雪音版~四十九条賭場物語 エピソード2
アキラ>ここは四十九条街。東西7区画、南北7区画に基盤目状に整備された都。
ツボミ>この街では、沢山の人が生活を営んでいた。
アキラ>ボク、アキラは昼間は,とある力仕事の商売についていて、
夜や休日は催し物屋として賭場をひらいている、
ツボミ>アタシはとある組の要請で賭場をひらくことを生業としている。
その手の口から依頼があれば、場所を確保しては会を催している。
ツボミ>はじまりは、とある晴れた非番の日。
アタシが街に遊びに行った時のこと。
アキラ>このとき ボクは いわゆる仕事の日。
ボクはサイコロ相手ではなく、眼前にある「荷物」と戦っている日だった。
アキラ>よいっしょ・・・よいっしょ・・・ふう。これで6つ。
アキラ>あ!お客さん! いらっしゃいませ。あ、商品準備でございますか?
ええ。ええ、ええ。もう、もう、出来ておりますよ。
これでございますね。毎度ありがとうございます。
アキラ>え?これ一式を。ご自宅まで? 了解しました。早速お届けしますので。
はい、はい・・・それでは ありがとうございました。
ツボミ>やあっ! アキラ!!
アキラ>え? だれ? ボク・・誰かに呼ばれた?
ツボミ>こっち こっち! 呼んだのは アタシだよ!!
おーい! アキラーー!
アキラ>!? こ、こんにちは・・・?
ツボミ>よおっ 近くを通りがかったものだから、
お邪魔してみたんだよ。元気だったか?
アキラ>あ、あの・・どちらさま・・でしょうか?
ツボミ>・・・!?
本気で言っているのか? 私だ!ツボミだ!!
アキラ>ツボミさん!? ほ、本当!?
・・・感じがちがうから びっくりした・・・
ツボミ>失礼だぞ!コラ!
アキラ>ゴメン・・・
アキラ>ところで、ここがよく分かりましたね
ツボミ>ああ。 いろいろ 歩き回ったからな・・・
アキラ>で、 何の用なんです?こんなとこに
ツボミ>用か。・・いや・・さ・・・
アキラ>ん?
ツボミ>・・・用ってのがなかったらきちゃいけないのかい?
アキラ>あ、いや・・・そんなことないですけど。
あ、そだ・・んじゃ、今晩、ウチ来ます?
ちょうど、職場の人に野菜たくさんもらっちゃって・・・
一緒に食べません?今宵は、鍋で。
ツボミ>ああ・・いいねぇ ごちそうになろうかな・・
でも、ちょっと待って。
アキラ>えっ?
ツボミ>お誘いいただく身でわるいのだけど、
鍋の中身は野菜だけ?
アキラ>ま、そうだけど・・・
ツボミ>そんな・・・それはダメだよ さみしいよ。
どれ、アタイが買いに行ってきてやろう。
アキラ>え・・でも・・・悪いよお
ツボミ>大丈夫だ。任せろ。
どうせ、アタシはキミが仕事が終わるのを待たないと
いけないんだ。
アキラ>しかし・・・
ツボミ>大丈夫だ。任せておけ。
夜には とてもおいしい鍋の 準備をしておくからさ。
アキラ>そうか? じゃあ、お言葉に甘えて・・・
ツボミ>うん、うん。・・・じゃあ、またあとで。
アキラ>うん。またあとで。
ツボミ>どんな食材がいいかな?アキラってば、筋肉質なのよね。
日頃から労務系の仕事してるから、栄養のあるもの準備しなきゃ
それにしても、あの腹掛け良く似合ってるな
あぁゆうのが アキラの趣味なのかな?
アキラ>へ、へっくしょん!
ちょっと、風が吹いてきたな・・・
仕事、早く 終わらさないとな・・・
ツボミさんも、まってることだし、もうひと頑張りするかなっ・・・
ツボミN>・・というわけで、わたしは、この町の市場にやってきた
意気込んで、鍋の具を求めて奔走(ほんそう)した。したのだが・・・
アキラ>ええええーっつ。
市場で売り切れが続出してて、結局やさいだけになっちゃった?
