あさのあつこ / 講談社 YA!ENTERTAINMENT


 お待ちかねの#4です。


 うーん、萌えとか放っておいて物語として感想を言えば、少々物足りない。

 登場人物の内面の変化にひきずられすぎているような、同じ道を巡ってなかなか展開が一歩先へ進まない、もどかしさ。

 バッテリーでも感じたこの緻密さゆえの滞りは、多分、あさのさんの長所であって短所でもあるんだろうなぁ……。


 ページ数の問題があるのは分かっていますが、分冊でも良いから#3と#4は一緒に出てよかったように思います。


 さて、紫苑とネズミがいつもの調子なのはとりあえずおいておいて(もうあんたら勝手にすれば良いと思うよ…お姉さんもう何も言わない)、注目はネズミの過去と、イヌカシ、かな。(紫苑さまは、ほら、つよいこだって知ってたからさ…)


 ネズミが何かしかのキーになっているのは確かだと思うのですが(このあたりで片鱗を見せるのも妥当かと)、しかしイヌカシのあれは…。はしゃぐ半面でもう少し先延ばしても良かったような、気、が…!

 ていうかこのタイミングで断言はしないということは(決まったも同然だと思っていますが…)、引っ張るということですよね? 曖昧なまま引っ張るということは、何かしら、後に、あると解釈していいんですよね?(早計か…?)


 ううう、自分だけは生き延びると言い切ったあの子が、どうか死んだりしませんように。本当、おねがいします。


 #5は来年として、ついに矯正施設へ乗り込みます。今度こそアクションを期待したいところ。楽しみです。


あさのあつこ No.6 (#4)
ところでこれ表紙って紫苑ですよね? 濃いなぁ…(笑)

 はやみねかおる / 講談社 青い鳥文庫


 はやみねかおるデビュー作の復刻版。

 怪盗道化師となった西沢のおじさんが、「世の中にとって値打ちのないもの」「持っている人にとって値打ちのないもの」「盗めばみんなが笑顔になるもの」を盗み出すというパターンの短編集。


 十年以上昔の作品なのに、はやみねさんの姿勢はこの頃から変わらないのだなぁ。

 エピソードのひとつひとつにメッセージが込められていて、あったかい。


 大人が読んでもほのぼのできるけれど、やっぱり子どもに読んで欲しい一冊です。


はやみねかおる 怪盗道化師
 殊能将之 / 講談社 ミステリーランド


 ミステリーランド第一回配本。

 団地という空間の中での暗い家庭事情がテーマ、な気がする。陰気な話だった…。


『子どもの王様』と呼ばれる奇妙な存在。

 学校に行かず本ばかり読んでいる少年の空想として語られるそれの正体は充分予想できるし、ミステリというよりはホラー的要素の方が強いような気がします。

 幼い頃団地に住んでいた身としては、色々思い出すことも。トモヤの言う「団地の外空っぽ説」は私も考えたことが…。


 しかし読後感が悪い。

 もやもやしたものだけが残って、すごく子どもに読ませたくない本になっています。ミステリーランドは本当に趣旨が見えんな…。


殊能将之 子どもの王様
 片川優子 / 講談社


 現役高校生作家デビュー作。

 幽霊の見える「僕」と、憑かれやすいクラスメイト「佐藤さん」が近付きあい、お互いに過去のトラウマや現在の不安を乗り越えてゆくという青春ストーリー。


 この「僕」がもうめちゃくちゃ可愛い。

 後ろ向きで、自信がなくて、臆病で、鈍感で、それでも懸命に佐藤さんに向き合って……。

 こんな純朴な高校生存在するんだろうか。本当に、思わず真剣に応援したくなるくらい可愛い。


 幽霊が見えるという設定に敢えて重点を置かず、高校一年生の恋愛や不安と陰を描いていて、非現実感が漂う中でしっかりとリアルを捉えている。良いものを読みました。

 現在十八歳、ということで、今後の作品も期待したいです。


片川優子 佐藤さん
 小川勝己 / 早川書房

 久しぶりの長編。

 売れない作家が美人編集者に思いを寄せ、彼女とともに夫を殺す計画をたてる、という設定は平凡なサスペンス。


 小川さんは何だかんだで好きなので、細々言うこともないとは思うのですが、ちょっと迷走が過ぎたかなと言う印象。

 ダメな男とどうしようもない女が我が道をつっぱしるさまは、非常に気持ち悪くて最高なのですが(この方の描く女性って本当すごい好き…)分かり易く破綻しすぎて面白みが……ぐねぐね曲がってるんだけど予想を裏切りきれていないというか、うーん、求めるものが大きすぎたのかな…。


