5分の1も伝わらない | 子猫使いのやすしの日々

5分の1も伝わらない

 自分ができなかったことを他人があっさりとこなしてしまうとかなり悔しくないですか。いや、勉強とかスポーツはぼくには仕方ないから仕方ないですよ。そういんじゃなくて、例えば次のようなシチュエーション。

 ・ マサユキが今のアルバイトを始めて早くも一年が経過しようとしていた。アルバイトを始め
  た当初は周りの仲間とも上手く打ち解けることができなかったが、最近では気心知れた友人も
  できた。仕事ももう一人前、仲間といると楽しい。マサユキはこのアルバイトが大好きだった
  。そんなある日マサユキは店長に店の裏に呼ばれた。「あーおれなんかやったかな?」なんて
  友人たちの前では戯けてみせたが、マサユキは内心、絶対ランクアップだ!と決めつけ、走り
  出したい気分だった。後ろで見守る友人達の手前、いかにも気乗りしないというように歩いて
  店の裏の店長の待つ木の下に行った。
  「悪いなこんなとこに来てもらって」
  「あ、全然いいすよ。なんですか話しって?」
  「がんばったな、マサユキ!明日からおまえはランクBだ」
  「えっ、ほんとですか?」
  「ああ、明日からおまえの下に一人新人を付けようと思ってる。しっかり教育してやってくれ
  よ!」
  「う、あ、あ、ありがとうございます!が、がんばります!」
  「おう、しっかり頼むぞマサユキ。おまえももう教育する立場なんだからな」
   かくしてBランクになったマサユキ。ここまで長い道のりだった。まさか自分がここまでこ
  のバイトを続けるとは始めた当初は夢にも思わなかった。これもあの仲間達がいたからだ。星
  を見ながら少し涙ぐむマサユキであった。

   そして翌日、厨房は相変わらず戦場だった。新しく来た新人はいまいちやる気はなさそうだ
  ったが、吸収がよく、マサユキの指示に従いアルバイト初日にしてはとてもよくがんばってい
  た。
  「コンドウくん、疲れただろ。もう今日は上がっていいよ」
  「あ、そうすか。おつかれさまでした」
  「ああ、おつかれさん。明日もがんばってな」
  初めての下への教育。今までにはない達成感がマサユキの胸中に漲っていた。

   仕事が終わり、事務所に戻ると中から楽しそうな笑い声が響いている。お、なんだなんだ、
  楽しそうだな。靴を脱ぎ部屋に入ったマサユキは自分の目を疑った。
   そこには今日初日のコンドウを囲み、ドンさん、アカネさん、カッツさん、そしてミサト
  ちゃんが楽しそうに携帯の番号を交換していた。
  「おう、マサユキ。おつかれ」
   ドンさんに声を掛けられ、「はは…」力ない笑いをどうにか浮かべた。どういうことだ、こ
  れは。おれはドンさんとカッツさんと話せるようになったのは働きだして半年が過ぎたくらい
  だったのに、なんでこいつは初日に話している。しかもミサトちゃんとこいつは今携帯の番号
  交換してなかったか。おれはミサトちゃんの番号なんて知らないぞ。どうなってるんだ…
   立ち尽くすマサユキを尻目にK-1の話しで盛り上がってる5人。そこにはマサユキの入り
  込む余地はなかった。マサユキの口が突然意識と無関係に開いた。
  「コンドウくん。君、上がったの2時間前じゃなかったけ。こんな時間までなにしてんだよ。
  早く帰れよ」
   部屋は突然凍り付いた。ドンさんが立ち上がり、マサユキの胸ぐらを摑んだ。
  「なに言ってんだ、マサユキ。コンドウくんは今日初めての仕事だったんだぞ!それをおまえ
  その態度はなんだー!」
  「まあまあ、ドンちゃん、落ち着いて。マサユキ今日初めての教える立場だったから疲れてん
  だよ。コンドウくんももうこんな時間だし、うちの人心配するからそろそろ帰りな」
   舌打ちをして部屋を出て行くドンさん。ミサトちゃんはマサユキではなく、コンドウを労る
  目で見ている。
   マサユキはどうしていいかわからずに着替えもせずに事務所を飛び出した。事務所を飛び出
  し、帰路につくマサユキは「なんでなんで」と呟いていた。マサユキの呟く「なんでなんで」
  が夜の街にリフレインしていた。


 なんてシチュエーション。悔しくないですか。ぼくだった悔しいですねー。でもこのシチュエーションは言いたかったこととぜんぜん違うんだよな。次のやつかな。


 ・ 「お、おまえ、もうユカちゃんと別れてどれくらい経つっけ?」(すごい鼻息荒く)
   「なんだよ、いきなり。もう別れて3ヶ月経つかな」
   「じゃ、じゃあ時効だよな。おれ、ユカちゃんのこと好きなんだ。おれ、付き合ってよか?」
   「いや、付き合っていいも悪いももうおれかんけーねーし。なんで?おまえいつからユカのこ
   と好きだったの?」
   「そ、それは……おまえには言えん!」(顔を真っ赤にして)
   「いいから言えよ。いつからだよ。おれが付き合ってるときから?」
   「いや、違う。そんなことは断じてない」
   「あーそう、でもあの女大変だぜ。金はかかるし、性格きついし。おまえみたいな唐変木は弄
   ばれてボロボロに捨てられるだけだと思うぜ」
   「いや、ユカちゃんはそんな子じゃなか。心根のきれいな子タイ」(これも顔真っ赤)
   「あーそう。じゃあがんばりなよ」
   「ああ、いいんだな。いいって言ってくれよ」
   「分かったよ。いい、いい、いい、いい。これでいいか?」
   「かたじけない。恩にきるでごわす」(空手のオッスみたいな感じで)

   ーーーー3ヶ月後ーーーー


   「おまえ、ユカと付き合ってるらしいじゃん?」(すげー髪伸びてる)
   「ああ。まあね。うまくやってるよ」(こっちも負けずとすげー髪伸びてる)
   「マジで?疲れない?」
   「おまえがなんで疲れるとか言ってたのかおれには到底理解できないね。あんないい女これま
   でいなかったぜ」
   「え??なんで……どこが……」(ちょっと顔色悪くね)
   「いや、だってさー、どっか食事行くじゃん。おれが払うって言ってんのにあいつおれに払わ
   せようとしねーしさー、おれが仕事から帰ってくるとマッサージしてくれるもん。うまくね?
   あいつのマッサージ?」
   「あ、ああ。まあまあね」
   (ここで鼻で笑う)
   「まあおまえもがんばれよ。」(すげー見下した目で)
   「うっせーな、おまえに言われたくねーよ。この(唐変木と言いかけるが、今はこいつより俺
   の方が唐変木だということに気付き)バカが」
   「おっ、わりーわりーおれ今からユカとデートだからさ。またな」(自信に満ちた背中)
   「ユカよー、なんでそんなに変わっちまったんだ」(カタカタ震えながら)


  
 なんてシチュエーションもちょっと違うな。でもさっきよりは幾分か近いかも知んない。まあなにが言いたいかというとですね、なんかこういうの悔しいですよねってこと。とことん器小さいですから。
 すごく長くなってしまいましたが、言いたいことの5分の1も伝わっていないと思いますので、もうちょっとまとめてから再度ウップしたいと思います。
 ちなみにぜんぶフィクションですからね、念のため。