第11条~ライブオン!プロファイル2
ハル:
午後6時35分。
わたしは廃墟の駐車場にいた。
ハル:
ええと・・・
コンバットスーツに・・・
ハンドガンに・・・
暗視スコープ・・・
やっぱり光学迷彩は必須よね・・・
ちょっとメンドウだけど・・・
タルダ(エコー):
伝えることは伝えたからな
死ぬんじゃないぞ
ハル:
悲しみと命の代償としては・・・
極めて安いわよね・・・
よし、装備するかあ・・・
ハル:
ひと目をはばかるように
迅速に装備を着用してゆく。
それらが終わって、出撃しようと
したとき・・・
時刻は6時45分を差していた。
間
ハル:
さて、と・・・
その時だった。
!!
私は戦慄を覚え、バイクを倒し、
シールド代わりにする。
その時、素早く電池パックを外すと
ポケットにしまい込んだ。
どこだ・・・敵は・・・。
その時だった。
アキラ:
やあっ!!
ハル:
その声と同時に闇から金属の針が多数
飛来した。
アキラ:
そこだ!もらったああ!!
アキラ:
やった!!確かな感触があった!
仕留めたぞ!!
なに・・・血が出ていない・・・
もしかして・・・
ハル:
フッ。若僧め。
アキラ:
しまった!!身代わりか!!
ハル:
・・・遅い!!
アキラ:
しまった!
ぐぉ・・・ぐおおおお。
くっ・・・くそ・・・
あああああ!! あああああ!!
敵は・・・光学迷彩を
使いこなしているということか
くそう!閃光玉!
なに!効かない!?
馬鹿な!?
グアアアア!!
ハア・・・ハァ・・・ハァ
ハル:
まだやるの?
アキラ:
!? お、女の声
ハル:
ちょっと、聞いてるの。
アキラ:
・・・。
ハル:
どうするの?死ぬよ。このままだったら。
降参するなら助けるわ。
全部吐いてもらうけどね。
アキラ:
ま、まいった・・・
ハル:
ん?
アキラ
こ・・・降参・・・
ハル:
良し。
そして黒い忍びは
私の目の前で
気を失った。
あとには彼が
犯行に使ったであろう
得物が多数散乱しているのだった。
もしもし。こちら44。
被疑者を一人逮捕。
これより連行して本部へ戻る。
RRRRRR
タルダ:
はい。タルダクリニック。
ハル:
あ、もしもし 先生?
実はお願いがあって・・・
一人急患で見てほしい人が
いるんだけどお願いできるかな
タルダ:
なんだって!?今日はこれで終わりだ
馬鹿なこと言うな!
ハル:
んじゃ、3分で到着するから
準備よろしくね♪
タルダ:
おい、おーーーい!!
アキラ:
マジかよ・・・
救急車じゃないのかよ・・・
わたしがバイクをあやつって
クリニックに到着したのは
午後7時のことだった
第11条~ライブオン!プロファイル
登場人物<コス>(ステータス5が平均値。10が五輪選手
筋:物理的力・体:持久身体力・精:精神魔力・敏:すばやさ・知:教育知性
正:正気)
デル・・・
筋:7 体:6 精:0 敏:6 知:5 正:3
本名「アキラ」東京24区に住む22歳の♂。
アパレル一般企業に勤務する。裏の顔はいわばIT忍者で
情報センターなどからデータを盗み出している。
タルダ・・・
筋:4 体:6 精:0 敏:4 知:7 正:7
本名「 」東京24区に住む40歳の♂。
都内の医療機関に勤めている。凄腕救命医。
ハル・・・
筋:6 体:6 精:0 敏:6 知:6 正:6
本名「 」東京24区に住む25歳の♀。
警官で、交通センターに勤務している。
ただ、特務により、特機隊を勤めることもある。
そのときの階級は「少佐」
<<プロローグ>>
21世紀の東京。オリンピックの不振は
日本経済に暗雲を至らしめた。
失敗と失意にあえぐ日本・・・
策定されし
どん底からの反攻計画
作戦名・・「東京24区作戦」
東京24区 それは・・・
もういちど世界一になることの野望と
経済復興することの目的と
栄光の日をもう一度迎えることの
夢の化身でもあり・・・
その担い手たちの作戦の島でもあった。
次世代の優れた才能たちを生かそうと
選りすぐり選抜して一か所にあつめ、
さらなる超才能を作り出し
世に放とうというのである。
その作戦の全貌を担うのが
島にある企業プロバイダ企業
「ライブオン・ネット」だった。
そして、話はこの地に住む
青年が幕を引く。
彼がパソコン起動と同時に
つながれるプロバイダ
「ライブオンネット」
そのとき、物語が紡がれる・・・・
だれも知りえぬ「TOKYO24区」
しかし1000万人が生息する
この大都市の隣で・・・
不夜城となって
今日もその営みを続ける・・・
巨大な秘密をその身に秘めて。
(タイトルコール N:)
オリジナル・オーディオドラマ
ライブオン・プロファイル
N:2021年10月のとある日・・・
午後6時をまわった。舞台はりんかいアイランド。
またの名前を東京24区。
場所はりんかいアイランド医療センターにて
ハル:ふああ~~おっはようございます。
タルダ:ああ。おはよう。
君が来たということは・・・午後6時。
なんだ、もうそんな時間か・・・
ハル;タルダ医局長。あっという間に時間は
経過してしまうんですよ
タルダ:そうなのか・・・
ハル:しっかし、ここもいそがしいですねぇ
ちょっとはヒマになってくれるといいんですけどね
事前情報でわかるとか
タルダ:
そう言うな。
救急患者が来るのは
自己申告制じゃないんだからな
ハル:
まあそうなんだけどさ。
たまには、こう・・・
誰も傷つかない日があっても
いいんじゃないかなって思って
タルダ:
それはそうだな。
だがな、人の命は一寸先は闇と言う。
好き好まざるに関わらず、
人はいつ死ぬかわからんのだ。
強制はできんさ
ハル:
それはそうなんだけどね
運び込まれる患者が
こうも多いとね
先生も大変だと思ってね
タルダ:
お前なあ・・・
どの口がそう言ってるんだよ
この患者だって
もとはといえばおまえのせいで。
ハル:
シッ先生。
なにか言いたがってる。
タルダ:
麻酔のせいだよ。
気のせいだろ。
ハル:
そ、そう?
タルダ:
じゃあこれから緊急手術するから
すまないけど待合で待っててくれ
時間外だからちょと高くつくかもしれん
悪く思わないでくれ。
ハル:
分かったわ
じゃあ、あとはお願い。
タルダ:
ああ。任せとけ
ハル:
そう言い残して、私は待合室に出る
ハル:
どうしてこのようなことに
なったのか。
話は6時間ほど前に戻る
N:
午後6時。
りんかいアイランド北部地下。
交通運輸統括センターにて
ハル:
なにこの警報!?
システムエラー?
端末からは・・・やっぱ無理か・・・
ここは、奥の手っと・・
タルダ:
はい、もしもし、こちら タルダクリニック
ハル:
先生!? 聞こえる? 先生?
タルダ:
なんだ、きみか、ハル。
ハル:
なんだは ないでしょう?
ちょっと、悪いんだけど、いま、センターのほうが
エラーでて業務ストップしてしまってるの。
タルダ:
ありゃま。それは たいへんだ。
ハル:
それでさ、そっちにある警察無線で
なにが起こってるかきいてもらっていい?
わたしは
誤報じゃないかとおもってるんだけど
タルダ:
了解。ちょっと待て
・・・なんだと!?
ハル:
どうしたの?
タルダ
あれは誤報ではないぞ!
北部研究施設の地下で、
データの送信エラーが起こっている!
・・・!
警備の方からも連絡が入った。
地下で何かが爆発したらしい。
ハル:
あ!端末が・・・!
特務出動命令!?
特機隊にも!?
タルダ:
そういうことだ。
これは訓練ではないということかな
ハル:
みたいね。
タルダ:
そんなわけだ!
いってこい!!ハル警部!
ハル:
あら、先生。特機隊のときの
わたしの呼び方は
そうじゃなくってよ
タルダ:
そうだった。
ご武運を!
「少佐!」
ハル:
ありがとう。先生。
間
ハル:
こちらりんかい44。
位置情報のダウンロード成功。
現在時刻1810
ただいまより現場に向かいます。
<呼び出し音>
ピピピピピ
ハル:
はい もしもし こちらハル。
あら先生!何?こんな時に
タルダ:
いま、最新の連絡が入った。
現場から3ブロックのところで
また新しい爆発事故が起きているそうだ
ハル:
まだそんな情報、はいってないわよ!
タルダ:
だから 教えてるんだ。
いいか。そのまま直行すると
敵に走行中に遭遇してしまうかもしれん。
どこかで装甲を整えるんだ
ハル:
そんなこといったって、こんなところに
警察の敷地なんてないわ。
いったい、どうしろと?
タルダ:
たしか その辺に つぶれたばかりのコンビニが
あったはずだ。そこに止めたらいい。
ハル:
どうして、先生、そんな情報を・・・
タルダ:
どうしてだって?それはどこかの警官が
民間人のところに警察無線設置していくからだろ
知りたくもない情報だけど、
耳に入ってくるんだから、知っちゃうだろ
ハル:
たしかに・・・そっか・・・・
タルダ:
じゃあ。伝えることは伝えたからな
死ぬんじゃないぞ
わかってるな
ハル:
うん・・・わかってる・・・・
そのとき、時刻は6時30分を過ぎるのだった。
第七条~レジテンドコード・ゼロ 第2話
♂・・ユウキ
♀・・ヒカリ・女
ユウキ:
そういえば・・・
他のメンバーは、どうしてるだろう。
そう思った先にいたのはヒカリだった。
彼女は、よく似合うベアトップの
ドレス姿でビュッフェスタイルの
パーティーを楽しんでいるように見えた
でも、俺はわかっていた。
そのように見えるだけで、心の中では
彼女は絶対に楽しんではいないのだ。
その確信が彼女との出会いだった、
その話は、とある雪のちらつく
治安の悪い荒廃した都市で起こる。
ヒカリ:
その頃、私はたくさんのお客を
愛想笑いと我慢と作り笑顔で迎える
毎日を過ごしていた
ヒカリ:
私はこんな女じゃないのに・・・
泣きたい時に泣かない
笑いたい時に笑えない
そして私は
お金のために生きている
お金こそが 私の存在意味になってる
誰か助けて・・・
そう思ってる間にも
また仕事に追われる私がいる
話はそんな夜の一角から始まる
ヒカリ:
私はヒカリ。夜の街に生きる女だ。
20 M 平米のフロアにいて、ひたすらに時間と人々の呼吸と話し声、とグラスの中の氷が鳴る音に
神経を尖らせる日々を送っている
ユウキ:
フロアには他に10人程度の
キャストがいる。
みんなお店のためと
自分の収入のために
神経をすり減らしている
笑顔の中に図太さを
微笑みの中にずる賢さを
自分の経歴に適当なウソを
そしてお金と自分の誇りを引き換えに
生きてきたのだ
ヒカリ:
すべては、一人の大金持ちを
幾人ものキャストで
奪い合うためだった。
今のかくなる私は
その大金持ちを捕まえた、
いわば勝ち組である。
ユウキ:
彼女は身長155バスト82
ウエスト56ヒップ84
E カップ。
頬には紅色のコンシーラー、
唇にはほのかな甘い香りが漂う
レーザールージュの口紅を、
衣装は紺色の下地に
銀のスパンコールがあしらわれた
露出があるスーツを選ぶ。
ヒカリ:
もちろん嫌だ。
何が悲しくていい年こいて
こんなものを
着なきゃいけないのか
恥ずかしいと思う自分に
ピリオドを打って
店のフロアに出た時
私はさながら女優になる
これまでの自分を否定し
頂いた源氏名に
ふさわしい女になりきる。
大人の貫禄を漂わせ、
どんな話題も笑顔で頷き
優しく時には真摯な言葉で
励ます。
深い良いではなく、
ほろ酔いの状態を
上手い具合にキープしたまま、
グラスの氷は絶やさずに
ぬるいお酒で機嫌を損ねる
可能性がある人だからだった。
真面目な人だからジョークや
うるさいおしゃべりは控えめに
時には手などをタッチしてもらって
持ちつ持たれつ、退店までお付き合い。
こうやって
彼の好きな甘えられる
しっかりした落ち着いた
度胸の据わった
おしとやかな女性を演出する。
教えられたことがある。
お酒で酔わせて
男が自慢話を始めたら
手をたたいて
褒めて褒めて褒めちぎる
男がやや冷めてきたら
ちょっと冷たく場を変えてみる
男がちょっと落ち込んだら
とにかく場の雰囲気を保たせて励ます。
キャバクラの接客は
ふたえにする女優のごとしと
いったキャストもいたくらいだ。
お客とは付かず離れず一夜の仲。
私はこの教えだけは守っていなかった
私は他の客には目もくれず、
1人お客さんに好かれることに
特化したのだ。
理由は羽振りも良かったのと
将来の約束をしてくれた
ことにあった。
ユウキ:
僕は必ず君と一緒になって
君を幸せにするよ
ヒカリ:
朝は午前6時にモーニングコール
単身赴任の彼のために
昼の弁当を作りしておく。
午後6時、晩御飯を作り置きしておいて
私は早い時間帯に出勤。
彼からの連絡を待つ
彼から連絡が入ったら
午後8時彼が近くまで来ているから
私が迎えに行って、
同伴で出勤するのだ
午前2時までお店でお話ししたり
お酒を利用したりしてもらい
終わった後はラブホテルで
軽くエッチ。
翌朝までには彼は家に戻っているという
算段だった
ユウキ:
しかし、この日は違っていた。
待ち合わせの場所になっても
彼は現れず、かけた携帯にも
着信は付かなかったそうだ。
ヒカリ:
どういうことなんだろう。
私は直ちに店に戻る。
とそこで驚愕な光景を
目の当たりにする
ちょっとあなた・・・
そこには自分とは真逆の
キャピキャピのキャバ嬢に
腕を取られている
私の客の姿があった。
ユウキ:
ごめんね
ちょっと・・・好き だって
言われちゃったもんだからさ
君とは違って・・やっぱり
女は若さが決め手だよね
そうやって彼はその女と
店を出ていった・・・
目で追いかけると
隣の店に消えていく・・・
やられた・・・
引き抜きだ・・・。
私はパニックになっていた
売上どうしよう
私の人生どうしよう
彼には内緒で小さいながらも
愛の巣を買っていたのだ。
彼女は、途端に目の前が真っ暗になり
その日から目の色が変わったように
営業を始めたらしい。
しかし、全ては遅かった。
客は全て店の子達の
歯牙にかけられ、
年増なヒカリが付け入る隙は
なかったのだ
加えてヒカリは
将来結婚する気でいたため、
この客だけを大事にしていた、
ゆえに周りの子からは
総スカンを食っていたのだ
そして・・・最悪の結果が出た
ヒカリ:
ちょっと待ってよ
今日支払いだって言ってたでしょ
今日支払ってもらわないと困るの
別のお店の支払いもあるんだから
ユウキ:
そんな事は知らないよ
大体において
君が全部やったことだから
ヒカリ:
そんな!!
私はあなたのことだと思って
ユウキ:
うるさいな!
とにかく、ないものはないんだ
あんまり しつこいと
警察をを呼ぶよ
ヒカリ:
ひどい!あんまり!あんまりよ!!
女:
あなたはヒカリさん・・・
見れば見るほど馬鹿な女・・・
ユウキ:
誰だよ?この人。
女:
誰なの?この人
ユウキ:
バカだな分からないのか
こいつは俺に
こびへつらおうとする
ババアだよ
ヒカリ:
だましたのね!?
女:
失礼ね、騙したのではない
あなたをおもちゃにしていただけ。
ヒカリ:
そんな・・・
ユウキ:
諦めな!人生、諦めることも肝心だよ
ヒカリ:
ひどいひどいひどいあんまりよ
ユウキ:
うるさい!!!
