子猫使いのやすしの日々 -18ページ目

スワップ2

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 良助は帰りの車中、不機嫌だった。
 あたしがなにか話しかけても返事をしない。気まずい雰囲気が車内に立ち込めていた。
 きっとあたしの良助の母親に対する態度が気に食わなかったのだろう。あたしはあたしなりに母親には気を遣ったつもりだ。現に母親もあれだけ作品を褒められて喜んでいたではないか。なんて書いてあるか分かんないような字を見て、趣があるとか、一際目立つとか。だからそのことで良助に責められる筋合いはない。だけど怯えている。運転をする良助の横顔をちらちらと眺め、機嫌の状態を量る。
 良助は初めからあたしなどいなかったかのように、あたしの存在を知らん振りし続けている。
 
 良助と恋人となりこの日でちょうど2年目だった。もちろん恋人の契約とか交わしたわけではないが、良助から付き合ってほしいと告白され、あたしが了承したのがちょうど2年前のクリスマスイブだった。
 その日からもう2年も経つのにあたしと良助は一緒にいる。まだ2年しか経っていないのにあたしは良助の顔色ばかり伺うようになってしまった。

 今日は世間の恋人達がお祝いするように、あたしたちにとっても記念日だった。良助はこの日のためにホテルの最上階のフランス料理を予約しておいてくれた。用意周到な人だからきっとホテルの部屋も予約してあるのだろう。ああいうところをキャンセルした場合にはどれくらいのコストがかかるものなのだろう。ここで良助が勝手に予約して、勝手に怒って、勝手にキャンセルしたんだからあたしには関係ないと思えたら楽なのに、あたしはどうしてもくだらないことを考えてしまう。

 「キャンセルするのもったいないから飯食ってくぞ」
 突然良助が言った。あたしは心の準備ができてなかったから、ただ「ええ」としか言えなかった。これで良助にあたしも怒っていると思われたら嫌だなと思ったけど、今更訂正はできない。どうにか場を取り繕うと言葉を探したけど、適当な言葉が浮かばない。なにを言っても怒りを増長させるだけだとしか思えない。

 車をホテルに入れてエレベーターで最上階まで待つ間、一言も言葉を交わさなかった。どうして多くの人がエレベーターに乗っているとき階数の表示を見ているのか分かった。きっとみんな早く目的地に着きたいのだろう。あたしも一刻も早く最上階に着くことだけを願ってエレベーターの階数表示を睨み続けた。

 席に案内されると「Reserved」と表示されているプレートが目に付いた。窓際の夜景が一望できるすてきな席だ。このとき良助にひどく申し訳ないという風に思った。あたしは悪くないかもしれない。だけど良助を怒らせたということは、あたしは悪いことをしているんだと理解した。(続)



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5分の1も伝わらない

 自分ができなかったことを他人があっさりとこなしてしまうとかなり悔しくないですか。いや、勉強とかスポーツはぼくには仕方ないから仕方ないですよ。そういんじゃなくて、例えば次のようなシチュエーション。

 ・ マサユキが今のアルバイトを始めて早くも一年が経過しようとしていた。アルバイトを始め
  た当初は周りの仲間とも上手く打ち解けることができなかったが、最近では気心知れた友人も
  できた。仕事ももう一人前、仲間といると楽しい。マサユキはこのアルバイトが大好きだった
  。そんなある日マサユキは店長に店の裏に呼ばれた。「あーおれなんかやったかな?」なんて
  友人たちの前では戯けてみせたが、マサユキは内心、絶対ランクアップだ!と決めつけ、走り
  出したい気分だった。後ろで見守る友人達の手前、いかにも気乗りしないというように歩いて
  店の裏の店長の待つ木の下に行った。
  「悪いなこんなとこに来てもらって」
  「あ、全然いいすよ。なんですか話しって?」
  「がんばったな、マサユキ!明日からおまえはランクBだ」
  「えっ、ほんとですか?」
  「ああ、明日からおまえの下に一人新人を付けようと思ってる。しっかり教育してやってくれ
  よ!」
  「う、あ、あ、ありがとうございます!が、がんばります!」
  「おう、しっかり頼むぞマサユキ。おまえももう教育する立場なんだからな」
   かくしてBランクになったマサユキ。ここまで長い道のりだった。まさか自分がここまでこ
  のバイトを続けるとは始めた当初は夢にも思わなかった。これもあの仲間達がいたからだ。星
  を見ながら少し涙ぐむマサユキであった。