 あ、『彼岸』の彼が出てきたのにはときめきました(笑)。


小川勝己 ロマンティスト狂い咲き

あさのあつこ * 講談社 YA!ENTERTAINMENT


誰一人飢えることなく、諍いや反乱の決しておきない理想郷『NO.6』。最高ランク頭脳の持ち主として将来を約束されていた紫苑は、しかし嵐の夜、窓から飛び込んできた少年・ネズミを匿ったことで一般市民へと格下げされた。

未練はない。しかし四年後、ロストタウンで母と二人、豊かではないが平和な日々を送っていた紫苑は、ある日奇妙な死体を目の当たりにし、国から追われることに。四年前の借りを返すために現れたネズミに導かれ、最下層地区である『西ブロック』へと逃れた彼の運命は――。

『バッテリー』のあさのあつこによる、近未来SFアクションシリーズ。#1~#3再読。


NO.6 #1

紫苑とネズミの出逢い、突如現れた奇病、再会、逃亡。そして変貌。一冊丸々使って物語の『起』を描いています。

読み返してみるとけっこう紫苑って男らしかったりするなぁと思いました。ネズミが格好よすぎるからだな…彼と一緒にいるとみんな可愛らしく見えるんだ。不思議だ。

近未来SFといっても、あまりそういう感じはないです。待遇される者がいて、そことは違うところで飢餓があり、安穏と過ごす人々の知らぬ(知らされぬ)部分で現実が動いている。上から視界を覆われることを受け入れているのは、NO.6の住人たちだけでなく、私たちも同じことなのですよね。だから、知らなければならない。知ろうとしなくてはならない。YA向けにしては重く、質も量も濃い小説ですが、全編通して一巻完結ではないので、続きが気になること請け合いです。


NO.6 #2

西ブロックでの生活、現実との直面。母の想いと沙布の失踪。

#1はロストタウン→西ブロックというあまり位置的な動きは少なかったのですが、今回は西ブロック内でも紫苑たちは動き回るし、No.6内での火藍の動きも加わって、速度がぐんと飛躍します。キャラクターも増えますし、というか、イヌカシが出てくるからね!(愛)

恥かしいくらいに真っすぐで偽りのない言葉がたくさん出てきます。紫苑だけでなく、ネズミの口からも。「きみに惹かれている」とか「おれとNo.6、どちらを選ぶ?」とか、ああああいったいなにあの子たち…!(いやそういうのも含めて、明言が多いですNO.6は…)


No.6 #3

火藍からのメッセージに、矯正施設の情報を集めはじめたネズミ。命の危険を感じながらも、ネズミの言葉に抗えないイヌカシ。沙布の危険を知り、救出を決意する紫苑。物語の進行に逆らうことなく、舞台は陰謀渦巻く矯正施設へ――!

……っていうのは、#4のあらすじかもしれない(…)。#3は、矯正施設へ向けてのプロローグ的な話になっています。準備期間、かな。

それにしても、押し倒す・首絞める・囁く、はネズミ三大特技ですね。エロい、もとい、艶っぽい。紫苑もギリギリの言動だと思うけれど、ネズミの場合はわざとだからタチが悪いと思う。イヌカシってばかわいそう(にやにや)。

腐った乙女な読者たちを震撼させた例のアレもありますし、作品としての面白さは勿論、そういう面でもにんまりしたい巻です。不純。でも本当に、なんなんだろうあの子たち……(くらくら)

森奈津子 * 学研 エンタティーン倶楽部


百合エロ界の大御所(笑)森奈津子による王道の少女ジュヴナイル。この人の出身が少女小説であったことを久しぶりに思い出しました。面白かったー。

仲の良いクラスメイトと離れ離れになってしまった衣緒が、新しいクラスで出会った変わった女の子・一子。この一子がありがちながらも変人で、口調も性格も小学生らしくない。「孤独を愛する」とか言いながら褒められるとすぐに赤くなるし、頭は良いけど運動はダメですぐに貧血を起こして倒れてしまう。非常に可愛らしい子なのです。もえた。

ストーリーも小学生くらいなら充分に楽しめるホラーミステリ。続編が出ることを期待します。


森 奈津子
地下室の幽霊 エンタティーン倶楽部

祥伝社


人気男性作家人による恋愛をテーマにしたアンソロジー。


透明ポーラーベア / 伊坂幸太郎

普段ミステリ的な作品が多い中、恋愛作品はどんなものなのかと思っていましたが、一作目でおなかいっぱいになってしまうくらい面白かったです。言い換えれば、比較となるぶん後の作品のレベルが低く見えてしまうわけですが…。


魔法のボタン / 石田衣良
無難。ありきたりな話の中に不思議なゲーム・魔法のボタンを導入しているのですが、そんなに生きていなかったような気が。幼稚園児の遊びにしてはちょっと面白みがないというか。こじつけた感があるというか。

