伝世舎のブログ

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日々是好日

『遺し、伝える』ことが伝世舎の理念です。


分析後、作品の状態によっては保存へのコンサルティング。


必要なものには現状を維持したまま次の時代に遺すために修復を。




伝世舎 


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伝世舎は2025年に設立20年を迎えました。
そこで4月1日をもちまして、個人事務所から「合同会社 伝世舎」として会社を設立致しました。
これもひとえに皆様のご支援の賜物と感謝申し上げます。

それに伴い、9月29日にオフィシャルサイトをリニューアルオープンいたしました。
リニューアルにともない、サイトのURLが変更になりましたのでブラウザの「お気に入り」「ブックマーク」などに登録されている場合は、新しいページのURLへの登録変更をお願いします。

URLは以下の通りです(sが増えただけですが)。
https://denseisya.com/
これからも、引き続きご利用の皆様のお役に立つ情報のご提供や、内容の充実に努めてまいります。
今後ともご愛顧賜りますようお願い申し上げます。

 久々のブログ投稿です。前回アップしたのが2022年10月ということで、約1年半たってしまいました。新型コロナが、と言うのは言い訳になりませんね。

 2016年3月に、寒糊煮のことをブログにアップしたことがあります。その内容に関しては以下をご覧ください。

 寒糊を煮ました。 | 伝世舎のブログ (ameblo.jp)

 今回、再びブログにアップすることにしたのは、糊の種類などを変えたからです。

 

 寒糊煮とはどのようなものかをちょっと整理しておきます。

 修理や表装では、生麩(正麩)糊という、小麦粉澱粉を煮たものを使います。これを新糊と言い、その都度煮て使います。

 それを10年ほど寝かせて、粘着力が弱くなったものを古糊と言います。主に掛軸や巻物など、巻くものに使います。

冬の寒い時期、古糊を作るために大量の糊を煮るのが寒糊煮です。作る量は使用頻度によりまちまちですが、伝世舎では毎年1瓶煮ています。

 今年は2月10日に1日かけて寒糊煮を行いました。

 

 2016年のブログでは乾燥した小麦粉澱粉糊を煮ていますが、2020年からは生の生麩糊を使っています。以前の糊は乾燥粉末でしたが、今は乾燥させていない、しっとりとしたものを使用しています。

 これは生糊(なまのり)、沈糊(じんのり)、生沈(なまじん)と呼ばれるもので、乾燥させる前の水分が残っている糊です。

 

生糊。10kg単位で売っています。

 

しっとりと水分が残っています。

 

 生糊はよく「すぐ腐る」と言われますが、そんなことはありません。冷蔵庫で保管すれば十分持ちます。

 事前に水を張って冷蔵庫で保管しておくと、直ぐに使用できるので便利です。ただし、頻繁に水を変えないと水が腐る可能性がありますので、注意が必要です。沈糊が腐りやすいと言うのは、この管理をおろそかにしてしまうからで、沈糊にカビが生じてしまいます。

 

大きめのタッパに糊を入れ、水を張って冷蔵庫に保管します。

 

 実際に使ってみると、粉の糊と比べて糊の接着力が持続する感じがします。古糊にした場合は比較的白く出来上がるという印象があります。まだ4年目ですので、結論を出すのはまだ数年先になるかと思いますが、色々試しながらやっています。

 

 作業はいつも通り、ひたすら煮て瓶に移して、の繰り返しです。今年は女性2人で煮ましたが、さすが若いだけあって体力がある。夕方には終了しました。

 

ひたすら糊を煮ていきます。

 

 糊を煮るのと並行して、保管している古糊のチェックをします。重量、所感、pHなどを確認し、気になるところは備考欄に書き込みます。その年の作業内容もまとめておきます。

 作業は作業前・後の写真撮影、作業前・後の重量を計る、糊の状態チェック、カビなどの除去、消毒、記録を行います。

 

糊の状態をチェックして記録します。

 

記録台帳。

 

 以前は水を張って封をしましたが、2014年からはポリエステル紙を被せて保存しています。

 

今年煮た糊。ポリエステル紙を被せて保存する。

 

 最後に紙で封をして保存します。

 

紙を貼って封をします。

 

 いつものように冷暗所で寝かせます。お屋敷の床下を保管場所として お借りしています。

 

某お屋敷の台所床下で保存します。その数10瓶です。

 

 古糊はその年によって上手くできたりできなかったりします。いい糊になりますように。

 芸工展とは、東京・谷中地区を活性化させる取り組みのひとつとして平成5年に始まった地域のイベントです。谷中・根津・千駄木・日暮里・上野桜木・池之端界隈で「まちじゅうが展覧会場」と銘打って、地域に暮らす人々が様々な企画展示・イベント等を行います。谷中界隈を散策しながら、皆さん思い思いに楽しんでおられます。
 (芸工展URL:http://www.geikoten.net)

 今年で30回目を迎える芸工展。これを記念して2018年に10回目の節目で終了した「修復のお仕事展」を、今年だけ1回限りで開催します。
 今回は「シン・修復のお仕事展」として文化財修復のお仕事を、伝わりやすいポスター展示にすることで、博物館や学校での教育普及に活用できないか? という試みです。
 2020年に急逝された、お仕事展仲間の考古学者・原祐一さんの回顧展も併せて開催します。
 またこの機会に、普段は月に1度しか公開しない旧・平櫛田中邸アトリエをご覧頂ければ嬉しいです。

 谷中界隈散策がてら、是非お立ち寄りください。


会   期:2022年10月9日(日)~16日(日)
会   場:旧平櫛田中(ひらくしでんちゅう)邸アトリエ※
        〒110-0002 台東区上野桜木2-20-3
開催時間:11:00~17:00(最終日は16:00まで)

※旧平櫛田中邸アトリエ
 日本近代を代表する彫刻家である平櫛田中は、谷中・上野桜木に70年にわたって暮らし、数多くの作品を世に送り出しました。
 上野桜木の平櫛田中アトリエは大正8年、横山大観、下村観山ら日本美術院の画家たちの支援により建てられました。日中安定した光を得るため、北側に天窓を備えた近代的アトリエ建築の先駆けです。
 普段未公開のアトリエをご覧になれるいい機会ですので、皆様お越し頂ければ幸いです。

 会場は少し分かりにくい場所にあります。以下の記事に根津駅、鶯谷駅からの写真入りルートを紹介していますので、参考になさって下さい。

平櫛田中邸アトリエの道のり(根津駅から)
http://ameblo.jp/denseisya/entry-11361245963.html
平櫛田中邸アトリエの道のり その2(鶯谷駅から)
http://ameblo.jp/denseisya/entry-11368416676.html
※2012年のデータですので、日付は微妙に違っていますがご容赦ください。