藤野恵美 / 講談社 青い鳥文庫

 呪われたメールの届いた携帯電話を、先生に没収されてししまったはるかのお話。

 幽霊なんて信じないという先生をどうにかして怖がらせようと、子どもたちが怖い話を読み聞かせてくれるという楽しい内容になっています。


 九日以内に三人にメールを送らないと、サッちゃんに呪われる。

 こんなチェーンメールを信じる小学生も最近はいないんじゃないかと思うのですが(笑)。


 友情や恋愛も絡んでいって、心霊現象を取り上げて「こわいこわい」と騒ぐだけでなく、良い意味で現実を読者に見せてくれる点が好印象。

 幽霊を信じないと明言する先生が、単純に非科学的な物事を否定しているわけではなくて、たとえばこういう見方も出来る、私はこういうふうに思う、と生徒たちに優しく説明していってくれるのが読んでいてとても気持ち良い作品でした。


 怪談が好きな子どもの感想を聞いてみたいなぁ。


藤野恵美 七時間目の怪談授業
 田中啓文 / 集英社

 ぐあ、面白かった……!!


 担任教師の薦めで上方落語の大御所・笑酔亭梅寿に弟子入りした、黄色い鶏冠頭がトレードマークの典型的な不良少年・竜二。

 酒癖が悪く何かあるとすぐに暴力に訴える梅寿に振り回されつつも、行く先々で起こる事件を解決してゆくというパターンのライトミステリ短編集。


 各話毎に落語をモチーフとした出来事が起こるのですが、きちんと説明をはさんでいて初心者にもわかりやすいです。

 謎も簡単なものが多いので、コメディドラマを見ているような気分で肩の力を抜いて楽しめる。


 梅寿の無茶っぷりに苦笑したり、竜二の成長に暖かくなったり、キャラクターとしての魅力もとても強くて、是非続編を期待したいなぁ。


 個人的には、UMAハンター馬子 よりよっぽど好きです。一般に広くオススメしたい。


田中啓文 笑酔亭梅寿謎解噺

 倉知淳 / 講談社ノベルス


 もうすぐ続編が出ると聞いたので。


 年齢不詳、神出鬼没、つかみ所のないほのぼの系探偵・猫丸先輩がへろへろと現れて事件を解決(推察?)してしまうミステリ短編集。


 人死にのまったくない日常ミステリなのですが、本格の香りが効いていて面白いです。

 確かに推理というよりは「推測」で、猫丸先輩自身「こういう可能性もあるんじゃないかな?」というノリで語ってくれるので読み易い。何より猫丸先輩のキャラが良い(笑)。イラストもふわんと可愛らしく良い味を出しています。


 どうやら猫丸先輩のお話は他社からも出ているようなので、そちらも読んでみたいなぁと思います。


倉知淳 猫丸先輩の推測
右は文庫。9月15日発売。
こっちもうすぐ発売ー。猫丸先輩の空論

 あさのあつこ / 毎日新聞社


 のんびり屋で、天気のいい日は草むらにしいた新聞紙のうえで寝転がるのが大好きな、ちょっと変わった女の子・えりなのお話。

 全体にほんわかした物語で、頻繁に入る挿絵も絵本のようでとてもかわいらしい。

 そのなかで現実的な問題がふっと入り込んでいて、どきりとしたり、いとおしくなったり。素直なえりなに、ああ、良いなぁとおもうのでした。


 うー、なんだか陳腐。良いことばが見つからないなぁ…。


 とにかくひどく愛らしくて、ほっとできる反面で、自分自身を省みることもさせてくれるすてきな作品でした。


あさのあつこ えりなの青い空

 畠中恵 / 新潮社


 身体は弱いが知恵に溢れる若だんなと、頼れるわりにちょっとトボケた妖たちの、愉快な人情妖怪推理帖。

 お待ちかねのシリーズ四作目です。


 あいかわらず癒される短編集。

 これだけほのぼのとキャラクター的にも美味しく、なごみなごんでのお話の中で、変わらずミステリ的要素を忘れていないところがすてきだなぁ(あれをミステリとするかどうかはひと次第でしょうけれども)。


 個人的にこれが好き、という話をあげておくべきなのでしょうけれど、みんなみんな大好きすぎて……!

 狐者異がやっぱり好きだなぁと思いながら、いやいやお雛さんと屏風のぞきもたまらんかわいさだ。ちいさい若だんなも捨て難いし、手代らの無茶っぷりもいとおしい。

 何より家鳴なしにこの巻は語れまい、と、やっぱり一冊まるっと大好きなのでした。

 あいかわらずカバー下もかわいいんだこれが。にまにま。


 あまり関係ありませんが、アマゾンさんで同じテーマの商品を見ると「妖怪アパートの幽雅な日常 」シリーズが並んでいるのが笑えます。あちらも早く新刊を読まねば…!


