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劇部屋24シアターズ

劇部屋24のオリジナル作品「月羽妖夢伝」制作近況や
劇部屋24での上演記録を残していきます!!

第二条~黎明編 四十九条賭場物語 エピソード2~
アキラ>かつてない 緊張を味わった賭場からはやひと月。
ボクはまた静かなアマチュア壷ふり生活にもどっていた。
サヤカ>そんな悠々自適な生活をしている彼の前に、私は立った。

アキラ>サヤカさん・・・!

サヤカ>アキラ!・・・ひさしぶり。元気してた?

アキラ>ま、まあ・・・元気でしたけど・・・・

サヤカ>・・・・

アキラ>偶然っすね。こんなところで出会うなんて・・・あれから、どうしてたですか?
サヤカ>・・・別に・・
アキラ>べつに・・・って、またまたあ。あれからプロの賽ふりの方では、すっかり売れっ子になっちゃったんじゃないです?
サヤカ>・・・だから・・・べつに・・・

アキラ>・・・えっ?

サヤカ>その・・さ・・・そんなに甘い話じゃなかったみたいなんだ・・・
アキラ>ど、どういうことですか?
サヤカ>この世界にもその手の問題はあるということよ。
アキラ>・・・・。
サヤカ>教えてあげる。わたし、終わるまでまってるから。

アキラ>あ、だけど・・・

サヤカ>気にしないで。決して迷惑はかけない。

アキラN>その瞬間、ボクの止まっていた時間は再び動き出すのだった。この話は、そんな背景からはじまる。

 

サヤカ>黎明編 四十九条賭場物語 エピソード2

 

アキラ>賭場、終わったよ

サヤカ>お疲れ~。アキラ。酒~

アキラ>サヤカさん! どうしたんですか・・・・

サヤカ>いいから。お酒。お酌して~~~

アキラ>・・・ハイ。どうぞ。

サヤカ>ありがと。 かーーーっ!うめぇ!!

アキラ>なんか、サヤカさん、おかしいですよ?

サヤカ>おかしい?そう? おかしい? ハハ! さあ!笑って わらって!

アキラ>相当・・・おかしいですよ?

サヤカ>・・・こうなるのだって、別におかしくないわよ。

アキラ>え?

サヤカ>あのさ、このあいだ監視役やってた、イケメン2人、覚えてる?

アキラ>ああ!たしか、雅さんと辰さん。

サヤカ>そそ。イケメン2人ね。

実はさ、あの2人ね・・・死んじゃったんだ・・・・
アキラ>!!なんですって!いつ!?
サヤカ>三日くらい前。しかも、突然、パタパタパタ・・・っと。
アキラ>どっか・・・わるかったんすか?
サヤカ>ぜんぜん・・・どこも悪くなかったよ・・・ぜんぜんね・・・
アキラ>そうっすよね・・・人間の一寸先はやみ、なにが起こるかわかんないって言いますからね。
サヤカ>うん・・・・
アキラ> で、供養とかはおわったんすか?
サヤカ>・・・おわってないよ・・・
アキラ>しないと!・・
サヤカ>うん・・・やりたかったけど・・できなかったんだ・・・
アキラ>な、なんですって・・・どういうことなんですか?
サヤカ>わたしも、2人の死後すぐにお骨を焼いて供養して・・・それで終わりになるとかんがえていたんだ。
だけど、それで終わりにはできなくなったんだ・・・・
アキラ>なぜ?
サヤカ>あとにね・・なんにも残らなかったからなんだ。なんにも。
アキラ>は?はあああ???
サヤカ>遺骨が残らないのは。あの二人、シャブやってたからだろうっていわれた・・・
アキラ>そんな・・・!実際のところは、どうなんですか?
サヤカ>・・・わからない・・・プライベートまで関与してたわけじゃなかったから。
アキラ>そ、そうですよね・・・
サヤカ>でも、自分達から足を踏み入れるようなバカでもないと思う・・・
アキラ>ま、そうでしょうけどね・・・
サヤカ>雅と辰とはね・・幼なじみなんだ。
アキラ>・・・!
サヤカ>3人でいっつもいっしょに遊んでた。そりゃ時には喧嘩とかもしたけど、とにかく、楽しかった。
アキラ>・・・!
サヤカ>ある日、組の方では、上層部にへの昇格を、あたしたちの中から選ぶという話がでたんだ。
アキラ?>へぇ・・・
サヤカ>別にあたしたちはそんなことに興味すらなかったさ。でも、この話を面白く感じてなかったヤツがいた。
アキラ>もしかして・・それが・・・鉄蔵?
サヤカ>そう。その通り。鉄蔵は私よりも6つも年上の組員で、ドス作りの名人だった。くる日もくる日もドスばっかつくっていたっけ。生まれつきの荒い性格もあって、組からの評価は低かったの。
アキラ>・・・!
サヤカ>そんなんだったから許嫁だった有紀ちゃんからも愛想尽かされちゃったくらいなのよ。
アキラ>それほど・・ひどかったのか。
サヤカ>それ以来、ずっとずっといさかいは絶えないの。
ことあるごとににらみあってた。
アキラ>じゃ、じゃあ、今回のことは・・・?
サヤカ>鉄蔵のせいじゃないかと思う。
アキラ>・・・!
サヤカ>実際、今度の事件を境に、あいつは若年寄の一員に名を寄せるようになった。
アキラ>・・・
サヤカ>自分に従うもの、言うことを聞くものを中心に、それ以外は始末するか、追放していったの・・
アキラ>何だって・・・じゃあ、もしかして、キミも?
サヤカ>ええ。周囲にはもうだれも味方はいない・・・私はもう、一人ぼっち・・・
アキラ>なんだって!!
サヤカ>今宵、あなたに声をかけたのは、鉄蔵に打ち勝つためと、雅と辰の敵を撃つため・・・
アキラ>・・・・!
サヤカ>

サヤカ>ひとりぼっち・・怖い・・・
アキラ>!?
サヤカ>だから、一緒に来てほしい。
アキラ>・・!
サヤカ>・・・おねがい・・
アキラ>わ、わかりましたよお・・店おわるまで待っててください。それからなら、どこへでもいきますから。
サヤカ>・・・・
アキラ>彼女、サヤカは無言で席を立つ。それはYESという返答の代名詞だった。
サヤカN>そのときだった
サヤカ>アキラ!あっぶない!
アキラ>!!
サヤカ>やあっ!やあっ!!
アキラ>・・・・!?
サヤカ>鉄蔵の手の者か?
?>・・・・
サヤカ>そうか。では、頭に伝えるがいい。私は、逃げも隠れもしない、とな・・・
?>・・・遠ざかっていく
サヤカ>行ったか・・・大丈夫だったか
アキラ>ああ。ボクは・・大丈夫だ・・・大丈夫だけど・・・
サヤカ>・・・・?
アキラ>もう・・後戻りは・・できないね・・・
サヤカ>・・・すまん・・・
アキラN>瞬間、再び、生活は一変することを暗示していた。少しくらい失敗しても文句はいわれないし、ひとつ一つの挙動に生活を賭けなくてもよい・・・そんな快適な生活から離れてしまうと言うことでもあった。
★★★
サヤカ>私はアキラを連れて、ダウンタウンの一角の集落に歩みをすすめる。ちょっと薄汚いバラックのうちの一件・・そこが私の家、もといアジトだった。
アキラ>こんなとこにすんでたんすね、サヤカさん。
サヤカ>ああ。ちょっと小汚いところだけど、我慢してくれ。すまない。
アキラ>それは、別にかまいませんよ・・って!!
サヤカ>?どうした?
アキラ>どうした?って・・両肩なんかはだけさせて・・いったいどうしたんですか!?
サヤカ>ちょっと・・・お願いしたいことがあってな
アキラ>な、なんですか、それ・・・
サヤカ>彫ってほしいんだ。これで。私を・・・
アキラ>彫ってほしいって・・・なに考えているんすか!?
サヤカ>もう・・何者にも散ってほしくないんだ・・だから、せめて・・私の背中に散ることのない桔梗の花を描いてほしいんだ・・・
アキラ>・・・・!
サヤカ>この気持ち、わかってほしい・・・今のワタシは咲き乱れることしか、考えていない・・・
アキラ>そ、そんな・・・たぶん、バイ菌入っちゃいますよ!ダメですよ!絶対に!!
サヤカ>大丈夫だ。それなら、策はある。これだ・・・アキラ>これって・・・焼酎!?
サヤカ>そうだ・・時折、これを吹き付けると、消毒になっていいらしい・・・
アキラ>・・・わかりましたよ・・・それじゃあ、はじめますね・・・
サヤカ>ああ、存分に・・たのむぞ・・・
アキラ>・・・・うん!(と、彫る)
サヤカ>う・・ううううっ!!
アキラ>ぶ~っ
サヤカ>うううううう!!
アキラ>もうすこしだよ・・サヤカ・・・
サヤカN>もはや絶叫しか上げることができなかった。だけど、私の左手首はアキラの手を握りしめていた。激痛のなかで、その手のぬくもりが、どことなく、ちから強かった。
アキラ>ふう・・・・おわったよ・・・
サヤカ>ありがとう・・・
アキラN>明け方・・・作業は無事終了した。

朝日が顔をのぞかせる窓のそば・・・

カラになった焼酎のびんが周囲には散乱している。

焼酎のにおいと血のまじりあったにおいが鼻を強烈についた。

当のサヤカは・・・

汗みどろの体で・・ボクの腕のなかに堕ち、静かに眠りについていた。

乱れた髪の毛が、その凄まじさを物語る・・・
そして、あとにのこるは、サヤカの右肩にひかる、桜色の桔梗紋。

朝日の中で、それは凛々しく光り輝いていた。

 

サヤカ>アキラ・・・ではここで、手はずを説明しておこう
まず、組のほうで行われる記念行事での花会。これの賽振りを決める予選会があるんだ。そこに出場する。そこで、選出されること。これがすべてとなる。
キミはカタギの出だが、前回、補佐として出場しているので、皆の記憶に残っているだろう。今回はそこを利点としてつかわせてもらう。あとは、私の、コレ。刺青。女だてらにこんなことする奴は過去にいなかったから、印象にのこること間違いなしだ。

アキラ>なるほど。さすがだな。すべてがいい方にうごいてくれればいいのだが・・・問題の選考会は1週間後に行われることが決まった。その間、ボクたちは目標に向かって一心不乱に動いた。

サヤカ>そして1週間後。選考会がはじまった。これで、すべてが決まる。選考会にエントリーした賽ふりはわれわれ2人だけだった。
鉄蔵>そや!せっかくの選考会、ワイに粋なアイデアがある!
アキラ>!
サヤカ>!?
鉄蔵>ひとりはおなごで、覚悟の入れ墨をほった者。ひとりはカタギあがりでこの世界に惚れた者。なんともおもしろい顔ぶれや。これも一興というもんや。ここは一風変わった決め方してもバチはあたらへん。そやな・・・そうや、サシできめまひょ。3本連取が勝利条件。決着がつくまでやりましょ!!賽ふり同士の、覚悟、ワイにみせてもらおうか!?

アキラ>その場は異議を唱えるものはいなかった。戦いがいま、始まろうとしていた
サヤカN>勝負第1場賽ふり私サヤカ。
サヤカ>はじめは私の番ね。はいります・・・しょうぶ!
アキラ>は・・はやい・・・
サヤカ>さあ、どうぞ・・・?
アキラ>・・・。
サヤカ>しょせん カタギはカタギ。こんなとここないでおとなしくやっていればよかったのに・・・ね?
アキラ>うるさい・・半だ!!
サヤカ>ふっ・・・バカ・・
アキラ>4ー5の丁・・・し、しまった!!
アキラ>ボクは、全身から汗が吹き出るのがわかった。

アキラN>勝負第2場賽ふりボク
アキラ>では、はいります・・・しょうぶ!
サヤカ>・・・ふっ
アキラ>なにが可笑しい?
サヤカ>相変わらず・・素敵な賽ふりだと思ったから、笑みがこぼれたの
アキラ>なっ・・・
サヤカ>だけど・それは素人相手のはなし!私には通じないわよ!半・・・
アキラ>2ー5の半・・・くううう・・・
サヤカ>勝負第3場賽ふりわたし。
サヤカ>それじゃ、はじめるわよ?それとも、降参する?
アキラ>・・・フン!
サヤカ>後悔してもおそいわよ・・・はいります!・・・
アキラ>・・・・
サヤカ>・・・さあ、どうぞ。
アキラ>まった!
サヤカ>!?
アキラ>まった、だ!
サヤカ>な、なにいって・・・
アキラ>その賽をしらべてくれ!!至急だ!
サヤカ>な、なにやってんの!!ただじゃすまないわよ!!
アキラ>うるさい!とにかく、改めてくれ!!
サヤカ>あっ!
アキラ>・・・! ほらみろ!なんだこの賽は!3が3つも!偶数は2の目一つじゃないか!!
サヤカ>ううう・・・あんた!裏切るのね!?
アキラ>なんのことだ!
サヤカ>ひどい・・・わたしは、あなたを信じてすべてをさらけ出したのに・・あんたはそんな私をみても、まだ裏切るのね・・・
アキラ>親分、鉄蔵さま・・すみません。この女のいうこと、真に受けちゃいけませんぜ
サヤカ>アキラ!
アキラ>生来、女という生き物は化けるもの。いわば、女狐(めぎつね)とよばれる妖(あやかし)なんです。色気を武器に、涙を武器にして、男を手玉に取って生きようとするものなんです。
サヤカ>女狐(めぎつね)だとっ!!かなしみの涙を武器にだと!!ひどい!あんまりだ!!この横着者め(おうちゃくもの)偽善者がっ!
アキラ>それがし、かたぎの者ではございまして、あまり怒りを露にすることはしない性分なのではございますが、
こう・・偽善者といわれたからには・・オトシマエはそれがしに取らせていただきたく存じますが。
サヤカ>うううっ・・・!
アキラ>オトシマエの件、了承いただきまして、至極恐縮。それでは、失礼します。
サヤカ>く、くっそう!!くっそう!!アキラ!!のろってやる!のろってやる!死んでも呪い続けてやる!
アキラ>見苦しいぞ。サヤカ。それに、助けを請うのは人間だけができること。貴様みたいな女狐がやってよいことではないのだぞ。
サヤカ>うううう・・・あんたを信じた、アタイがバカだった!雅!辰!いま、あたしも逝くからね!
アキラ>泣け!わめけ!ほら、親分の目の前につれてきてやったぞ!
サヤカ>ああっ・・・
アキラ>サヤカ!今生のわかれを親分にするんだ!そのあと、その首を親分に献上となるがな・・
サヤカ>!!
アキラ>ひとつだけ、おしえてやろう。貴様の方に掘られた、桜色の桔梗。それが指す花言葉のことだ・・・
サヤカ>なっ・・
アキラ>花言葉は・・・薄い幸せだ・・・
サヤカ>・・・!
アキラ>入れ墨は、真実を語ったな・・覚悟!
サヤカ>くっ・・・・もう・・ダメだ・・・
アキラ>名刀、備前長船よ・・・この女狐を浄土の旅へ・・誘え・・はあっ!
鉄蔵>ぐ・ぐああああああっ!!
アキラ>隙あり! サヤカ!
サヤカ>てぇいっ!
アキラ>大丈夫か?サヤカ!
サヤカ>うん!ばっちり打ち合わせのとおりだもん!言葉、ちょっとチクッときたけどね・・
アキラ>すまない・・皆のものよく聞け!貴様たちの悪行、すべて、この、鉄蔵が仕組んだもの!
サヤカ>こいつは、我が友、雅・ならびに辰を暗殺した張本人!
アキラ>この咎(とが)否めるものはかかってくるがいい!
サヤカ>われらもこの刃に乗じて、加減はせぬ!さあ、こい!!

