているが、マネーサプライは伸びていません。これは日本
の経験とも整合的な話です。バーナンキFRB議長が指摘していますが、「新興国が適切
な経済政策を実施すれば防げる話」(つまり為替介入をせず、政策金利を引き上げ、実質
金利に注意を払いインフレ抑制に努める事)、と主張しています。
ところが中東の混乱によって石油価格も上昇し、当面の間は輸入インフレは覚悟しなけれ
ばならなくなります。こうした状況になると、世界経済全体にブレーキがかかる事になり
ます。IMFの世界経済に関する年次レポートの1月25日版では、世界経済の成長率は
4.4%(2011年)、4.5%(2012年)と予測し、その内訳は先進国が2.5%
、2.5%、新興国が6.5%、6.5%という切りのいい数字がならべられています。
しかし資源高の効果は、先進国よりも新興国の経済に響いております。中国やインドのよ
うに内需主導型で伸びている国への影響は軽微ですが、これらの国への輸出増加による経
済成長を続けているブラジルなどは、大幅に調整を余儀なくされるのではないかと考えら
れます。ただし世界経済が減速すれば、新興国を中心とする穀物や資源への需要も低下す
るはずです。結論として資源価格の上昇は、2008年のような極端な形にはならず、マ
イルドな上昇後にマイルドな下落を続けるのではないかと思います。
それにしても「新興国経済」という名前で、BRICs から中東アフリカ地域まで全部を
囲い込むのは、今考えるとかなり無謀なフレーズな気がします。中東だけでもこれほど複
雑なため、今後はもう少しきめ細かな呼称が求められると思います。
Ken
私の考える中東情勢~ワシントンの窓を通して中東を見る~
4連続コラム、2日目の本日は良くも悪くも中東に深い関わりを持つ米国外交の視点、言
い換えるならば「ワシントンの窓」から覗いてみたいと思います。
当然のことながら、ワシントンを通して世界を見るからには、米国人が持つ独特の感性、
(人によっては歪みと解釈する人もいると思いますが)をも共有してしまうことになりま
す(だからといって、「世界を見る日本人の視点」の方が高尚だというわけでは決してあり
ません)。思うに米国政治の「悪い癖」とは、良くも悪くも比較的理解しやすいものにある
と思われます。それは、あの国ならではの素朴な正義感や、寛大な理想主義や、自己愛の強
さや、実験を怖れない過激さなどの特殊性に由来していると思います。多くの場合、それは
米国以外の国に住む多くの人を辟易させるものであるし、ときには陰謀論的な誤解を招いた
りもする局面があります。けれども、かれらの論理、理屈さえ分かってしまえば、私だけか
もしれませんがさほど腹も立たないものです。しかるに米国政治の悪い癖は、特に中東に関
して遺憾なく発揮されてきました。なぜか米国には中東への妙な思い入れがあり、中東政策
は多くの矛盾を抱えてきました。「中東における唯一の民主主義国」たるイスラエルに肩入
れをする一方で、サウド王家による支配が続くサウジアラビアと特殊な関係を築いてきた歴
史はその典型と言えるでしょう。理解に苦しむような判断ミスもありました。かつてネオコ
ンは「中東の民主化」を外交目標とせよと主張し、ブッシュ大統領は2005年の2期目の
大統領就任演説において、「テロとの戦いのために世界に民主主義を広げる」ことを宣言し
ました。しかるに米国がイラクで払った代償はまことに大きなものでありました。仮に米国
の外交目標が、本当に「中東の民主化」であったとしたら、こんな対比も可能になるとおも
います。直近ではイラクを例に挙げ2003年に大規模な軍事力を行使して独裁者サダム=フ
セインを取り除き、2010年末になってようやく民主的な政権が誕生させました。この成果
をハードパワー外交の成果と言えるでしょう。他方で、最近のエジプトをフェースブックや
ツィッターを普及させたことで、国民が自発的に独裁者を追放しました。これはソフトパワー
外交の成果と言えるでしょう。どちらがより効率的であったかは、比べるまでもありません。
