Aくんの父親が
「長男くんの通院や学校は今後どうなりますか。」
と聞いてきた。
しばらくは自宅療養になる予定だ。
再度の転倒事故を考えたら当面、学校には送り出せない。
と答えると
「失礼ですが、奥さんは専業主婦ですか。
旦那さんは平日の朝、通学班に子どもを送り出せるみたいですが在宅勤務でしょうか。
今は、旦那さんは家にいらっしゃいますか」
と淡々と問う。
ほぼ初対面なのに不躾な質問ばかりをされる。
……我が子が、相手に大怪我をさせたことの重大さを理解しているとは思えない。
【家庭の状況を把握したい】という的外れな質問ばかりされているように思えた。
神経を逆撫でするような
それでいて、本音の部分は明かさず
核心にはふれない質問ばかりが飛んできた。
奥さんの方は申し合わせたように
旦那さんの言葉に耳を傾けているだけで
黙りこくっている。
その間、下の子2人は家の周りを走り回り、
Aくんはつまらなそうにうつむいていた。
この旦那の含意を汲み取るに
私が専業主婦であれば息子の看病や通院のための休業補償は不要。
仮に夫婦揃って在宅ワークなら、その間の休業補償は職場から出るのか。
在宅なら、自分の妻、同様、
育児は片手間に仕事が出きるから収入減にはならないか。
……要は治療費以外の請求の算段があるのかが知りたい様子だった。
こちらが取れるものは一円でも取りたい。
と思っているかのような言い方にすら聞こえる。
補償云々の前に、まずは誠心誠意の謝罪と説明責任を果たせ!と怒鳴り付けてやりたい衝動に駆られる。
感情のままに生きられたらどれだけ楽だろう。
Aくんの父親の不躾な質問に一切、答えずにいると
「大変失礼ですが、子ども医療費の対象でしょうか。
旦那さんは同席されないのですか」
と、際限なく言葉を投げてきた。
さすがに我慢の限界に到達する。
何度も夫の同席を求めるのは
【女は感情的だから話しにならない。
重要なことは男同士で建設的な交渉をしたい】
と言われている気持ちになる。
何が今回の原因かは一切考えず
相手の気持ちに配慮することもなく
ただ、ひたすら最小限の弁済で済ませたい気持ちを露骨にあらわす。
同じ、子を持つ親のやることなのだろうか。
Aくんと次男は同じ年でクラスも一緒。
2歳違いの長男が、全身麻酔の手術をし、
一生懸命、練習してきたピアノも断念。
後遺症やトラウマを抱えて生きていくことに対して人の親として心が痛むことはないのか。