↓殺陣しながらのセリフ。
アキラ>くうっ・・くうっつ・・ああはいってみたけど、かかってるもんだな・・
サヤカ>そうね・・・でも、こっちも負けない!
アキラ>でも、このまんまじゃラチがあかない!どうする?どうやってきりぬける?
サヤカ>もうすこし、数を減らしてから、出口へむかう!ついてきて!
アキラ>わかった!!そこは、まかせる!相方!
サヤカ>うふ♪アキラってば・・・つづきは抜けてから!
いくわよ!3、
アキラ>ああ!、2
サヤカ>1、突撃!!!

アキラ>そして、ボクたちは、バラックから脱出して、地下道へと逃れた。その地下道の先には・・森があった。
サヤカ>私たちは、森の、開けたところで、一息ついた。
アキラも私も、汗と返り血でびっしょりになっていた。
アキラ>はあ・・・はあ・・はあ・・・サヤカ・・追手は?
サヤカ>こない・・どうやら、引き返したみたいだ・・
アキラ>そうか・・・よかった・・・
サヤカ>アキラ・・怪我は?
アキラ>大丈夫だ・・誰も命をねらってこなかった・・奇跡だ!
サヤカ>もともと鉄蔵の組は、仲たがいしてできたような組。鉄蔵を殺そうという話は前々からできてくらいだから・・・
アキラ>向こうにとっても都合がよかったということか・・・よかった

アキラ>なあ、サヤカ・・
サヤカ>・・・・ん?
アキラ>これから、俺たち、どうしようか?
サヤカ>そうね・・・旅に出ようと思うの
アキラ>旅に・・?
サヤカ>そして、いろんな人に出会うんだ。いろんな人にこの賽子遊戯(さいころゆうぎ)を楽しんでもらうんだ。
それで、いろんな人の笑顔をみていたいな。
アキラ>そっか・・・素敵だ。
サヤカ>もちろん、ついてきてくれるんだよね?
アキラ>えっ・・・
サヤカ>よくも薄い幸せの入れ墨なんか彫ったね!、いつか幸せの印にとっかえてもらうからね!
アキラ>ああ!わかったよ!!その約束、引き受けた!
サヤカ>ふふふん♪引き受けられた。

アキラ>いつしか太陽は水平線の近くに沈もうとしていた。
サヤカ>オレンジの光のなかで、わたしたちは将来をちかう。
アキラ>お互いの吐息を感じ、お互いの体温を確かめられたこのひととき・・・
サヤカ>遠い空に、2人の幸せへの誓いとして、ふたり、唇をそっとあわせる。
アキラ>肌と肌がお互いのぬくもりを感じられたこの日から・・
サヤカ>わたしたちの新しい話はまた、幕をあける・・・
それは、また、今度のお話だ

エピソード2 おわり

第二条~黎明編 四十九条賭場物語 エピソード1~

<登場人物>

サヤカ>とある組の構成員。とはいっても、もっぱら賭場を開いて腰元を行う「賽振り」

しかしながら、ドスのほうは使えるように日頃から訓練は行っている。和服、花魁コス。

アキラ>やくざの世界で横行している賭場ネタをダシにイベントを開いている、アマチュア「賽振り」もちろん、当人はカタギの人間である。えんじ色のさらしコス。


N>話は元禄の世。戦乱無く太平なりし頃の話。表の世では町人文化華やいだ世の中となっていたが、その背景裏側では、止められぬ闇がひそんでいた。
ここは東西7区画、南北7区画に、碁盤目状に開発された、町人の都 通称「四十九条街(しじゅうくじょうがい)」。

この都市では、今日も事件が起きようとしていた。
これは そんな都市で起きたことの事件簿。
その渦中を駆け抜けた、男と女のちょっと変わった、物語。
オーディオドラマ「黎明編四十九条賭場物語 第一話」

 

アキラ>サアサアサアサア、みなさん寄ってらっしゃい見てらっしゃい!

お待ちかね!丁半勝負の時間だよっ!取り決めは簡単。

種も仕掛けもないこのサイコロ。こうやって入れ物の中でカチャカチャして

出てきた目をあてるというものだよ~

サアサアサアサア賭けた賭けた!丁か半か、さあ、さ、はったはった!!

サヤカ>・・・・

アキラ>サアサアサアサア・・丁がでました半もでました。

その割合は丁がちょっと多いか?

さてみなさん!いかがでしょう?いかがでしょう?

サヤカ>フン!・・・

アキラ>(ちょっとムッとして)・・さあ。出そろいました~出そろいました~

いかさま、八百長、口八丁に手八丁、その類の仕事はやっちゃいませんやりません。

ささ、はったはった~~~~

アキラ>(でたことを確認してから)さてまいります!よござんすねっ!

しょうぶ!!

アキラ>7!でございましたっ!!

 

アキラ>さてさて、お客人方・・宴(えん)ならぬ賭場(とば)たけなわではございますが・・・ここいらでおひらきといたします。今宵のごひいき、まいどありがとうございました・・・

 

サヤカ>ちょいと・・・

アキラ>!?ん?

サヤカ>・・・あそばせてもらいます

アキラ>おい、おい、だめだよお。もう花会はおひらきなんだから。

またこんどきなよ?な?

サヤカ>そんなこと言ってにげるのどすか?

アキラ>!?

サヤカ>わらわは そんなに 長居するとはいうておらん。ただ、あそばせてほしいというただけ。

アキラ>・・・

サヤカ>それとも、おぬし、我がこわいのか?

アキラ>そ、そんなわけ・・ないだろ・・・ただ・・

サヤカ>ただ・・なんじゃ?

アキラ>ここは、もうお開きだ。どうしてもやりたいなら、別室にでも、行かないと

サヤカ>なるほど・・

 

アキラ>近くの旅館に、部屋を借りた。どうだ?

サヤカ>なるほど。文句はないな

アキラ>ところで、いったい何の真似だ?

サヤカ>?

アキラ>こうやって、勝負を挑むことの意味・・・わかっているのか!?

サヤカ>わかっておる。なにかを賭けて戦うということなのだろう?

そうさな・・・わらわはこれでもかけようか。この身、一夜(いちや)でどうだ?

アキラ>!!大きくですぎだ!! この身一夜(いちや)なんて、非常識だろ!!

サヤカ>なんじゃ?臆病風にでもふかれたか?

アキラ>・・・わかったよ・・おれは・・・おれは、負けたら、君の言うことをひとつ、かなえるよう、努力してやろう。これで、どうだ?

サヤカ>そうか。それでいい。

アキラ>では・・・はじめるぞ・・・

サヤカ>ああ・

アキラ>よござんすね・・・・勝負!

サヤカ>丁!!

アキラ>はやい・・・?

サヤカ>丁だ。はようあげんか

アキラ>なっ・・・!あああ!!

サヤカ>どうした?結果はどうじゃ・・・

アキラ>ち・・・ちょう・・・・

サヤカ>ふっつ・・・わらわの勝ちじゃな・・・

アキラ>く・・くそ・・・望みはなんだ・・・・

サヤカ>手を・・・

アキラ>え?

サヤカ>手をさしだしてくりゃれ・・

アキラ>手‥を?うああああああ!!

サヤカ>悪い。ひとつはひとつだ・・・・

 

 

アキラ>どれだけねむったのだろう。ボクはぼうっとしたあたまで周囲をみる。ここが何かの会場なのはわかった。

サヤカ>お、やっと目覚めたか

アキラ>こ、ここは・・・?

サヤカ>ここか?ここは、あれだ。

アキラ>なになに・・・第37回記念特別花会 開催会場・・・? 

サヤカ>そのとおりだ。それでな。あと1時間で賭場が開く。準備をしてくれ。

アキラ>え。ええええええええ・・・・・

サヤカ>早く準備しな。さもないと殺されるよ。

アキラ>・・・!!ひ、ひいい・・・ホンモノ、ホンモノだああ!!

サヤカ>おっと、うろたえるんじゃないよ~。何度か賭場は経験してるんだろ?

緋色の晒の賭場師「(ひいろのさらしのとばし)アキラ」くん

アキラ>そ、そりゃそうだけど・・・

アキラN>ボクは急に背筋がピンとなるのを感じていた。同じムジナのナントカというやつだろう

アキラ>た、たしかに、初めてじゃない・・・・はじめてじゃないけど・・・・唐突すぎるよ・・・

サヤカ>・・・すまないな。

アキラ>これだけはハッキリとしてほしい。どうして、こんな真似をしたんだ?ボクなんて、そんじょそこらに転がっている一般人じゃないか!

サヤカ>だけど、立派な賭場はひらいていたじゃないか

アキラ>!

サヤカ>・・・この記念特別花会はな、来賓ふくめて50人ほどの規模で行われる大規模なものだ。おまけに、ここに来る奴はみんな血気盛んなやつらばっかだ。

アキラ>50人・・・だとっ!

サヤカ>なにかコトが起これば、責任を取らされてこの世とオサラバ。そんな状況で賽打ち押し付けられたら、キミならどうする?

アキラ>・・・・・! たぶん・・緊張のあまり・・なにも手につかないと思う。

サヤカ>そうだろ?私もいっしょだ。緊張のあまり、フラフラとこの場に来てみてたんだ。そしたらキミが見事な賭場をひらいてた。

アキラ>・・・!

サヤカ>それをみていた私は、喉から手が出るくらいに君が欲しくなった。

アキラ>・・・・!

サヤカ>・・・その喉から手が出てしまったということさ。まあ、諦めてくれ。

アキラ>・・・・ああ、わかったよ・・・今宵のことは・・・あきらめよう・・・

サヤカ>さすがだな。物分かりが早くてたすかる。

 

アキラN>僕たちは化粧をしたり、衣装に着替たり、道具の確認や差し入れの手配などに手を焼いた。そうこうしているうちにあっという間に時間は過ぎ、開場の6時を迎える。

サヤカ>ささ、みなさま、今一度静粛におねがいします。開場までいましばらくおまちくださいませ

アキラN>言うが早いか、サヤカは2人に目配せを送る。

アキラ>!?

サヤカ>ああ、君には言ってなかったな。あそこにいるのは、雅と辰。私の部下だ。

アキラ>そ、そうなんだ・・・で、彼らとあわせて4人で、どう動くんだ?

サヤカ>私がおもうに、彼らには順番に壺振りをやってもらおうと思っている。

アキラ>ちょ・・・ちょっと待て!ひい・・ふう・・・みぃ・・・

アキラ>じゃ、じゃあ、中盆は?もしかして一人でやろうっていうんじゃないだろうな?

サヤカ>そうだが・・・

アキラ>やめておけ。危険すぎる!監視が甘い!もし、誰かが物言いを打ち上げてみろ・・・見張りが薄いと指摘され、場は壊れる!

サヤカ>なっ・・・では、どうしろと!

アキラ>提案だが、中盆は最低でも3にしてはどうかと思う。雅さんと辰さんはぼくらと合わせて4人で座ればいい。

サヤカ>!

アキラ>俺が進行を担当し、あとの二人は俺たちの隣に座って、ひたすら不正がないかを見張るんだ。君はそのまま壺振りを担えばいい。

サヤカ>なっ・・・

アキラ>カタギのボクがいうのも変だが、どんな状況でも不正はしこりをのこす。未然に防ぐこと、それは雰囲気よりも大事な鉄則だ。ちがうか?

サヤカ>アキラ!・・・

アキラ>丁半のばあい、イカサマをするのは賭け手のほうだ。ボクがやってる時も一緒だったさ。いいか。目の前にいるのはみんな野獣だと思ったほうがいい。やつらがヘンなことをしないよう、いざこざが起きないよう、管理するのだ。

サヤカ>・・・!

アキラ>大丈夫だ。これで、秩序と公正は、保たれる・・・・

サヤカ>アキラ・・・

アキラ>さあ、時間だ。はじめよう・・・場がひらく・・・・

サヤカ>そして、私は、声を発した。

サヤカ>みなさま今日はよろしくいらっしゃいました。

頭に座す、わたくしめは、名を。サヤカともうします。

身にまといしは 紺桔梗の羽織。

つらづらと咲き乱れまするは、紅桔梗の花びら。

そして、この絢爛たる絵図(けんらんたるえず)の姿にあやかりまして・・・

通り名を・・・桔梗のサヤカと名乗っております。

なにとぞよろしくおねがいします。

 

アキラ>さすがは、サヤカさん・・・すげえな・・貫禄がちがう・・・

サヤカ>でははじめます・・・・・よござんすね・・・・方々、いざ尋常に!・・しょうぶ!!

アキラN>サアサア どちらさまも はったはった! 上方さまも 下方さまも、かけ忘れはご法度ですよ~

さあはった!さあはった! 丁が15、半が11.半はおらんか 半はいませんか・あ、半に賭けますか。半ですね、半ですね。

はい、そろいました!! 賭け、成立しました!!

サヤカ>では、アガります。・(ふんっ!・・・・)・・・丁!!ニロクの丁!!

アキラ>途端に眼前の盆台(ぼんだい)で金子(きんす)が駆け巡る。右へと左へと左へと右へと・・・

サヤカ>場が進むたび、賭けに出される金子の量が少しずつ増えてくる。あわせて、場の空気も上気してくる・・・

アキラ>こういう時に物言いがつくと、場は一気に崩壊する・・・それは、カタギの催し物のときも変わらない。だから、ボクは常にそれを恐れていた。

サヤカ>アキラ・・・そこのつづら・・・

アキラ>えっ?・・ああ!

アキラ>そこには氷嚢で冷やされた、食べ物が用意されていた。ボクは一区切りついたところで

声を上げる。

アキラ>さて、さて、さて~ここでちょいと一服いれましょう!