ただし、これをもって本格的なソフトパワー時代が到来と結論するとしたら、重大な誤解を
招くだろう事になる気がします。ハードパワー(軍事力を含む強制的な力)とソフトパワー
(他国を自発的に動かす力)は、相互に代替可能なものではないでしょう。直近のリビア情
勢がいい例で、独裁者で国民の標的になっていても、それを打ち返すだけの軍事力を有して
いる限り、ソフトパワーがオールマイティに通用するとは言い切れないと言えるでしょう。
強いて言えば、軍事力の位置づけが相対的に低下し、先進各国が財政制約に直面して外交に
割けるリソースが限定的になっている今日においては、両方を上手に組み合わせて使うこと
(いうなればスマートパワー)が求められているということでしょう。
Ken
私の考える中東情勢~ワシントンの窓を通して中東を見る~
4連続コラム、2日目の本日は良くも悪くも中東に深い関わりを持つ米国外交の視点、言
い換えるならば「ワシントンの窓」から覗いてみたいと思います。
当然のことながら、ワシントンを通して世界を見るからには、米国人が持つ独特の感性、
(人によっては歪みと解釈する人もいると思いますが)をも共有してしまうことになりま
す(だからといって、「世界を見る日本人の視点」の方が高尚だというわけでは決してあり
ません)。思うに米国政治の「悪い癖」とは、良くも悪くも比較的理解しやすいものにある
と思われます。それは、あの国ならではの素朴な正義感や、寛大な理想主義や、自己愛の強
さや、実験を怖れない過激さなどの特殊性に由来していると思います。多くの場合、それは
米国以外の国に住む多くの人を辟易させるものであるし、ときには陰謀論的な誤解を招いた
りもする局面があります。けれども、かれらの論理、理屈さえ分かってしまえば、私だけか
もしれませんがさほど腹も立たないものです。しかるに米国政治の悪い癖は、特に中東に関
して遺憾なく発揮されてきました。なぜか米国には中東への妙な思い入れがあり、中東政策
は多くの矛盾を抱えてきました。「中東における唯一の民主主義国」たるイスラエルに肩入
れをする一方で、サウド王家による支配が続くサウジアラビアと特殊な関係を築いてきた歴
史はその典型と言えるでしょう。理解に苦しむような判断ミスもありました。かつてネオコ
ンは「中東の民主化」を外交目標とせよと主張し、ブッシュ大統領は2005年の2期目の
大統領就任演説において、「テロとの戦いのために世界に民主主義を広げる」ことを宣言し
ました。しかるに米国がイラクで払った代償はまことに大きなものでありました。仮に米国
の外交目標が、本当に「中東の民主化」であったとしたら、こんな対比も可能になるとおも
います。直近ではイラクを例に挙げ2003年に大規模な軍事力を行使して独裁者サダム=フ
セインを取り除き、2010年末になってようやく民主的な政権が誕生させました。この成果
をハードパワー外交の成果と言えるでしょう。他方で、最近のエジプトをフェースブックや
ツィッターを普及させたことで、国民が自発的に独裁者を追放しました。これはソフトパワー
外交の成果と言えるでしょう。どちらがより効率的であったかは、比べるまでもありません。
ただし、これをもって本格的なソフトパワー時代が到来と結論するとしたら、重大な誤解を
招くだろう事になる気がします。ハードパワー(軍事力を含む強制的な力)とソフトパワー
(他国を自発的に動かす力)は、相互に代替可能なものではないでしょう。直近のリビア情
勢がいい例で、独裁者で国民の標的になっていても、それを打ち返すだけの軍事力を有して
いる限り、ソフトパワーがオールマイティに通用するとは言い切れないと言えるでしょう。
強いて言えば、軍事力の位置づけが相対的に低下し、先進各国が財政制約に直面して外交に
割けるリソースが限定的になっている今日においては、両方を上手に組み合わせて使うこと
(いうなればスマートパワー)が求められているということでしょう。
Ken
私の考える中東情勢~中東の窓から世界を見る~
ここ一カ月ほど、毎週大手町の丸善や新宿の紀伊国屋、池袋のジュンク堂で本を買い込ん
