あさのあつこ * 講談社 YA!ENTERTAINMENT
誰一人飢えることなく、諍いや反乱の決しておきない理想郷『NO.6』。最高ランク頭脳の持ち主として将来を約束されていた紫苑は、しかし嵐の夜、窓から飛び込んできた少年・ネズミを匿ったことで一般市民へと格下げされた。
未練はない。しかし四年後、ロストタウンで母と二人、豊かではないが平和な日々を送っていた紫苑は、ある日奇妙な死体を目の当たりにし、国から追われることに。四年前の借りを返すために現れたネズミに導かれ、最下層地区である『西ブロック』へと逃れた彼の運命は――。
『バッテリー』のあさのあつこによる、近未来SFアクションシリーズ。#1~#3再読。
紫苑とネズミの出逢い、突如現れた奇病、再会、逃亡。そして変貌。一冊丸々使って物語の『起』を描いています。
読み返してみるとけっこう紫苑って男らしかったりするなぁと思いました。ネズミが格好よすぎるからだな…彼と一緒にいるとみんな可愛らしく見えるんだ。不思議だ。
近未来SFといっても、あまりそういう感じはないです。待遇される者がいて、そことは違うところで飢餓があり、安穏と過ごす人々の知らぬ(知らされぬ)部分で現実が動いている。上から視界を覆われることを受け入れているのは、NO.6の住人たちだけでなく、私たちも同じことなのですよね。だから、知らなければならない。知ろうとしなくてはならない。YA向けにしては重く、質も量も濃い小説ですが、全編通して一巻完結ではないので、続きが気になること請け合いです。
西ブロックでの生活、現実との直面。母の想いと沙布の失踪。
#1はロストタウン→西ブロックというあまり位置的な動きは少なかったのですが、今回は西ブロック内でも紫苑たちは動き回るし、No.6内での火藍の動きも加わって、速度がぐんと飛躍します。キャラクターも増えますし、というか、イヌカシが出てくるからね!(愛)
恥かしいくらいに真っすぐで偽りのない言葉がたくさん出てきます。紫苑だけでなく、ネズミの口からも。「きみに惹かれている」とか「おれとNo.6、どちらを選ぶ?」とか、ああああいったいなにあの子たち…!(いやそういうのも含めて、明言が多いですNO.6は…)
火藍からのメッセージに、矯正施設の情報を集めはじめたネズミ。命の危険を感じながらも、ネズミの言葉に抗えないイヌカシ。沙布の危険を知り、救出を決意する紫苑。物語の進行に逆らうことなく、舞台は陰謀渦巻く矯正施設へ――!
……っていうのは、#4のあらすじかもしれない(…)。#3は、矯正施設へ向けてのプロローグ的な話になっています。準備期間、かな。
それにしても、押し倒す・首絞める・囁く、はネズミ三大特技ですね。エロい、もとい、艶っぽい。紫苑もギリギリの言動だと思うけれど、ネズミの場合はわざとだからタチが悪いと思う。イヌカシってばかわいそう(にやにや)。
腐った乙女な読者たちを震撼させた例のアレもありますし、作品としての面白さは勿論、そういう面でもにんまりしたい巻です。不純。でも本当に、なんなんだろうあの子たち……(くらくら)