手前どものこしらえました「鉄火巻き」でございます。どうぞ、めしあがれ。

アキラ>サヤカさん・・・

サヤカ>賭けのレートが急に上がり始めたから一息いれたんだ。

アキラ>なっ・・・

サヤカ>場の雰囲気が狂気に変わらないように、な・・・

アキラ>暑い・・ボクの緋色のさらしは腹のほうまで汗でびっしょりになっていた。
思わずサヤカをみやる。 サヤカは額に汗を浮かべながら凛とした顔つきで場の動向を統べていた。一重の瞼が時折引きつけを見せる。緊張が最高潮に達している証拠だった。
サヤカ>ふぅ・・・暑い・・・・

アキラ>その声に、ふとその背中をみやる。サヤカは胸から上をすでに脱ぎ去っていたが、さらけ出した肌は汗でびっしょりに濡れていた。

アキラ>ボクは布を出すと、汗しぶきを拭きぬぐってやることにした。
サヤカ>!ッ
アキラ>不意に敵意と憎悪を感じたボクは思わずその手を止める。
アキラ>ごめん。拭き上げてあげようかと思ったものだから、つい・・・
サヤカ>・・・あ、いや・・
アキラ>・・・・
サヤカ>続けてくれ。頼む。

アキラ>サヤカさん・・・

サヤカ>すまない。後ろを見せるのは嫌いなのでな・・
アキラ>・・・・・・・・じゃ、はじめるね・・・
サヤカ>ああ・・・

アキラ>・・・ほんとに・・・ゴメンネ・・・

サヤカ>勘違いするな。背後を預けるのはお前ががはじめてなだけだ。

アキラ>・・・・!

サヤカ>よろしく頼む。あと、鉄火巻き・・・

アキラ>・・!

サヤカ>キミのぶんまで準備がなくって申し訳ない。

アキラ>あ、いや・・・そこは気にしなくっていいよ・・・
アキラ>・・休会のあいだも、サヤカの肌からは汗がとめどなく噴き上げてきていた。

アキラ>あのさ・・・サヤカ・・・?

サヤカ>・・・どうした?

アキラ>あ、いや・・・・雅さんと辰さん・・・両名の動きがおかしい。

サヤカ>おかしい?どういうこと?

アキラ>先ほどから なにやら 観衆に目配せを送っている。

サヤカ>なんですって!

アキラ>本来、賭け手との不正をみつける役目だから、観衆に目配せを送るのは場違いだ。

何かが起ころうとしている。用心を。

サヤカ>了解した。だけどな、アキラ・・・

アキラ>!?

サヤカ>本日の私たちの役目は、まず第一に賭場の仕事をおわらせることだ。

アキラ>そう・・だな・・・

サヤカ>あの2人がなにをしているのかは、ここがはけた後で、私が直々に聞いてみることにする。それで、いいか。

アキラ>わかった。

サヤカ>ありがとう・・・さあ、時間だ。再開しようか

 

アキラ>さあ~さあ~さあ~次です次です、次の場に入ります。

僕たちはまた、緊張の渦中に飛び込んでいった。

再開後、第一場 サンミチの丁

第二場 グサンの丁

第三場 サブロクの半

第四場 サニの半

そこまで来た時に、恐れていたことが起きた。

アキラ>はい、そろいました!! 賭け、成立しました!!

サヤカ>では、アガります。

声>ちょ~~いと まてや!

サヤカ>!?

声>とぼけんじゃないわい!このアマ!わりゃ、イカサマしかけおったな!

サヤカ>イカサマとはおだやかじゃないな。貴様はだれだ。まずは名をなのれ!

声>ワイか。ワイは金属の鉄の蔵と書いて、鉄蔵っちゅうもんや。

休会後の四回の賭場。なんかおかしゅうないか?

サヤカ>おそれながら、どういうことでしょうか。

わらわはこの場をただただ公正にとりしきっているにすぎん。

不躾な侮辱は、賽打ちとして、断固、ゆるさぬぞ!

声>それじゃあ、聞くが、前後の四回の結果はなんぞ!?

四回のうち四回とも一つの賽は三から動いてはおらん

これをどう説明する!

サヤカ>それは・・・賽の目の気まぐれではないのか?

声>なんだと!

サヤカ>お天気様(おてんとうさま)でも、次の目は予測できんと嘆いた賽の目。所詮は人では測れないのではございませんのか?

声>ぐぬぬぬぬ・・・

サヤカ>そこまで申されるのでございますれば、賽をあらためてくださいまし!

万が一、細工が発覚いたしましられば、我らは喜んで責任をお取りいたします。

声>おう、しかれば、すぐに!

サヤカ>まちなされ!ただし、もし、賽に小細工がなかったとするなれば、鉄蔵さん、オトシマエつけていただきますからね!

声>望むところだ!さあ、賽をみてくれ!!

サヤカ>アキラ! さあ!

アキラ>サヤカさん・・・

サヤカ>かまわん!アキラ!!やりいや!!あけや!!

アキラ>(冗談・・きついぜ・・・)

サヤカ>アキラ!!!

アキラ>・・・・・!!!・・・・・どうぞ・・・・

サヤカ>賽の目は・・・・・・ピンゾロの丁!!・・・

サヤカ>くりかえす!!賽はピンゾロの丁!!

声>くそう・・・・くっそう・・・くっそう!!!・・・・絵図かきやがったな!!

サヤカ>結果は出ましたえ。 これでよろしいでございましょう?

雅、辰。この場のオトシマエはそなたらにおまかせしましたえ。

アキラ>お客人方!今一度もうしあげます!

厳粛に行われしこの場は残念ながらあれてしまいました。

今宵はこれでお開きにしたいとおもいます。本当にありがとうございました!

 

サヤカ>こうやってこの日は乗り切ることができた。

 

サヤカ>アキラ・・・今日はありがとう。

アキラ>いや。キミがすばらしかったからだよ。そして、君の部下も、すばらしいじゃないか・・・

サヤカ>ありがとう。

アキラ>それじゃ、ボクはここいらで。

サヤカ>はい。また・・・・

サヤカ>そのとき、私は背後から鋭い視線の存在を感じる。気のせいかなと考えていたのだが、この気のゆるみがこのあと、事件を引き起こすことになろうとは考えてもみないことだった・・・・

エピソード1 END

第一条 EP6 四十九条賭場物語紺桔梗ノ歌(コンキキョウノウタ) エピソード6

サヤカ>
四十九条賭場物語 エピソード6
アキラ>
その時ボクは 激痛のあまり気を失いかけていた。
もう少しだ。もう少し。
日が落ちれば・・・なんとかなる・・・。
その思惑だけが、ボクの意識をつなぐ布石であった。
サヤカ>
その頃、私は神社の敷地の竹の中に潜んでいた。
太陽が西の地平線に落ちようとしている。
町中ではその頃合いを見て、動き出す人がいた。
サヤカ>
町の自警団だった。
ヤクザや野党、忍びたちが
幅をきかせるようになってから
格段に治安が悪くなったため、
第一条の奉行所が夜間の警備を強化したのだ。
主要な場所にかがり火の燭台が置かれている。
自警団は日没とともにこの燭台に火をつけて回る。
サヤカ>
私たちの
作戦の第一歩は闇に潜み、
そして自警団の中に紛れることだった
サヤカ>
なにげなく自警団の中に紛れ、速やかにかがり火の作業に従事する。
サヤカ>
おい、ここの担当はアタシがやる。
お前は西に回れ
男>
え!?そんなこと聞いてないぞ?
サヤカ>
聞いてないのか?奉行所の田中様が点灯させてない地点があったから
そっちの方に人員を調整してくれというお達しがあったんだ。
男>
な、なるほど・・・
サヤカ>
そういうことで、君はそっちに行くことになったんだ。
ほらほら・・早く行かないと田中様がまた雷落とすぞ
男>
そうか・・すまない。恩に着る・・・
サヤカ>
いいってことさ

サヤカ>
・・・周囲に人はいない様子
私は松明に火をつける
サヤカ>
よし!!松明の火をてがかりに・・・

アキラ>
ふいに外から足音が聞こえる。
イユリ>
ん!? 何者だ!?
アキラ>
あまいぜ・・・こちらの勝ちだ!!

サヤカ>
アキラーー!!
アキラはいるか!?
アタシだ!!助けに来たぞ!
アキラ>
ボクはその声を聞くと、安堵のあまり
どさりと畳にくずおれた。
サヤカ>
アキラ・・・
アキラ>
その時だった
イユリ>
そなたがサヤカだな
サヤカ>
なぜ私の名前を知っている
イユリ>
初めて名を聞いたその時から
一目会ってみたかった・・・
義賊の名を語るに値する女 サヤカ。
サヤカ>
なに!? どこで私の名前を!?

イユリ>
諸悪の根源鉄蔵を対峙した時。
あの青年と見せた連携は見事なものだった・・・
サヤカ>
何を!?忍びの分際で、なにを上から目線な・・・
イユリ>
私は忍びではない
サヤカ>
なんだと!?
ではおまえは何だというんだ
イユリ>
赤い義賊・・・ヒメユリ
サヤカ>
なっ・・・
イユリ>
弱きを助け、世を慈しむ試みを持つ者。
是非あなた様には青の義賊を名乗って頂きたく
サヤカ>
ちょっと待て・・・では彼は?
イユリ>
残念ながら彼にはその資質がない
精神力、体力、人徳・・・そのいずれも不十分だ。
サヤカ>
そんな・・・
イユリ>
彼の名はアキラ・・・
白と黒の間に生まれた 灰色の貴公子。
時に光り、時に影になる。
そういう宿命を持つ者
イユリ>
いつの時も
いつの場所でも
それは変わらぬのだ。
サヤカ>
・・・
イユリ>
・・・!!
追っ手だ!さやか!急ぐのだ!!
その松明をこの社に焚べろ。
サヤカ>
・・・!?
イユリ>
早く!!
さもなくば辱めを受けることになるであろう
サヤカ>
・・・!!
イユリ>
案ずるな我と共に来い。
さあ!彼を運ぶぞ。
サヤカ>
は、はい・・・
イユリ>
そして異なる存在となりて、
世を翔(か)けようではないか。
なに、恐れることは無い。
義は我らにあるのだから。
アキラ>
終局である。
紅蓮の炎に包まれ、
焼け落ちる廃社。
夏の夜に起きたその火事は
同時にならず者達を
暗に屠ったことを意味していた。
サヤカ>
町民たちは この事件の翌日から
ほほえみが絶えない生活を
営んでいくことになった。
アキラ>
ところで、この街をならず者から
開放した彼ら3人はどこへ行ったのか。
サヤカ>
彼らは暁に包まれ、いずこかへ旅立った。
町民たちは異口同音に語る。
だがしかし、彼らを見たものは
誰一人として居なかった。

第一条 EP6 四十九条賭場物語 THE END

 