ユウキ:
そして彼女は右ほほに
強烈な痛みを覚え
気づいてみたら
店の外に転がっていた
自分のロッカーの持ち物と共に
ヒカリ:
そのお客とは3年前に知り合っていた
思えば色々なことを話したし
色々な相談にも乗ったし
私もいろいろなことを
陰ながら色々な手を尽くして
今の仕事のために尽くしてきたつもりだった
しかしその頃の笑顔はもうなりを潜め
彼は私を腫れ物のように眺めている
ヒカリ:
邪魔者のように私を見下ろしていたのだった
うめき声をあげて私は身を起こす
頬が著しく痛い
そして耳がキーンとなってる
もう・・・疲れた・・・
私はするすると体を起こすと
遠くからの車のヘッドライトに
身を委ねることにする。
・・・身を委ねようとした時・・
不意に耳元で声が響く。
ユウキ:
一緒に来るかね
ヒカリ:
そしてわたしは仲間になった
ユウキ:
しかし最初のうち
彼女は私になつくことがなかった
何をしても何をしてあげようと思っても
常に上目遣いで信じられない顔をした。
冷たい顔だった冷たい女だった
でも私はとにかく笑顔で接するようにした。
まごころをみせようとしたのだ。
2年経った頃からだろうか・・・
徐々に彼女打ち解け初めて来た
半年後、僕は彼女を誘った
彼女は二度とこんな自分が
作られないようにと願いを胸に
参加要請を承諾した。
ヒカリ:
それからというもの
私、ヒカリは
偵察索敵情報任務の先端を
行くことになった
ユウキ:
次回レジテンドコード・ゼロ第3話
おたのしみに
第七条~****レジテンドコードゼロ 1*****
♂:ユウキ
♂:ミスダ
♀:ツカサ
ユウキ:
パンデミック事件が終わってから
数日後。とある夜ホテルの祝賀会場。
時空戦士の帰還の宴とささやかな先勝会が
行われていた。
ツカサ:
先勝会が始まってから1時間。
酔いも回り、雰囲気もやや落ち着いてきた頃
レジデントのリーダーユウキは
密かに式場のバルコニーで夜風に浸りながら
僅かながらの過去のことを思い出すに至っていた。
俺はどうしてこんなことをしているんだっけ
ユウキ:
その話の発端は
出来たばかりの新戦艦インビンシブルに
搭乗する時に、話は始まる。
その時、確か俺は第二司令室にいた
目的は新人のオペレーター教育だった
ツカサ:
時空自衛隊の
新世代型戦艦インビンシブルは
その当時の最高技術の電子装備が
装備された、
時空自衛隊の中でも
鳴り物入りの戦艦だった。
ユウキ:
俺はその艦の副参謀として
参加していたわけではあるが
俺はそのコンソールにいつも
触れられないでいた
チーフオペレーターツカサの
せいだ。
ツカサ:
ユウキ。あなたには今日も第二司令部
で彼らの面倒を見て欲しい
ユウキ:
ええ!?
ええええええ? また?
ツカサ:
私 ツカサ・スペンサーは
時空自衛隊の士官学校準首席卒業の
実績を修めていた、いわば幹部候補生だった。
その時私は危険管理をよりよく学んだ。
そして今回配属されたのは
戦艦インビンシブル第一司令部。
確かにハイテク装備がなされ、
優れた場所だとは思った。
しかしなぜだかわからないが
私のカンが拭い去れない不安を
抱かせていた
ユウキ:
ツカサ・・・いい加減にしてくれ
なんであんなとこ使わなきゃいけないんだ
あそこって使いにくいって有名なんだぞ。
人だって沢山入れないし
電子設備を導入するには狭いから、
いまだにマニュアル作業が残る
いわくつきの、場所なんだぞ〜〜。
ツカサ:
分かってるわよ
でも悪いけどこれはやっ、てほしい。
何かが起こる。何かが起こるような
胸騒ぎがするの。
ユウキ:
まったく・・・仕方ない。やるよ。
ほら!!新入オペレーター諸君
地下の第2司令室に集合!
ツカサ:
彼との年齢差は2。
私の方が年上だ。
ちょっとやりにくいところがあったが、
彼の能力には信頼できるところがあった
もし何かあった時に頼れるのは彼しかいない
私は直感でそのように思った
だからこのように接してる・・・
ミスダ:
ご苦労様
ツカサ:
あ!部長!お疲れ様です
ミスダ:
やぁお疲れ。 どうだね?
新しい戦艦インビンシブルの感想は?
ツカサ:
感無量ですみんなすごい素晴らしいと
感嘆しています
ミスダ:
ハハハ・・そうだろう そうだろう。
最新鋭にして史上最強の歌声がたかい
ハイパーオペレーションシステムの
具合はどうだね
ツカサ:
はい!従来の作業効率比プラス30%
今日の作業についてはプラス改善40%。
毎日のの作業の作業効率の向上も相まって
みんなしっくりきている模様です。
ミスダ:
そうだろうそうだろう。
このたび、はじめて 新しく配布された
ハイパーオペレーションシステムは
機械の反応速度ではなく、
職員の体内に埋め込んだ、このバイオチップの
信号を受けて、常に効率の良い結果が出せるように
調整され続けている、超画期的システムなんだ
良い結果は出ないはずはないんだよ
ツカサ:
部長!しかし・・・それでは、人間の対応力も
失ってしまうのではないんですか?
ミスダ:
フン!人間の対応力だと!?
馬鹿にするのもいい加減にしろ!!
ヒトの「それぞれのやり方の微妙な違い」
とやらに対応するだけで、どれだけの作業ロスが
生まれたと思っているんだ!?
ツカサ:
部長!お言葉ですが、我々の仕事は、
一般企業のそれではありません。
いざという時に人々を守るのが
我々の役目のはずです
ミスダ:
オペレーターのくせに私に意見するのか!?
よろしい!言ってやろう。我々の予算が
逼迫する国防予算から出ていることを知ってるか?
年々縮小の一途をたどる、その中で、
金食い虫となりつつある我々に
どれだけ改善するかは求められているんだだから
これくらいの改善はできて当然だと思わないか
ツカサ:
上から責められているのですね
ミスダ:
その通りだ!!我々は、人の苦労の上に
成り立っていることを忘れてはならない!!
分かったら部署に戻れ!!
ユウキ:
一方、俺は 地下一階の第二指令室にいた。
よし!ディスプレイが赤く瞬いている!!
よし!そうだ!ここをこうして、
直ちに第3部署にして終わった後の
姿勢の保持ももせるなよ!
ツカサ:
そうだ!ぼやっとしちゃいけない!!
状況はどんどんどんどん変わっているんだから!!
ユウキ:
ぐずぐずしてると敵にやられちゃうぞ!!
よし!そうだ!そうだ!頑張れ!
シュミレーターは宝で安心してて
クリアはできないぞ先の先を読め!
コンピューターの先の数字を選んだ!!
そうだ!君たちをできる君たちはできて最高だ!
ツカサ:
その時チャイムが鳴る
はい!お疲れ!!
第10ステージ難なく成功よー
みんな休憩していいわ
<間>
ツカサ:
さすがね。ユウキ。敵わないわ。
ユウキ:
嫌味か?つかさ
ツカサ:
嫌味じゃないわ。いい?ユウキ。
確かにインビンシブル隊は
最新鋭の兵器が供給されるエリート部隊よ。
でもねそのエリートが配属される影で
わたしはいくつかの懸念を生み出していたの
ユウキ:
え?それは?
ツカサ:
それはオペレーター熟練度の著しい低下。
あまりにも高度な電子装備のせいで
ほとんどが全自動になってる決められたことしか
できなくなってると言っても過言じゃない。
ユウキ:
じゃあ君は全て機械にコントロールされてるって言いたいのか
ツカサ:
そうとは言い切れない。
でも、もしかしたら、て思うことはよくあるのということ。
ユウキ:
さっきだってまた部長に呼ばれてた。
ツカサ:
それはちゃんとコンピューターのやるように
やれているかということだった。
できてなかったら、激しく叱責されて
できていれば、さすがのシステムだと
大満足で帰って行くの
ユウキ:
ちょちょっとまて・・・
ツカサ:
今日なんかはうん一緒にができたぞ
って言ってついに今夜はって言って
お祭りだって出て行ったのよ
ユウキ:
お祭りもしかしてちょっと待て
こ・・・これは・・・
大変なことになるかもしれん
ツカサ:
すまん。
今すぐに第二指令室にみんな呼び出してくれ
ツカサ:
分かったわ。よくわからんけど・・・わかった
ユウキ:
みんな心過ぎてほしい。
実は・・・・この地球に危機が迫っている!!
ツカサ:
どういうこと?
ユウキ:
これを見てくれ!午後3時のレーダーだ。
ツカサ:
これ・・・・何も写っていない。
ユウキ:
そう。何も映っていない。
次は、午後5時のレーダーだ。
それに地球防衛局から発生させた
電波レーダーを重ね合わせてみると
ツカサ:
何か動いているみたい・・・反応してる
でもこれだけじゃ分からない
ユウキ:
そうそれで念のためにさっきから1時間
第二指令室の機能を使って
パルスレーザー・レーダーで観測してみたんだ
これがその結果だ。
ツカサ:
何かが蠢いている
ユウキ:
そうだ・・・俺は次に、これを拡大ズームしてみた
ツカサ:
なに・・・これ・・・・地球外生命体・・・
まさにエイリアンじゃない・・・・
まだ・・・生きていたんだ・・・・
ユウキ:
生きていた!?
どういうことだ。ツカサ。何を知っているんだ!?
ツカサ:
四半世紀前に起こった エイリアン騒動・・・
一隻の宇宙船がエイリアンによって食い散らかされ・・・
ついには宇宙要塞に立てこもった・・・
ユウキ:
たしか、その時は、軍は・・・
駆逐したと確かに発表していたよな
でもそれは違ったということか・・・?
ツカサ:
そのようね。
そして、今回、あなたのおかげで、エイリアンは
生存していることが分かった。
そして、かれらは、この惑星で、魔力軍備を
増強していることが明らかになった・・・・
ユウキ:
・・・・ちょっとまて・・・
やつら、今夜あたり総攻撃をかけるつもりじゃないのか
実質、この辺の動きはものすごい活発になってる・・・・
ツカサ:
いいことを思いついた。あなた、もうちょっと
第2司令部で観測を続けてくれない?
そして、このことを資料にしておいてほしいのよ。20部ほど
ユウキ:
えっ・・・?20部も・・・?
ツカサ:
ミスダ部長、今夜のお祭りへ参加することばかりかんがえていてね・・・
上層部に分かってもらうためよ。
ユウキ:
わかった・・・・ふう・・・さあ、やるか・・・・
そのときだった。
ツカサ:
第2司令部分離・・・
戦艦インヴィンシブル出撃!!
ユウキ:
何やってるんだ!ツカサ!!
通常兵装のインビンシブルは無敵じゃないんだぞ
ツカサ:
分かってるわよ!!
でもこうしないと妖魔の流れを食い止められない
違う!?
ユウキ:
そ・・・そうだが。
ツカサ:
私たちは 多分 負ける。
でも、その後の この未来の地球をあなたに捧げる
・・・必ず勝ってね
ユウキ:
ツカサーーー!!!
ユウキ:
ほどなく、俺は 第二指令室を操作宇宙航行のできる
特殊戦闘艇にドッキング。
そのまま出撃したのである。そして、亜空間航行中に
友軍信号を受信同時に時空自衛隊への合流を果たす。
元いた世界での10人の手がかりは
まったくつかめないままとなった。
そして現在に至るんだっけ・・・・
そういえばあいつらはどうなってるんだろう
そう思った先にいたのはヒカリだった。
彼女はよく似合うベアトップのドレス姿で
ビュッフェスタイルのパーティーを
楽しんでいるように見えた
ツカサ(ヒカリ):
次回、レジテンドコード・ゼロ 第2話
ご期待ください
★★★四十九条賭場物語エピソード4 遠い過去編★★★
明日香>そういえば、わらわもいっていない過去がある。
アキラ>なんですか?それ?
明日香>わらわも一人ではなかった時期があるということじゃ
アキラ>ど、どういうことですか?
明日香>わらわには 兄弟分がおったのじゃ・・・
アキラ>そうなんですね・・・
アキラ>そういや、明日香さんはいつごろから賭場はじめてるんですか?
明日香>いつからだったかな。もうずいぶん経つなァ
アキラ>へえ。そんなに。そんなに一人でおやりになっているんですか?
明日香>いや?そうでもない。2人でやっていたこともあるよ
アキラ>そうなんですか?
明日香>ああ。そうだ、ちょうどいい。ここいらで休憩しよう。
アキラ>いいんですか?
明日香>かまわんさ。これは、おぬしに話しておきたい過去じゃからな
アキラ>そういうと明日香さんは、ポツポツと話し始めた。
明日香N>あれは・・まだ弟分と2人きりで賭場を切り盛りしていた時のことだ。売り上げもそんなになかったから、二人はいつでも必死だったさ。
明日香N>日中のうちに上がった気温は、夜になっても下がらず、賭場の熱気と相まって蒸し風呂のようになっていた。
明日香>はい!今日もありがとうございました~またのお越し、お待ちしております!
明日香N>流れる汗もそのままに、笑顔で客を送り出していたっけ。
明日香>じつは、あたしは親分に賭場のことを一から十まで教えてもらってたんだ。
アキラ>なるほど・・だから・・上手いんだ・・・
明日香>・・上手いかどうかは、一概にはいえないさ・・
アキラ>え?どういうことだ?
明日香>実は、そいつ、おれよりも遥かにうまかったんだぜ。張り方、賭け方、客の扱い方、おまけに、イカサマのやり方まで・・
アキラ>そ、そんなに・・・
明日香>天賦(てんぷ)の才能って、ああいうことをいうんだなって、正直、悟ったね。
アキラ>じゃ、じゃあ、その人は、今や若くして、名人か殿堂入りに?
明日香>いや・・・それが、そうもいかなかったのさ・・実際、俺も、あの日までは、そう思っていたんだけどな・・
★回想★
明日香>・・あいつ・・さすがだな・・もう100万はもうけただろ・・俺の1年ぶんだぜぇ・・・はぁ・・参ったな・・・
兄弟>サアサアサアサア!よってらっしゃいみてらっしゃい、今宵もおいらの賭場へようこそ。賭けてください、、賭けてください、大賭場とはこのことだよお!
明日香>そのまんまだったら、普通の場だった。だけど、予定外なことが起きたんだ。
兄弟>・・・!札束!!わ!10個、20個・・・うわあ、すげえ!始めてみた!!すっげえええよ!すっげえええええ!俺ってすっげえええよお!!
明日香>あいつは明らかに舞い上がり始めた。目は泳ぐし、余計なことは口に出すし、礼儀は忘れるしで・・みちゃいられなかった。・・と、その時、やつに異変がおきたんだ・・
兄弟>うひひひひ・・・今回勝てば、札束10個・・今回勝てば、札束10個・・今回勝てば、札束10個・・
明日香>なにかに取りつかれたかのようだった。お経のように、うわ言を口にしだして・・そのときだった。あいつは開く手のひらに札を一枚隠し持った。いわゆるイカサマだ。
兄弟>・・・!明日香!なにをする!!
明日香>ダメ!イカサマ!!ダメ!!
兄弟>・・・!
明日香>・・・その賭場ではイカサマは打ち首と決まっていたが、初めてなのと、まだ若いからという理由で、私たちに反省の場がもうけられることになった。
明日香>ねえ、アンタ・・バカだよ・・どうしてあんなことしたのさ・・
兄弟>もう・・限界なんだよ・・・ボク
明日香>!?
兄弟>盆の上で一度にみたこともないようなお金が飛び回るようになってしまって・・・もう、うんざりになっちゃったんだよ・・
明日香>アンタ・・
兄弟>ボク・・むいてない・・わかってたんだ・・手先は器用かもしれないけど・・器量がついていかないんだ・・
明日香>・・・アンタ・・
兄弟>こわい・・こわいんだよ・・明日香・・・
明日香N>おもわず、私は、うずくまった兄弟を、きゅっと後ろから抱き締めた。
兄弟>・・・!?
明日香>大丈夫だよ・・私がついてるから。
兄弟>・・・?
明日香>あんなのは、慣れだよ。そう、慣れ。お金の流れは水の流れがああなっているんだ、と思うようにすれば、大丈夫だよ。
兄弟>水の流れ・・?そっか・・そうなんだね・・アハハ・・
明日香>くすっ・・もう、大丈夫だね。さ、荷物をもって。許してくれるそうなんだから、早く組にかえろっ。
兄弟>うん。そうだね・・明日香さんだけね・・うわああっ!
明日香>・・・!アンタ!腹なんか裂いて・・なにやってんだよ!!
兄弟>ボクには!ボクには!こうするしかないんだ!!
