医学としてのアンチエイジング、抗加齢医学を知らない方もまだまだ多いようです。
抗加齢医学は、単なる外見の“若返り”目的の美容医療ではありません。不老不死を目指す胡散臭いものでもありません。
日本抗加齢医学会 で発行しているアンチエイジング医学の教科書『抗加齢医学の基礎と臨床』には、こう定義されています。
“元気で長寿を享受することを目指す理論的・実践的科学”であると。
端的にいうならば、「健康長寿のための医学」、「未病、半健康人、健康人などを対象とした健康医療(疾患を治療する治療医療ではない)」ということになります。
本学会のHPには、こうも書いてありますね。
“加齢という生物学的プロセスに介入を行い、加齢に伴う動脈硬化や、癌のような加齢関連疾患の発症確率を下げ、健康長寿をめざす医学である”
その抗加齢医学に基づいた医療は、単なるお題目的な予防医療とも異なる、かなり実践的な医療であるのですが、その辺りの詳細はまた別の機会に紹介するとして…
今日は、アンチエイジングという言葉や概念がどのように広まっていったのかをまとめてみました。医学界、マスコミ業界、美容業界の多くの方々から、ヒアリングしたものです。
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1990年7月 アメリカのRudman博士らによる「60歳以上の健常男性を対象としたヒト成長ホルモンの臨床的効果」という研究が「New England Journal of Medicine」に発表される(これがAnti-Aging Medicine=抗加齢医学の始まりとされている)
1998年頃より、一部の美容形成外科医らが「アンチエイジング」という言葉を美容外科の領域で使い出すが、内科的な「抗加齢医学」としてのアンチエイジングではなく、形態学的な外面の“若返り”を主とした美容医療(フェイスリフト術や脂肪吸引術等)に対して用いられていた
1999年頃より、化粧品、エステなどの美容業界と一部のマスコミ(美容やファッションを扱う女性誌など)の間でもアンチエイジングという言葉が使われ出す
2000年4月に東京で行われた「第3回国際美容外科学会(会長:高須クリニック院長 高須克弥先生)」でアメリカのAnti-Aging Medicineが紹介される その後、内科的な考え方に立つ「抗加齢医学」としてのアンチエイジングを日本においても確立していこうという動きが始まり、日本鋼管病院(当時)の米井嘉一先生、高輪メディカルクリニックの久保明先生らが、アンチエイジングドックを開始する
2001年3月 日本抗加齢医学研究会設立(設立時の会員数50名)
2002年頃より、30代後半~50代前半くらいの女性を対象とした美容系雑誌等で「アンチエイジング美容」という言葉が頻繁に使われ出す
2003年4月 日本抗加齢医学研究会は日本抗加齢医学会となる(この時点での会員数434名)
2003年頃より、「アンチエイジング美容」は30代後半以上の女性を対象とした雑誌の美容関係の記事においてはほぼ定着して使われるようになる
2004年4月 日本で初めて「アンチエイジング」を名乗るクリニックが開院(京都の四条アンチエイジングクリニック)
2004年頃より、NHKや四大新聞などで「抗加齢医学」としてのアンチエイジングが紹介され出す また、アンチエイジング・サプリメント、アンチエイジング・レストラン、アンチエイジング・ツアーなど「アンチエイジング」を謳い文句にした商品、サービスが現れ出す
2005年4月 日本初の抗加齢医学の研究講座「同志社大学アンチエイジングリサーチセンター」が出来る また、日本抗加齢医学会会員数が1000名を超える
2005年頃より、20代を対象とした女性一般誌においても「アンチエイジング」の特集が広く扱われるようになる(美容的なものだけでなく、サプリメント、デトックス、キレーション、ホルモン療法など)また、男性誌でも「男のアンチエイジング」が取り扱われるようになる(スキンケア、頭髪ケア、ED、サプリメント、食事、運動など世代や対象毎に焦点は異なる)
2006年1月 初の日本抗加齢医学会認定専門医、認定指導士が誕生する
2006年4月 東京大学にも「抗加齢医学講座」が出来る
2006年12月 「アンチエイジング」という言葉が日本流行語大賞のノミネート・ワード60語の中に選ばれる
2007年1月 日本抗加齢医学会会員数が5000名を超える また、初の同学会認定医療施設が14施設誕生する
2007年3月 日本エイジマネージメント医療研究機構発足
2007年9月 アンチエイジングという言葉に対して、「プロエイジ」、「ハッピーエイジング」、「ウェルエイジング」、「ヘルシーエイジング」等の言葉が使われだす
2008年3月 日本抗加齢医学会員数 5,518名
2008年4月 特定健康診査・特定保健指導制度が始まる 一般人対象のアンケート等で、「アンチエイジング」という言葉を知らない者は2割以下という水準にまで浸透する
2009年4月 日本抗加齢医学会員数が6,000名を超える
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この年表を見てもわかるとおり、今、日本には2つのアンチエイジングがあるようです。
ひとつは、女性の美容法や“若返り”を意味する文化的色合の強いアンチエイジング。もうひとつは、医学としてのアンチエイジング(=抗加齢医学)です。
アンチエイジングという言葉の認知度は、今や9割以上とさえいわれていますが、この混沌とした使われ方が、医学としてのアンチエイジングがメジャーに成りきれないひとつの要因であると、私は分析しています。




