第一条 EP5 四十九条賭場物語  紺桔梗ノ歌(コンキキョウノウタ) エピソード5
サヤカ>
勝負の日・・・。
アキラは偵察のため、夜明けと同時に
イユリの指定した場所へ出発した。
アキラ>
指定された場所は名も無き廃社で
本殿は寂れ、
宝物庫は無残に荒らされ、
植え込まれた竹は伸び放題となっている
そんな場所だった。
サヤカ>
戦いの舞台は本殿よりもやや高い場所に設置された社務所。
そこしかない、わたしは踏んでいた。
社務所は広さ八畳の広間だけで構成される建物で、
四方は外を薄い障子戸で遮っただけの作りであった。
アキラ>
そこの場所に着いた男たちを見て、驚愕となる。
なんと人間凶器を想起せんばかりの強面の男たちが集まっていたのである。
そしてそこに響く一人の女の凛とした声
話は女の声が響き渡るとき、始まりを告げる
サヤカ>
四十九条賭場物語 エピソード5
イユリ>
時間のようです。お入りなんし
アキラ>
その女の姿を見てボクは目を丸くした。
・・・自分が忍びであることを
隠そうとしていない・・・
朱色の袖なしの忍び装束の彼女は
配下を連れず、たった一人で
イユリ>
しかし男たちは、それには答えず、薄ら笑いを浮かべ、
せせら笑いながら、命名に懐に隠したドスの柄に手をかけた。
アキラ>
その刹那・・・
悲鳴声と同時に幾多の叫び声と、鮮血のほとばしった飛沫が周囲を赫く汚し染めた。
イユリ>
わらわの勝負の間を汚すとは・・・
万死に値する!!
イユリ>
ここに集う皆に申す!
わらわは賭場にて勝負を願うもの。
それ以外の要件にてお越しの方々は
お引き取り願いたい!
これに従わぬものあれば、容赦なく、斬る!!
アキラ>
・・・と、そのとき、面子を潰されたとある組の組員が総出でとびかかる。
イユリ>
馬鹿め!!
アキラ>
イユリは金属片を投げつける。
飛びかかっていったチンピラは
途端に血を吹き出しながら倒れてゆく・・・
・・・それは、手裏剣だった
アキラ>
単身で籠もる彼女のことを男たちはみな
無謀と思ったに違いない。
しかし、彼女はあえて四方がよく見わたせる場所を選んで、
しかも、飛び道具を多数武装することで、
より多くのチンピラを屠ることに成功していたのだ。
ボクは慌ててその場を抜け出し、サヤカのもとへ戻り、
その時間に備えることにした。
サヤカ>
え、それじゃ・・・
待ち伏せされていたのはあのシノビじゃなくて・・
ヤクザどもだったってこと!?
アキラ>
ああ。
サヤカ>
それじゃ、仕方ないわね・・・
時間めがけて 行くとしましょう・・・
アキラ>
その時間とは・・・夕刻、黄昏時。
最後の挑戦者として僕たちを指名したのだった。
アキラ>
約束の時間・・・
ボクは神社の境内にいた。
アキラ>
女の招き声を聞いてから、
羽織を脱いでさらし姿になると、単身、
境内に上がり、社務所へと入っていった。
イユリ>
よく、逃げずに来たな
アキラ>
敵前逃亡すると、目覚めがわるいので、ね・・・
イユリ>
お主でワシにかなうと思ったか?
アキラ>
やってみないと、わからないさ・・
俺たちの所持金は3両だ。
イユリ>
ほう、奮発したな。
アキラ>
ありがとう、さあ、はじめようぜ。
イユリ>
そうね。では、盆、開きます。
入ります・・・!勝負!
さあ、お賭けください
アキラ>
・・・半・・・
イユリ>
・・・!お主、なんの真似だ!
アキラ>
なにって・・・掛け金がこれさ。
イユリ>
一文、だと・・・
ふざけるのもいい加減にしろ!!
アキラ>
ふざけてはいない。決して。
一文だって、お金はお金。
賭け事に変わりはないだろう?
イユリ>
たしかに・・・まあよい。相手をしてやろう
では・・開きます・・・
・・・丁!!
イユリ>
次の場に変わります。
・・・入ります  勝負!
さあ、かけるがよい。
アキラ>
・・・これだ・・・丁・・・
イユリ>
・・・!?また一文だと!?
おちょくるのもいい加減にしろ!!
アキラ>
気持ちは分かるが、そちらからの招待状と規約には、
掛け金の最低値は決められていない。
だからこの場は我々こそが正しい
イユリ>
うぬぬぬぬ・・・
こざかしいまねを・・・!!
だが・・・ふふふ・・・
アキラ>
・・・?
何を笑っているんだ!?
イユリ>
少々中座する。
この勝負に面白い要素を入れようと思ってな。
アキラ>
・・・どういうことだ
イユリ>
楽にしていいぞ
・・・足も相当痺れただろう
アキラ>
・・・まさか
そ、そうか・・・
しまった!!!
アアアアア!!!
イユリ>
ふふふ・・・
ここからが本番じゃ・・・
イユリ>
ふふふ・・・
ここからが本番じゃ・・・
アキラ>
ほくそ笑む私は 社務所にもって来た
つづらの中から 黒いムチを取り出す。
イユリ>
な、なんだ それは!!
我々シノビ、に伝わる拷問器具の一種じゃ
アキラ>
ご、拷問だと・・・!!
待て!!ここは賭場であって、取調べの場ではない!!
イユリ>
たしかにそうだ。
しかしよのう。
おぬし、いくら負けても平然としている。
そこには何らかの裏があって当然と考えるものだ。
そのウラは何かを探るのは
当然、問題ないことなのではないか?
アキラ>
し、しかし・・・
イユリ>
さて話は終わりじゃ
何不満があるのか?
そんなに不満があるなら勝負自体、やめるか?
アキラ>
うぬぬぬぬ・・・・
イユリ>
さて、再開とまいろうか。
ではまずさきほどの勝負の一発・・・
アキラ>
ぎゃあああああ!!!
イユリ>
では、次参ります。
入ります・・・勝負!!
アキラ>
はあ・・・はあ・・・はあ
ち・・・丁・・・
イユリ>
では・・・あげます!!
半!!
アキラ>
・・・!!
イユリ>
それッ!!
アキラ>
ギャアアア!!
イユリ>
どうする?降参する?
アキラ>
ま、まだ・・・。
イユリ>
しぶとい・・・うーん。惜しいのう
並の男ならすぐに降参するところじゃ。
アキラ>
あいにく・・・
心だけは錦なのでね
イユリ>
ほう
ではその錦散らしてしてみようぞ
イユリ>
入ります・・・勝負!!
アキラ>
は・・・半・・・
イユリ>
では、あげます・・・
イユリ>
半!!
アキラ>
や、やった!!
イユリ>
ふむ。ややしくじったか。
ほれ。ムチじゃ。叩くがよい
アキラ>
ようし・・・
やアツ!
ウッ!!
アキラ>
や、やった・・・
うっ!?
う・・うううう・・・!!
イユリ>
どうした?
さては流れる汗で傷がしみたかのぅ?
しかも、今は夏じゃから、余計にしんどいよのう?
アキラ>
・・・
イユリ>
図星か。ふふふ・・・
所詮は素人、というところよのう。
アキラ>
く・・・。
くそう・・・はかったな・・・
イユリ>
勝つための戦略と言ってほしいな。
このムチは我々の部族が古くから使ってきたもの
わらわも年少時にやられてな。
だから、その痛み、わかるのよ。
アキラ>
・・・。
イユリ>
どうじゃ?今、降参すれば悪いようにはしない。
そなたは稀に見る性根の持ち主。
むしろわしの側近として迎え入れてもよい。
アキラ>
・・・。
イユリ>
そうか!
では、覚悟するのじゃな!!
あの世にでも行って、後悔するがよい
イユリ>
やああああ!!
私は我を失ったようにアキラを打った。
 

第一条 EP4 四十九条賭場物語  紺桔梗ノ歌(コンキキョウノウタ)エピソード4

サヤカ>
話は事件発生の後1ヶ月後の初夏のころ。
・・・その時アキラは帰路を急いでいた。
アキラ>
やっば もうすっかり夜になっちゃった
早く帰ってメシ、メシっと・・・

アキラ>
・・・痛!!
なんだこれ?まきびし??
イユリ>
動くな。
アキラ>
・・・誰だ!?
イユリ>
久しぶりね
アキラ>
まさか、イユリ!?
イユリ>
・・・そう。でも今は黙って、静かに聞いてほしい。
アキラ>
・・・!
イユリ>
1週間後をめどに、私は大きな花会を開いてゆく。
ありとあらゆる手を使って 招待し、
色んな団体を廃業に追い込むつもり。
アキラ>
な、何のために・・・・
イユリ>
私が女帝となるためよ。
アキラ>
女、女帝・・・だと・・・?
イユリ>
そう。女帝になるの。
この狂った都に秩序を作るために
アキラ>
ち、秩序・・だと?
この治世に新たなる秩序だと!?
そんなの誰が求めてるというんだ
・・・狂ってる・・・
イユリ>
狂ってる?狂ってると思うの?
(笑)
じゃあ止めてみなさいよ。
一ヶ月後、待ってる。
私は逃げも隠れもしない
アキラ>
そんなことしたら、多くを敵に回すことになるんだぞ。
そんなの、貴様らの親分が望んでいたと思うのか?
イユリ>
親分?あの鉄蔵が!?
あはははは!!愚かな!愚かな!!
馬鹿な男、鉄蔵!!
アキラ>
馬鹿な!どういうことだ!?
大切な親分だったのではないのか?
イユリ>
誰が!?あんなやつ大切なものか
ただのデブの豚が
何が神聖な魂だ!? なにが丹精込めた刀だ!?
所詮は鎌や鍬(くわ)を作る野鍛冶の
延長線上じゃない!
ゴロツキが作る、人殺しの道具・・・
何やってんの!?
そう思ってたわよ
明けても暮れても武器と博奕ばっかり・・・
あんなの組長の器でも何でもないわよ
アキラ>
・・・!?
イユリ>
何が渡世 何が仁義だ
この世に大事なのは生きること
あいつはそんなこと何もわかっちゃいない
アキラ>
・・・!?
イユリ>
だから、あの時、
私の言ったようにしておけば良かったものを
イユリ>
まあいいわ。
この男も用済みだったし。
わけのわからないなんとか組なんて
私がひねりつぶしてくれるわ!
アキラ>
やあああ!!
イユリ>
フン!! あぶない、あぶない・・・
なかなか骨があるわね。
いいわ。殺さないであげる
イユリ>
ケムリダマ!! SE:ボン!

アキラ>
助かった・・・。
アキラ>
絶句して夜空をみあげたボクは
迫る悪しき予感に身を震わせる。
ボクは帰路を急いだ。

サヤカ>
四十九条賭場物語 エピソード4
サヤカ>
そのころ、私はアキラの家で鍋を作っていた。
サヤカ>
酒の準備もできたし〜
鍋の味付けも完璧だし〜
安くて美味しいネタを準備できたし〜
うふ♪
サヤカ>
カタコトと音を立てる土鍋が
私の心の高鳴りに合わせて踊っている。
この家の主が息をついて
帰ってきたのは、このあとのことだった。
アキラ>
さ、サヤカ!
サヤカ>
どうしたんだい?アキラ!
アキラ>
大変だ!大変なことになった・・・
ボクはできるだけ息を整えて言った。
アキラ>
どうする?
そう言いかけて口をつぐんだ
彼女が・・・
サヤカが今にも溢れてしまうばかりの
涙を目に溜めていたからだ。
サヤカ>
アキラ・・・
アキラ>
・・・?
サヤカ>
もう・・・だめかもしれない
アキラ>
・・・!?
サヤカ>
イユリって・・・あの女なんでしょ・・・
煙と共に消えた・・・
アキラ>
ああ。
サヤカ>
そうか・・・そうだったんだ・・・
アキラ>
ん・・・?
サヤカ>
そうか・・・分かんないか・・・
仕方ないよね・・・
彼女はね、シノビなのよ・・・
アキラ>
・・・
サヤカ>
あいつらは怪しげな術を使うのに長けているのよ
私のイカサマ技なんて、
赤子の手をひねるようなもの
すぐにバレるわよ
アキラ>
・・・。
サヤカ>
負ける必ず負ける
アキラ>
・・・
サヤカ>
そして・・・殺される
アキラ>
大丈夫だ・・・!
まだ他に手はあるはずだ・・・
僕はそう言ってさやかに耳打ちした
サヤカ>
・・・!?
でもそんなにうまくいくかしら
アキラ>
もつんだ希望を・・・
サヤカ>
日が暮れ、夜の帳が降りた中、
夕ご飯を食べながら話す。
重い話ゆえに、苦い勝利の味がした。
アキラ>
僕がサヤカに耳打ちした内容はこうだ
アキラ>
確かに彼女は忍だ。
だからといって壺振りの名人だとは言えない。
問題はどうやって逃げるかではなく
どうやって勝つか。
そして彼女の戦いの目的は何かということ
そして向こうが勝つための戦略として
あの女の配下がどれだけいるかということだ。
アキラ>
もし彼女がシノビだとすれば
イカサマの類の技は全て通用しない
勝つならそれ以外の正攻法だ
サヤカ>
それ以外の成功方法って
そんなのあるの?
聞いたこと無いわよ!?
アキラ>
大丈夫だ。あるところにあるのさ。
これを奥の手とも言うのだがな
サヤカ>
あの女からの挑戦状が届いたのは
それから数日がたってからだった
アキラ>
本気だな・・・こりゃ。
サヤカ>
ええ・・・
分かってはいたけど
・・・震えがとまらなくなってる・・・
サヤカ>
嫌だ・・嫌だ・・嫌だ・・嫌だ・・
私はただ普通に一生を過ごしたいと思っていただけなのに
確かにイカサマをするよだって壺振りなんだもん。
サヤカ>
ヤクザの世界と渡世の世界では、
逆にイカサマは胴師の芸の一つとされる。
だから、場が荒れなければ、華がない、と蔑まれ
場が荒れれば、イカサマ胴師と難癖をつけられる。
もう私どうしていいかわからない・・・
ひとりぼっちだし・・・
アキラ>
バカ言っちゃいけないさ。
君は一人じゃない
サヤカ>
・・・?
アキラ>
僕がいるじゃないか
それとも何だよ。証でも欲しいのか?
サヤカ>
・・・。
アキラ>
そうか。じゃあ。
彫れよ。この肩に。
サヤカ>

アキラ>
君の好きな桔梗の花
一輪じゃあ心細いんだろ?
サヤカ>
うん・・・でも・・・
首突っ込んだら、戻れなくなっちゃうんだよ
アキラ>
もう巻き込まれてるさ。
それに 殺人事件にヤクザばかりじゃなく
シノビまで関わってるとなると話は別だ。
アキラ>
奴らを放っておけばこの町のためにはならない
そうだろ?
サヤカ>
アキラ・・・。
アキラ>
それよりも勝負のことだ。
時間がないんじゃないのか
サヤカ>
そうだけど
アキラ>
俺に策がある
サヤカ>
どうやるの
アキラ>
それについては君が俺の肩に
桔梗の紋を彫ってくれている間に教えよう
サヤカ>
アキラは言った。
アキラ>
やつらのことだから イカサマ手が来ることを想定して戦うとするだろう
・・・逆に正攻法の警戒はしているとは思えない。
そこでだできるだけ1回の掛け金を少なくして長期戦に持ち込む。
サヤカ>
でもそんなことしたらこちらの身も持たないわよ
アキラ>
そこでだ。
君の前座を俺が勤めるんだ。
サヤカ>
なんですって!?
アキラ>
同じ桔梗の紋があれば一門の者と見るだろう。
サヤカ>
たしかに・・・。
でも、あなたが時間を稼いだとして、その後はどうするの?
稼がなきゃいけないのは時間じゃなくておかねなのよ?
アキラ>
だからそこでもう一つの奥の手があるんだ
サヤカ>
その彼の案を聞いた時、私は
彫り物をする手を思わず止めた。
サヤカ>
痛みに耐えながら
脂汗をかきながら
それでも丁寧に話そうとする彼を見て
そこに覚悟を見たからだった。
サヤカ>
コトの全てを聞いた時、私は答えるのだった。
すべて、了解したわ。
アキラ>
ありがとう・・・
アキラ>
そのまま ボクは 気を失ったと記憶している
漆黒の闇に落とされたボクが眼を覚ましたのは
翌朝のことだった。
サヤカ>
それから一か月・・・
アキラ>
僕達は来る日も来る日も
特訓を重ねることになった。
サヤカ>
時には弱音を吐き
時には励ましあい
時には挫折をして
時には恥ずかしい一面も見せあった。
アキラ>
そして次の話は7日後の太陽が黄泉色に変わる時に始まる。
サヤカ>
そのとき、この町、第一条では、町中を賑わせる
大きい事件が起こっていた。
サヤカ>
町の犯罪の温床となった
ヤクザたちが次々と
殺害あるいは解体されていったのだ
アキラ>
ある一覧は集団である優位性を生かして
用意周到の準備をして挑んだが
どれ一組として勝つことはできなかった。
サヤカ>
事件の共通点は二つ
一つは向こうから挑戦状が届く。
もう一つは賭場での勝負。
アキラ>
それは瓦版によって街に伝えられ
それは錦絵として露店で売り出されるほどの
大きい大きい事件だったが
奉行所が事件にすることはなかった
サヤカ>
それは堅気の人間には被害がなかったのと
奉行所としてもヤクザと賭場の取り締まりは
頭を痛めていたからであった

アキラ>
瓦版でそのことがもちきりになって、3週間が過ぎた、その時・・・
サヤカ>
きた・・・・イユリからの挑戦状よ・・・
アキラ>
そうか・・・いよいよだね・・・
サヤカ>
うん
アキラ>
怖い?
サヤカ>
うん・・・
アキラ>
じゃあ、やめる?
サヤカ>
そんなわけない。だって・・・
アキラ>
だって・・・?
サヤカ>
桔梗はたった一輪で咲いているわけではないから
アキラ>
一輪?・・・ああ、このことか
そう言うと僕は肩の青い傷をさする。
ボクは傷を作った日、一か月前を思い起こす。
サヤカ>
わたしもまた、その傷をさすりながら思う。
今日・・・すべてが決するのだと・・・
サヤカ>
東の空が明るくなる。
それは 今日という運命の一日の
始まりを告げていた。

 