ツボミ>ああ。ウマい肉をさがしていたら、いつの間にか売れちゃっていてだな
気づいたら、閉店とか 売り切れになっちゃってたんだ・・・
アキラ>あれまあ・・・
でも、あきらめちゃったら終わりだから、一緒に行ってみよう。
ツボミ>すまない・・・
アキラN>ということで、市場に来てみたわけだが・・・
アキラ>本当だ。売れきれちゃってる・・・・
ツボミ>だろ・・・・
ツボミ>あれ? おい、 アキラ・・・
アキラ>え?なに?
ツボミ>だれか・・・ゴロツキにかこまれちゃってる・・・・
アキラ>ほんとだ・・・
ゴロツキ>てめぇ!これじゃ全然たりねえんだよ!
さっさとカネだせやカネ!
なに!?無いだと!? 使えねえ・・・・
これでも 売りさばいてやるかな~
え?ダメだぁ?
ほおおおお! おめぇ ええ度胸してるじゃないか!
ゴロツキ>・・・・!? 痛でぇ痛でぇ痛でぇ・・・・!
てめぇ! なにしやがんだ!!
ツボミ>・・・・やめなよ。 いやがってるじゃないか・・・
アキラ>(はるか遠くへ向けて)
たいへんだ~~ ケンカだケンカだ!
誰か来てくれ~ おーい!!
ゴロツキ>ちっ!面倒な手をつかいやがって。
おい!今日のところは ひきあげるぞ!!
<<間>>
アキラ>大丈夫。居なくなりましたよ。
ツボミ>・・大丈夫ですか?
レナ>・・・ハイ・・ありがとうございます・・
アキラ>ところで・・ アナタ 見ない顔ですけど・・・
レナ> はい。世にある珍品を売り歩く 名もなき行商人ですから・・・
ツボミ>名もなき 行商人さんが なんでゴロツキたちに
からまれていたんですか?
レナ>露店を開いていたからなんです。
なんでも、このへんでの出品には 組合への加盟がいるとかなんとかで・・・
アキラ>ひ、ひどい・・・
レナ>来ても日が浅い、貧乏行商人の悲運とやらいうやつですよ・・・
アキラ>・・・売れない行商人・・・?
そうだ! あの すみません・・・
レナ>どうしました?
アキラ>鍋の具になる「お肉」って持っていらっしゃいませんか?
レナ>肉、ですか・・・
アキラ>ハイ!
レナ>ないことも・・・ありませんが・・・
とても めずらしい 食材なので、お口にあいますか どうか・・・
アキラ>いいですよお。いいですよお。
ちょうど 買いそびれていた ところでして・・・
ツボミ>わくわく☆
アキラ>ほら、連れも期待していますし・・・
レナ>・・・そうですか・・・わかりました。
これです。いかがですか。
ツボミ>これは!? 鶏肉?
やったぁ~~
アキラ>これで いいです 売ってください!!
レナ>わかりました。いいでしょう。
ツボミ>やった♩やった♩やった~
アキラ>ありがとうございます。感謝です。
レナ>そうですか?良かったです。
そうだ、忘れないうちに・・・
ツボミ>えっ?
アキラ>なんでしょう?
レナ>これです。 この首飾りも差し上げます。
ツボミ>これ、勾玉(まがたま)?
レナ>似たようなものです。でも、お二人には大切なものです。
あなたには・・・これ
アキラ>ボクには・・・赤いやつ?
まるで燃えるような・・・輝きがある・・・
レナ>火の神の使い・・・
アカオオカミの魂が込められているといわれています。どうぞお納めを。
レナ>あなたには・・・これです・・・
ツボミ>わたしには青い・・・やつ?・・・
夜空にまれに浮かび上がる・・・青い月のよう・・・
レナ>月狐(ゲッコウ)・・・
月の魔力を浴びて生きるといわれる狐の魂が込められています。どうぞ。
ツボミ>素敵♩気に入った。
レナ>今日差し上げる食材は「ヤタガラス」とよばれる稀有なものです。
助けてくださったお礼です。天の加護があなた方にあらんことを。
アキラ>ほんとうに、ありがとうございました。
レナ>どういたしまして。では、わたしはこれで・・・・
アキラ>あ、そうだ。お代金は・・・
あれ?
ツボミ>ん?どうしたの?