   そして翌日、厨房は相変わらず戦場だった。新しく来た新人はいまいちやる気はなさそうだ
  ったが、吸収がよく、マサユキの指示に従いアルバイト初日にしてはとてもよくがんばってい
  た。
  「コンドウくん、疲れただろ。もう今日は上がっていいよ」
  「あ、そうすか。おつかれさまでした」
  「ああ、おつかれさん。明日もがんばってな」
  初めての下への教育。今までにはない達成感がマサユキの胸中に漲っていた。

   仕事が終わり、事務所に戻ると中から楽しそうな笑い声が響いている。お、なんだなんだ、
  楽しそうだな。靴を脱ぎ部屋に入ったマサユキは自分の目を疑った。
   そこには今日初日のコンドウを囲み、ドンさん、アカネさん、カッツさん、そしてミサト
  ちゃんが楽しそうに携帯の番号を交換していた。
  「おう、マサユキ。おつかれ」
   ドンさんに声を掛けられ、「はは…」力ない笑いをどうにか浮かべた。どういうことだ、こ
  れは。おれはドンさんとカッツさんと話せるようになったのは働きだして半年が過ぎたくらい
  だったのに、なんでこいつは初日に話している。しかもミサトちゃんとこいつは今携帯の番号
  交換してなかったか。おれはミサトちゃんの番号なんて知らないぞ。どうなってるんだ…
   立ち尽くすマサユキを尻目にK-1の話しで盛り上がってる5人。そこにはマサユキの入り
  込む余地はなかった。マサユキの口が突然意識と無関係に開いた。
  「コンドウくん。君、上がったの2時間前じゃなかったけ。こんな時間までなにしてんだよ。
  早く帰れよ」
   部屋は突然凍り付いた。ドンさんが立ち上がり、マサユキの胸ぐらを摑んだ。
  「なに言ってんだ、マサユキ。コンドウくんは今日初めての仕事だったんだぞ!それをおまえ
  その態度はなんだー!」
  「まあまあ、ドンちゃん、落ち着いて。マサユキ今日初めての教える立場だったから疲れてん
  だよ。コンドウくんももうこんな時間だし、うちの人心配するからそろそろ帰りな」
   舌打ちをして部屋を出て行くドンさん。ミサトちゃんはマサユキではなく、コンドウを労る
  目で見ている。
   マサユキはどうしていいかわからずに着替えもせずに事務所を飛び出した。事務所を飛び出
  し、帰路につくマサユキは「なんでなんで」と呟いていた。マサユキの呟く「なんでなんで」
  が夜の街にリフレインしていた。


 なんてシチュエーション。悔しくないですか。ぼくだった悔しいですねー。でもこのシチュエーションは言いたかったこととぜんぜん違うんだよな。次のやつかな。


 ・ 「お、おまえ、もうユカちゃんと別れてどれくらい経つっけ?」(すごい鼻息荒く)
   「なんだよ、いきなり。もう別れて3ヶ月経つかな」
   「じゃ、じゃあ時効だよな。おれ、ユカちゃんのこと好きなんだ。おれ、付き合ってよか?」
   「いや、付き合っていいも悪いももうおれかんけーねーし。なんで?おまえいつからユカのこ
   と好きだったの?」
   「そ、それは……おまえには言えん!」(顔を真っ赤にして)
   「いいから言えよ。いつからだよ。おれが付き合ってるときから?」
   「いや、違う。そんなことは断じてない」
   「あーそう、でもあの女大変だぜ。金はかかるし、性格きついし。おまえみたいな唐変木は弄
   ばれてボロボロに捨てられるだけだと思うぜ」
   「いや、ユカちゃんはそんな子じゃなか。心根のきれいな子タイ」(これも顔真っ赤)
   「あーそう。じゃあがんばりなよ」
   「ああ、いいんだな。いいって言ってくれよ」
   「分かったよ。いい、いい、いい、いい。これでいいか?」
   「かたじけない。恩にきるでごわす」(空手のオッスみたいな感じで)