第一条EP3 四十九条賭場物語  紺桔梗ノ歌(コンキキョウノウタ)エピソード3

サヤカ>私はアキラを連れて、貧民街の一角の集落に歩みをすすめる。
ちょっと薄汚いバラックのうちの一件・・
そこがわたしのグループの「隠れ家」だった。
アキラ>こんなとこにすんでたんすね、サヤカさん。
サヤカ>ああ。ちょっと小汚いところだけど、我慢してくれ。すまない。
アキラ>それは、別にかまいませんよ・・
サヤカ>ふう・・・・
アキラ>それで、次はどうするんですか?
サヤカ>なんのはなしだ?
アキラ>鉄蔵への復讐ですよ。
どうやって立ち向かうのですか?
サヤカ>アキラ・・・
大丈夫だ それなら 手はずを説明しておこう
組のほうで行われる花会。
そこに、君は賽振りとして参加するんだ。
アキラ>ボ、ボクがですか・・・?
サヤカ>そうだ・・・
前回の賭場でのはたらきは、皆の記憶に残っている。
今回はそこ。知名度を利点としてつかわせてもらう。
アキラ>ちょ・・ちょっと待ってくださいよ・・・
前回のアレで、
ボクは顔が割れちゃってるじゃないですか・・・
サヤカ>確かに、割れてるが・・・
今回はそれを逆用する・・・
アキラ>逆用する・・・?
アキラN>そういうと サヤカはボクに耳打ちする。
ボクたちの長い一日が始まろうとしていた。
アキラN>四十九条賭場物語 エピソード3
アキラN>午後6時。
ボクは第一条の中心部にある高級料亭「飛天」にあった。
お気に入りの赤いさらしをまき、
黒と赤の羽織を纏って、大広間へ入る。
そして主催である鉄蔵に一礼。
それから、ボクは賭場の盆に座った。
鉄蔵>おう、あんちゃん。久しぶりじゃのう
はい、お久しぶりです
鉄造親分にはその節はお世話になりました
鉄造>ところであのアバズレはどうした。
アキラ>はっ。野に咲く一輪の黄色い百合のように
性根だけは強く生きておったようですが、
所詮は 孤独に咲く花。
あっさりと力尽きたようでございます。
鉄蔵>ございます?
一緒だったのではないのか?
アキラ>滅相もございません。
あの夜はたまたま助っ人として頼まれただけで。
用が済んでそれっきり。
私はカタギの小さな身なれば。
あの女とは住む世界が違います。
鉄蔵>そうじゃろう。そうじゃろう。
小さきもの弱き者は、強くて大きい者に従うのが
世の中の理ということじゃな
アキラ>左様にございます。
鉄蔵様のお力添えがございましてはじめて
我々下っ端が生きれるというものでございますゆえ。
鉄蔵>わっはっは!! 左様か!!
良い良い!これまでのことは水に流そう。
その他の事は気に入った。
アキラ>ありがたき幸せ。
鉄蔵>では、アキラくん。はじめてくれや
アキラ>ハイ。かしこまりました。
では、お時間まで今しばらく失礼します。


アキラM>ちっ・・・なにが はじめてくれや だよ・・・
仲間を 売った やつが・・!
イユリ>はじめまして あなたが 今夜の賽ふりのひとね?
わたしは イユリ。
アキラ>はじめまして
イユリ>よろしく。
ん。なんか気が弱そうね・・・
まあいいわ。教えてあげる。
いい?わたしが 右足を上に座りなおしたら 丁
左足を上に座りなおしたら 半。
きちんと出してね。ボスの・・あの人のために、ね・・・

アキラ>これって・・イカサマ ?
イユリ>シッ!!大きな声ださないの! 
こんなの聞かれるの非常識なんだからね
鉄様からの 命令。いいわね?
アキラM>鉄様、ねぇ・・・
ったく、どっちのほうが 非常識なんだよ・・・・
イユリ>なんか 言った!?
アキラ>い・・・いえ・・・・
イユリさんのお召し物があまりにも素敵で・・・
イユリ>うんうん
アキラ>その・・・あまりにもエッチで・・・
イユリ>もう!!見とれてないで!!
アキラ>(笑)しかしその時、
イユリの頬がかすかにいろめいたのを
ボクは見逃さなかった。

アキラN>時間だ・・・賭場の盆が開く。
そうして、ボクは賭場をすすめていく。
イユリという女の指示通りに、面白げもなく、
淡々と、ただ、しずしずと・・・
サヤカN>かび臭い 地下の一室で 賭場は続いていた。
賭場は 決して盛り上がることなく 安定して 進んでゆく。
儲かるものもあれば 損するものもある。
だが、ひとりだけ・・・
気づかれないように 勝ちを決めている男がいる。
鉄蔵だった。

鉄蔵>はっはっはっ 負けてしもうたわい。
だけどそんなこともあろうわな なぁ?イユリ
イユリ>そうですわ 
桜の花と賽の目は思う通りにはいきませんものね。
あんまり言っては 賽振りさんに 失礼 というものですよ。
アキラN>、言葉尻からは負けているように感じる。
しかし、あくまで これは ブラフだ。
目立たないが、 確実に 勝っている。
それは素人のボクでもわかっていた。
イユリ>さあ、 さあ、 次 参りましょう
アキラN>そして すべてが バレないのは 
この女の存在があるからだ。
すべて 計算ずくで 場を牛耳っている・・・
そのときだった。計算外が起こる。
アキラN>ええっなんですって!!
店主さん、これだけ盛り上がってるんです。
そこをなんとか。
ええっ。
明日の仕込みがある?そ、そうですか。

アキラ>その時僕は顔が真っ赤になるのに気づいた。
時間がなさすぎる
あと30分・・・だと・・・
イユリ>アキラさんどうしたん?
家あと半月ほどでここお開きにしてほしいという店主からのお願いです
半刻それはまだ物足りんな
仕方がありませんがそれはお店の都合というものもあるでしょうもしここで問題起こしてた次から使えなくなってしまいます
そうかがやむを得んな
いつも降りそうなわけやよろしく頼む
わ・・・わかりました・・・
僕は背筋に冷たい汗が流れるのがわかった。
30分だと・・・いくらなんでも時間が足りなさすぎる
たちまちボクのさらしは汗でぐっしょりと濡れる。
ヤバい・・・ヤバい・・・ヤバい・・・
僕は我を失いかけていた。
サヤカ>それはこのやり取りを密かに聞いていた
私とて同じであった。
私たちの勝算は、
賭場で起きるトラブルを逆手にとるものだった。
話が進むにつれてレートが上がり、
そうすれば当然、負け越す人間が出る。
負けたほうは その原因がイカサマ芸にあると考えるので、
負けた苛立ちは 不平不満に変わり、
やがてそれはカネを巡る狂気に変わるはずだ。
それが爆発すれば、当然、盆は混乱する。
そこが狙い目だった。
混乱に乗じて私が登場し、鉄蔵を殺害する。
同じく、頭領を殺されたヤクザの混乱に乗じて脱出する。
だがこの計画は今、もろくも瓦解しようとしていた。

サヤカ>少ない残り時間。焦る自分。
その時私の耳に作った青い傷が
自分の気持ちを表すかのようにうずき出した。
その青い傷は特別な傷だった。
途端に私の心に勇気が宿る。
次の瞬間私は潜んでいた場所のふすまを蹴破った。
サヤカ>鉄蔵!!覚悟しろ!!いつかのお返しだ!
鉄蔵>何をする!!
イユリ>ふんっ!
サヤカ>キャアアアアア!!
イユリ>鉄蔵親分、捕まえました。
鉄蔵>うむ。ご苦労。
サヤカ>くっそう・・・・!!
鉄蔵>ん?お前はどこかで見たことがある・・・
おお!あの雅と辰とかというヘッポコとつきあってた
サヤカではないか!!
サヤカ>ケッ!
鉄蔵>そや!せっかくの酔狂の時・・・ワイに粋なアイデアがある!
アキラ>!
サヤカ>!?
鉄蔵>ひとりはおなごで、覚悟の入れ墨をほった者。
ひとりはカタギあがりでこの世界に惚れた者。
なんともおもしろい顔ぶれや。これも一興というもんや。
ここはちょと勝負してもらいまひょ。
そやな・・・「サシの賽振り勝負」できめまひょ。
3本連取が勝利条件。決着がつくまでやりましょ!!
賽ふり同士の、覚悟、ワイにみせてもらおうか!?
アキラ>その場は異議を唱えるものはいなかった。戦いがいま、始まろうとしていた
サヤカN>勝負第1場賽ふり私サヤカ。
サヤカ>はじめは私の番ね。はいります・・・しょうぶ!
アキラ>は・・はやい・・・
サヤカ>さあ、どうぞ・・・?
アキラ>・・・。
サヤカ>しょせん カタギはカタギ。こんなとここないでおとなしくやっていればよかったのに・・・ね?
アキラ>うるさい・・半だ!!
サヤカ>ふっ・・・バカ・・
アキラ>4ー5の丁・・・し、しまった!!
アキラ>ボクは、全身から汗が吹き出るのがわかった。

アキラN>勝負第2場賽ふりボク
アキラ>では、はいります・・・しょうぶ!
サヤカ>・・・ふっ
アキラ>なにが可笑しい?
サヤカ>相変わらず・・素敵な賽ふりだと思ったから、笑みがこぼれたの
アキラ>なっ・・・
サヤカ>だけど・それは素人相手のはなし!私には通じないわよ!半・・・
アキラ>2ー5の半・・・くううう・・・
サヤカ>勝負第3場賽ふりわたし。
サヤカ>それじゃ、はじめるわよ?それとも、降参する?
アキラ>・・・フン!
サヤカ>後悔してもおそいわよ・・・はいります!・・・
アキラ>・・・・
サヤカ>・・・さあ、どうぞ。
アキラ>まった!
サヤカ>!?
アキラ>まった、だ!
サヤカ>な、なにいって・・・
アキラ>その賽をしらべてくれ!!至急だ!
サヤカ>な、なにやってんの!!ただじゃすまないわよ!!
アキラ>うるさい!とにかく、改めてくれ!!
サヤカ>あっ!
アキラ>・・・! ほらみろ!なんだこの賽は!3が3つも!偶数は2の目一つじゃないか!!
サヤカ>ううう・・・あんた!裏切るのね!?
アキラ>なんのことだ!
サヤカ>ひどい・・・わたしは、あなたを信じてすべてをさらけ出したのに・・あんたはそんな私をみても、まだ裏切るのね・・・
アキラ>親分、鉄蔵さま・・すみません。この女のいうこと、真に受けちゃいけませんぜ
サヤカ>アキラ!
アキラ>生来、女という生き物は化けるもの。いわば、女狐(めぎつね)とよばれる妖(あやかし)なんです。色気を武器に、涙を武器にして、男を手玉に取って生きようとするものなんです。
サヤカ>女狐(めぎつね)だとっ!!かなしみの涙を武器にだと!!ひどい!あんまりだ!!この横着者め(おうちゃくもの)偽善者がっ!
アキラ>それがし、かたぎの者ではございまして、あまり怒りを露にすることはしない性分なのではございますが、
こう・・偽善者といわれたからには・・オトシマエはそれがしに取らせていただきたく存じますが。
サヤカ>うううっ・・・!
アキラ>オトシマエの件、了承いただきまして、至極恐縮。それでは、失礼します。
サヤカ>く、くっそう!!くっそう!!アキラ!!のろってやる!のろってやる!死んでも呪い続けてやる!
アキラ>見苦しいぞ。サヤカ。それに、助けを請うのは人間だけができること。貴様みたいな女狐がやってよいことではないのだぞ。
サヤカ>うううう・・・あんたを信じた、アタイがバカだった!雅!辰!いま、あたしも逝くからね!
アキラ>泣け!わめけ!ほら、親分の目の前につれてきてやったぞ!
サヤカ>ああっ・・・
アキラ>サヤカ!今生のわかれを親分にするんだ!そのあと、その首を親分に献上となるがな・・
サヤカ>!!
アキラ>ひとつだけ、おしえてやろう。
貴様の方に掘られた、桜色の桔梗。それが指す花言葉のことだ・・・
サヤカ>なっ・・
アキラ>花言葉は・・・薄い幸せだ・・・
サヤカ>・・・!
アキラ>入れ墨は、真実を語ったな・・覚悟!
サヤカ>くっ・・・・もう・・ダメだ・・・
アキラ>名刀、備前長船よ・・・この女狐を浄土の旅へ・・誘え・・はあっ!
鉄蔵>ぐ・ぐああああああっ!!
アキラ>隙あり! サヤカ!
サヤカ>てぇいっ!
アキラ>大丈夫か?サヤカ!
サヤカ>うん!ばっちり打ち合わせのとおりだもん!
言葉、ちょっとチクッときたけどね・・
アキラ>すまない・・
皆のものよく聞け!
貴様たちの悪行、すべて、この、鉄蔵が仕組んだもの!
サヤカ>こいつは、我が友、雅・ならびに辰を暗殺した張本人!
アキラ>この咎(とが)否めるものはかかってくるがいい!
サヤカ>われらもこの刃に乗じて、加減はせぬ!さあ、こい!!

イユリ>なぜ・・なぜ・・わたしたちを裏切った!
アキラ>裏切った!・人聞きの悪い・・・君たちのほうがむごいことをしただろうが!
イユリ>そうね・・・違いない・・・でも、こっちも負けない!
アキラ>ちっ・・・このまんまじゃラチがあかない!どうする?
サヤカ>どいて!アキラ!!
アキラ>わかった!!
サヤカ>雅と辰の敵!食らえ!
イユリ>ぐ・・・・さすがだな・・・
だが、この場は立ち去らせてもらう・・・ふん!