アキラ>いない・・・どこに行っちゃったんだ・・・
消えたみたいだ・・・もしかして・・妖夢?
ツボミ>はやくいこうよ~~
アキラ>おう・・・おう!
ツボミ>アキラの家って・・・ここ?
アキラ>ええ、そうですよ
河原の前なんですよ・・・だから家賃は安くって・・・
ツボミ>大丈夫なの?川が氾濫しちゃったら オシマイだよ?
アキラ>はい。だから引っ越しとかは もう慣れちゃいましたよ。
ツボミ>なるほど・・・・
アキラ>さ、そんなことより、どうぞどうぞ~
ツボミ>あのさ、台所借りちゃっていいか?
これ、下ごしらえしなきゃなんだ。
まったくあの商人、血のついたところもくれちゃって・・
アキラ>新鮮な証拠ですね・・・今時、そんなん 売ってる店・・そうないですから・・・
ツボミ>アタイも今日初めて見たけどね・・・・あんな行商人・・・
・・・と、鍋準備しておいてよ。ざくっと入れちゃいたいんだから
アキラ>うん。わかった。・・・あっ・・・
ツボミ>ん? どうした?
アキラ>鳥の血が、手についちゃった・・・・
ツボミ>ありゃ。それは・・いけない・・・
アキラ>大丈夫。拭いてしまえば大丈夫だから
これが仕込みサイコロについたんだったら、どうなるかわからないけどね。
ツボミ>ははは。確かにそうだね
アキラ>いいよ、別に。気にしてない。
それより、早くご飯にしよう。時間頭とお腹がくっつきそうだ。
ツボミ>ゴメン。 もうちょっとだけ待って。 もうちょっとで できるから。
そうだ・・・ねえアキラ。
アキラ>ん?
ツボミ>聞いたこと あるかな?うわさ話なんだけど・・・
紅の賽(クレナイのさい)って知っている?
アキラ>:紅の賽(クレナイのさい)?いや、知らない。なんだ?それ
ツボミ>:どんな状況で だれが振っても決まった数の出る賽なんだってさ
アキラ>:へえ・・でも、それ、全部の面が同じ印刷とか、重心がズらされている、
単なる イカサマ賽のことじゃないのか?
ツボミ>:いいや、どうも違うみたいよ。誰がどうみても、普通の賽みたい。
アキラ>:へえ・・・それは 気味が悪いな。
ツボミ>でね・・・そのサイコロは特別な理由で1の目が赤いらしいの。
アキラ>特別な理由? ちょっとまて、
サイコロって1の目は全部「赤」なのが常識じゃないのか?
ツボミ>ちがうんだよな これが。ちゃんと理由があるんだ。
アキラ>へええええ どんな
ツボミ>知りたい?
アキラ>うん 知りたい
ツボミ>どうしても?
アキラ>うん どうしても。
ツボミ>わかった。それじゃあさ・・・
アキラ>ん?
ツボミ>化粧してくれないか?
アキラ>え?
ツボミ>化粧だよ。ほら、賭場のときやってる あれ。
アタイもするからさ~
アキラ>別にかまわないけど・・どうして?
ツボミ>あなたのそれが とっても凛々しくて、好きだからさ~
アキラ>ん~べつにいいけど。こちらは減るもんじゃないし・・
それにしても、ボクのこれに需要があるなんて初耳だぞ?
アキラ>・・・・はい。おわった。おまちどおさま
って ・・・えええええ?
ツボミ>じゃん♩ ついでにわたしもやりました
アキラ>おお! にあう!!
って・・・ ツボミさんまで やることないのに・・・
ツボミ>いいの。アタシも、これがすきなんだから
アキラ>そうか?ツボミさんがすきなら、それでいいんだけど・・・
・・・ところで。あのさ。
ツボミ>わかってる。1が赤の理由だろ?
アキラ>うん
ツボミ>あれは、じつは 獣の目なんだってさ・・・
アキラ>なんだって・・・・
ツボミ>遠い昔に異人の地で生まれたサイコロは、
はじめ、鳥の骨がその材料だった。
賭け事が盛んな国だったこともあって、
サイコロの材料として、たくさんの鳥の命が奪われていった。
そして、とある雷の夜。サイコロに雷が落ちた・・・
アキラ>そ、その瞬間に、獣の怨念がサイコロに乗り移った・・・?