畠中恵 おまけのこ
 沼田まほかる / 新潮社

 九月最初がこの作品てのはどうなのかしら、と思わないでもないですが。(いや、ええ、狙いましたけど)


 ある夜突然失踪した一人息子を探してゆくうちに、自身の情事、元夫と再婚相手の女・亜佐美の過去、彼女の娘と自分の息子の関係、さまざまな過去や現在が「私」を苦しめ、物語りは思わぬ方向へ。


 そこまで行くか、そうか行っちゃうのか、と読み進めるうちに落胆的な感情が生まれてきます。

 物語自体にではなく、流れの残酷さに。


 新人(っても五十代の方ですが)でありながら表現力は確かに秀逸で、最初は読みにくかったものの、ぐいぐいと引き込むモノがあります。

 登場人物もなかなか濃い(まぁ腹立たしいのですが、服部のおじさんは最高。あの人がいないとこの話は成立しないと思う)。


 ただ私は、中年の女性と若い男性の云々は、得意じゃないんですよ……。


 ホラー的な要素はそれほどありませんし、ごちゃごちゃしているように見えてけっこう単純な人間関係を描いたミステリ色の強いサスペンス。面白かったけれど期待したほどではなかったかな、という感じで。



沼田まほかる 九月が永遠に続けば

 9月6日だか8日だかに発売だそうです。

 ええもう何ていうか、はい、知りませんでしたよ……。


西尾維新 ニンギョウがニンギョウ


 講談社ノベルス初の箱入り使用だそうです。だからお値段高め。ひどい。

 装丁にこだわりすぎて値段を上げるのは良くないですよ。お金ないですよ。買うけど。


 それにしても西尾さん、不気味で素朴な囲われた世界(でしたっけ?)はどうなったのだろう。

日日日 アンダカの怪造学虫と眼球とテディベア
あさのあつこ 透明な旅路と福音の少年

有川浩 空の中

飯野真澄 真夜中は猫のはじまり

今江祥智 パパはころしや

上橋菜穂子 狐笛のかなた

歌野晶午 長い家の殺人
乙一 暗いところで待ち合わせ天帝妖狐小生物語
折原一 黙の部屋

恩田陸 夜のピクニックネバーランドロミオとロミオは永遠にユージニア

桐野夏生 OUT

甲田学人 Missing
坂木司 切れない糸

篠原一 ぼくはスクワターアイリーン

小路幸也 高く遠く空へ歌ううた

高里椎奈 お伽話のように左手をつないで
高田侑 裂けた瞳うなぎ鬼

中山可穂 サグラダ・ファミリア 聖家族マラケシュ心中花伽藍

仁川高丸 微熱狼少女

はやみねかおる 消える総生島

響野夏菜 史上最大の作戦

舞城王太郎 好き好き大好き超愛してる。

町田康 告白

三崎亜記 となり町戦争

真梨幸子 孤虫症
三浦 しをん ロマンス小説の七日間乙女なげやり格闘する者に○むかしのはなし

宮部みゆき 理由模倣犯

森絵都  いつかパラソルの下で

森奈津子 あんただけ死なないノンセクシュアル姫百合たちの放課後電脳娼婦

山中恒 へんてこな一週間

吉村萬壱 バースト・ゾーン―爆裂地区


ミステリーランド

島田荘司 透明人間の納屋

有栖川有栖 虹果て村の秘密

高田崇史 鬼神伝 鬼の巻  神の巻

太田 忠司 黄金蝶ひとり

森博嗣 探偵伯爵と僕

西澤保彦 いつか、ふたりは二匹

田中芳樹 ラインの虜囚

麻耶雄嵩 神様ゲーム

 令丈ヒロ子 / 講談社 青い鳥文庫


 シリーズ三作目。おもしろかった!


 今度のお客さまは大ホテルの跡取り息子。彼に温泉旅館のよさを知ってもらうため、偏食老人への低カロリー料理や、楽しい露天風呂を考え、おっこはまたも走り回ります。


 しかしやっぱり、今回注目すべきは真月さんだろうと。

 三木に気に入られようとイメチェンをはかってみたりとかわいい一面を見せつつ、旅館の跡継ぎとしてピシリときめてくれています。美陽の存在もなるほど、こういう役回りだったのね、と納得。あの姉妹大好きです。

 爽やかなラストには伏線も置いていってくれていますし、続きが楽しみ。



令丈ヒロ子 若おかみは小学生!〈PART3〉花の湯温泉ストーリー

 神永学 / 文芸社


 生まれ付いて左目が赤く、死者の魂を視認することの出来る青年・八雲が、心霊的な面で謎を解決してゆくというミステリ中編集。


 うーん……設定はかなりベタベタで、コミック的な展開とチープな謎解きは物足りなさが強いです。

 二話目はけっこう面白かったですけど、一話、三話は予想通りすぎて逆に度肝を抜かれるくらい捻りのないお話でしたし。

 何より、心霊現象を取り扱う作品として致命的なことに、全然怖くない。


 ミステリとしてもホラーとしても中途半端な感が拭えません。

 つまらないわけではないのだけれど、もうひと捻りしてもらわないと楽しめない。キャラクターは良い感じですが。


 ていうかこれ何が問題って、装丁のイメージ付けが悪いんだと思います。

 見たまんまライトノベルな表紙なら、素直に楽しめた気がする。


神永学 心霊探偵・八雲 赤い瞳は知っている