アキラ>終わった・・・のか?
サヤカ>・・・ああ。
アキラ>イユリは?
サヤカ>・・・逃げられた。
アキラ>そ、そうか・・・
・・・早くここを出よう。長居は禁物だ・・・
サヤカ>そうね・・・行きましょう。

アキラ>鉄蔵を討ったボクたちは、地下道へと逃れた。
その一角で・・・ボクたちは一息つくことにした。
サヤカ>はぁ・・はぁ・・・はぁ・・・・
アキラも私も、汗と返り血でびっしょりになっていた。
アキラ>はあ・・・はあ・・はあ・・・サヤカ・・追手は?
サヤカ>こない・・どうやら、引き返したみたいだ・・
アキラ>そうか・・・よかった・・・
サヤカ>アキラ・・怪我は?
アキラ>大丈夫だ・・なんとかな・・・・
サヤカ>良かった・・・
もともと鉄蔵はドス職人として有名だったけど・・・
組の中では評判がいいほうではなかったから・・・
アキラ>追っ手も派遣しなかった・・・か。
向こうにとっても都合がよかったということか。
・・・よかった

アキラ>なあ、サヤカ・・
サヤカ>・・・・ん?
アキラ>これから、俺たち、どうしようか?
サヤカ>・・・まだ、終わってはいない
アキラ>え・・?
サヤカ>イユリよ・・・彼女はまだ諦めてはいない。
アキラ>そ、そうなのか・・・
サヤカ>・・・早く戦いが終わってほしい・・・
アキラ>え・・?
サヤカ>・・・そしてなんのしがらみもなく、
純粋に 賽振りを楽しみたい。キミのように
アキラ>え・・?
サヤカ>そして、いろんな人に出会うんだ。いろんな人にこの賽子遊戯(さいころゆうぎ)を楽しんでもらうんだ。
それで、いろんな人の笑顔をみていたいな。
アキラ>そっか・・・素敵だ。
サヤカ>もちろん、ついてきてくれるんだよね?
アキラ>えっ・・・
サヤカ>よくも薄い幸せの入れ墨なんか彫ったね!、いつか幸せの印にとっかえてもらうからね!
アキラ>ああ!わかったよ!!その約束、引き受けた!
サヤカ>ふふふん♪引き受けられた。

アキラ>いつしか太陽は水平線の近くに沈もうとしていた。
サヤカ>オレンジの光のなかで、わたしたちは将来をちかう。
アキラ>遠い空に、2人の幸せへの誓いを見たとき・・・
サヤカ>わたしたちの新しい話はまた、幕をあける・・・
エピソード3 おわり
 

第一条EP2 四十九条賭場物語 紺桔梗ノ歌(コンキキョウノウタ) エピソード2
アキラ>かつてない 緊張を味わった賭場から
はやひと月。
ボクはまた静かなアマチュア壷ふり生活にもどっていた。
サアサアサアサア賭けた賭けた!
丁か半か、さあ、さ、はったはった!!
サヤカ>会場には彼の凛々しくさわやかな声がひびく。
あぁ。賭場とはこんなに楽しいものだったのか。
湿気がこもり陰湿で、カビ臭い畳の匂いが充満し、
裸電球一つが揺れる部屋の中のそれとは違う・・・。
私はかぶりを振りつつ思いにふけっていた。
アキラ>あれ?どこかで見たことあると思ったら
その時だった。心地よい声の主が 私のまえに現れた。
アキラ>サヤカさんじゃないですか・・・!
サヤカ>アキラ!・・・ひさしぶり。元気してた?
アキラ>ま、まあ・・・元気でしたけど・・・・
サヤカ>・・・・そう・・・
アキラ>偶然っすね。こんなところで出会うなんて・・・
あれから、どうしてたですか?
サヤカ>・・・別に・・
アキラ>べつに・・・って、またまたあ。
あれからプロの賽ふりの方では、
すっかり売れっ子になっちゃったんじゃないです?
サヤカ>ちがうよ!!
・・・だから・・・べつに・・・
アキラ>・・・えっ?
サヤカ>私のことはいいからいいから
ほら次やんないと・・・お客さん待ってるよ。
アキラ>は、はい・・・
そういうとさやかは部屋の隅へと引っ込んでしまった。
どうしたんだろうあれ。
なかば 元気がないさやかを尻目に僕は場を進行させた。
サヤカ>四十九条賭場物語 エピソード2

アキラN>
場は、実に安定して無難に進行する。
丁か半か。偏ってかけられることもなければ
支払いで不正や不平が出ることもない。
サヤカ>そりゃ安定するわな・・・
アタシはつぶやく。
ここが安定する理由の一つに、
会員資格制があげられる。
掛け金に対して節度がある、
他の来場者に対して思いやりがある、
一度も問題を起こしていない。
など、参加するものについては
真理を厳しく求めている点だ
しかも一回の来場によってかけることのできる金額と
換金することのできる金額も定められているのだ。
それでいてここはイカサマがない。
正確にはアキラが性格的に技術的に
できないというのが正しいのだが・・・。
ヤクザの世界と渡世の世界では、
逆にイカサマは胴師の芸の一つとされる。
だから、場が荒れなければ、華がない、と蔑まれ
場が荒れれば、イカサマ胴師と難癖をつけられる。
・・・正解なんかないじゃんか
ふうううっと重いため息をついた私は柱に寄りかかり
ふて寝しようとした。
その時だった。
男>おお!!しまった!!
アキラ>だいじょうぶですか!?
サヤカ>それは客の一人が、支給されたうどんの
残り汁をこぼしてしまったことに始まった。
アキラ>すんません。ほんっますんません。
男>いいってことよ。
すまんなあんちゃん。
アキラ>いえ。ほんっますんません。
アキラN>こういうことも
想定していておいてよかった。
ボクが雑巾を手にとって、拭き上げたため、
予想以上に事態は早く解決した。
アキラ>ふう。さあ場をつづけよう・・・
そうやって盆に座ろうとした、そのときだった。
サヤカ>待たんかいっ!
私は声を上げる。
おぬし、今、懐に何隠した?
男>!?
サヤカ>何隠したって聞いとるんじゃい。はよう出せ!
男>・・・。
サヤカ>こら何や?サイコロやないか。
さっき おぬし、盆のサイコロすり替えたな!!
ほれ、見ろ。このサイコロは
さっきまで振られていたものやないか!
男>・・・。
サヤカ>誰の差し金や?言うてみぃ!?
男>・・・。
グ・・・グアアアア・・・!!
サヤカ>チッ。腹を裂きやがった・・・
アキラ>サヤカさん!?
サヤカ>覚えといてくれ。これがプロの渡世の世界だ。
アキラ>しかし・・・そうだけど・・・
別に死ぬことはなかったんじゃないか?
サヤカ>イカサマは命張ってやるもの。
それがアタシたち賽振りの宿命なのよ・・・
だから・・・
アタシだっていつ死ぬかわからない・・・
アキラ>ど、どういうことですか?
サヤカ>いいわ教えてあげる。
この場、全部終わったら、付き合って。
わたし、終わるまでまってるから。
アキラ>あ、だけど・・・
サヤカ>気にしないで。今日はアタシがおごるから
アキラN>そのときから、ボクたちの止まっていた時間は
再び動き出すのだった。
この話は、そんな背景からはじまる。
サヤカ>アキラに賭場が終わると
私は彼を小料理屋へ誘った

アキラ>終わった〜
サヤカ>お疲れ~。アキラ。酒~
アキラ>サヤカさん! どうしたんですか・・・・
サヤカ>いいから。お酒。お酌して~~~
アキラ>・・・ハイ。どうぞ。
サヤカ>ありがと。 か>ーっ!うめぇ!!
アキラ>なんか、サヤカさん、おかしいですよ?
サヤカ>おかしい?そう? おかしい? ハハ! さあ!笑って わらって!
アキラ>相当・・・おかしいですよ?
サヤカ>・・・こうなるのだって、別におかしくないわよ。
アキラ>え?
サヤカ>あのさ、このあいだ監視役やってた、イケメン2人、覚えてる?
アキラ>ああ!たしか、雅さんと辰さん。
サヤカ>そそ。イケメン2人ね。
実はさ、あの2人ね・・・死んじゃったんだ・・・・
アキラ>!!なんですって!いつ!?
サヤカ>三日くらい前。しかも、突然、パタパタパタ・・・っと。
アキラ>どっか・・・わるかったんすか?
サヤカ>ぜんぜん・・・どこも悪くなかったよ・・・ぜんぜんね・・・
アキラ>そうっすよね・・・人間の一寸先はやみ、なにが起こるかわかんないって言いますからね。
サヤカ>うん・・・・
アキラ> で、供養とかはおわったんすか?
サヤカ>・・・おわってないよ・・・
アキラ>しないと!・・
サヤカ>うん・・・やりたかったけど・・できなかったんだ・・・
アキラ>な、なんですって・・・どういうことなんですか?
サヤカ>わたしも、2人の死後すぐにお骨を焼いて供養して・・・それで終わりになるとかんがえていたんだ。
だけど、それで終わりにはできなくなったんだ・・・・
アキラ>なぜ?
サヤカ>あとにね・・なんにも残らなかったからなんだ。なんにも。
アキラ>は?はあああ???
サヤカ>遺骨が残らないのは。あの二人、シャブやってたからだろうっていわれた・・・
アキラ>そんな・・・!実際のところは、どうなんですか?
サヤカ>・・・わからない・・・プライベートまで関与してたわけじゃなかったから。
アキラ>そ、そうですよね・・・
サヤカ>でも、自分達から足を踏み入れるようなバカでもないと思う・・・
アキラ>ま、そうでしょうけどね・・・
サヤカ>雅と辰とはね・・幼なじみなんだ。
アキラ>・・・!
サヤカ>3人でいっつもいっしょに遊んでた。そりゃ時には喧嘩とかもしたけど、とにかく、楽しかった。
アキラ>・・・!
サヤカ>ある日、ヤクザのほうから、あたしたちの中から登用するという話が出たんだ。
アキラ?>へぇ・・・
サヤカ>あたしはそんなことに興味すらなかったさ。
でも、この話を使って自分の名をあげようとするやつがいたのさ。
アキラ>もしかして・・それが・・・鉄蔵?
サヤカ>そう。その通り。
鉄蔵はドス作りの名人でその腕を組に売ろうとしたらしいんだ。
アキラ>へえ・・・鉄蔵さん、野心家なんですね・・・・
サヤカ>組のほうにもっていったら、組のほうでは面白がったみたいで
あたしたちの仲間を殺せるか?と試された・・・・
アキラ>試された? それじゃあ、もしかして、雅さんと辰さん・・・
サヤカ>そう、そのせいで 鉄蔵に殺された・・・
アキラ>ま、まさかっ!?
し、信じられない・・・・
サヤカ>だろ? 信じられないだろ?
あいつは、自分の未来だったら殺しも平気でやる。そういう奴なんだ・・
アキラ>それほど・・ひどかったのか。
サヤカ>・・・ずっとずっといさかいが絶えないの、わかったでしょ?
あいつのグループとは 事あるごとににらみあってた。
アキラ>じゃ、じゃあ、今、鉄蔵は・・・?
サヤカ>組の正式な一員となってる・・・
アキラ>・・・!
サヤカ>そればかりじゃない・・・その野心で
名前を上げて、若年寄の候補の一員に名を寄せようとしてるんだ。
アキラ>・・・仲間を・・売ってまでか・・・
サヤカ>そうともいうね・・・
自分のグループの仲間内でも自分に従うもの、言うことを聞くものをヒイキに、、
それ以外は始末するか、追放していってたもんね・・
アキラ>何だって・・・じゃあ、もしかして、キミも?
サヤカ>ええ。周囲にはもうだれも味方はいない・・・私はもう、一人ぼっち・・・
アキラ>なんだって!!
サヤカ>今宵、あなたに声をかけたのは、鉄蔵に打ち勝つためと、雅と辰の敵を撃つため・・・
アキラ>・・・・!
サヤカ>
サヤカ>ひとりぼっち・・怖い・・・
アキラ>!?
サヤカ>だから、一緒に来てほしい。
アキラ>・・!
サヤカ>・・・おねがい・・
アキラ>わ、わかりましたよお・・店おわるまで待っててください。それからなら、どこへでもいきますから。
サヤカ>・・・・
アキラ>彼女、サヤカは無言で席を立つ。それはYESという返答の代名詞だった。
サヤカN>そのときだった
サヤカ>アキラ!あっぶない!
アキラ>!!
サヤカ>やあっ!やあっ!!
アキラ>・・・・!?
サヤカ>鉄蔵の手の者か?
?>・・・・
サヤカ>そうか。では、頭に伝えるがいい。私は、逃げも隠れもしない、とな・・・
?>・・・遠ざかっていく
サヤカ>行ったか・・・大丈夫だったか
アキラ>ああ。ボクは・・大丈夫だ・・・大丈夫だけど・・・
サヤカ>・・・・?
アキラ>もう・・後戻りは・・できないね・・・
サヤカ>・・・すまん・・・
アキラN>瞬間、再び、生活は一変することを暗示していた。
それは ひとつ一つの挙動に生活を賭けなくてもよい・・・
そんな快適な生活から離れてしまうと言うことでもあった。
サヤカ>アキラ・・・
アキラ>どうしたんですが・・・サヤカさん・・!!
サヤカ>・・・・・
アキラ>・・両肩なんかはだけさせて・・いったいどうしたんですか!?
サヤカ>ちょっと・・・お願いしたいことがあってな
アキラ>な、なんですか、それ・・・
サヤカ>彫ってほしいんだ。これで。私を・・・
アキラ>彫ってほしいって・・・なに考えているんすか!?
サヤカ>桔梗の花を 彫ってほしいんだ・・・
あいつらと 若き日に 遊んだ草原に 咲いていたんだ。
アキラ>・・・供養のためだとか・・・言うんですか? 雅さんと辰さんの
サヤカ>好きに考えてくれてかまわない。
ただ、わたしは思い出を遺したいんだ。消えないように
だから・・・私の背中に散ることのない桔梗の花を描いてほしいんだ・・・
アキラ>・・・・!
サヤカ>この気持ち、わかってほしい・・・
今のワタシは咲き乱れることしか、考えていない・・・
アキラ>そ、そんな・・・たぶん、バイ菌入っちゃいますよ!
ダメですよ!絶対に!!
サヤカ>大丈夫だ。それなら、策はある。これだ・・・
アキラ>これって・・・焼酎!?
サヤカ>そうだ・・時折、これを吹き付けると、消毒になっていいらしい・・・
アキラ>・・・わかりましたよ・・・それじゃあ、はじめますね・・・
サヤカ>ああ、存分に・・たのむぞ・・・
アキラ>・・・・うん!(と、彫る)
サヤカ>う・・ううううっ!!
アキラ>ぶ~っ
サヤカ>うううううう!!
アキラ>もうすこしだよ・・サヤカ・・・
サヤカN>もはや絶叫しか上げることができなかった。
だけど、私の左手首はアキラの手を握りしめていた。
激痛のなかで、その手のぬくもりが、どことなく、ちから強かった。
アキラ>ふう・・・・おわったよ・・・
サヤカ>ありがとう・・・
アキラN>明け方・・・作業は無事終了した。
朝日が顔をのぞかせる窓のそば・・・
カラになった焼酎のびんが周囲には散乱している。
焼酎のにおいと血のまじりあったにおいが鼻を強烈についた。
当のサヤカは・・・
汗みどろの体で・・ボクの腕のなかに堕ち、静かに眠りについていた。
乱れた髪の毛が、その凄まじさを物語る・・・
そして、あとにのこるは、サヤカの右肩にひかる、紺色の桔梗紋。
朝日の中で、それは凛々しく光り輝いているのだった。
 