で、自宅や喫茶店でお菓子と読書で過ごしています。それらの本のいくつかは中東情勢を
正しく知りたいと考え、いくつか文献を読みあさりました。今回は、それらの感想とそこ
から得た知識を大まかにまとめてみたいと思います。
まず歴史的要因から考えます。中東は歴史が古く、多くの文明や帝国が興亡を繰り返して
きた場所です。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教が混在する宗教の交差点でもあり、そ
して近年も、戦争や紛争が多発している地域です。
次に地理的要因を考えてみたいと思います。中東は欧州、アジア、アフリカの3つの世界
が交わる場所であり、交通の要所でもあります。スエズ運河から紅海、ホルムズ海峡など
のチョークポイント(戦略的に重要な海上水路)もあり、国際的な物流面でも重要な意味
を持ちます。
3つ目に中東の経済的要因について考えてみたいと思います。中東には石油埋蔵量の3分
の2が集中し、世界のエネルギー事情を握っているといえます。昨今では石油価格高騰に
より、好調な「新興国経済の一部」としての位置づけも浮上しています(一つの具体例と
してカタールの一人当たりGDPは2010年には7万ドル超です。)
各種外交史の分析の専門書を読んだ印象としては「中東という窓から世界を見る」のは、
おそらく国際政治を理解する正しい段取りのようです。しかし私は中東分析には不向きで
はないかと思います。中東には、まずイスラムという宗教圏があって、それがスンニ派、
シーア派などの宗派対立を内包しているためです。加えて、アラブ、ペルシャ、トルコ、
クルドなどの民族が重なり、興亡を重ねてきた歴史が中東にはあります。さらに国という
単位が重なっており、それらの国の国境線の多くは欧州列強諸国が決めた人工的なもので
あり、エジプトのように国家と国民がきれいに重なっていることは、中東ではむしろ例外
的な存在です。当然、国民の価値観を統一することが難しいことは容易に想像できると思
います。このように3層構造のアイデンティティを有する複雑な地域である上に、産油国
とそうでない国との経済格差があり、イスラエルとパレスチナの問題があり、1970年
代以降の人口爆発などの課題がこれに加わります。これではいくら学習しても追いつけそ
うにないと言うのが私の感想です。つまり「中東を分析する」ことを目指せば、そのこと
自体が目的となってしまい、中東情勢を分析しマーケットの流れを正しく読む作業までた
どり着けないで、結果としてトレーディンチャンスを逃すことになってしまう事になるよ
うに思えます。
明日は新たな切り口を考えてみたいと思います。
Ken
東岳証券は現在、事業継続計画( BCP )を発動いたしております。
3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震、長野県北部の地震に被災された方々には心より
お見舞い申し上げます。
役職員一同、被災地の皆様方の一日も早い復旧を祈念いたします。
この度の地震発生にあたり、東岳証券のお客様の大切な資産を守ることを第一に、また、取引への影響を最小限に留めるために、「事業継続計画( BCP )」を発動いたしております。以下の3点をご確認ください。
1.取引システム「Horizon Pro」は現在正常に稼働しており、システムによる取引に関しては
通常通り行っていただけますので、ご安心ください。
2.顧客資産の信託保全、入出金について現在のところは通常通り行っております。 なお、
入出金に関しては銀行の状況等により一部遅れることが生じる可能性があります、入出金
の必要があるお客様は余裕を持って入出金を行っていただくようお願いいたします。
3.平常時24時間行っているカスタマーサポートは暫くの間午前7:00から午後8:00までに
変更いたします。24時間体制への復旧時期につきましては、改めて弊社のホームページ
でお知らせいたします。
以上、お客様の資金の安全管理及び取引がスムーズに行えるよう、全力を尽くす所存でございます、何卒ご安心い ただきますようお願い申し上げます。