明日香>アンタ!
兄弟>この気持ちなんて、誰もわかってくれやしない!!ボクは!ボクは!こんな自分が大嫌いで居なくなってほしいとおもってるだけなのにぃ!!このっ!このっ!このっ!
明日香>アンタ!!ちょっと!誰か!誰か来て!!
兄弟>なかなか・・死ねないもんなんだね・・・いままでイカサマがばれた・・ひとたちは・・ひといきだったというのに・・・
明日香>血が・・・血が・・血が・・!!
兄弟>ああああああ・・・・ああああああ・・・・手が・・手がふるえて・・・
明日香>アンタ!
兄弟>痛い・・痛いよ・・明日香・・助けておくれよ・・
明日香>・・・!?
兄弟>明日香・・・逝かせておくれよおお・・・・
明日香>アンタ・・・
兄弟>はやくぅ・・・はやくぅ・・目が・・目がァ・・暗い・・・明日香ァ!
明日香>その悲痛な声で、私のなにかが吹っ切れたのだと思う。
明日香>わかった。 覚悟!!
兄弟>サヤ・・カ・・
明日香>うわああああああああ!!!
明日香N>私は声をあげて、刃を振るった。激しい血潮と返り血が顔にかかったのがわかった。
アキラ>・・・・!
明日香>・・・ここから先は記憶がない。聞いたところによると叫び声をあげていたそうなんだが・・・気がついた頃には自分の部屋だった・・・という有り様だったんだ。
アキラ>・・・・・。
明日香>後日、アイツの遺品から、俺への手紙と一緒にこれが入っていたというわけさ。高いモノだったから一個師か買えなくってゴメンってかいてあったよ
アキラ>それが、口許の・・・
明日香>そう。本来、耳にするものかもしれないが、俺はあいつのぶんの痛みを忘れないように、と、あえて痛いところにこれをつけたんだ。
アキラ>そうだったんだ・・・・
明日香>どうだ?聞いて楽しい話だったか?暗くって、残酷なはなしで、俺の印象なんて一発で変わってしまう話だったろ?
アキラ>うん・・まあ・・そう・・だね・・・
んじゃ、ボクもイカサマバレちゃったら、明日香さんに殺されるんだね。ああいうふうに・・
明日香>いや。君は殺さないし、殺させないよ。
アキラ>え?
明日香>それが、アイツへのせめてもの供養だと、おもうから・・・
アキラ>話終えたとき、外は白んでいた。
暁の頃に聞いた明日香の話・・
夜明けを告げると共に、その一巻を終えるとしよう。
★★★四十九条賭場物語エピソード3 SATORIの章 後編★★★
サトリ>はあー今日もおわったーおわったー
今日もみんな、楽しんで帰ってくれたー良かったな~
アキラ>よう、お疲れ様。元気でやっているか?
サトリ>兄さん。ええ、まあ・・・この仕事、長時間勤務でしょ?けっこう、重労働なのよねー
アキラ>まあ・・・それは・・・仕方ないわなー雰囲気読んで、仕込んで儲けさせて、回収してだもんな・・・
サトリ>大変なんだからね?アレ。雰囲気読むってすっげ大変。みんな言ってるよードカタのほうがなんぼか楽だって。
アキラ>うそこけ。夏は暑くて雨降りゃ寒い職業よりはナンボかましだと思うぜ?思えないヤツは流れに乗ってないだけなんだって
サトリ>それだけじゃないわよー今は改善があったから問題にはなってないけど、ついこの間まではお客様第一でうごいていたチームが、おもいっきり損失かましたってこともあったんだよ。
アキラ>あ、会議で特別損失でた!って大騒ぎになってたのそのことだったんだ・・・
サトリ>おかげでその娘、自分には精神力がたりなかったからこうなっちゃったんだって、ウツになっちゃって・・挙げ句のはてに背中にデッカイ入れ墨いれちゃったんだからね!!
アキラ>おうふ・・・マジか・・それ、おれ、ちょっと見たかったな・・・
サトリ>兄さん!?このスケベ!だいたいにおいて、イカサマありきで儲けていた賭場を一般の人たちの娯楽として公開して、新たに商売やろうって言うのが無謀なのよ~
アキラ>だーから 前払い制にして正解だったろ?氏名登録制にして、一ヶ月の限界料金も設定すればわけのわからん客もこなくなるというやつ、狙い的中したろ?
サトリ>まあ・・・そうね・・・
アキラ>あれ、おれの出願だ。ちょっとは感謝とか尊敬してもらおうか。
サトリ>はいはい。すごいですすごいですすごいです兄さん。これでいい?
アキラ>ちょっと塩対応っぽかったけど、まあいいか。これからも兄ちゃんを敬うんだな ハハハハ
サトリ>自己陶酔モードにはいっちゃってるよ。このひと。
サトリ>そのときだった。
サトリ>!? 叫び声!? あっち・・・8条のほうだ!
アキラ>げ・・・ 騒ぎの声も聞こえる・・・ただごとじゃなさそうだな。
サトリ>行ってみましょう!何だか胸騒ぎがする・・・
サトリ>現場に着いた私は驚愕する。そこであった事件は、殺しだった。
現場に残されていたのは、青のサラシを朱に染めた死体。
身体の部分をドスで何度も何度も突き刺されていた。
サトリ>この格好・・・賭場師か・・・
サトリ>私は思わず言葉を落とす。その言葉を聞きつけたアキラが続ける。
アキラ>サトリ。どうやら、その読み、アタリだ。とある料亭で賭場が催された場所があってだな、
サトリ>兄さん・・・・
アキラ>詳しいことは、あとだ。とにかく、俺たちはやじ馬だ。とっととずらかろう。
サトリ>自宅に帰って、夕飯の準備をしつつ、私はアキラの調べてきたことに耳を傾けていた。
アキラ>えっと・・被害者は・・ギンジ47歳。第8条を中心に賭場師として歩いた男だ。死因は、おそらく、ドスのせいで起きた失血性傷害によるもの。次にこの男の素性だが・・・
サトリ>ギンジは第8条で固定でやっていた賭場師だった。サラシの色が青だというのが、根拠よね。
アキラ>ああ。その通りだ。ここいら、四十九条の賭場街では、売り上げによる抗争を防ぐべく、ナワバリなるものが設定されている。俺たちの第7条、事件のあった第8条、それに隣接する第9条、そして、ちょっと離れたハシケにある第10条。
サトリ>それぞれのナワバリは所属を確定するために、色のサラシを胸に巻きつけて仕事ですることが定められている。しかも、賽振りと中盆は違う色のサラシであることが義務づけられている。これを同盟色という
アキラ>事件のあった第8条は青。同盟色は緑。9条は黄色。同盟色は水色。そして第10条はえんじ色。同盟色は桃色。ヤクザなど外道グループに入ったら白。これはやつらの慣例なので、秩序はそこで区別されている。
獣がナワバリを意識するように、賭場師も縄張りを意識しているというわけだ。
サトリ>ちなみに、私たちの7条は赤。同盟色は黒。だから、あたしは兄さんとは対立することはない。あたしたちはセットで動く。だからいつも一緒☆
アキラ>たしかに。それはある意味正しい。では、これらを踏まえてまとめてみよう。問題は、こいつは一体、なんで、誰に殺されなきゃいけなかったか、という話になる
サトリ>まずはギンジの同盟色は誰なの?事件のときはどこにいたの?
アキラ>同盟色の名はお京。散り初めのお京という、通り名で通っているそうだ。事件のとき、彼女はちょっと離れた小料理屋「牡丹」にいた。酔い潰れて寝込んでいたそうだ。
サトリ>そのお京さん、女房役になって、常に近くに居なきゃいけないのに、なんていう体たらくなの
アキラ>調べによると、あいつらは最初は2人して小料理屋で食事をしたそうだ。仲は悪くはなかったらしく、当日も談笑して酒を酌み交わす姿がみうけられている。
サトリ>それじゃ、ギンジはその小料理屋から移動して殺されたってわけなのね?
アキラ>そう考えたほうがいい。別の場所で殺されて、あそこの場所で見つかる、というのは、状況上、成立しないからな
サトリ>誘い出されて、殺された・・・・
アキラ>その見方で自警団は動いている。
サトリ>そう・・・。売り上げによるイザコザってことは考えられないの?
アキラ>どういうことだ?
サトリ>本来の顧客をギンジたちが奪い取って、恨みを買った、とか・・・
アキラ>実はな・・やつらそんなに稼ぐ賭場師ではなかったらしい。
サトリ>どういうこと?
アキラ>どうやら、二人はもう、安定した暮らしだけを求めている、いわば隠居状態になっていたそうだ。お客をたのしませるためだけに、ただただ賽を振って、ショバ代と礼金だけで慎ましく生活をしていたそうなんだ。
サトリ>へえ。以外だな。そんな賭場師もいるんだ
アキラ>人間、盛りをすぎたら、身体も動かなくなるし、病気だってするようになっていく。不安の中での生き方よりも安定した生活を求めるようになってゆくのは自然のながれではないか?
サトリ>ふーん なるほどね・・・・
アキラ>実は、売り上げについてのトラブルは俺も考えていたんだ。もっとも、おれの場合は、賭場師同士で作った小グループによる抗争なんじゃないかって面から追ってたんだけどな
サトリ>で、その結果はどうだったの?
アキラ>残念ながら、ダメだった。おれが考えている以上に、第8条は7条以上に規律と結束がある場所だった。俺たちが事件を見に行っている時だって、あのあとすぐに自警隊がやってくるほど治安がいい場所なんだ。
サトリ>ふーん・・・・じゃあ、いったい、誰がこいつを?
アキラ>それが よくわからない。
サトリ>わからない?
アキラ>ここまでの調べをまとめると、ギンジは殺される直前に呼び出しを食らって、そこでが犯人に殺された。たぶん真相はこうだと思うんだが、残念ながら、犯人に関する情報がない。
サトリ>目撃者はいないのか?
アキラ>ああ。いない。
サトリ>まだ通りには人どおりはあったんじゃないの?
アキラ>たしかに、あったと思う。ただ、夜間で暗がりだったし、酔いもまわっている人たちだったし、証言は一致もしないし、信憑性も低い。
サトリ>そんな・・・じゃあ、この事件はどうなるのよ?
アキラ>第8条の自警団によると、このままだったら、犯人不在の未解決事件として放置することになるだろう、と・・・
サトリ>そんな・・・それじゃあ、ギンジは浮かばれない。
アキラ>しかし、妥当な考えであるといえる。もともと社会の反勢力に組した奴らのことだ。首突っ込みすぎて、世の暗部を噴き出させることになれば、より厄介なことになるからな
サトリ>治安が良すぎる第8条で起きた、すき間風吹く場所で起きた事件・・・
すきまかぜ(隙間風)
はなやかなりし(華やかなりし)
まちのすそ(街の裾)
散りいそぐや(散り急ぐや)
さくらはなびら(桜花びら)
アキラ>え?それは・・・
サトリ>くすっ・・ごめん。学校に行ってた時に習ったクセで、ちょっと詠(よ)んじゃった
アキラ>おまえにそんな学力があるとはな・・・
サトリ>兄さんに学校あがらせて貰った成果というものよ。あのままフウスケといたら、こうはならなかった。
アキラ>そう・・だな・・・そんな意味では、おまえは俺の宝だ。これからも一緒にいてくれ。
サトリ>兄さん。私たちは家族。一緒にいるのは当たり前よ
アキラ>ありがとう。それより、これ以降、お互いに用心しないと。
サトリ>そうね。今回の犯人は結局、不在になるんだもんね。
アキラ>ああ。別のところであった事件とはいえ、無視することはできない。・・・お前も、そう、おもっているのだろう?
サトリ>ええ。そのとおりよ。今回の事件。たまたま第7条では起きなかっただけで、こちらでも起こりうる事件だったと、私は思う・・・
アキラ>じゃあ、おまえは・・・これで、終わりではない・・・そう、感じているのだな?
サトリ>ええ。私は、そう、感じています。近々、同じような事件が起こる。それほどのキナ臭さをこの事件から感じ取っているのです。
アキラ>サトリの言った、近々、同じような事件が起こる。彼女の予感は、的中した。今度はちょっと離れた第10条で、事件は起きたのだ。
サトリ>しかし、この事件の見聞に私たちは行くことができなかった。正確にいえば、聞いた時にはすべて、証拠は隠滅されていた、というのが正しい。
アキラ>第10条のサラシの色は派手だ。その色に象徴されるかのようにあそこの賭場師たちは色街(いろまち)の運営と密接につながっている。第10条は色街の壁に覆われた街。閉鎖的な場所だったので、死体が見つかったのは壁の周りに出来た汚物にまみれたドブのなか。
サトリ>ホトケ フハイハゲシク ミルに オヨバズ
自警団からの回答はこれだけだった。
アキラ>凄まじいな。ここまでくると、凶悪事件としか言いようがなくなる。
サトリ>第8条といい、第10条といい、立地条件と環境を熟知した上で、事件が引き起こされています。これは計画的に引き起こした事件・・・犯人は同一人物だとおもわれます・・
アキラ>サトリ・・・いやに直感的なんだな・・・根拠でもあるのか?できれば、おしえてほしいのだが。
サトリ>私は、一人可能性がある人を挙げます。でも、根拠はありません
アキラ>ほう・・・ここまで来たら可能性は誰にでもあるからな。心配するな。いってみろ。
サトリ>その人物は、ウチに来て、私と遊んでいることもありました。学校の宿題が終わっても、まだ時間に余裕があるとき、私はとある遊びを教えたんです。
アキラ>ほう・・・・
サトリ>そのあそびは賭場遊びです。怒られるかもしれませんが、あれで計算力は格段に良くなったと思います
アキラ>ふむふむ
サトリ>とある日、私はその人に徹底的に勝ちました。コテンパにしてしまいました。
それがもとで、その人はいつになく悔しそうな眼をして私をにらみつけはじめたのです。
アキラ>へえ。そんなことがあったんだ。いつのことだ?
サトリ>兄さんに初めてさらし姿を披露した日があったでしょ?その日ですよ
アキラ>その日だって?だとすると、そいつは・・・あのヒカルってことか?
サトリ>はい。
アキラ>人違いじゃないのか?まさか、あのヒカルがあんな道に踏み込むとは思えない。だいたい、理由がない。あいつのうちは比較的裕福な家庭のはずだ。
サトリ>裕福?じゃあ、なんでアイツ、ウチによく遊びに来ていたの?
アキラ>それは・・・あいつの親は仕事が帰りが遅くなるために、この家で預かって欲しいという願いがあったからだ・・・いわばウチはあいつらに簡単な育児施設を提供していたんだ。
サトリ>それじゃ・・・・
アキラ>ウン。おれの考える限り、あいつの線はナイ。そう信じたい。そうじゃなかったら・・・・
サトリ>そうじゃなかったら・・・・・?
アキラ>あまりにも、それは・・・悲しすぎる・・・・
サトリ>そうですよね・・・・
アキラ>ああ・・・・・
<少し間 おいてください 5秒ほど>
アキラ>ほかに容疑をかけている人はいないのか?
サトリ>・・・すみません・・私にも、わからないんです。もはや、これ以上、誰に嫌疑をかけているのか、いないのか・・・・
アキラ>わからない?・・・・なぜだ?なぜなんだ?