第一条  四十九条賭場物語 エピソード1
<登場人物>(比率1:1:0)
サヤカ>とある組の構成員。とはいっても、もっぱら賭場を開いて腰元を行う「賽振り」
武器:小刀(ドス)日頃から訓練は行っている。
服装:日常は羽織物。賭場では紺色か紫の花魁コスに近いもの
アキラ>やくざの世界で横行している賭場ネタをダシにイベントを開いている、
アマチュア「賽振り」。もちろん、当人はカタギの人間である。
武器:小刀(ドス)。サヤカと逃避行をするようになってからは、

自分で自分の身を守らねばならなくなったため、訓練は行っている模様。
服装:日常は和服

N>話は元禄の世。戦乱無く太平なりし頃の話。表の世では町人文化華やいだ世の中となっていたが、

その背景裏側では、止められぬ闇がひそんでいた。
ここは東西7区画、南北7区画に、碁盤目状に開発された、町人の都 通称「四十九条街(しじゅうくじょうがい)」。
そしてここは、四十九条の中でも最も西北に位置する第一条。
四季があり、肥沃した土地に覆われた 農耕地。
これは そんな都市で起きたことの事件簿。
その渦中を駆け抜けた、男と女のちょっと変わった物語。
コス劇企画ボイスドラマ「四十九条賭場物語 
第一条 紺桔梗ノ歌 (コンキキョウノウタ)
第一話」
 
アキラ>サアサアサアサア、みんな寄ってらっしゃい見てらっしゃい!
お待ちかね!丁半勝負の時間だよっ!取り決めは簡単。
種も仕掛けもないこのサイコロ。こうやって入れ物の中でカチャカチャして
出てきた目をあてるというものだよ~
サアサアサアサア賭けた賭けた!丁か半か、さあ、さ、はったはった!!
サヤカ>・・・・
アキラ>サアサアサアサア・・丁がでました半もでました。
その割合は丁がちょっと多いか?
さてみなさん!いかがでしょう?いかがでしょう?
サヤカ>フン!・・・
アキラ>(ちょっとムッとして)・・さあ。出そろいました~出そろいました~
いかさま、八百長、口八丁に手八丁、その類の仕事はやっちゃいませんやりません。
ささ、はったはった~~~~
アキラ>(でたことを確認してから)さてまいります!よござんすねっ!
しょうぶ!!
アキラ>丁!でございましたっ!!
 
アキラ>さてさて、お客人方・・宴(えん)ならぬ賭場(とば)たけなわではございますが・・・ここいらでおひらきといたします。今宵のごひいき、まいどありがとうございました・・・
 
サヤカ>ちょいと・・・
アキラ>!?ん?
サヤカ>・・・あそばせてもらいます
アキラ>おい、おい、だめだよお。
もう花会はおひらきなんだから。
またこんどきなよ?な?
サヤカ>そんなこと言ってにげるのか?
アキラ>!?
サヤカ>あたしはただ、あそばせてほしいというただけだ。
長居するとは一言も言っていない
アキラ>・・・
サヤカ>それとも、おぬし、アタシがこわいのか?
アキラ>そ、そんなわけ・・ないだろ・・・ただ・・
サヤカ>ただ・・なんだ?
アキラ>ここは、もう時間だ。出ないと迷惑が掛かってしまう
どうしてもやりたいなら、別に場所を取らないと
サヤカ>なるほど・・確かにな
 
アキラ>近くの旅館に、部屋を借りることにしよう。
どうだ?
サヤカ>いいねえ。文句はない。
アキラ@ところで君、誰?
名前くらい教えてくれてもいいだろう
サヤカ>サヤカだ
アキラ@サヤカか。いい名前だ
僕はアキラだ。

アキラ>早速なんだが、これは、いったい何の真似だ?
サヤカ>?
アキラ>こうやって、勝負を挑むことの意味だよ・・・
モノホンの賭場でやるとどうなるかわかっているの?
サヤカ>わかってるさ。
なにかを賭けて戦うということなるんだろう?
そうさな・・・アタシはこれでもかけようか。
この身、一夜(いちや)。どうだ?
アキラ>!!大きくですぎだ!! 
この身一夜(いちや)なんて、非常識だろ!!
サヤカ>なんだ?臆病風にでもふかれたか?
アキラ>・・・わかったよ・・おれは・・・おれは、負けたら、

君の言うことをひとつ、かなえるよう、努力してやろう。これで、どうだ?
サヤカ>そうか。それでいい。
アキラ>では・・・はじめるぞ・・・
サヤカ>ああ ・・・

アキラーー勝負 は丁半で。いいか?
サヤカーーああ。構わない。
アキラ>では始めるよ・・・
よござんすね・・・・勝負!
サヤカ>丁!!
アキラ>はやい・・・?
サヤカ>丁だ。はようあげんか
アキラ>なっ・・・!あああ!!
サヤカ>どうした?結果はどうじゃ・・・
アキラ>ち・・・ちょう・・・・
サヤカ>ふっつ・・・わたしの勝ちだな・・・
アキラ>く・・くそ・・・望みはなんだ・・・・
サヤカ>手を・・・
アキラ>え?
サヤカ>手をさしだしてくれ・・
アキラ>手‥を?うああああああ!!
サヤカ>悪い。ひとつはひとつだ・・・・
 
 
アキラ>どれだけねむったのだろう。

ボクはぼうっとしたあたまで周囲をみる。ここが何かの会場なのはわかった。
サヤカ>お、やっと目覚めたか
アキラ>こ、ここは・・・?
サヤカ>ここか?ここはな 賭場の会場だよ
アキラ>え?
サヤカ>アタシの仲間達と運営している賭場でな
今宵は敵対している団体と全面対決の場というわけだ
アキラ>な・・・なんだって・・・
サヤカ>それでな。あと1時間で賭場が開くんだ。
わるいが準備をしてくれ。
アキラ>え。ええええええええ・・・・・
サヤカ>君は私んところの助っ人ということで登録してある。
早く準備しな。さもないと殺されるよ。
アキラ>・・・!!ひ、ひいい・・・ホンモノ、ホンモノの抗争だああ!!
サヤカ>おっと、うろたえるんじゃないよ~。
何度か賭場は経験してるんだろ?
緋色の晒の賭場師「(ひいろのさらしのとばし)アキラ」くん
アキラ>よくぞ その名前をご存知で・・・
そ、そりゃそうだけど・・・
アキラN>ボクは急に背筋がピンとなるのを感じていた。
同じムジナのナントカというやつだろう
アキラ>た、たしかに、初めてじゃない・・・・
はじめてじゃないけど・・・・唐突すぎるよ・・・
サヤカ>・・・すまないな。
アキラ>これだけはハッキリとしてほしい。
どうして、こんな真似をしたんだ?ボクなんて、
そんじょそこらに転がっている一般人じゃないか!
サヤカ>だけど、立派な賭場はひらいていたじゃないか
アキラ>!
サヤカ>いいか今日は敵と味方がここで博奕で戦うんだ・・・
だから!!ここに来る奴はみんな血気盛んなやつらばっかだ。
アキラ>なん・・・だとっ!
サヤカ>もしも無様な真似をすれば、
責任を取らされてこの世とオサラバ。
そんな状況で賽打ち押し付けられたら、キミならどうする?
アキラ>・・・・・! 
たぶん・・緊張のあまり・・なにも手につかないと思う。
サヤカ>そうだろ?私もいっしょだ。
緊張のあまり、フラフラとこの場に来てみてたんだ。
そしたらキミが見事な賭場をひらいてた。
アキラ>・・・!
サヤカ>それをみていた私は、
喉から手が出るくらいに君が欲しくなった。
アキラ>・・・・!
サヤカ>・・・その喉から手が出てしまったということさ。
まあ、諦めてくれ。
アキラ>・・・・ああ、わかったよ・・・今宵のことは・・・あきらめよう・・・
サヤカ>さすがアキラ。物分かりが早くてたすかる。
 
アキラN>僕たちは化粧をしたり、衣装に着替たり、道具の確認や差し入れの手配などに手を焼いた。

そうこうしているうちにあっという間に時間は過ぎ、開場の6時を迎える。
サヤカ>ささ、みなさま、今一度静粛におねがいします。開場までいましばらくおまちくださいませ
アキラN>言うが早いか、サヤカは2人に目配せを送る。
アキラ>!?
サヤカ>ああ、君には言ってなかったな。
あそこにいるのは、雅と辰。私の部下だ。
アキラ>そ、そうなんだ・・・で、彼らとあわせて4人で、どう動くんだ?
サヤカ>私がおもうに、彼らには順番に壺振りをやってもらおうと思っている。
アキラ>ちょ・・・ちょっと待て!
ひい・・ふう・・・みぃ・・・
アキラ>じゃ、じゃあ、中盆は?
もしかして進行役を一人で
やろうっていうんじゃないだろうな?
サヤカ>そうだが・・・
アキラ>やめておけ。危険すぎる!監視が甘い!
もし、誰かが物言いを打ち上げてみろ・・・
見張りが薄いと指摘され、場は壊れる!
サヤカ>なっ・・・では、どうしろと!
アキラ>提案だが、中盆は最低でも3にしてはどうかと思う。雅さんと辰さんとぼくらと合わせて4人で座ればいい。
サヤカ>!
アキラ>俺が進行を担当し、
あとの二人は俺たちの隣に座って、
ひたすら不正がないかを見張るんだ。
君はそのまま壺振りを担えばいい。
サヤカ>なっ・・・
アキラ>畑が違うボクがいうのも変だが、
どんな状況でも不正はしこりをのこす。
不正を未然に防ぐこと、
それは雰囲気よりも大事な鉄則だ。ちがうか?
サヤカ>アキラ!・・・
アキラ>丁半のばあい、
場の信頼がモノをいう。
賭けが片方だけに寄ったら、
差額は胴師が負担しなきゃいけない。
信頼が崩れ、極端によるようになったら
胴師は破産に追い込まれる。
サヤカ>アキラ!・・・
ボクがやってる時も一緒だったさ。
いいか。目の前にいるのは
みんな野獣だと思ったほうがいい。
やつらがヘンなことをしないよう、
いざこざが起きないよう、管理するのだ。
サヤカ>・・・!
アキラ>大丈夫だ。これで、秩序と公正は、保たれる・・・・
サヤカ>アキラ・・・
アキラ>さあ、時間だ。はじめよう・・・場がひらく・・・・
サヤカ>そして、私は、声を発した。
サヤカ>みなさま今日はよろしくいらっしゃいました。
頭に座す、わたくしめは、名を。サヤカともうします。
身にまといしこの羽織。
つらづらと咲き乱れまするは、紺桔梗の花びら。
そして、この絢爛たる絵図(けんらんたるえず)
の姿にあやかりまして・・・
通り名を・・・桔梗のサヤカと名乗っております。
なにとぞよろしくおねがいします。
 
アキラ>さすがは、サヤカさん・・・
すげえな・・貫禄がちがう・・・
サヤカ>でははじめます・・・・・よござんすね・・・・方々、いざ尋常に!・・しょうぶ!!
アキラN>サアサア どちらさまも はったはった! 上方さまも 下方さまも、かけ忘れはご法度ですよ~
さあはった!さあはった! 
丁が15、半が11.半はおらんか 
半はいませんか・あ、半に賭けますか。
半ですね、半ですね。
はい、そろいました!! 賭け、成立しました!!
サヤカ>では、アガります。・
(ふんっ!・・・・)・・・丁!!ニロクの丁!!
アキラ>途端に眼前の盆台(ぼんだい)で金子(きんす)が駆け巡る。右へと左へと左へと右へと・・・
サヤカ>場が進むたび、賭けに出される金子の量が少しずつ増えてくる。あわせて、場の空気も上気してくる・・・
アキラ>こういう時に物言いがつくと、場は一気に崩壊する・・・それは、カタギの催し物のときも変わらない。

だから、ボクは常にそれを恐れていた。
サヤカ>アキラ・・・そこのつづら・・・
アキラ>えっ?・・ああ!
アキラ>そこには氷嚢で冷やされた、食べ物が用意されていた。ボクは一区切りついたところで
声を上げる。
アキラ>さて、さて、さて~ここでちょいと一服いれましょう!
手前どものこしらえました「鉄火巻き」でございます。どうぞ、めしあがれ。
アキラ>サヤカさん・・・
サヤカ>賭けのレートが急に上がり始めたから一息いれたんだ。
アキラ>なっ・・・
サヤカ>場の雰囲気が狂気に変わらないように、な・・・
アキラ>暑い・・ボクの緋色のさらしは腹のほうまで汗でびっしょりになっていた。
思わずサヤカをみやる。 サヤカは額に汗を浮かべながら凛とした顔つきで場の動向を統べていた。

一重の瞼が時折引きつけを見せる。緊張が最高潮に達している証拠だった。
サヤカ>ふぅ・・・暑い・・・・
アキラ>その声に、ふとその背中をみやる。サヤカは胸から上をすでに脱ぎ去っていたが、

さらけ出した肌は汗でびっしょりに濡れていた。
アキラ>ボクは布を出すと、汗しぶきを拭きぬぐってやることにした。
サヤカ>!ッ
アキラ>不意に敵意と憎悪を感じたボクは思わずその手を止める。
アキラ>ごめん。拭き上げてあげようかと思ったものだから、つい・・・
サヤカ>・・・あ、いや・・
アキラ>・・・・
サヤカ>続けてくれ。頼む。
アキラ>サヤカさん・・・
サヤカ>すまない。後ろを見せるのは嫌いなのでな・・
アキラ>・・・・・・・・じゃ、はじめるね・・・
サヤカ>ああ・・・
アキラ>・・・ほんとに・・・ゴメンネ・・・
サヤカ>勘違いするな。背後を預けるのはお前ががはじめてなだけだ。
アキラ>・・・・!
サヤカ>よろしく頼む。あと、鉄火巻き・・・
アキラ>・・!
サヤカ>キミのぶんまで準備がなくって申し訳ない。
アキラ>あ、いや・・・そこは気にしなくっていいよ・・・
アキラ>・・休会のあいだも、サヤカの肌からは汗がとめどなく噴き上げてきていた。

アキラ>あのさ・・・サヤカ・・・?
サヤカ>・・・どうした?
アキラ>あ、いや・・・・雅さんと辰さん・・・両名の動きがおかしい。
サヤカ>おかしい?どういうこと?
アキラ>先ほどから なにやら 観衆に目配せを送っている。
サヤカ>なんですって!
アキラ>本来、賭け手との不正をみつける役目だから、観衆に目配せを送るのは場違いだ。
何かが起ころうとしている。用心を。
サヤカ>了解した。だけどな、アキラ・・・
アキラ>!?
サヤカ>本日の私たちの役目は、まず第一に賭場の仕事をおわらせることだ。
アキラ>そう・・だな・・・
サヤカ>あの2人がなにをしているのかは、ここがはけた後で、私が直々に聞いてみることにする。それで、いいか。
アキラ>わかった。
サヤカ>ありがとう・・・さあ、時間だ。再開しようか
 