   ーーーー3ヶ月後ーーーー


   「おまえ、ユカと付き合ってるらしいじゃん?」(すげー髪伸びてる)
   「ああ。まあね。うまくやってるよ」(こっちも負けずとすげー髪伸びてる)
   「マジで?疲れない?」
   「おまえがなんで疲れるとか言ってたのかおれには到底理解できないね。あんないい女これま
   でいなかったぜ」
   「え??なんで……どこが……」(ちょっと顔色悪くね)
   「いや、だってさー、どっか食事行くじゃん。おれが払うって言ってんのにあいつおれに払わ
   せようとしねーしさー、おれが仕事から帰ってくるとマッサージしてくれるもん。うまくね?
   あいつのマッサージ?」
   「あ、ああ。まあまあね」
   (ここで鼻で笑う)
   「まあおまえもがんばれよ。」(すげー見下した目で)
   「うっせーな、おまえに言われたくねーよ。この(唐変木と言いかけるが、今はこいつより俺
   の方が唐変木だということに気付き)バカが」
   「おっ、わりーわりーおれ今からユカとデートだからさ。またな」(自信に満ちた背中)
   「ユカよー、なんでそんなに変わっちまったんだ」(カタカタ震えながら)


  
 なんてシチュエーションもちょっと違うな。でもさっきよりは幾分か近いかも知んない。まあなにが言いたいかというとですね、なんかこういうの悔しいですよねってこと。とことん器小さいですから。
 すごく長くなってしまいましたが、言いたいことの5分の1も伝わっていないと思いますので、もうちょっとまとめてから再度ウップしたいと思います。
 ちなみにぜんぶフィクションですからね、念のため。




   
   

レッドロブスターとわたし

 大人になったらこんなとこ行ってみたいって幼少の頃描いていた夢を昨日一つ実現しました。

 「チャラチャラッチャッチャッチャッチャッチャッチャッチャチャラチャラチャラッチャー」ってことで行ってきましたお台場のレッドロブスター!

 ぼくがまだ小学生の頃ギミアブレイクって大橋巨泉さんがたしか司会をしていた番組があったのですが覚えているでしょうか。笑うセールスマンが途中で入る番組です。

 あの番組のCMの中で小さな女の子が「カニ(ここはエビじゃないとおかしいんだけど、なんかどうしてもカニ食べたーいっていってた気がする)食べたー い!チャラチャラッチャッチャッチャッチャッチャッチャッチャチャラチャラチャラッチャー」っていうレッドロブスターのCMが流れてたんですよね。
 あのCMがどれだけ年数を重ねても脳と肉の間あたりに挟まっててなかなか取れなかったんですよ。

 そんなもう18年来くらいの頭に引っかかってた、「夢のエンターテイメント食べるとこ」で食事することができて感無量です。

 そしてレッドロブスターは決してぼくの期待を裏切らなかった。
 ロブスターの丸焼きみたいの注文したら、ウェイターが「お客様、本日のエビはこちらでよろしいですか?」なんてテイスティングまでさせてくれる。
 あそこで「きみ、きみはぼくのことを素人だと思って馬鹿にしてるのかね?何だこのエビはー!店長呼べ!!」
 歯をカタカタさせて脅える店員。そこに駆けつけたひげ面の店長。
 「これはこれは○○様、うちの若い衆が失礼をいたしました。私めが責任を持って最上級のエビを厳選してまいります」
 「もういい、自分で選ぶ。エビはどこだー」
 ってそこまではしたくないけど、「うーんチェンジ」とか言ってみたいですね。

 おいしかったですよ。とても満足しました。楽しい時間を過ごせたことに感謝します。


 それでその後、友人たちと新木場のageHaに行き(昨日はこれがメインです。わざわざレッドロブスター食べるためだけにお台場行ったわけではありません)、朝までグイングインして楽しみましたとさ。

 これだけだとただの日記になってしまいますので、本の紹介も念のため。


ぐろぐろ (ちくま文庫)/松沢 呉一
¥777
Amazon.co.jp
 出ました、ぐろぐろです。作者の松沢さんに関してははてなダイアリーで松沢さんを調べた方がわかりいいと思います。

 それでこの本なのですが、すごいです。本当にすごいです。たぶん読んで不快になる方も多数いらっしゃると思います。あまりにもぐろい人間の限界の姿を描いた本です。えっ?人間ってそんなことしても死なないもんなの?みたいな。そして極めてハードなSとMの世界を垣間みることができます。

 あまり過激なものはちょっと苦手ですっていう方はけっこうですが、「おれってYO、こんなことも知ってるんだぜ!」的な自慢をしたい方にはおすすめです。ただあまり熱心に自慢しすぎるとかなりの高い確率でひかれますので注意が必要です。