サトリ>まず、お話した、この直感的な感覚の正体がわからないんです。あるいは・・これは私がニンゲンじゃないから感じているものなのかもしれないんです
私はサトリです。本来、人間の考えていることが見える妖怪です。でも、この力は最低限を残し、私の中で封印されています。発動されることはありません。
しかし、いろんなことがあったために、この力がどこからか漏れ出してきて、そう思えているのかもしれないんです
アキラ>サトリ・・・
サトリ>兄さんの気持ちはわかります。事件の重大さもわかります。だからなにかを話さないといけないというのも、重々わかっています。しかし、それがなにか分からない以上、お話することもできないんです
アキラ>サトリ・・・そうか・・・わかった。分かったよ。今、これ以上は聞かないことにする。
サトリ>兄さん・・・
アキラ>だけど、分かったらすぐに言ってくれ。いいか、必ず、忘れずにいうんだぞ。いいな
サトリ>そう言い残すと、アキラはまた新しい証拠を見出すために、出かけてゆくのだった。
サトリ>私は家にひとり、残された。残って、洗濯物を干している。その合間、思いを巡らせていた。
サトリ>私がそう、直感的に思っているのにはわけがあった。アキラと事件の現場を見に行った時くらいから、わたしのほうに鋭い視線を感じるのだ。それは、忘れもしないくらい、鋭くて、釣りあがった瞳だった。
サトリ>まだ・・・終わってはいない・・・
サトリ>う・・・うううう・・・・
サトリ>そこまで考え込んだ私は、不意に吐き気を覚えた。唾液がふと、地面を伝う・・・・
サトリ>空は曇り、中途半端な強さの生ぬるい風が吹く、不快感あふれる日の出来事だった。
アキラ>家を不在にしているとき、そんなことが起きているなど、想像すら出来ていないころ・・・ボクはまた、事件を目の当たりにしていた。
アキラ>またか・・・今度は第9条・・・・いったい、なんのつもりなんだ・・・
事件のあったのは、第9条・・・ここはサラシの色から分かるとおり、若さと流行溢れる街。この街において、賭場というのはただ単なるゲームセンターでしかない。定額の参加料金を支払い、ゲーム用のコインを買い、賭け事に興じる。通常の賭場とは異なり、カネはゲームコインに変えることは出来るが、逆はできない。だから、生活がかかることもない。その意味では極めて安全な遊戯なのだ。
被害にあったのは、中規模な店の、素人級の未熟な腕の日雇い賭場師。まとめていえばアルバイト店員のコンビ2人。まだまだ学生で、この事件により、2つの未来がまた、闇に葬られた。
サトリ>その事件の全貌を兄さんの口から聞いたのは、帰宅してからだった。いつになく、青い顔をして、思い詰めるアキラに声をかけたら、噴き出すように打ち明けてくれたのだった。
サトリ>それで、その犯人は?またわかんないの?
アキラ>いや、今回はそれは分かってる。だがな・・・それが余計に事件をややこしくしてくれてる・・・
サトリ>どういうこと?
アキラ>犯人は、こいつらだった・・・・
サトリ>兄さんのもって来たものを見て、私は2度凍りつく。「闇忍者隊・・・」まさか、これ!
アキラ>ああ。筋金入りの殺し屋集団だ・・・犯人はカネを積んでまで、殺しをはじめたんだよ!ましてや、殺害方法も酷似している・・・まるで、依頼時に指定したとしか思えない!
サトリ>兄さん!
アキラ>狂ってる・・・なにもかも、狂ってる・・・
サトリ>に・・・兄さん・・・
アキラ>すまない。ちょっと疲れた。今日は眠らせてくれ・・・・
サトリ>わかったわ。兄さん・・・
サトリ>そういうと、私はすぐに床の準備にとりかかる。兄さんは、準備が整うなり、横になると、間髪(かんぱつ)いれずに寝息をたてた。
サトリ>居間にのこった私は、思いを巡らせた。鋭い視線の正体と、この事件の意味に・・・
サトリ>この事件・・始まりはなんだっけ?
たしか・・第8条で起きた事件・・仲のいい2人を引き裂いて・・中盆を殺害
次は・・・第10条で起きた事件・・閉鎖された環境で、人しれず殺害、ドブにすてて隠滅した・・まるで・・罪にならないよう・・罪を犯したよう・・
そして・・第9条・・カネを積んで・・足がつかないよう・・対象を殺害する・・・
サトリ>・・・はッ!!どう見ても私たちが見聞から帰ってきた直後におきてる!あたかも見計らっておこしているかのよう・・・
サトリ>たしか・・このこと・・・はじめてじゃない・・・あの日・・あの時・・たしか言った・・・ああ・・そうだ!あのときだ!・・・まさか・・・まさか!!そんな!!!!
サトリ>いうが早いか、私はすぐさま自室に入り、黒いサラシを手に取る。そして布の片方を柱に固定すると、力一杯に引っ張り、もう一方のほうから順番に巻きつけた。骨盤を強く、腹をゆるやかに、そして胸の部分でまた強く・・
終った私は顔に美粧を施す。目の部分を濃く、顔を白く、そして、希薄色(きはくしょく)の髪は、たれないよう、はね上げた。
サトリ>そして、私は、得物(えもの)を手に取ると、夜の帳のなかを駆け出した。
アキラ>そのころ、ボクは2度3度、布団の上で寝返りをうっていた。
サトリ>私は走る。闇夜を切って。額から汗が流れ落ちる。それは頬を伝い、口元に至る。とにかく、私は駆け抜けた。拭うことも忘れて。いまは目的の地に至ることを最優先に考えていた。そして、私はついにそこへ到着した。
ヒカル>・・・ン?
サトリ>そこは、廃墟の上に立てられた神社の社台(やしろ)の中だった。
入るなり、私は鼻を覆う。中からは強烈な異臭がただよっていたのだ。
ヒカル>(キセル吸う)はははは・・・・アヘンだよ。吸っていると、気持ちが楽になる。
サトリ>くうっ・・・・ヒカル・・・聞きたいことがある!
ヒカル>(キセル吸う)
やっと来たか。サトリ。ついにここにたどりついた!あの時のおしえのままだ!
サトリ>うるさい!一連の賭場師の殺害事件の犯人は、あなたね!ヒカル!
ヒカル>なんのことかなあ~ ぜんっぜん わっかんないな~ 証拠なんてあるわけないんだから、ぼくはしらないよ~
サトリ>この・・外道め! 最初の事件!あなたは、小料理屋に隠居した銀次・お京夫妻を泥酔させ、賭場師銀次ファンがいるからといって、銀次を呼び出した!その場所が第9条に面した場所だったから、銀次は期待を寄せて、無防備のまま、あなたの誘いにのった!
ヒカル>なんだ・・そこまで分かってたのかよ・・つまんねえな。そうだよ。おれはあいつを誘い出した。こちらは明日の酒代の支払いができるかどうかって切羽詰まっていたのに、小料理屋で、女房と仲むつまじい 姿をさらしやがった!むかついたんだ!だから殺した!
サトリ>事件の直後、あなたは私がアキラに連れられて、見聞に来るのをみた!
ヒカル>そうだよ。あのとき、お前の横顔をみて、憎々しく思ったものさ。おれは上級学校のあと、両親が離婚して、ひとりぼっちになって、事業に失敗し、
女に失敗し、無一文になろうとしていたそのときに、あの時とかわらない、あどけない顔であそこに立っていた!憎かったね!ああ!憎かった!あの日、賭けで勝てなかった恨みを思い出したね!そして、おれは!そこですべてを思いついた!
サトリ>なるほど・・わたし、あの日、あなたの遊び相手をしなければ、こんなことにはならなかった!
ヒカル>そうさ!おまえは あの日、次のラウンドで将来の男と女の生き方について説いてくれていたよな!女は男に愛される生き物、男は女に贈り物をする生き物!おまえはぼくにそういった!
サトリ>ああ!言ったわ!間違いなく言ったわ! 女は男に愛されて、男は女に愛という贈り物をして、その末に子を育む!そのことばにウソはない!
ヒカル>ふざけんな!第10条の遊郭ではそんなことをいうまともな奴はいなかった!
サトリ>!?
ヒカル>やつらは、贈るもの贈られるものが「愛」というと、大爆笑しやがった!そして言った!愛みたいな見えないものは紙くず以下なのだと!まことに大切なのはカネなのだと!
サトリ>そ、そんな・・・
ヒカル>嘲り笑うその声のなかで、俺の何かがキレた!気づいたらおれの前に血まみれになった二体がころがっていた!我に帰った俺は力一杯叫んだんだ。賭場師2人が喧嘩をはじめた!!ドスを振り回している!たすけてくれ!!・・・・ハハハハッそれだけのことだ!
サトリ>なるほど・・・遊郭側はそれを店内のイザコザだと判断して、2人を秘密裏に処分したのね・・・
ヒカル>うまくいったよ~うまくいった~ すっげー上手くいった!!
ヒカル>そんなとき、またアタマをよぎったんだ!あのとき、おまえは言った!どうしても、うまくいかなくなかったら、カネを積んで、殺してしまうことだってあるのだと・・・
サトリ>・・・ヒカル!ちがう!それは、ヒトの間違った道の教えを言っただけ!あなた!ちゃんと人の話をきいてないじゃない!なにやってるの!!
ヒカル>はははは・・・ははははは!!!・・そうか・・・そうだったんだな・・・はははは!!ヘンだと思ったんだ!変だと!
サトリ>ヒカル!
ヒカル>誰かをころしてもらう・・・そしたら・・・隠すために、また、そいつをころしてもらわないといけない・・・でもそれやったら、それをまたころしてもらわないといけない・・・やつら、同士討ちして、みーんな、しんじゃった!!はははははは!!
サトリ>・・・!
ヒカル>1ー1ー1ー1ー1・・・ゼロになんないんだ!おかしいだろ!ならないんだよ!そんな算数・・・学校じゃおしえてくれなかったよ!ねえ!先生!とうさん!かあさん!この答えは・・・なんなんだよ!?いくつなんだよ!! ねえ・・・生きるってなんなんだよ?明日って?昨日って?おしえてよ・・・だれかぼくにおしえてよ・・・答えにみちびいてよ!!ははははは・・・はははははは!!
サトリ>・・・ヒ・ヒカル・・・!!
ヒカル>(ツバを吐いて)・・・おい、サトリ。賭けをしよう。ここへ来て、勝負をしよう。賭けるものはあの日のお前の教えと、この、解けない答えの解。これでどうだ?
サトリ>・・・ふっ!笑わせる!!
ヒカル>なんだと!?
サトリ>なめてんじゃねえ!あたいはおまえとちがうんだ!
ヒカル>へっ・・なにいってやがる!じゃあ、おまえはなんなんだ!
サトリ>・・・あたしは!人じゃない!サトリなんだ!!貴様みたいなクズ人間風情には負けない!
サトリ>いいわ!あたいは、この腹を賭ける!(ドスを床に刺して)
この一本勝負!あたいが負けたら、ここを朱に染めてやる!
外道よ!!おまえは、その血にまみれたサラシでも巻いて、呪われた日々と共に朽ち果ててゆくがいい!
ヒカル>よくいった!サトリ!そうこなくっちゃ!!さあ!親はおまえが取るといい!!さあ!行こう!さあ、はった!さあ、はった!はははは!
(ここで、もっているキセルが囲炉裏の中へ。炎があがる)
サトリ>・・・・入ります・・・!
(ほのおはたちまち社台に燃え広がる。その熱で二人の肌からは汗が噴き出す)
サトリ>・・・(ツボをずらす音・・・ 中でサイコロが音をたててころがる・・)
(ふたりの身体を 汗が流れゆく・・そして 適当なところで、サトリは手をとめ、ツボの動きを止める)
サトリ>勝負! どうぞ!!
ヒカル>カミかな・・・?シモ・・・かな?どっちかなあ~~~どっちだろうなァ~~~
(夢遊状態になって、ヒカルはサトリの突き刺したドスを引き抜く)
ヒカル>これ、きれいだな~どちらにしようかな~かみさまのいうとおり~と・・よし、きめたぞお・・・・・
ヒカル>・・・・シモ!!シモにしよう・・・・!
サトリ>・・・・!
(流れ落ちる汗・・・ 炎で燃え広がる社台 ・・・サトリは無表情のままツボにておをのばす・・・そのときだった)
アキラ>やああ!!!
(そのとき、木刀がふりおろされ、ツボごとつぶしてしまう)
アキラ>その問いに答えはない!!
サトリ>・・・!
ヒカル>おのれ・・きさま・・・
アキラ>勝負の答えは言ったぞ。これでいいはずだ。俺は人間だ・・・人の道はずれた外道のきさまに教える答えになぞ、答える舌はもたん!
ヒカル>なん・・・だと・・・
アキラ>言葉の意味は 地獄の釜につかりながら、魑魅魍魎(ちみもうりょう)たちと解くがいい。閻魔大王なら正しい答えに導いてくれるかもしれんがな!
ヒカル>く・・くそ・・・
アキラ>サトリ!!離脱するぞ!!早く!!
サトリ>・・・・
アキラ>・・(涙・・・?)・・はっ!
サトリ>・・・
アキラ>なにをしている!いくぞ!!
サトリ>兄さん・・・
アキラ>行こう・・・明日がまってる・・・俺たちを・・・
サトリ>うん・・・・うんっ(涙)・・・・
明日香>一連のこの話・・・そういえばきいたことがあるぞ?「賭場四条絡みの変」だったかな?四十九条賭博事件簿でみたことがある。
アキラ>さすがは明日香さん。よくご存じで。最終死者25名。被害神社仏閣1、押収アヘン25キロ、賭場絡み最大のスキャンダルでした。
明日香>だけど、それについては疑問がのこるのじゃ。たしか、再三文中に登場する妖怪「サトリ」が故知れずじゃからのう
アキラ>たしかに。例の四十九条賭博事件簿では、サトリについては存在の真偽は定かではない。として その一部始終を結んでいますからね。
明日香>では、真偽のほどはどうなのじゃ?
アキラ>じつは・・・サトリは、このあと、ほどなくして、なくなってしまったのです。
明日香>なんじゃと?妖(あやかし)の身であるのにか?
アキラ>ええ。あのあと、サトリはヒトの考えが見えるだけではなく、行く末も見えるようになりました。それについて、感情を抑えることができなくなり、最後には、静かになりたい と遺書を書いて首吊り自殺を遂げたのです。
明日香>なんだと?
アキラ>穏やかな最後でした・・・ほんとうに、穏やかでした・・
明日香>・・・責めておるな?アキラ。自分を。
アキラ>・・・はい。それはそうでしょう。しかたのないことです。
明日香>では、その償いを、今、これからすることで、そなたを救うことはできないか?
アキラ>え?
明日香>幸い、われも半妖の身。サトリどのの分も一緒に、幸せにしてはくれまいか?
アキラ>・・・
アキラN>ボクは答えなかった。いや、答えられなかった。
あのとき、失敗した報いをいま、返すことができる・・身が引き締まる思いだったからだ。
明日香>この日を最後に、アキラの口からサトリのことが語られることはなかった。
それは緑に萌える初夏の日のエピソードだ。
SATORI編えんど
★★★四十九条賭場物語エピソード3 SATORIの章 中編★★★
アキラ>それは第40条にある自宅から、話は始まった
サトリ>いつになく物々しい雰囲気の我が家。
アキラ>見慣れた居間におかれるのは半畳の畳とサイコロとヒトガタのコマ。
サトリ>簡易的に作られた 賭場の場の上座(かみざ)に 置かれるのは、戸籍が書かれた抄本。
アキラ>サトリは求めていた。そこに自分の名がないことへの疑惑の説明を。
サトリ>わたしは サラシを胸に巻き、髪をかきあげ、さながら賭場師の姿となって、ここに座るのだった。もしも、満足な答えが得られなかったときは、たとえアキラといえども刺し殺す。すでに覚悟は決まっていた。
アキラ>時間です。
サトリ>ハイ。よろしくお願いします。
アキラ>では、始めます。攻め方を決めます。では、どうぞ。
サトリ>・・・・・わたしの先攻ですね。
・・入ります。・・・勝負!
アキラ>(初めてこの姿を見てから半年か・・サトリの、まずは、お手並み拝見といこうか) 賭金5。カミ。 どうぞ。
サトリ>・・・カミ。 なるほど、やるわね お兄さん。
アキラ>おいおい、その呼び名はまだ決まったわけじゃないだろ
サトリ>ごめん。でも、言い慣れちゃったから・・・
アキラ>好きにしろ・・それくらい、勝負とは関係ない
サトリ>かかったわね。後悔させてやるんだから・・・
アキラ>親、変わります。 勝負!
サトリ>シモ 賭金5。 どうぞ
アキラ> ・・・・シモ。 お前の勝ちだ。
サトリ>やった! 今度は私ね。
サトリ>・・・入ります。
アキラ>・・・シモ。賭金4
サトリ>賭金、落としてきたわね・・想像どおりだわ
・・・シモ!賭金3!
アキラ>被せてきた・・・場のレートを上げるつもりか・・・あいつ、どこでそんな手を・・・
サトリ>ふふふ・・・まごまごしてる・・・
アキラ>シモ!賭金7!
サトリ>やった!賭金が上がった!!
アキラ>し、しまった・・・・・挑発に乗ってしまった・・俺としたことが・・
サトリ>(まだまだこれからよ!アキラ!)
シモ!賭金6!
アキラ>な、なんだと・・・・!!これで合計賭金は20!?
