第九講 ノーコード技術を採用すれば、ソフトウェア事業体や従事者が得る恩恵は?
「PM」
博士、私は長い間コーディング技術に心酔していたので、今回のセミナーが始まる時は、ノーコード技術について半信半疑でした。 しかし、このセミナーを通じて考え方が変わりました。 そして様々な インスピレーションも受けたし、スマートメーカープラットフォームがアプローチする方式と数多くの自動化技術についても、非常に感動しました。
今ではノーコード技術へのアイデンティティと可能性については十分理解できるようになりました。 次は、この技術をSI事業体で受注開発プロジェクトに適用したり、ソフトウェアソリューション製品を開発·運営するプロジェクトに適用したりする場合に、実質的に得られる特典や効果について、これまで博士が多様な開発現場を支援して体得した経験を中心に紹介していただければ幸いです。
[博士]
私は過去20年間、ノーコードプラットフォームとソフトウェア工学知能化技術について研究開発してきました。そして運営体制及びDBMSエンジンといったシステムソフトウェアや、スマートメーカーのようなプラットフォーム及び著作ソリューションなどは今後もコーディング技術でしか開発できないのではないか、と考えます。 自らプログラムランゲージやコーディング技術に適性と資質を持って生まれた方なら、このようなシステムソフトウェア分野に集中すべきだと思います。
実は私も、はじめてこの研究を始める時点では、現在のように高い完成度や、汎用的に適用可能なノーコード技術を実現できるとは、考えられませんでした。 しかし、今やコンピューティングシステム装置内部の問題ではなく、コンピューティング装置の外の人間世界の問題を扱うアプリを開発する場合なら、ノーコード技術の導入を積極的に検討しなければならないと判断します。
今日のように、ノーコード技術が実用化された状態では、新たに行うアプリ開発プロジェクトを伝統的なツールとコーディング方式で具現化しようとするのは、ショベルカーやブルドーザーを前に置いたまま、スコップやつるはしで巨大な土木工事をこなすということとあまり違って見えません。
仮にSI事業者や、 ソフトウェアソリューションまたはウェブエージェンシーなどソフトウェア技術事業者が、ノーコード技術を採用することになれば、会社の経営戦略や経営方法はもちろん、受注競争力の面でも根本的な変化が起きるようになります。
まず、アプリ開発プロジェクトによる人件費負担が最低1/5以上、最大1/20まで軽減できます。開発および納期も従来比1/4以下に短縮でき、すでに受注したプロジェクトの収益性も劇的に高めることができます。また同じ人材で4倍以上多くのプロジェクトを同時に推進することも可能になります。
このようなノーコード技術を採用し、獲得した生産性向上効果を受注能力強化手段として活用するならば、 SI事業の提案価格を従来比30%以上,70%水準まで割引して,より安く提案しても、収益率は以前より2~3倍アップします。
受注価格水準を画期的に下げる場合、市場規模も大きく拡張でき、受注可能事業の機会も従来より5~10倍以上増えることになります。 従って、一段階高い事業競争力を確保する機会となるでしょう。
しかし、ソフトウェア技術事業者の立場においてより重要なことは、コーディングを学習していない人たちも開発者として採用できることです。 非専攻者でも1~2日程度学習すれば使用法を十分身につけることができ、実務現場で1週間程度使ってみれば、複雑で難しいアプリでも簡単に実現できる水準までに熟練できるということです。
もちろん、既にプログラムランゲージに慣れている開発者はより容易に適応できます。 しかし、新しく迎え入れる人材は、コーディング技術に慣れている技術者性向の人である必要がなくなります。多様な科目の専攻者や、様々な産業現場の経歴者、または社内既存のデザイナーも開発者として選ぶことができます。