旨さが辛いのか、辛さが旨いのかみたいな感じ

 嫌なやつってのは世の中いくらでもいるもので、そんな嫌なやつらに囲まれて暮らしていると嫌な事件というのが起こるものです。

 嫌なやつが嫌な事件を誘発するのか、嫌な事件に感化されて嫌なやつが現れるのか、なーんてそんなくだらないこと考えてもいないけど、ダブルで重なるとかなり嫌ですね。

 いいやつがいい事件(ハプニング)を起こすというような楽しいこと、欲しいですね。


 なんかもうくさくさするんで、本の紹介して終わります。

残虐記 (新潮文庫 き 21-5)/桐野 夏生
¥420
Amazon.co.jp

 この本はあらすじを言いますと、幼い頃に誘拐された主人公が大人になり、その自分の体験と想像を本にしたというものです(そーとー端折ってます)。
 ぼくはこの桐野夏生先生というのは、正直作家さんの中でダントツに一番「怖い」です。
 なんか非常に失礼な言い方ですが、化物と思います
 いくつかの作品を読んでいて共通するのは、そのずば抜けたリアルさ。まるで自ら体験してきたかのようにあまりにもリアルに書くから、読むたびに男なのか女なのか、若いのか年老いてるのか、そういう作家の人物像というのがぐにゃりと歪みます。
 
 かなりトリップできる本です。最近現実感ありすぎとぼやいてるあなた!おすすめですよ。

スワップ



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 あたしはいつからこんなに臆病な人間になってしまったのだろう。
 いつからこんなにも変化を恐れるようになったのだろう。

 良助と出会う前の若いころ……とは言っても年数にすれば5年ほど前にしか過ぎないが、そのころの自分が思い出せない。
 別に記憶喪失とかそういうわけじゃない。あたしは5年前は学校に行ってたし、夏には友達と海に行ったり、冬にはスノボーをしたり、四季関係なく恋をしたりしていた。
 そんなことは覚えている。どうしても思い出せないのは、例えば海に行ったときあたしは楽しんでいたのかとか、恋をしていたときに喜んだり、苦しかったりしたのかとかそういったあたしの内面の部分。
 昔の内面の記憶とでも言えばいいのか、この時期のことを思い出そうとすると心臓が痛くなる。病気なのかもしれない。いっそ死んでしまってもいいと思う。選択肢の一つとしては悪くないように思える。まだ選んでいないだけのことだ。

 今でもあたしは良助のことが狂おしいほどに好きだ。良助がいるからまだ死にたくないと思っていた。でも良助がいるから死にたくなる。いつからこう思うようになった?
 そんなことは分かってる。良助がスワッピングという行為にのめり込んでからだ。

 スワッピングとは、夫婦や恋人がそれぞれ相手を変えて性行為を行うことで、それを行わないと性行為が盛り上がらないとか、自分の妻や恋人が見知らぬ男に抱かれているのを見て興奮する男もいるという。
 あたしには、自分の妻だとか恋人が抱かれているのを見て興奮する男というのは到底理解できないし、理解したくもない。気持ち悪いとしか形容のしようがない。
 
 良助はあたしとの関係に飽きている、そう思えた。付き合った頃はほぼ毎日身体を重ねていたのに、今は一月に一度も身体を重ねることもない。
 あたしは危機感を感じていた。どうすれば良助があたしのことを求めてくれるだろう、どうすればまた昔のように好かれているということが実感できるだろう。だからなにも拒めなかった。

 あの日のことはいまでもはっきりと覚えている。あたしの人間としての尊厳だとか、誇りというものを根こそぎ奪われた日。2年前のクリスマスイブ。

 あたしと良助は、良助の母親が書いた書道の作品がなにかの賞を取ったということだったから、乃木坂の美術館にその作品を見に行っていた。あたしは正直、わざわざクリスマスイブにそんなところに行きたくないと思っていた。でも良助の母親には嫌われたくない。少なくとも今のところ表面上はうまくやっていけているから、仕方なく行くことにした。

 美術館は想像以上に混んでいた。みんなクリスマスにこんなとこ来るんだ、ちょっとした新しい発見だった。あたしも良助も芸術というものにはとことん興味がない。誰が書いたからとか、誰が作ったからといって、その付加価値に大金を払う人間の気が知れない。
 だからあたしはすごく退屈だった。良助もそう思っていたんだろうが、母親の手前、良助はいろんなものに興味があるフリをしていた。その姿は母親を馬鹿にしているようにも見えるほど、下手糞な演技だった。(続)



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 ようやく小説書いてみました。これでジャンル「小説」ってなってんのを負い目に感じずに済みます。なんか既に書き続けられるか不安になってきましたが、まだ続く予定ですので熱い目で見守ってやってください。
 
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