サトリ>あなたの番よ。お兄さん
アキラ>お、オリ・・
サトリ>あら?おりるの?
アキラ>!?
サトリ>おりるの?って聞いているんだけど。
アキラ>あ、ああ・・・それで、かまわない・・・
サトリ>ちぇっ つまんない・・・・
ちなみに、ダイスは、カミだったの・・・・
アキラ>!!
サトリ>もし、もう少しあげておいたら、この勝負、楽勝だったのにね。
アキラ>く・・くそ・・・・
サトリ>いままで、黙っておいてあげたけど・・・・
アキラ>・・・。
サトリ>兄さん、優しすぎる。
アキラ>・・・・。
サトリ>その優しさ、今のあたしにとっては、毒でしかない。
アキラ>さ・・とり・・・
サトリ>うんざりなんだよ・・・そんなあんたをみるのが・・・
アキラ>はあ・・はあ・・・
サトリ> 次は逃がさないからね。
子がおりた勝負の次は親は変わらない。だから、私が親。賭金は20からスタート。
わかってるわよね。ここ。
アキラ>ああ、ああ・・・
サトリ>入ります・・・・どうぞ!
アキラ>賭金は4、カミ!
サトリ>あたしも賭金は4にするわ。そうねえ・・・目のほうは・・・
アキラ>(はあ・・はあ・・・・・こ、心が・・痛い・・)
サトリ>シモ!よ!!
アキラ>な、なんだとお・・・・
サトリ>じゃあ、あげるわよ・・・目は・・・シモ!
アキラ>し・・・しまった・・・・
サトリ>ハハハハハ!やったわ!勝ったわ!!
賭金が28だったから、勝ち金は42。あはははは!
アキラ>くそう・・・強い・・さとり・・・
サトリ>次は兄さんよ。早くやって。
アキラ>あ、ああ・・・
サトリ>目がうつろ・・・呼吸もめちゃくちゃ・・・よし・・ここは・・一気に攻め立てて・・・
アキラ>入ります・・・・勝負!
アキラ>さあ、どうぞ
サトリ>くすっ・・・
アキラ>な・・なにが おかしい!
サトリ>カミ ね? すぐわかっちゃった。
アキラ>!?
サトリ>脇汗。びっしょりだもん。赤いさらしだったらモロバレだもんね
お兄さんがそうするときは、かならずなにかを仕込んだとき。
アキラ>・・・そ、そこまで・・・・
サトリ>お兄さん・・・覚悟できてるわね・・・
アキラ>・・・!!
サトリ>賭金は50・・・カミ!
アキラ>はあ・・・はあ・・はあ・・・
サトリ>もらった!・・・んあああ!
アキラ>あまいな・・・シモだ・・
サトリ>ば・・・ばかなっ!ありえない!
アキラ>予想をうらぎってわるいな・・・仕込みは、ここだ・・・
サトリ>くそ・・・
アキラ>偶然、取り落としてしまってな・・・
サトリ>くそ・・くそ・・くそくそくそ!
アキラ>サトリ・・・おまえが俺に勝つには、まだ・・未熟!
サトリ>あああ・・・・ううううう!!
アキラ>取り乱すな!サトリ!!
サトリ>うわあああ・・うわあああああああああ!!!
アキラ>サトリ!!サトリ!! おちつけ!サトリ!!もう、勝負はおわりだ!
サトリ>・・・はあ・・はあ・・・・馬鹿いっちゃいけないよ!
アキラ>な・・なっ!
サトリ>まだよ・・・まだ勝負は終わってない!
アキラ>サトリ!
サトリ>賭金はなくなったけど、あたしにはまだ賭けるものはあるのよ!
アキラ>なんだと・・まさか・・やめろ・・サトリ!
サトリ>やああっ(といって、ドスを畳に突き刺す)
サトリ>あたし・・・この身を・・賭ける!!
アキラ>や・・やめろ・・・・
サトリ>勝負よ!勝負!!はいるわ・・・はいるわよ・・
アキラ>サトリ・・・・
サトリ>はいりました!しょうぶっ!!!
サトリ>その瞬間、わたしの意識は脳天のなかで爆ぜた(はぜた)
アキラ>気がついたか? サトリ・・・
サトリ>わたしは・・・わたしは・・・・?
サトリ>あっ・・・そうだ・・・・勝負の最後の・・・
アキラ>やめておけ! もう、そのサイコロにさわるな!
サトリ>・・・で、でも・・・・
アキラ>その目を見て、どうする?もし、その目がお前の勝ちだったら、まだまだ勝負は続けようとしているだろう。もし、お前の負けだったら・・・
サトリ>・・・・
アキラ>お前は生きてはいまい・・・・わたしはお前をなくしてしまうんだ・・未来永劫・・・
サトリ>・・・・
アキラ>すまなかった。俺の足りない決意が、お前を不幸に導いていたのだな。
では、私も勇気をだそう。
サトリ>・・・?
アキラ>お前を・・サトリを・・・正式に養子として、この家に迎えることにする。年齢が年齢だから、あくまでも、妹になってしまうのかもしれないが。かまわないか?
サトリ>う・・うん・・・兄さん!!
サトリ>うれしい・・・・!!
アキラ>わっ・・・サトリ!!苦しいよ!
サトリ>ねえ、兄さん。あたしの胸・・鼓動してるわよね。生きてるわよね!
アキラ>ああ。生きてる。ちゃんと、お前はいきている・・・
アキラ>お前は、俺の妹だ・・・・
サトリ>兄さん・・・・ああ、明日が見える・・・
アキラ>サトリ・・・
サトリ>ねえ、兄さん・・おねがい・・もうしばらく、こうやって抱きしめていて・・・
アキラ>ああ。わかったよ。・・・今日の勝負は・・・
サトリ>勝負は・・私たちの 勝ち。そうでしょ。
アキラ>ああ。そのとおりだ。
N>窓辺から陽光が降り注いでいた。光は賽の目を照らす。
あれほど憎々しかった、賽の目が、いつになく尊いものに見えたのは、二人の錯覚だったのかもしれないが。
またここに、一つの勝負が終わりを告げるのだった・・・・
★★★四十九条賭場物語 エピソード3 SATORI編★★★
アキラN>それは、とある初夏の日のこと・・四十九条のなかで、いつも通り、ボクは配達屋を営んでいた。そんなボクのところに、よく見たお馴染みが駆け込んでくる。
明日香>アキラ!おるか?
アキラ>明日香さん!どうしたんですか?こんなときに
明日香>ふふふん!実は、今日はな。素敵なニュースをもってきたのじゃぞ!
アキラ>素敵なニュース?ですって?
明日香>ああ、そうじゃ!実はな、先日のことで、陣場組は事実上解散となってしまってな、ここの祭事を以前のまま、任されるようになったのじゃ
アキラ>へえ。そうなんだ。すごいじゃないですか。よかったよかった。
明日香>うんうん
アキラ>それで?わざわざそれを報告に来てくださったんですか?
明日香>まさか。今日、ここに来たのは他でもない。おぬしを引き抜きにきたのじゃ。引き抜きに。
アキラ>ええ!?そうなんですか?こ、こまるなあ・・仕事もあるし
明日香>そんなにその仕事が好きなら、こっちでできる仕事を頼む。こうみても、運ぶものというのはたくさんあるのだぞ。祭壇とか、お経の書物とか、御真影とか・・
アキラ>ぽか~ん
明日香>こいつ・・・いいぞ。そっちがその気なら、これにモノ言わせて毎晩泣いてやるからな。朝起きるときツラくってもしらないぞ~
アキラ>わかった、わかった、わかったよお!
血の契約をそんな風に使うと、バチあたりますよお!
明日香>血の契約には神や仏は関係ない。これは、ただ単に、わらわのまじない なのじゃからな。
アキラ>う・・したたかすぎる。この巫女さん
明日香>なんかいったか?
アキラ>いえ、なにもありません。それでは、こんどの週末にでも移動しますよ。
明日香>お?本当か?
アキラ>ええ。仕事の方には「のれんわけ」「支店の出店」あたりで大丈夫でしょう。ウチの部下はみんな優秀ですから
明日香>よし。きまりじゃな
アキラ>次の週末。ボクは明日香さんの協力もあり、三重(みつえ)神社に居候になることになった。でも、正直、乗り気ではなかった。
明日香>アキラ。どうしたんじゃ?
アキラ>えっ?
明日香>なんか、今回のことが不服そうで、きになってな・・・
アキラ>それは・・突然のことでしたし・・・
明日香>なんと?おぬしは、独り身であったし、いまの仕事場までは自宅から30分以上もかかっていた環境であったはずじゃ。それが、あるいて10分の環境になろうと言うのじゃぞ。それのどこが嫌なのじゃ?
アキラ>・・・・。
明日香>気持ちがうわついておるな
アキラ>・・・
明日香>そなたが面白くないのはわかる。されどな、血の契約を交わしたものとして、どうしても、無視することはできんのじゃ。
アキラ>・・・
明日香>さあ、苦しゅうない。すべて話してみるがよい。
アキラ>血の契約・・隠し事もできなくなるんですね・・
明日香>命をわけておるからな・・致し方のないことよ・・
アキラ>わかりました。おはなしします。実は・・・家族を持つことが怖いんです
明日香>家族をもつことが、こわい? どういうことじゃ?
アキラ>じつは、ボクはずっと独り身立ったわけではないのです。
明日香>ほう
アキラ>じつは・・家族がいたことが、あるのです・・血の繋がらない家族が・・・・
明日香>そういうと、アキラは過去をポツポツと話し始めた。
アキラ>あれは・・何年前のことだったかな?まだここにきて配達屋をやって日も浅かったときのことだったな・・俺のダチにフウスケってやつがいたんだ。フウスケはいつも朝早くにおれのところに子供を預けてから、仕事に出掛ける男だった。
その子供の名前をサトリといったんだ。
そう・・あの日もサトリは近所の子と一緒にあそんでいたんだ・・・・
明日香>四十九条賭場物語 SATORI編
サトリ>さあ、準備はいいわよ。どっちにいれる?
ヒカル>えっと・・・んじゃ、ボク、シモにしようかな・・・
サトリ>残念でした! 答えはカミよ。あたしの勝ち!
ヒカル>お姉ちゃん、強いよ!
サトリ>あんたはクセがありすぎるのよ。次、どんな答えで攻めてこようかって考えているか、まるわかりだもん。
ヒカル>えええっ クセ? そんなあ。気をつけているんだけどなあ
サトリ>気を付けているだけで直せるなら、苦労はいらないわよ。いい?ことわざで「無くて七癖」聞いたことない?
ヒカル>あるよ。そのくらい。たしか、気がつかない間に人間はクセが出てしまうってことだろ?
サトリ>そうよ。分かっているなら、今度からは気をつけなさい。
ヒカル>はーい。わかりましたぁ センセイ。
サトリ>よろしい!返事は良くできました。さてと、それじゃあ・・!
アキラ>それじゃあ、どうするんだ?
サトリ>あ・・・!おかえりなさい!今日は早かったんですね!
アキラ>はやい?別にはやくないぞ~ もう、とっくにお日様は落ちてるし~
ヒカル>え!?マジで?やっべえ!帰んないと! んじゃあ、これで帰ります! さよなら!
サトリ>ああ~わすれもの あるわよ!ヒカル! ヒカル!!
アキラ>ん?これは??さては、まった サイコロ遊戯やってたな・・・まったく・・・やつら・・しょうがねえな・・
サトリ>はあ・・・はあ・・はあ・・
アキラ>お~ 帰ってきたな どうだった?
無事、追い付けたか?
サトリ>なんとかね。最近の若いのは 足、早いのなんのって・・・ なかなか追い付けないんだわ、これが。
アキラ>そりゃそうだろ。男の子はこれからが成長期本番だ。いまのうちから何かあったんじゃ、心配な未来というやつだよ
サトリ>ま、それはそうかもしれないけど、原因はあたしにもあるの。わかってるの
アキラ>原・・・因・・・?なんだそれ
サトリ>足よ!足! 悪いのはこの足! 遅いのなんのって・・・もう・・頭に来ちゃう!
アキラ>どういうことだ・・・?
サトリ>カ~ッ! わかってるくせにっ!いいわよ!白状するわよっ!リスナーさんのためにも!ワ・タ・シ! サトリは
足が遅いんですう!かけっこなんて クラス最下位ぶっちぎりなのよっ!
アキラ>おいおい、そんなに 開き直らなくても・・・
サトリ>いーわよ どうせ! ふーんだ!!
アキラ>お、おい!サトリ!! ゴハンは!? バンメシは!?
アキラ>・・って しょうがねえなあ・・・ さて、今宵も鍋にすっかな・・・ちょうど、キャベツ1玉でっかいのもらったからな・・・こいつを調理してだな・・と
サトリ>きゃーっ 雨よ雨!雨が降ってきた!洗濯物取り込まなくっちゃ!
アキラ>あん?雨? 表に干してある洗濯物なら、取り込んでおいたぞ?
サトリ>ちがうちがうちがうのっ! 裏にも干しておいてあるのっ!
アキラ>えっ!?そうなのかっ!?
それは大変だ!急がないと!
サトリ>ふう。なんとか取り込み、成功~~~。
アキラ>ちょっと濡れちゃったけどな。
サトリ>別にいいのよ。すぐに使うものじゃなかったし。とにかく、手伝ってくれて、ありがと。
アキラ>それより、サトリ。もっと急がなきゃいけないことがある。
サトリ>なになに?
アキラ>鍋だよ鍋!今夜のゴハンだよ!急がないと炭になっちゃうぞ!
サトリ>そりゃ大変!
アキラ>今宵はお前好みの味付けだ!たんと召し上がれ!
サトリ>パクパク。うん!おいしい!この肉、サイコー!
アキラ>お気に召したようで、良かったよ
サトリ>濡れた髪の毛も乾いたし、ゴハンは美味しいし、ワタシは幸せだな~
アキラ>お!?機嫌がなおった。良かった良かった。
サトリ>あれ?アキラ?どうしたの?全然食べてないじゃない
アキラ>ばかいえ。食べてるよ。俺はこの野菜をガッツリ食べてるんだよ
サトリ>でも、それじゃ肉がない!栄養が無いよ!?
アキラ>ところがそうじゃないんだな。肉から染み出る栄養分がスープになって、これまた体にいいんだ。変に肉食べるとお腹がふくれちまう。
サトリ>ふーん そうだったんだー
アキラ>だからさ、肉はサトリがたべるといい。お前はまだまだ成長期まっただなかなんだからな!
サトリ>ありがと!アキラ!
サトリ>ふぅ。たべた~~~
アキラ>ごちそうさまでした。っと
サトリ>あ、そうだ!アキラ!
アキラ>なんだよ?
サトリ>裏に干しておいたの、だいぶん乾いたからさ、アキラの前でご披露したいな~と思ってさ
アキラ>そういえばそうだった。いつの間にそんなん買ってたんだよ。あんまり無駄遣いは勘弁してくれよ?
サトリ>大丈夫。この衣装、そんなに高くないから。
アキラ>衣装?衣装だったのか。それ。
サトリ>ふふーん 気になってきたでしょ
アキラ>そりゃ気になるよ。
サトリ>それじゃあ、着替えて国家なこようかな?ちょっと待っててね♪
アキラ>自信ありげだな。いいよ。慌てず、ゆっくり、やっておいで。
サトリ>はーい お言葉に甘えて♪
アキラ>雨・・・まだしつこく降っているんだな・・
アキラ>激しい雨だ・・・
あのことを思い起こしてしまいそうだ・・・
そう、それは5年も前のことだったか・・・
女番頭>イカサマだ!そいつ!ひっとらえてくれ!
フウスケ>どけ!そこを開けろ!どいてくれ!このドスの餌食になりたくなかったら、おとなしく言うことを聞くんだ!
アキラ>!・・・・!!!
フウスケ>誰だお前は!ちょうどいい!こい!!
アキラ>!・・・!!
フウスケ>はあ・・・はあ・・・誰も追ってこねえようだな・・・はあ・・はああ
アキラ>おまえさん、いったいなにやらかしたんだ? 姉御はイカサマだ!っていってたけど、本当なのか?
フウスケ>ああ、そうだよ!手本引きで手札にイカサマしたの、キレイサッパリ バレちまったのさ!
アキラ>なんだ、そうだったのか・・・うちのあれは参加したら最後、絶対に負けるように出来てるんだ。
フウスケ>な、なんだとお!?