彼らは、お客さま業務に対する理解度が高く、最終産出物の機能と品質も、その分高めることができます。 何よりもこのように養成した人材は人件費も相対的に低く、今IT業界の主要なスカウト対象であるJava、C、Python技術者ではないため、転職に対する心配なく安定的な人材運営とプロジェクト遂行が可能になります。
よってノーコード技術を採用すれば、SI事業体やWebエージェンシー事業体の経営体質を根本的に革新できるようになるわけです。
一方、コーディングとノーコード技術の問題は、多くのソフトウェア開発者の個人的な暮らしに関しても非常に重要な問題と言えます。 しかし、前述したノーコーディング技術に関するすべてが事実だとしても、 技術産業界に携わってきた人々は、情緒的にこのような現実を容易には受け入れられなかった方もいらっしゃると思います。
しかしコーディングという作業は、日常的に常にやってきた作業を遂行する時も、常に緊張してすべての神経を集中しなければならず、それでも絶えずミスは発生して、作業を終えられる時間を正確に予測できず、退勤後や休日にも、当面の問題解決に必要なアルゴリズムを考えるために、いつも頭の中で考え、人間として一番大切な家族や親戚、友達、同僚などと人間関係を疎かにしてしまい、趣味生活や、余暇活動は考えられないようにする、非人間的な生活環境になる直接的な要因であったことを誰も否定することは難しいと思われます。
ソフトウェア産業は、これまで我が社会のあらゆる領域や産業活動を容易かつ便利にする原動力の役割を自任してきました。 それで、今日では私たちの周辺のすべてが知能化·自動化され、多くの人々を非人間的な労働環境から解放してきました。それで最近、世界のあらゆるところが透明になり、すべての人々が人間らしく接してほしいと声を上げられる水準まで発展するように支援してきました。 今や人間それぞれの暮らしと個性が最も重要な価値と考える時代になったのです。
ところで、世の中のすべてのものを易しく楽にさせる原動力の役割を自認してきたソフトウェア産業界だけが、特に60年前に始まったコードという古い生産体系とコーディングという非人間的な作業方式をそのまま固守しています。それで従事者たちの社会的地位を落としかねないし、また、彼らの日常的な生活までも疲弊させているのではないでしょうか?
ノーコード技術は、他の何よりも、ソフト産業界に携わる多くの人をこのような非人間的な生産環境から解放する最も現実的な力になることは確実です。
それにもかかわらず、一部のプログラムコーディング技術者はノーコード技術が導入されると、自分の役割がなくなったり、プレゼンスが失墜することを、心配する方もいます。 しかし、そのような考え方はソフトウェア開発技術分野に、以前とは全く異なる革新的なノーコード新技術が出現しても、今後も以前のコーディング技術体制がそのまま持続するという前提の下で眺める極めて偏狭な考えだと言えます。
もちろん、本当に簡単で実用的なノーコード技術が出現すれば、一般人も非常に断片的な機能のアプリを自ら制作して使う状況が作られるでしょう。 しかし、このような現象はごく少数のユーザー市場にとどまり、現在SW産業分野に携わる、技術者がノーコード技術を導入しようがしまいが、巨大な時代の潮流がその方向に流れているため、誰も防ぐことはできない現象となるでしょう。
しかしワードの使い方が簡単だと、誰でも小説が書けるわけではありません。 たとえスマートメーカーのようなノーコード技術が大衆化したとしても、これまでコーディング技術者が担当してきたビジネスアプリケーションの多くは、依然として専門家に任せるしかないでしょう。 特に多数の組織構成員が様々な業務を分担して処理する業務用アプリなら、関連分野に十分な知識や経験がない人々が、開発ツールが簡単だからといって、実用アプリを作ることは、想像しがたいことだと言えます。
一般人がノーコード技術を使用することは、以前にもそのような単位の業務処理は主要な開発対象の事業ではなかったので、大きな問題にならないことがあります。 しかし、競合会社や他の開発者が開発原価や納期などの問題を解決するためにノーコード技術を採用し始めると、問題性は完全に変わってきます。