アキラ>さあ~さあ~さあ~次です次です、次の場に入ります。
僕たちはまた、緊張の渦中に飛び込んでいった。
再開後、第一場 サンミチの丁
第二場 グサンの丁
第三場 サブロクの半
第四場 サニの半
そこまで来た時に、恐れていたことが起きた。
アキラ>はい、そろいました!! 賭け、成立しました!!
サヤカ>では、アガります。
声>ちょ~~いと まてや!
サヤカ>!?
声>とぼけんじゃないわい!このアマ!わりゃ、イカサマしかけおったな!
サヤカ>イカサマとはおだやかじゃないな。貴様はだれだ。まずは名をなのれ!
声>ワイか。ワイは金属の鉄の蔵と書いて、鉄蔵っちゅうもんや。
休会後の四回の賭場。なんかおかしゅうないか?
サヤカ>おそれながら、どういうことでしょうか。
わらわはこの場をただただ公正にとりしきっているにすぎん。
不躾な侮辱は、賽打ちとして、断固、ゆるさぬぞ!
声>それじゃあ、聞くが、前後の四回の結果はなんぞ!?
四回のうち四回とも一つの賽は三から動いてはおらん
これをどう説明する!
サヤカ>それは・・・賽の目の気まぐれではないのか?
声>なんだと!
サヤカ>お天気様(おてんとうさま)でも、次の目は予測できんと嘆いた賽の目。所詮は人では測れないのではございませんのか?
声>ぐぬぬぬぬ・・・
サヤカ>そこまで申されるのでございますれば、賽をあらためてくださいまし!
万が一、細工が発覚いたしましられば、我らは喜んで責任をお取りいたします。
声>おう、しかれば、すぐに!
サヤカ>まちなされ!ただし、もし、賽に小細工がなかったとするなれば、鉄蔵さん、オトシマエつけていただきますからね!
声>望むところだ!さあ、賽をみてくれ!!
サヤカ>アキラ! さあ!
アキラ>サヤカさん・・・
サヤカ>かまわん!アキラ!!やりいや!!あけや!!
アキラ>(冗談・・きついぜ・・・)
サヤカ>アキラ!!!
アキラ>・・・・・!!!・・・・・どうぞ・・・・
サヤカ>賽の目は・・・・・・ピンゾロの丁!!・・・
サヤカ>くりかえす!!賽はピンゾロの丁!!
声>くそう・・・・くっそう・・・くっそう!!!・・・・絵図かきやがったな!!
サヤカ>結果は出ましたえ。 これでよろしいでございましょう?
雅、辰。この場のオトシマエはそなたらにおまかせしましたえ。
アキラ>お客人方!今一度もうしあげます!
厳粛に行われしこの場は残念ながらあれてしまいました。
今宵はこれでお開きにしたいとおもいます。本当にありがとうございました!
 
サヤカ>こうやってこの日は乗り切ることができた。
 
サヤカ>アキラ・・・今日はありがとう。
アキラ>いや。キミがすばらしかったからだよ。そして、君の部下も、すばらしいじゃないか・・・
サヤカ>ありがとう。
アキラ>それじゃ、ボクはここいらで。
サヤカ>はい。また・・・・
サヤカ>そのとき、私は背後から鋭い視線の存在を感じる。
気のせいかなと考えていたのだが、
この気のゆるみが このあと、事件を引き起こすことになろうとは
考えてもみないことだった・・・・
エピソード1 END

第11条~ライブオンプロファイル4

アキラ:
午後8時。
僕たちはタルダクリニックいう看板のある
建物の中にいた。

一緒に来たハルと言う女警部は、
先に診療室の方に入り、
僕は待合室に待たされた。

ハル:
今、準備するからちょっと待っててね

アキラ:
あれ?こんなシーンどこかで出会ったな

僕は自らを省みる

そうかそれは・・・

それは勤め先で行われた研修会という
名目の密会での出来事だった。

はいアキラさん。別室での検査となりまーす

え、どういうことですか

ちょっとすぐには言えないんですけど
重大な病原保有の疑いがあります。
すみませんが、こちらへ。

案内された別室にて
重大な病原とは一体どういうこと?

10分後。その医者が別室に来た。

今日はすいません。
今から3本注射を打ちます。
それぞれ麻酔です。
適性があるので
3タイプ打たせていただきます。

あのすいません
どういう症状なんですか

結果が出る前の過程については
一歳おしゃべりできないことになってるんで

え?えええ・・・

されるがまま、なされるがままに
僕はその注射を受け、
ほどなくして、意識を手放した。

次に気づいたとき・・・
僕は病院のベッドの上だった。

あれここ・・・
どういう意味?

そんな時に耳に響く
カルイ言葉

ああらー
あきらさんお目覚めになりましたか?
ごめんなさいね〜
私の誤診だったようです

聞けばその医者
直感で物を言ってしまったとのこと
上司に相談をしたが
会社の定期検診だったこともあり
転ばぬ先の杖状態だから
いいんじゃね?って話で決着してしまった。

そんなことがあってから
お医者さんというやつを
極端に信用できなくなってしまった。

ヒトにとっては痛快だけど、
自分にとっては痛恨の
そんな過去のエピソードだ

ハル:
準備できたわよー
入ってきてー

アキラ:
そこにあったのはレントゲンのような装置

ハル:
はいそのままー
はいオッケー

えっとー検査結果はっと
特に異常は無しね。
骨折も打撲もなんにもナシ。
あんなことがあったのに・・・
強いのね あなた

イヤ・・・
それほどでも・・・

なに?まだ何か
不満なことでもあるの?

あ・・・いや・・・

診察スピードが・・・
やたらと早いなと思ってさ

ああ〜
ここの凄腕のタルダ医師はさ。
患者さんの負担を第一に考えてくれるの

ええ!?
そうなんだ

診察スピードだって、
早ければ何でもできるって。
これ、HCT(エイチシーティー)
っていうんだけどさ
先生の自作なんだよ

すごいなあ
尊敬できる先生なんだね
世の中こんな先生ばっかりに
なればいいんだけど

どういうこと

医療詐欺?

定期検診の結果をもとに
異常が発見されましたので
すぐに入院してくださいって
内容のやつ。

えーそうなんだ
ひどいな

それ以来極度の
医者嫌いになっちゃってね
はっきりてトラウマなのさ

そうなんだ。

そのときだった。

突然、待合室においてあったテレビが
放送を開始した

その放送内容は何と
緊急時に使用される臨時ニュースだった

その内容は僕たちを震撼させる
内容のものだった。
時刻は午後9時を回っていた。

 

第11条~ライブオン・プロファイル3

タルダN :
夜7時・・・
俺は厳重に戸締りをすると
表看板をクローズに切り替える。
タルダN :
ここは下町の一角。
都会の喧騒からもかけ離れた静かなところだ。
ちょっとエリアを外れれば
治安の悪い地域になってしまうのだが、
そこは、とある裏ワザで
静かな毎日を暮らすことができていた
タルダN :
ああ・・・俺は実感する
ここにいるのは、静かな人たちだけだ。
・・・一人を除いて
SE:
RRRRRRR
タルダ:
ハイ。タルダクリニック。

ハル:
あ、もしもし 先生?
実はお願いがあって・・・
一人急患で見てほしい人が
いるんだけどお願いできるかな

タルダ:
なんだって!?今日はこれで終わりだ
馬鹿なこと言うな!

ハル:
んじゃ、3分で到着するから
準備よろしくね♪

タルダ:
3分って、お前・・・
カップラーメンじゃあるまいし、
そんなオオグチたたいて
大丈夫なのか?
もし到着できなかったら
深夜のデート付き合ってもらうからな

ハル:
うんわかった。
でも安心して。
今度の賭けでは私は負けないから。
じゃあね病院開けて待っててね

タルダ:
おい、おーーーい!!

タルダ:
切れたよ。マジかよまったく。
仕方ねえな まったく・・・
救急室の電源、オンっと・・・
タルダ:
赤外線サチエーションシステム展開
電子遠隔オペシステム・ログオン完了
スタンバイ完了。機器の各部異常を認めず・・・
・・・ただし、肝心のクランケが
まだ到着してない・・・
・・・するわけない、と。
タルダ:
・・・いつ到着するのかな?
ハル警部・・いや、ハル少佐。
タルダ:
そう言って眺める時計は
すでに約束の時間を過ぎ、
午後7時10分を差そうとしていた。
ハルn:
その頃、私は例の男を乗せ
ハイウェイを疾走していた
ハル:
くそ!
このままだったら間に合わない!
またクレームつけられる!!
ハル:
くそ!どうしてハイウエイが
通行止めになってんのよ!?
工事するなんて申請来てなかったわよ
アキラ:
あのさ・・まだ目的地には到着しないのかな?
ハル:
なによ。まだよ!見てわからない!?
今一生懸命運転してるのっ!
って、ちょっと! あなた!!
なんで話しかけてるのよ!?
アキラ:
なんでって・・・失礼だなあ・・・
生きてるからに決まってるじゃないか・・
警視庁警備部交通課ハル警部。
ハル:
あなた、なんで私の名前を・・・
アキラ:
なんでって・・ヘルメットに
お名前書いてあるじゃないですか・・・
ハル:
まあ・・
それは、そうなんだけど・・
アキラ:
それにしても
痛烈な一撃でした・・・。
もう少しで気絶するところでしたよ。
プロテクターしといてよかった・・
ハル:
あ、あなた・・・
アキラ:
初めまして アキラと言います。
このシティで
ネットガーディアンをしています
ハル:
ネットガーディアン? 何それ
アキラ:
シティのデータ配線ケーブルとかを保守する
ボランティア隊のことですよ。
ハル:
そんなのあるの!?
アキラ:
ハイ。暮らしが
便利になりすぎちゃった反面、
老朽化は進んでいるので
日々新しいものに
取り替えなくちゃいけないので。
ハル:
それじゃあ何故襲ってきたの
アキラ:
あなたが踏み込んで来たから
チンピラにでも襲撃されたと
思ったんですよ。
ハル:
それで私も同類だと思われたと
アキラ:
仕方がないんですよ。
最近になってネットガーディアンたちが
何者かに襲撃される事件が
起きるようになったので。
ハル:
保守の仕事をしている人を襲撃!?
どうして?どんな目的で!?
アキラ:
そこまで詳しくはわかりません。
とにかく、そんな経緯で
少なからず自衛の手段を
持つようになったんです。
まさか、警察の方だったとは・・・
誤解でした。すみません。
ハル:
誤解のことは、承知したわ。
でも、それはそれでそれとして・・
あなたには絶対ついて来て
もらわなきゃいけないところがあるの
アキラ:
え!? どこなんですか!? それって。
もしかして、警察署とかですか!?
ハル:
ちがうわよ!
大体において逮捕してないでしょ!?
アキラ:
あ、そうか・・・
ハル:
捕まってて。飛ばすわよーーーー
アキラ:
うわあ。うわああああーーー
スピード出しすぎだよーーーっ
タルダ:
ふむ。遅いな
俺はそう言うとタバコを一服した。
現在の時刻夜7時半。
30分以上の遅刻である
まぁ、いいか・・・
そういうこともあるか
そう言いながら俺はほくそ笑む
タルダ:
そういや、アイツ「ハル」とは・・・。
俺は出会った日の思いを巡らせていた
あいつ、ああ見えて本職は・・・
警察官だったな・・
俺はおもわず口元に不敵な笑みを浮かべた。
アキラ:
7時を40分くらいすぎたころ
ボクはその時、
ハルのバイクの後ろに乗っていた。
いや、もとい、積まれていた。

ハル:
くそーーまた止まったー
なかなか到着しないなー
なんで今日に限って
こんなによく止められるのよ

アキラ:
あれ?また渋滞だ・・・
普段はここ渋滞なんか
しないんじゃなかったっけ?

ハル:
うん。今日にかぎって起きてるのよ。
ちょっと、交通課に問い合わせてみる。
工事があるんなら、迂回しましょう。

アキラ:
いつもは・・・おこらない
渋滞が起きてる・・
どういうことなんだ??
・・他のネットガーディアンたちは
どうしているんだろう・・?

ハル:
おかしい・・・絶対におかしい

アキラ:
どうしたの?

ハル:
交通センターには工事の連絡はないそうよ
道路状況にも 事故や落下物の情報も何も
ないそうよ。
SE:
RRRRRR
ハル:
ハイ!もしもし こちらハルです!
タルダ:
あー俺だ 俺だ タルダだ。
ハル。こちらへはもうすぐ着けそうか?
ハル:
ごめん!もうちょっとかかりそうなんだ。
タルダ:
もうちょっと?
まだまだかかるの間違いじゃないのか
ハル:
グフ・・・ご名答。
痛いところを・・・
タルダ:
まあいいさ。
ちょっとすまん。
別の現場に行くんだ
ハル:
え!?そうなの
タルダ:
病院の機械はオンにしておく
お前の都合で使ったらいい
じゃな
ハル:
じゃあ?じゃあって・・・
・・・きれちゃった
もう、失礼しちゃう・・Bu!
アキラ:
だれ?
ハル:
救急救命士のタルダ先生よ。
スゴ腕って言われてるし、私が尊敬する人よ。
アキラ:
へーそうなんだ
親しいの
ハル:
まあね
信頼できるおじ様ってところかしら。
アキラ:
おじ様?王子様じゃなくて?
ハル:
そうよ。王子さまと言うには歳が食い過ぎてるの
もしもあなたほどの若さだったらよかったかな
アキラ:
(笑)理想像というやつですね
ハル:
そうとも言うわね。
アキラn:
時刻は7時50分を迎えようとしていた。
元来、バイクは渋滞を
避けられるという利点がある。
しかし、今日の場合は、
信号によく捕まるので、
その利点は思うように発揮できないでいた。

ハル:
もう・・あったまきた

アキラ:
どうしたの?なにをするの?

ハル:
スラスター射出。ボトールモードに切り替え
エンジン・全開!!
(VOTL=垂直離着陸のこと)

アキラ:
な、なんだ・・・うわああああ!!
ば、バイクが・・飛んでる!?

ハル:
正確には垂直離着陸するだけなんだけどね。
このまま、下にある駐車場に降りるわ。
そしたらクリニックまではすぐそこよ!

アキラ:
お、おう・・・

アキラN:
そこから先は驚嘆しかなかった。
ハル:
結局、目的地である
タルダクリニックについたのは、
午後8時のことだった