アキラ>法外な参加料金にどうして気がつかない?入場で一回、場に参加で一回、胴師が変わるので一回、差し入れ後でさらに一回・・・手数だけでこんだけとられるのに、どうして、勝つことなんてできると思う?正気の沙汰とは思えんぞ?
フウスケ>う・・うるせえ・・・俺にはとにかく、金が必要だったんだ!だからだよ!
アキラ>白いさらし・・・お前、外道に手を染めたのか!?なぜだ!?なぜそんなに急にお金が必要になった!?
フウスケ>子供・・ガキを育てるために必要だったんだよ・・・
アキラ>が、ガキ? ・・・・!! 女の娘・・か、かわいいな・・・
フウスケ>そ、そうだろ・・・ハハハハハ。おれの血は引き継いでいないが、俺のガキだ。よろしく頼む
女番頭>イカサマ野郎のフウスケ!どこに逃げた!?隠れても無駄だ!でてこい!
アキラ>姉御がものすごい怒ってる・・・一度や二度じゃねえなイカサマしたの。しかも、エライ派手にやったな?すまんが、大人しく出ていっても、無事ではすまないぞ?
フウスケ>わかってるよ。そして、そんな俺を匿った、お前も このままだとタダじゃすまないんじゃないのか?
アキラ>そ、そうだが・・・
フウスケ>いい取引がある。おれのかわいいこいつを引き取ってくれないか? 報酬はたんとはらうからよ
アキラ>払うったって、お前、文無しじゃないのかよ
フウスケ>大丈夫だ。俺にはフトコロのフトコロがちゃんとあるんだ。
女番頭>イカサマ屋のフウスケ!どこだ!でてこい!
フウスケ>声が近くなってきた・・・なあ、頼めるのか、頼めないのか!?
アキラ>・・・・・わかったよ。請け負ってやるよ
フウスケ>ほ、本当か!?
アキラ>ああ。
フウスケ>じゃ、頼んだぜ!おりゃぁ!うわああああ!
アキラ>おい!フウスケ! 首をドスで掻ききりやがった!!
女番頭>ン!?フウスケ!! あ、アキラ!ありがとう!あなたが殺ってくれたのね!本当に、ありがとう!みんな!はやくこいつを運んで!!
アキラ>一事件終わったって感じかな・・それにしても、こいつ、死を選ばなくても良かったんじゃないかな?
女番頭>そんなことないわ。アキラ。
アキラ>姉御!そんなこと・・
女番頭>イカサマ師は命がけで仕事をするもの。本来は失敗したら、その時点であの世行きなものなのよ。
アキラ>そ、そんな・・・
女番頭>だから、イカサマには手を染めちゃいけない。これは賭場師として鉄則なのよ。あ、あれ?
アキラ>!?
女番頭>あら かわいい。この娘は?
アキラ>俺の、娘だ・・・
女番頭>え?そうなの?顔は全然似てないけどね
アキラ>ああ。俺の血は全然ひきついでいないけど、正真正銘の、フウスケから受け継いだ、俺の娘だ。
女番頭>フウスケから?アナタ、正気?いい?この娘はね・・・
アキラ>・・・・
アキラ>こいつが人間ではないと言うことを俺はこのとき、はじめて知った。フウスケはその養育費のためにヤクザな道に入ったのは容易に予想はついた。もっとも、もともと金には節操のない男だったそうで、賭け事好き、浮気好き、酒好き、遊び好き
女好きで、とてもとても子供を養えるような環境ではなかったそうだ。
アキラ>姉御との話し合いで、店の空き部屋と金銭援助を受けることで、子供をモノゴコロがつくまで育てることにしていた。そして、3年前、教育上の理由から、俺の家で同居、学校へ行かせることにしたのだった。
アキラ(サトリでもOK)>カンのいいリスナーさんはここいらで気づくかと思うが、この娘は人間ではないので成長がちょっとおかしい。この娘は妖怪「サトリ」といって、人間で言う12歳までは倍速で成長する。それ以降は人間の二分の一のスピードで老化するのだ。フウスケはそのことを知らなかったので、養育にひどく手を焼いた。
アキラ>あれから・・・3年か・・・そのときだった
サトリ>お待たせしました~
アキラ>サトリ・・・ぶ!ぶへへへ!
サトリ>じゃじゃーん サトリちゃんのさらし姿だよーん
アキラ>お・・・おまえ・・・なんだよその格好・・
サトリ>色っぽいでしょ?かっこいいでしょ?
アキラ>そんな問題じゃなくって・・それ、賭場師の格好なんだぞ!?
サトリ>わかってるわよ~ だから、色だって、気を使っているんじゃない。この色のさらしだったら、アキラとは敵対することは、絶対にない
アキラ>ったく、よく知ってるな、お前・・・
サトリ>そりゃそうよ。ワタシをだれだと思っているの?そこらの人間じゃないのよ?
アキラ>そりゃわかってるよ・・・
サトリ>本当にわかってる?・・・ワタシの能力にも?
アキラ>!? 覚醒したのか!? まさか!?
サトリ>カクセイ?なあに?それ?
アキラ>い、いや・・・なんでもない・・
サトリ>へんなの~~
アキラ>俺は、サトリが自分の能力を受け入れていることに驚きを隠せなかった。しかし、能力に覚醒はしていない。そのことに胸をなでおろした。サトリは妖怪の一種で、人の考えを読むことができる。その一方で、全能力に覚醒してしまった場合は、人の思いが怒濤のように流れ込むため、多くの場合、半狂乱となって精神的崩壊を引き起こし、ついには自滅する。妖怪サトリが妖怪であるにもかかわらず、寿命が短いとされるのはそのためでもあった。
アキラ>おい!サトリ!
サトリ>なによ?
アキラ>その格好、絶対に人前でやるなよ?あと、俺の前でも、みだりにやりつづけたら・・・
サトリ>ん?
アキラ>・・・・・・押し倒しちまうぞっ!
サトリ>・・・・いいよ。ゆるす。
アキラ>なっ・・・・!
サトリ>あたしに危険が訪れたら、そうやって守ってくれて、OKだからねっ!
アキラ>お・・おう・・・・
サトリ>外の雨はまもなく上がろうとしていた。
★★★四十九条賭場物語エピソード2 鉄の章後編★★★
アキラ>時は流れる。木々が芽吹いた季節はどこへやら。すっかり周囲は緑に萌え繁った葉っぱに覆われてしまった。ボクは緑のガーデンにいるのかも知れなかった。
明日香>夏へとまっしぐら。セミのなく声がひび少しずつうるさく感じられるようになってくる、これはそんな時節の話だ。
アキラ>かつてない 緊張を味わった賭場からはやひと月。ボクはまた町中で配達人に精を出す。そういう生活に戻っていた。
明日香>そんな悠々自適な生活をしている彼の前に、私は立った。
アキラ>そんなボクの眼前に、近くの神社の巫女さんが現れた。
アキラ>明日香さん・・・!
明日香>アキラ!・・・ひさしぶり。元気してた?
アキラN>その瞬間、ボクの、いや僕たちの止まっていた時間は再び動き出すのだった。
明日香>四十九条賭場物語2 鉄の章後編
アキラ>ま、まあ・・・元気でしたけど・・・・
明日香>・・・・
アキラ>偶然っすね。こんなところで出会うなんて・・・あれから、どうしてたですか?
明日香>・・・別に・・
アキラ>べつに・・・って、またまたあ。
表では人々のために働く巫女さん。
裏ではプロの賽振りの黒巫女さん。
めっちゃ安定した収入でウハウハなんじゃないです?
明日香>・・・だから・・・べつに・・・
アキラ>・・・えっ?
明日香>その・・さ・・・そんなに甘い話じゃなかったみたいなんだ・・・この世界
アキラ>ど、どういうことですか?
明日香>・・・やっぱやめとこう・・今の君には必要の無いことだ。
アキラ>そ、そんな・・いいかけておいて、卑怯だな。そうやってのけ者って良くないと思うな・・
明日香>うっさいなああ!!
明日香>いいわよ 知りたいんなら教えてあげる。そのかわり、長いわよ。わたし、終わるまで帰らないから。
アキラ>あ、明日香さん・・・
明日香>そうだ。仕事の途中だったのよね。先にやってきて。私のことは気にしないで。決して迷惑はかけない。
アキラ>じゃ、じゃあ・・
明日香N>5時間後。
アキラ>おまたせ!仕事、今終わったよ!
明日香>お疲れ~。アキラ。酒~
アキラ>明日香さん! どうしたんですか・・・・
明日香>いいから。お酒。お酌して~~~
アキラ>しょうがないなあ・・・ハイ。どうぞ。
明日香>ありがと。 かーーーっ!うめぇ!!
アキラ>なんか、今日の明日香さん、おかしいですよ?
明日香>おかしい?そう? おかしい? ハハ! さあ!笑って わらって!
アキラ>相当・・・おかしいですよ?
明日香>・・・こうなるのだって、別におかしくないわよ。
アキラ>え?
明日香>あのさ、このあいだ監視役やってた、イケメン2人、覚えてる?
アキラ>ああ!たしか、政さんと辰さん。
明日香>そそ。イケメン2人ね。
実はさ、あの2人ね・・・死んじゃったんだ・・・・
アキラ>!!なんですって!いつ!?
明日香>三日くらい前。しかも、突然、パタ・・・っと。
アキラ>どっか・・・わるかったんすか?
明日香>ぜんぜん・・・どこも悪くなかったよ・・・ぜんぜんね・・・
アキラ>そうっすよね・・・あのときも元気そうでしたものね・・・
明日香>うん・・・・
アキラ> で、供養とかはおわったんすか?
明日香>・・・おわってないよ・・・
アキラ>いいんですか?しないと!・・
明日香>うん・・・やりたかったけど・・できない・・・
アキラ>な、なんですって・・・どういうことなんですか?
明日香>わたしも、2人の死後すぐにお骨を焼いて供養して・・・それで終わりになるとかんがえていたんだ。
だけど、それで終わりにはできなくなったんだ・・・・
アキラ>なぜ?
明日香>あとにね・・なんにも残らなかったからなんだ。なんにも。
アキラ>は?はあああ???
明日香>遺骨が残らないのは。あの二人、シャブやってたからだろうっていわれた・・・
アキラ>そんな・・・!実際のところは、どうなんですか?
明日香>・・・わからない・・・プライベートまで関与してたわけじゃなかったから。
アキラ>そ、そうですよね・・・
明日香>でも、自分達から足を踏み入れるようなバカでもないと思う・・・
アキラ>ま、そうでしょうけどね・・・
明日香>それと、もうひとつ・・今のままやっても、意味がないから
アキラ>意味が、ない?
明日香>うん・・・
明日香>政と辰とはね・・殺されたんじゃないかっておもう。
アキラ>・・・!
明日香>このあいだ、配置をかえたでしょ?上からはそのせいで負けるように仕組んだんじゃないかって、疑われたそうなんだ
アキラ>・・・!
明日香>この世界、失敗しちゃったら即、死だってきいた。だから、あのひとたちが・・・
アキラ>明日香・・・考えすぎだ・・・
明日香>そうかもしれない。だけど、考えずには・・・いられない・・最近ね・・あの2人の死に鉄蔵の指示があることがわかったの
アキラ>鉄蔵の・・指示?
明日香>ことあることに神社の敷地っていう鉄蔵をいさめるために、2人はたてついたこともあったというわ。
アキラ>そいつを疎ましく思っての犯行というわけか・・・
アキラ>ちょっとまて。やっこさんは、どうしてそんな執拗に神社を狙うんだ?
明日香>それは鉄蔵が陣場組を仕切りたいからよ。
アキラ>ええ!?
明日香>今年、鉄蔵は若年寄に昇進した。それで、今度は若頭を狙っているってわけ。
アキラ>なるほど。若頭か。その上が副組長、組長だもんね。上をねらうために示しをつけるために、因縁のある三重(みつえ)神社の問題はうってつけってわけか。
アキラ>ところで、その鉄蔵ってのは何者なんだ?
明日香は相当嫌ってるみたいだが?
明日香>鉄蔵は悪いやつよ。 ちまたでは ドス作り鉄として有名でね・・・。くる日もくる日もドスばっかつくって喧嘩ばっかりしてたの。あの荒い性格もあって、いまでは組きっての暴れん坊よ
アキラ>・・・!
明日香>今年だけでも、あいつ、何件の喧嘩を起こして、どれだけのヒトを傷つけたことか
明日香>・・・神社の夜の賭場で・・もちきりなのよ・・あいつの悪評・・・
アキラ>それほど・・ひどかったのか。
明日香>ええ。だから私は今回のことは鉄蔵のせいじゃないかと思う。
アキラ>・・・!
明日香>実際、今度の事件を境に、あいつは名を馳せるようになった。
アキラ>・・・
明日香>自分に従うもの、言うことを聞くものを中心に、それ以外は始末するか、追放していった・・
アキラ>何だって・・・
明日香>組のなかでもう、文句を言うものは誰もいない。長老連中を説き伏せるために、神社をおとせば、あとは好き勝手できる・・・
アキラ>なんだって!!
明日香>今宵、あなたに声をかけたのは、鉄蔵に打ち勝つため・・・
アキラ>・・・・!
明日香>怖い・・・
アキラ>!?
明日香>おねがい・・だからもう一度・・一緒に来てほしい。
アキラ>・・!
明日香>・・・おねがい・・
アキラ>わ、わかりましたよお・・考えてみれば、僕たちは血の契約で結ばれた2人でしょ?
明日香>・・・・ありがとう
アキラ>彼女、明日香は席を立つ。それはYESという返答の代名詞だった。
アキラN>そのときだった
明日香>アキラ!あっぶない!
<ガラス割れるおと>
アキラ>!!
明日香>鉄蔵の手の者か?
明日香>そうか。では、頭に伝えるがいい。私は、逃げも隠れもしない、とな・・・
<遠ざかっていく足音>
明日香>行ったか・・・大丈夫だったか
アキラ>ああ。ボクは・・大丈夫だ・・・大丈夫だけど・・・
明日香>・・・・?
アキラ>もう・・後戻りは・・できないね・・・
明日香>・・・すまん・・・
アキラN>瞬間、再び、生活は一変することを暗示していた。少しくらい失敗しても文句はいわれないし、ひとつ一つの挙動に生活を賭けなくてもよい・・・そんな快適な生活から離れてしまうと言うことでもあった。
★★★
明日香>私はアキラを連れて、神社の離れにはいる。そして、肌脱ぎ姿になると、その半身にちからを込めた
明日香>はああああ!!
アキラ>う・・ぐう・・・あつい・・両腕が・・・あつい・・・
(エコー)
明日香>・・アキラ?大丈夫?聞こえる?
アキラ>・・ああ、聞こえる・・きこえるよ・・・
明日香>良かった。あの・・アキラ・・?
アキラ>えっ?
明日香>抱いて・・・
アキラ>ええっ・・・こう?
明日香>そう・・もっときつく・・ぎゅーっと・・
アキラ>こう?
明日香>・・・うん・・・
すっかり夜のとばりが落ちた神社の一室にて
僕たちはお互いにお互いを確かめ合う。
やがて、朝日が顔をのぞかせる窓のそば・・・
明日香は汗みどろの体で・・ボクの腕のなかに堕ち、静かに眠りについていた。
乱れた髪の毛が、その凄まじさを物語る・・・
そして、あとにのこるは、右肩にひかる、華の紋章。朝日の中で、それは凛々しく光り輝いていた。
アキラN>そして、・・・僕たちは作戦を開始した。
明日香>アキラ・・・ではここで、手はずを説明しておこう
まず、組のほうで行われる記念行事での花会。ここに2人で参加して、ありとあらゆる手を使って、陣場組を負かせる。ひとつは私たちがグルになっていること。あとは、私の、コレ。刺青。女だてらにこんなことする奴は過去にいなかったから、印象にのこること間違いなしだ。
アキラ>なるほど。さすがだな。すべてがいい方にうごいてくれればいいのだが・・・問題の華会は1週間後か。その間、練習とかしなきゃな
明日香>うん。
明日香>そして1週間後。華会当日。これで、すべてが決まる。
私たちは連戦連勝。陣場組からは巨額の勝ち金をせしめていた。
このまま バレずにいけば 計算どおりだった。
アキラ>だが、運命は狂い始めた。それは終わりごろの話だ。
鉄蔵>そや!せっかくの華会、ワイに粋なアイデアがある!
アキラ>!
明日香>!?