人類の発展史をみると、新しい技術が出現すると常に反対したり拒否する集団が生まれてきました。 それにもかかわらず、その新技術を活用すれば、少しでも利益があれば、少数の先頭走者がそれをまず選びます。 初めはその波長がそれほど大きくないように、見えますが、技術の適用効果が次第に表れ始めると、手のほどこしようもなく早くに波及していきます。 それで少数の先頭走者が新技術を活用して、市場を拡張させ始めると、かつて市場を支配してきたほとんどの事業者や技術者は次第に堕落したり、市場から消えてしまうのです。
以前、路地ごとに並んでいたオーダーメイドの洋服店の代わりにファッション感覚を持つ既製服に代わってしまったし、街中を埋めていた馬車を自動車が代替してしまったし、すべての業務処理に使われてきたパソコンの代わりに、スマートフォンが支配していて、今、人の代わりにソフトウェアが運営する自律自動車時代を目前にしているのです。
このように、人類の歴史は昔の技術を、新たに出現した新技術で無限に革新する過程を繰り返しながら、発展してき
たのです。この市場に最も影響力を発揮しているガートナーグループやフォレスターリサーチなど専門マーケティングリサーチ機関が、ノーコード技術を強調しているのは、ソフトウェア技術市場も、今こんな変化が進む変曲点に達していることをいっているのです。
今後、ノーコード技術が一般化されても、ソフトウェア開発者の役割は以前のようにコーディングする作業ではなく、開発対象業務を分析·設計したり、プロセスを改善する作業などに、役割自体は変わることがありますが、開発者の役割と雇用はあくまで存在します。
いや、もしかすればノーコード技術を適用し、アプリ制作費用や時間が大きく軽減され、供給価格自体が自然に低くなるにつれ、以前までは予算や技術人材の問題で開発できなかった潜在需要が発芽され、開発要求が急増し、むしろ雇用は大きく増え、所得もかなり上がる可能性が非常に高くなります。このような事は、今日の資本主義社会において、技術が発展し、数え切れないほど繰り返されてきた過程だと言えます。
従って、このように新しく開かれるノーコーディング新市場で、この市場に参加する事業者や開発者、各自がどのような姿勢と態度で新技術の現状を見て、また受け入れるかが非常に重要になります。ある人は以前の体制と既得権にとらわれ、新しい変化と機会を見ず、枝葉末節の問題や副作用を憂慮して拒否したり、遅延させる集団もあるでしょう。
しかし、一部の進歩的な性向の人々は、人より一歩先に変化する世の中や新しい技術を受け入れて、自ら積極的に活用する能力まで確保した人もいるはずです。
歴史は、このように自分の分野で積極的で進歩的姿勢をとった人々が常に勝利してきたし、このような人々はそれ以前とは比べられないほど多大な機会と巨大な富を享受してきたということを、難なく発見できます。
これで今回のセミナーに関連した講演を終わります。ありがとうございます。
[PM]
以上に今回のノーコード技術およびノーコーディングソリューションに関するセミナーの全てのセッションを終わります。 今回のセミナー期間中多くの関心を持って質問し傾聴してくださった皆様に、心より感謝いたします。
<目次>
第一講_ノーコード技術セミナー(C, Javaように自由度の高い新技術)
第二講 ノーコードでプログラムを制作する具体的な方法と手続き
第三講 親和性のあるUI/UX機能と繊細な処理ロジックを実現化
第四講 多様なユーザーのモバイル端末環境に合うようにパッキング
第五講 イベント処理のような動的機能や、複雑な機能と処理条件具現化
第六講 ノーコーディングソリューションでデータ照会及び分析類型のアプリ作成方法
第七講 3階層アーキテクチャの統合システム構築に必要なサーバプログラム具現化方式
第八講 大規模統合システム構築プロジェクトに、ノーコーディングソリューション適用の可能性