卒業写真 / 市川拓司
話が引っくり返った時点で物語りは終了していたわけだけれど、主人公がかわいかったのでまぁ良いかな、と。

百瀬、こっちを向いて / 中田永一
主人公の後ろ向き方が好ましく、流れも爽やかで好感触。ただタイトルがあまり好みじゃない感じです、おそるおそるなのは可愛いけれど。

突き抜けろ / 中村航
恋愛というテーマからはどこかずれてしまっているような気もしないではないのですが、面白かったです。ああいうぶっとんだキャラは大好きだ。ああいう酔っ払いも大好きだ。

Sidewalk Talk /本多孝好
作品中一番短い、のかな。唯一のアンハッピーエンドではあるのですが、ラストに相応しい物語だったようにも思います。出会いのエピソードが微笑ましくてよかった。


伊坂 幸太郎, 石田 衣良, 市川 拓司, 中田 永一, 中村 航, 本多 孝好
I love you

はやみねかおる * 講談社


夏のはやみねかおる祭ということで。やっぱり再読です。
清志郎さんのシリーズでお馴染みの虹北商店街で起こる不思議な事件を、学校へ行かず本ばかり読んでいる少年・虹北恭助が解き明かしてゆくシリーズ。

少年名探偵 虹北恭助の冒険
ひとりでに増えてゆく駄菓子屋のおかしの不思議(虹北みすてり商店街)、一枚の写真に驚愕して部屋にこもってしまったクラスメイトの本当の気持ち(心霊写真)、アーケード街に残された謎の足跡(透明人間)、願いごとを言えばなんでも叶えてくれるという噂の「お願いビルディング」(祈願成就)、校庭に埋められたタイムカプセルの秘密(卒業記念)の五つの話が入った短編集。
小学六年生、講談社ノベルス最年少の名探偵というキャッチコピーでした。
全体に簡単なお話ばかりで、これほんとうにメフィストでやったのだろうかと首を傾げてみたり。とはいえ、いつもどおりのはやみねテンポ(笑)には癒されます。毎巻、何かしら丸く収まっている恭助くんと響子ちゃんの関係ですが、個人的にこの巻のラストが一番好きだったりします。小学生はかわいい。

少年名探偵 虹北恭助の新冒険
小学校の屋上から飛び降りた少女の真意(夜間飛行)と、燃える一介の映画人たちによる血と汗と努力の自主制作映画上映会(おれたちのビッグなエンターテイメント)の二作を収録。新・新冒険とは同時に発売されたのに、どうしてか二分されて薄い本になっています。不思議。
二作しか入っていないのに一作は外伝で恭助くんの出番はなし。もう一作も、事件を解決に導いたのは恭じいちゃんでした。恭助くんなにもしてません(笑)(むしろ若旦那の方が名探偵していたとおもう)
作品タイトルについては、素直に「虹北恭助の帰還 上・下」で良かったんじゃないかと思います、よ。

少年名探偵 虹北恭助の新・新冒険
暴力的なクラスメイトの意外な素顔とは?(春色幻想)、池の鯉はどうして殺されたのか?(殺鯉事件)、病院に現れたウサギサンタの正体は?(聖降誕祭) 未読だと思い込んでいましたが発売当時にバッチリ読んでいました。「カンキリサイクル」とかかなりツボったはずなのに、ダメな記憶力だ…。
新冒険でなかった出番を取り戻すように、今度はしっかり推理しています恭助くん(笑)。すべて簡単なトリックなので予想のつくものも多いのですが、聖降誕祭は良かったなぁ。ああいうあったかいのは大好きです。
こうして通して読むと、高校生編はがらりと変わった感じがします。主要キャラが増えたせいもあるのだろうけれど、……若旦那たちがあまり視界に入ってこないからかな…(笑)

深沢美潮 * ジャイブ カラフル文庫


子ども向けの軽快なミステリ。

ちょっと読みにくさはあるのですが、キャラクターがしっかりしていて、充分楽しめるお話でした。

街中にひそんだ暗号を解読してゆくシーンで、元くんがうきうきして叫びだしそうになったり、ムーに褒められた瑠香ちゃんがはしゃぎまわったり、何かもうものすごい可愛らしかったです。このわくわく感が大切なのですよね、ジュヴナイル・ミステリは。続編も読もう。

で、イラスト可愛いなぁと思っていたら、山田J太さんってデ・ジ・キャラットで描いていたのですね。ジャイブさんの萌え系挿絵戦略はあまり好きではないのですが(…)これはピッタリはまっているなぁと思いました。


深沢 美潮, 山田 J太
IQ探偵ムー―そして、彼女はやってきた。