鉄蔵>ひとりはおなごで、覚悟の入れ墨をほった者。ひとりはカタギあがりでこの世界に惚れた者。なんともおもしろい顔ぶれや。これも一興というもんや。ここは一風変わった決め方してもバチはあたらへん。そやな・・・そうや、サシできめまひょ。3本連取が勝利条件。決着がつくまでやりましょ!!賽ふり同士の、覚悟、ワイにみせてもらおうか!?
アキラ>その場は異議を唱えるものはいなかった。いったん、休憩をはさんでから、またはじまることになった。
明日香>休憩時間・・私はアキラに思いを送る。
(エコー↓)
明日香>アキラ・・・きいてる?
アキラ>・・・・・
明日香>どうするの?これ?
アキラ>・・・・・
明日香>手加減、絶対できないからね。
アキラ>・・・・・
明日香>ばれちゃったら、二人ともあの世行きだから。
アキラ>・・・・・
明日香>断っとくね。それじゃ!
アキラN>ボクは、なにも答えなかった。
やがて、休憩がおわり、戦いがいま、始まろうとしていた
ミサキN>勝負第1場賽ふり私明日香。
明日香>はじめは私の番ね。はいります・・・しょうぶ!
アキラ>は・・はやい・・・
明日香>さあ、どうぞ・・・?
アキラ>・・・。
明日香>しょせん カタギはカタギ。こんなとここないでおとなしくやっていればよかったのに・・・ね?
アキラ>うるさい・・半だ!!
明日香>ふっ・・・バカ・・
アキラ>4ー5の丁・・・し、しまった!!
アキラ>ボクは、全身から汗が吹き出るのがわかった。
アキラN>勝負第2場賽ふりボク
アキラ>では、はいります・・・しょうぶ!
明日香>・・・ふっ
アキラ>なにが可笑しい?
明日香>相変わらず・・素敵な賽ふりだと思ったから、笑みがこぼれたの
アキラ>なっ・・・
明日香>だけど・それは素人相手のはなし!私には通じないわよ!半・・・
アキラ>2ー5の半・・・くううう・・・
明日香>勝負第3場賽ふりわたし。
明日香>それじゃ、はじめるわよ?それとも、降参する?
アキラ>・・・フン!
明日香>後悔してもおそいわよ・・・はいります!・・・
アキラ>・・・・
明日香>・・・さあ、どうぞ。
アキラ>まった!
明日香>!?
アキラ>まった、だ!
明日香>な、なにいって・・・
アキラ>その賽をしらべてくれ!!至急だ!
明日香>な、なにやってんの!!ただじゃすまないわよ!!
アキラ>うるさい!とにかく、改めてくれ!!
明日香>あっ!
アキラ>・・・! ほらみろ!なんだこの賽は!3が3つも!偶数は2の目一つじゃないか!!
明日香>ううう・・・あんた!裏切るのね!?
アキラ>なんのことだ!
明日香>ひどい・・・わたしは、あなたを信じてすべてをさらけ出したのに・・あんたはそんな私をみても、まだ裏切るのね・・・
アキラ>親分、鉄蔵さま・・すみません。この女のいうこと、真に受けちゃいけませんぜ
明日香>アキラ!
アキラ>生来、女という生き物は化けるもの。いわば、女狐(めぎつね)とよばれる妖(あやかし)なんです。色気を武器に、涙を武器にして、男を手玉に取って生きようとするものなんです。
明日香>女狐(めぎつね)だとっ!!かなしみの涙を武器にだと!!ひどい!あんまりだ!!この横着者め(おうちゃくもの)偽善者がっ!
アキラ>それがし、かたぎの者ではございまして、あまり怒りを露にすることはしない性分なのではございますが、
こう・・偽善者といわれたからには・・オトシマエはそれがしに取らせていただきたく存じますが。
明日香>うううっ・・・!
アキラ>オトシマエの件、了承いただきまして、至極恐縮。それでは、失礼します。
明日香>く、くっそう!!くっそう!!アキラ!!のろってやる!のろってやる!死んでも呪い続けてやる!
アキラ>見苦しいぞ。ミサキ。それに、助けを請うのは人間だけができること。貴様みたいな女狐がやってよいことではないのだぞ。
明日香>うううう・・・あんたを信じた、アタイがバカだった!雅!辰!いま、あたしも逝くからね!
アキラ>泣け!わめけ!ほら、親分の目の前につれてきてやったぞ!
明日香>ああっ・・・
アキラ>ミサキ!今生のわかれを親分にするんだ!そのあと、その首を親分に献上となるがな・・
明日香>!!
アキラ>ひとつだけ、おしえてやろう。貴様の方に掘られた、桜色の桔梗。それが指す花言葉のことだ・・・
明日香>なっ・・
アキラ>花言葉は・・・薄い幸せだ・・・
明日香>・・・!
アキラ>入れ墨は、真実を語ったな・・覚悟!
明日香>くっ・・・・もう・・ダメだ・・・
アキラ>名刀、備前長船よ・・・この女狐を浄土の旅へ・・誘え・・はあっ!
鉄蔵>ぐ・ぐああああああっ!!
アキラ>隙あり! ミサキ!
明日香>てぇいっ!
アキラ>大丈夫か?ミサキ!
明日香>うん!ばっちり打ち合わせのとおりだもん!言葉、ちょっとチクッときたけどね・・
アキラ>すまない・・皆のものよく聞け!貴様たちの悪行、すべて、この、鉄蔵が仕組んだもの!
明日香>こいつは、我が友、雅・ならびに辰を暗殺した張本人!
アキラ>この咎(とが)否めるものはかかってくるがいい!
明日香>われらもこの刃に乗じて、加減はせぬ!さあ、こい!!
↓殺陣しながらのセリフ。
アキラ>くうっ・・くうっつ・・ああはいってみたけど、かかってるもんだな・・
明日香>そうね・・・でも、こっちも負けない!
アキラ>でも、このまんまじゃラチがあかない!どうする?どうやってきりぬける?
明日香>もうすこし、数を減らしてから、出口へむかう!ついてきて!
アキラ>わかった!!そこは、まかせる!相方!
明日香>うふ♪アキラってば・・・つづきは抜けてから!
いくわよ!3、
アキラ>ああ!、2
明日香>1、突撃!!!
アキラ>そして、ボクたちは、バラックから脱出して、地下道へと逃れた。その地下道の先には・・森があった。
明日香>私たちは、森の、開けたところで、一息ついた。
アキラも私も、汗と返り血でびっしょりになっていた。
アキラ>はあ・・・はあ・・はあ・・・ミサキ・・追手は?
明日香>こない・・どうやら、引き返したみたいだ・・
アキラ>そうか・・・よかった・・・
明日香>アキラ・・怪我は?
アキラ>大丈夫だ・・誰も命をねらってこなかった・・奇跡だ!
明日香>もともと鉄蔵の組は、仲たがいしてできたような組。鉄蔵を殺そうという話は前々からできてくらいだから・・・
アキラ>向こうにとっても都合がよかったということか・・・よかった
アキラ>なあ、ミサキ・・
明日香>・・・・ん?
アキラ>これから、俺たち、どうしようか?
明日香>そうね・・・旅に出ようと思うの
アキラ>旅に・・?
明日香>そして、いろんな人に出会うんだ。いろんな人にこの賽子遊戯(さいころゆうぎ)を楽しんでもらうんだ。
それで、いろんな人の笑顔をみていたいな。
アキラ>そっか・・・素敵だ。
明日香>もちろん、ついてきてくれるんだよね?
アキラ>えっ・・・
明日香>そこまで含めての血の契約なんだからね
アキラ>ああ!わかったよ!!その約束、引き受けた!
明日香>ふふふん♪引き受けられた。
アキラ>いつしか太陽は水平線の近くに沈もうとしていた。
明日香>オレンジの光のなかで、わたしたちは将来をちかう。
アキラ>お互いの吐息を感じ、お互いの体温を確かめられたこのひととき・・・
明日香>遠い空に、2人の幸せへの誓いとして、ふたり、唇をそっとあわせる。
アキラ>肌と肌がお互いのぬくもりを感じられたこの日から・・
明日香>わたしたちの新しい話はまた、幕をあける・・・
それは、また、今度のお話だ
エピソード2 おわり
★★★四十九条賭場物語2 鉄の章前編★★★
<登場人物>
明日香>三重(みつえ)神社の当主。昼は巫女夜は黒巫女の格好で賭場で「賽振り」をして生計をたてている。巫女というだけあり式神を使うこともできるが、神社の敷地問題で地元のやくざと抗争状態にある
アキラ>24条の入り口で「配達屋」を営む。アマチュア「賽振り」の腕も疲労することができる。もちろん、当人はカタギの人間である。緋色のさらしコス。
ツキ>明日香の持つ式神のうちの一体。亜麻色の毛と毛並みが綺麗なショタ狐。化けることが得技。
コーエン>明日香の持つ式神のうちの一体。限りなく人間に近い狼男。火を使った攻撃をすることができる。鎮魂の力もあり、夜中、月に向かっての遠吠えは、さまよう霊達を鎮めている。
ヒスイ>明日香の持つ式神のうちの一体だったが、先の襲撃で損傷し、修復中。
ハヤト>明日香の持つ使い魔。おもに偵察の任に就く。野生のカラスに混じって生活するため、バレつことはない。
アキラN>話は元禄の世。戦乱無く太平なりし頃の話。表の世では町人文化華やいだ世の中となっていたが、その背景裏側では、止められぬ闇がひそんでいた。
明日香N>ここは東西7区画、南北7区画に、碁盤目状に開発された、町人の都 通称「四十九条(しじゅうくじょう)」。
アキラ>この話はそんな都市で起きたことの事件簿。その渦中を駆け抜けたいわば青春群像劇。
明日香>コス劇企画オリジナルボイスドラマ「四十九条賭場物語2 鉄の章」
アキラ>サアサアサアサア、みなさん寄ってらっしゃい見てらっしゃい!
お待ちかね!丁半勝負の時間だよっ!取り決めは簡単。
種も仕掛けもないこのサイコロ。こうやって入れ物の中でカチャカチャして出てきた目をあてるというものだよ~
サアサアサアサア賭けた賭けた!丁か半か、さあ、さ、はったはった!!
明日香>・・・・
アキラ>サアサアサアサア・・丁がでました半もでました。その割合は丁がちょっと多いか?
さてみなさん!いかがでしょう?いかがでしょう?
明日香>・・・
アキラ>・・さあ。出そろいました~出そろいました~いかさま、八百長、口八丁に手八丁、その類の仕事はやっちゃいませんやりません。ささ、はったはった~~~~
アキラ>(でたことを確認してから)さてまいります!よござんすねっ!
しょうぶ!!
アキラ>7!でございましたっ!!
アキラ>さてさて、お客人方・・宴(えん)ならぬ賭場(とば)たけなわではございますが・・・ここいらでおひらきといたします。今宵のごひいき、まいどありがとうございました・・・
明日香>ちょいと・・・
アキラ>!?ん? お巫女さん?
明日香>・・・あそばせてもらいます
アキラ>おいおい、お巫女さん。だめだよお。もう花会はおひらきなんだから。
またこんどきなよ?な?
明日香>そんなこと言ってにげるのか?
アキラ>!?
明日香>わらわは そんなに 長居するとはいうておらん。ただ、あそばせてほしいというただけ。
アキラ>・・・
明日香>それとも、おぬし、ちょいと腰抜けになったのではあるまいな?
アキラ>そ、そんなわけ・・ないだろ!
明日香>ほう・・じゃあ、向き合え。わらわの目の前で。
アキラ>あああっ!明日香さん!
明日香>ひさしぶりじゃな。アキラ。
アキラ>おひさしぶり・・です。あの・・明日香さん。そんな格好で来てもよかったのか?巫女って神様にお仕えする身の上だろ?
明日香>ああ。別に気にするでない。日本の古来から、賭け事の嫌いな神様はおらんのでな
アキラ>ああ。なるほど・・・理解した。それでもな・・でも・・ただ・・
明日香>ただ・・なんじゃ?
アキラ>ここの場所の期限時刻が近づいている。
どうしてもやりたいなら、別室にでも、行かないと
明日香>なるほど・・
アキラ>近くの旅館に、部屋を借りた。どうだ?
明日香>なるほど。文句はないな
アキラ>ところで、いったいどうしちゃったって言うんだ?突然。
明日香>・・アキラ・・聞いてくれるか?
アキラ>まったく。血の契約だってあるのに、わざわざ出向いてのおねがいってどういうことなんだ?
明日香>すまん。アキラ。折り入って聞いてほしいことがある
明日香>実は・・だな・・
アキラ>ハイ・・・
明日香>神社が、襲撃された。
アキラ>え!?えええええ?それは本当のことか?
明日香>ああ。世話になったことのある君には、正直、話そうかどうか迷うところではあるのだが・・この際だ。
アキラ>襲撃されたって・・・誰に?
明日香>それが・・・陣場組なんだ・・・
アキラ>また、ですか?
明日香>ああ。また、なんだ・・・
アキラ>なんでなんですか?
明日香>おそらく、それだけ境内の土地がほしいのだろう
アキラ>う~ん。もう、こうなったら、少しだけでも売ってあげたらどうです?
明日香>ならぬ。
アキラ>それはなぜ?
明日香>そういう掟だからじゃ・・・あいつらに売ると・・ロクなことがおこらん・・・
アキラ>考えすぎなんじゃないか?・・・!?ど、どうしたんですか!?その傷だらけの手首は!?
明日香>すまない・・こう追い詰められると、自分を傷つけてしまうのじゃ・・
アキラ>明日香さん・・・
明日香>それで・・・本題なんだが・・・・
もういちど、神社に戻ってきてほしい
アキラ>えっ・・・
明日香>やつら、こんどは乗り込んできたというわけじゃ。ここはひとつ、追い払わなくてはな・・
明日香>・・・なんなら、勝負をするか?
アキラ>えっ?
明日香>・・もちろん、ただとはいわん。
わらわは・・これを賭けよう。
この身・・一夜。(いちや)
アキラ>!!大きくですぎだ!! この身一夜(いちや)なんて、非常識だろ!!
明日香>なんじゃ?臆病風にでもふかれたか?
アキラ>・・・わかったよ・・おれは・・・おれは、負けたら、君の言うことをひとつ、かなえるよう、努力してやろう。これで、どうだ?
明日香>そうか。それでいい。
アキラ>では・・・はじめるぞ・・・
明日香>ああ・
アキラ>よござんすね・・・・勝負!
明日香>丁!!
アキラ>はやい・・・?
明日香>丁だ。はようあげんか
アキラ>なっ・・・!あああ!!
明日香>どうした?結果はどうじゃ・・・
アキラ>ち・・・ちょう・・・・
明日香>ふっつ・・・わらわの勝ちじゃな・・・
アキラ>く・・くそ・・・望みはなんだ・・・・
明日香>手を・・・
アキラ>え?
明日香>手をさしだしてくれ・・
アキラ>手‥を?うああああああ!!
明日香>悪い。ひとつはひとつだ・・・・
アキラ>どれだけねむったのだろう。ボクはぼうっとしたあたまで周囲をみる。ここが何かの会場なのはわかった。
ツキ>お、やっと目覚めたか
アキラ>こ、ここは・・・?
ツキ>お?ここは?じゃないぞ。このねぼすけめ
アキラ>ツキ!ツキじゃないか!
ツキ>ああ。ひさしぶりだな。アキラ
コーエン>よう、やっと起きたのか。心配したぜ。薬、強すぎたんじゃないかって思ってたところだったんだからな
アキラ>コーエン!!
コーエン>再会の宴はまたあとからだ。とにかく、ここは、主様のために・・・
アキラ>ああ。わかった。それより・・・
コーエン>わかってる。状況を説明しよう。ただ、準備をしながら、で、頼む。
明日香>そのころ、私は華会の準備で手一杯だった。
アキラ>明日香!おまたせ
明日香>アキラ!すまぬな
アキラ>大丈夫だ。ことの次第はあいつらから聞いた。
明日香>あいつら?そうか・・ありがとう
アキラ>で?なになに・・・第37回記念特別花会 開催会場・・・? こりゃまた、でっかい企画モノだな・・・
明日香>そのとおりだ。それでな。あと1時間で賭場が開く。準備をしてくれ。
アキラ>ああ。わかってるよ。それで、こっちはどんな布陣で行くんだ?
明日香>盆のとなりにわらわとおぬし。そのとなりには政と辰だ。
アキラ>政と辰?誰だ?そりゃ
明日香>なんでも、今日の日に応募してきた胴師みならいなんだってさ。
アキラ>う~ん うさんくせえな・・・
俺だったら・・だな
明日香>どうするんだ?
アキラ>まず、ツキとコウエンをひとの姿にして、一緒にならんでもらう。
明日香>な、なんだと!?あいつらはヒトじゃない!そんな賭博のことなんか、理解できないぞ!?
コーエン>そいつはどうかな?
ツキ>丁・半 いかさまはご法度。その辺はわかってるよ。簡単じゃないか。
明日香>こら!アキラ!!余計なこと教えてはダメではないか!
アキラ>俺はなにもおしえてないよ。なぁ?
コーエン>そうだ誤解だ誤解。主様
ツキ>そうだよ。誤解だよ。俺たちは勝手におぼえちゃったのさ
明日香>なっ・・・
コーエン>あれから、おれたちは交代した直後とかにちょくちょく遊んでいたんだ。
ツキ>そうだよっ!
コーエン>こいつ・・すぐイカサマなんかしやがって・・・まったく
ツキ>いいじゃねえか!勝ってナンボのもんなんだよ!こういう博打ってのは!
コーエン>こんなんだから、ちょっとカッとなって、何回か耳をかじったこともありましてね・・・
ツキ>そうだぞ!あれは痛かったぞ!損害賠償モノなんだからな!?
アキラ>なんか・・あいつらのほうが乗り気だぞ?いっとくが、俺はなにもしてねえからな?
明日香>みたいじゃな。よい。それでは、彼らをとなりに座らせよう。
アキラ>でも、こいつらの衣装はどうするよ?まさかスッポンポンってわけにもいかんだろう。
ツキ>その辺は大丈夫!おいら、持ってきたもんね
明日香>ツキ!おぬし!
ツキ>大丈夫!おいらは主様とサイズぴったりだもんね!だから もってきちゃったんだ 巫女服
コーエン>おいらは幸い人間に近い。故にサラシステテコ姿であればバレないと思う。
アキラ>てなわけだ。いかがかな?
明日香>いいじゃろう。配置についてはわらわが申し入れておく。そなたたちは準備を怠らんようにな。たのむぞ。
明日香>そうじゃ。忘れるところじゃった
ふんっ!
アキラ>うわっ・・・腕に刻印が浮かび上がった!
(↓エコー)
明日香>聞こえる?アキラ
アキラ>ああ。きれいに聞こえるよ。
明日香>よかった。じゃ。
アキラ>ああ。
(↑エコー)
アキラ>開場15分になって、ツキが話しかけてきた。
ツキ>あれ?どうしたんですか?アキラさん、ふるえているんですね
アキラ>あたりまえだろ・・・お前らとは・・違うんだよ・・
ツキ>しっかりしてくださいよね・・・主様に信頼されてくれないと、ホント困りますから。
アキラ>わかってるよっ!あ、そうだ!ツキ!
ツキ>なんだよお
アキラ>それ・・・その服・・・よく似合ってる。
ツキ>な・・なにを突然!
アキラ>あと、耳、ちょっとごまかしきれてない。
ツキ>な、なんですと~
コーエン>ふふふ・・・はははは・・・
明日香>コーエン!
コーエン>いや、とても・・・ほほえましいと思ったものでな
明日香>そう?
<↓この話の前日談でヒスイが死ぬ話がある。ヒスイが犠牲になって、いまがあるのだが、コーエンはそのときの自分達の力のなさを悔いている。ちなみに前日談の話ではアキラは呼び出されていない>
コーエン>あのときも・・・ああしていればよかったのかもしれません
明日香>ああ、していれば?
コーエン>ハイ。アキラを呼んでいれば少々変わることはあったのかと・・・
明日香>よせ、コーエン。
コーエン>すみません。主様。しかし、自分はあやつが必需かと
明日香>それは、この難局がすんでからだ
コーエン>ああ・・そうだな・・・
明日香>みんな準備はいいか?まだなら早く準備しな。さもないと殺されるよ。
アキラ>ふう・・・フゥ・・・
明日香>アキラ・・・うろたえるんじゃないよ~。何度か修羅場は経験してるんだろ?
アキラ>してないよぉ明日香。ボクなんて、そんじょそこらに転がっている一般人じゃないか!
明日香>たしかにな・・・だけどな、君は立派な賭場はひらいていたじゃないか
アキラ>!
ツキ>この規模で行われる華会だ。大規模なものだ。おまけに、ここに来る奴はみんな血気盛んなやつらばっかだ。
コーエン>なにかコトが起これば、責任を取らされてこの世とオサラバ。そんな状況で賽打ち押し付けられたら、キミならどうする?
アキラ>・・・・・! たぶん・・緊張のあまり・・なにも手につかないと思う。
明日香>そうだろ?私もいっしょだ。緊張のあまり、フラフラとしていた。そしたらキミが見事な賭場をひらいてた。
アキラ>・・・!
明日香>それをみていた私は、喉から手が出るくらいに君が欲しくなった。
アキラ>・・・・!
明日香>・・・その喉から手が出てしまったということさ。まあ、諦めてくれ。
アキラ>・・・・ああ、わかった
明日香>さすがだな。物分かりが早くてたすかる。
アキラN>僕たちは道具の確認や差し入れの手配などに手を焼いた。そうこうしているうちにあっという間に時間は過ぎ、開場を迎える。
明日香>ささ、みなさま、今一度静粛におねがいします。開場までいましばらくおまちくださいませ
アキラN>言うが早いか、政と辰はお互いに目配せを送る。
アキラ>!?
明日香>どうした?アキラ
アキラ>あ、いや・・・なんでも・・ない
アキラ>まさか、いかさま?しかし、こんな冒頭から!?
アキラ>盆はボクが進行を担当し、あとの二人は俺たちの隣に座って、ひたすら不正がないかを見張る。明日香はそのまま壺振りを担えばいいようにした
アキラ>丁半のばあい、イカサマをするのは賭け手のほうだ。ゆえに、目の前にいるのはみんな野獣だと思ったほうがいい。やつらがヘンなことをしないよう、いざこざが起きないよう、管理するのだ。
明日香>いよいよか・・・!
アキラ>いいか。忘れるなよ。秩序と公正だけが今の僕たちの味方だ・・・・
明日香>アキラ・・・
ツキ>さあ、時間だ。
コーエン>はじまりだ・・・場がひらく・・・・
明日香>そして、私は、声を発した。
明日香>みなさま今日はよろしくいらっしゃいました。この席に座す、わたくしめは、名を。明日香ともうします。
身にまといしは 黒き巫女服。
闇の賭場に咲き乱れまする花のように絢爛たる(けんらんたる)振る舞いを御披露いたします・・・
なにとぞよろしくおねがいします。
アキラ>さすがは、サヤカさん・・・すげえな・・貫禄がちがう・・・
明日香>でははじめます・・・・・よござんすね・・・・方々、いざ尋常に!・・しょうぶ!!
アキラN>サアサア どちらさまも はったはった! 上方さまも 下方さまも、かけ忘れはご法度ですよ~
さあはった!さあはった! 丁が15、半が11.半はおらんか 半はいませんか・あ、半に賭けますか。半ですね、半ですね。
はい、そろいました!! 賭け、成立しました!!
明日香>では、アガります。・(ふんっ!・・・・)・・・丁!!ニロクの丁!!
アキラ>途端に眼前の盆台(ぼんだい)で金子(きんす)が駆け巡る。右へと左へと左へと右へと・・・
明日香>場が進むたび、賭けに出される金子の量が少しずつ増えてくる。あわせて、場の空気も上気してくる・・・
アキラ>こういう時に物言いがつくと、場は一気に崩壊する・・・それは、カタギの催し物のときも変わらない。だから、ボクは常にそれを恐れていた。
明日香>アキラ・・・そこのつづら・・・
アキラ>えっ?・・ああ!
アキラ>そこには氷嚢で冷やされた、食べ物が用意されていた。ボクは一区切りついたところで
声を上げる。
アキラ>さて、さて、さて~ここでちょいと一服いれましょう!
手前どものこしらえました「鉄火巻き」でございます。どうぞ、めしあがれ。
さ、さ、コーエンにツキ。手伝ってくれ。お客様へのおもてなしだぞ?
コーエン>あ、ああ
ツキ>がってんだ!
アキラ>明日香・・・どうだ?
明日香>賭けのレートが急に上がり始めたから一息いれたんだ。場の雰囲気が狂気に変わらないように、手を打ったんだ・・・
アキラ>なるほど。ボクは相づちをうつ。
しかし、ボクの心配は尽きなかった
アキラ>暑い・・ボクの緋色のさらしは腹のほうまで汗でびっしょりになっていた。
思わずサヤカをみやる。 サヤカは額に汗を浮かべながら凛とした顔つきで場の動向を統べていた。一重の瞼が時折引きつけを見せる。緊張が最高潮に達している証拠だった。
明日香>ふぅ・・・暑い・・・・
アキラ>その声に、ふとその背中をみやる。サヤカは胸から上をすでに脱ぎ去っていたが、さらけ出した肌は汗でびっしょりに濡れていた。
アキラ>明日香。ちょっといいか?
明日香>!?
アキラ>汗びっしょりだぞ。拭き上げてやろう
明日香>あぁ・・ありがとう。続けてくれ。頼む。
アキラ>明日香・・・
明日香>すまない。ヒトに後ろを見せるのは嫌いなのでな・・
アキラ>・・・・・・・・じゃ、はじめるね・・・
明日香>ああ・・・思えば・・・
アキラ>ん?
明日香>背後を預けるのはお前ががはじめてだなと思ってな。
アキラ>・・・・!
明日香>よろしく頼む。あと、鉄火巻き・・・
アキラ>・・!
明日香>キミのぶんまで準備がなくって申し訳ない。
アキラ>あ、いや・・・そこは気にしなくっていいよ・・・
アキラ>・・休会のあいだも、明日香の肌からは汗がとめどなく噴き上げてきていた。
コーエン>あのさ・・・ツキ・・・?
ツキ>なんだ?コーエン
コーエン>・・・やっぱり、気になる
ツキ>そう・・?
コーエン>ああ。政と辰。会場のなかでの警備をお願いしたのに、なかには一歩すら中に入ろうとしない
ツキ>うん
コーエン>そればかりか、目配せばかりがおおい。
やつは明らかに別のなにかに集中しているぞ
ツキ>うん・・・目の動き・・2回、1回、2回
間違いない。何らかのメッセージだ・・・
(↓エコー)
明日香>(エコー)どうした?アキラ
アキラ>(エコー)あ、いや・・・・雅さんと辰さん・・・両名の動きがおかしいみたいだからさ・・。
明日香>おかしい?どういうことじゃ?
アキラ>先ほどから なにやら 観衆に目配せを送っている。
明日香>なんですって!
アキラ>本来、賭け手との不正をみつける役目だから、観衆に目配せを送るのは場違いだ。用心を。もしかしたら、勝負のときの数字を教えているのかもしれない。
明日香>了解した。だけどな、アキラ・・・
アキラ>!?
明日香>残念だが、それにあまり意味はない
アキラ>どういうことだ?どうしてだ?
明日香>外部から盆の中のサイコロには細工はできないし、できたとしても、すでにそれに対処することはできないからだ
アキラ>じゃあ、どうやって勝つんだよ!
明日香>その状況をふまえた状態で勝つんだ。
アキラ>なっ!
明日香>これが。賭場破りなんだったらそれでもいい。だがな、本日の私たちの役目は、まず第一に賭場の仕事をおわらせることじゃ。
アキラ>たしかに・・そう・・だな・・・
明日香>しかし、あの2人がなにをしているのかは、無視できないことだ。そこは、コーエンとツキに引き続き監視してもらうことにする。それで、いいか。
アキラ>わかった。
明日香>ありがとう・・・さあ、そろそろこっちに集中してくれ。作戦の再開だ!
アキラ>さあ~さあ~さあ~次です次です、次の場に入ります。
僕たちはまた、緊張の渦中に飛び込んでいった。
再開後、第一場 サンミチの丁
第二場 グサンの丁
第三場 サブロクの半
第四場 サニの半
そこまで来た時に、恐れていたことが起きた。
アキラ>はい、そろいました!! 賭け、成立しました!!
明日香>では、アガります。
鉄蔵>ちょ~~いと まてや!
明日香>!?
鉄蔵>とぼけんじゃないわい!このアマ!わりゃ、イカサマしかけおったな!
明日香>イカサマとはおだやかじゃないな。貴様はだれだ。まずは名をなのれ!
鉄蔵>ワイか。ワイは金属の鉄の蔵と書いて、鉄蔵っちゅうもんや。休会後の四回の賭場。なんかおかしゅうないか?
明日香>おそれながら、どういうことでしょうか。
わらわはこの場をただただ公正にとりしきっているにすぎん。
ツキ>そうだそうだ!不躾な侮辱は、この場において、断固、ゆるさぬぞ!
鉄蔵>それじゃあ、聞くが、前後の四回の結果はなんぞ!?
コーエン>どういうことだ?なにがいいたい?
鉄蔵>ええか?四回のうち四回とも一つの賽は三から動いてはおらん。これをどう説明する!
明日香>それは・・・賽の目の気まぐれではないのか?
鉄蔵>なんだと!
明日香>お天気様(おてんとうさま)でも、次の目は予測できんと嘆いた賽の目。所詮は人では測れないのではございませんのか?
声>ぐぬぬぬぬ・・・
明日香>そこまで申されるのでございますれば、賽をあらためてくださいまし!
万が一、細工が発覚いたしましられば、我らは喜んで責任をお取りいたします。
鉄蔵>おう、しかれば、すぐに!
明日香>まちなされ!ただし、もし、賽に小細工がなかったとするなれば、鉄蔵さん、オトシマエつけていただきますからね!
鉄蔵>望むところだ!さあ、賽をみてくれ!!
明日香>アキラ! さあ!
アキラ>サヤカさん・・・
明日香>かまわん!アキラ!!やりいや!!あけや!!
アキラ>(冗談・・きついぜ・・・)
明日香>アキラ!!!
アキラ>!!!・・・・・どうぞ・・・・
明日香>賽の目は・・・・・・ピンゾロの丁!!・・・
明日香>くりかえす!!賽はピンゾロの丁!!
鉄蔵>くそう・・・・くっそう・・・くっそう!!!・・・・このアマ!絵図かきやがったな!!
明日香>結果は出ましたえ。 これでよろしいでございましょう?
雅、辰。この場のオトシマエはそなたらにおまかせしましたえ。
アキラ>お客人方!今一度もうしあげます!
厳粛に行われしこの場は残念ながらあれてしまいました。今宵はこれでお開きにしたいとおもいます。本当にありがとうございました!
鉄蔵>くそう・・くそう・・・くっっっそう!!
ツキ>こうやってこの日の賭場は乗り切ることができた。
コーエン>いちゃもんをつけてきた鉄蔵がどうなったのかは、おれたちは知らない。
アキラ>そんなものに気をとらわれる暇などなく、片付けをすませ、撤収したからだった。
明日香>アキラ・・・今日はありがとう。
アキラ>いや。キミがすばらしかったからだよ。そして、つき、コーエン。君たちも、すばらしかったよ・・・
コーエン>ふっ・・テレるぜ
明日香>ありがとう。
コーエン>ふっ・・そこは あったりまえだのクラッカーってな!
アキラ>それじゃ、ボクはここいらで。
明日香>ああ。あの、また・・・・
アキラ>ん?
明日香>また、会おう。かならずじゃぞ!!
アキラ>ああ。かならず。
ツキN>話は元禄の世。戦乱無く、太平なりし頃の話。表の世では町人文化華やいだ世の中。背景裏側では、止められぬ闇がひそんでいた。
コーエン>そして、ここは東西7区画、南北7区画に、碁盤目状に開発された、町人の都 通称「四十九条(しじゅうくじょう)」。
アキラ>これはそんな都市で起きたことの事件簿。そしてそれを描いたいわば青春群像劇。
明日香>コス劇企画オリジナルボイスドラマ「四十九条賭場物語2鉄の章前編はここまで!」
明日香>ちょうどそのとき、私は背後から鋭い視線の存在を感じていた。気のせいかなと考えていたのだが、この気のゆるみがこのあと、大事件を引き起こすことになろうとは考えてもみないことだった・・・・
前編 END