ツボミ>らしいな。その証拠に、その時の直後に行われた賭場で
ピンゾロを出した人が、獣に化けた事件が起きた。
アキラ>:なんだって・・
アキラ>:人が獣に化けてでるって・・・まさかぁ?
ツボミ>:でも、実際にあったんだよ。ピンゾロ出した人の目が突然・・
アキラ>:突然?
ツボミ>:赤くなった。そして、狼に姿を変えた・・・
アキラ>:なん・・・だと・・・。
ツボミ>:そう、人が身も心も獣と化して、血をもとめ、すすりつくす・・・
アキラ>:なんだって・・・
ツボミ>:原因不明、因果まで不明ときてる。だから、巷ではこの噂だけはご法度とされてきたんだ。
アキラ>:そうだったのか・・知らなかった・・・
ツボミ>:でさ、でさ、最近でたっていうのがさ・・・
アキラ>ううう・・・ううう
ツボミ>どうしたんだ?アキラ?
アキラ>いや、ごめん。ちょっと目がシバシバしてきちゃったもんだから・・・
あと・・・気持ち悪い・・・・
ツボミ>大丈夫か?
アキラ>ゴメン・・・。ちょっと横にならせてもらう。
ツボミ>うん。そうするといい。
アキラ>:ZZZZ・・・
ツボミ>寝息をたてたか・・・
アキラのやつ 大丈夫かな?
吐いたりしてないから、それほどじゃないんだろうけど・・・
仕方ない。医者はこの辺にいないし。
夜遅いからな・・・・
アキラ>:ZZZZ・・・
ツボミ>あした、すぐに礼を言わなきゃな。
ふぁあ・・・眠くなってきた。アタシも寝よう・・・
・・・・すーすーすー
★
アキラ>:はあ・・・はあ・・はああ・・・
ツボミ>:!?
アキラ>:はあ・・・はあ・・・はあああ・・
ツボミ>:どうしたんだ・・・アキラ?
アキラ>:焦がれる・・・体が・・熱い・・・
ツボミ>:おい!おい!しっかりしろ!!
アキラ>:ううううう・・・・っ!!
ツボミ>:おい!アキラ>!おいっ!!
アキラ>:ほしい・・・ほしいんだ・・・
ツボミ>:!?
アキラ>:血が、ほしい・・・血が・・・(やあっ!!)
ツボミ>:わあっ・・・!なにするんだ・・!
アキラ>:血がほしい・・・肉がほしい・・・おまえ・・たべる・・たべられる・・・
ツボミ>:!!!
アキラ>:(刃抜いて)やあっ!
ツボミ>:うあああっつ・・・あ、あしが・・・
アキラ>:足に一本ずつ刀を突き刺せば・・逃げられないんだ・・知ってたか?・・・ククク・・・逃がさない・・・絶対に!!
ツボミ>:うあああっつ!!・・・両足が・・うごかない・・・・
アキラ>:おまえの・・・心臓をもらう・・・歯ごたえ抜群のな!
ツボミ>:うあああ!・・・砕かれる・・砕かれる・・・
やめて・・やめて・・・あああ!!
ツボミM>(わたしを・・・よんで・・・召喚の詩を・・・詠んで・・・)
ツボミ>だ、だれ・・・? そ、そうだ・・!
天空に召します 月の神。わが身に宿りて妖狐と成せ!
アキラ>ガブッ・・・・ううっ・・・・
ツボミ>ふう・・・狼に噛まれても 妖狐は死なない・・・
噂のとおりだったということね・・・
ツボミ>今度はこっちの番・・・妖狐の力で、魔力を吸う・・・
アキラ>やめろ・・・あああっつ・・・力が・・すいつくされていく・・
アキラ>:ああああ!!!! やめろ・・やめろおおお!!
アキラ>声が枯れると思うくらい、ボクはのたうちまわり、叫び続ける。
アキラ>・・・ほどなくして、ボクは力尽き、意識を手放してしまうのだった。
se>ちゅんちゅん・・・ちゅんちゅん・・・・
アキラ>:!!朝?
ツボミ>:おい!アキラ どうしたんだよ!突然寝込んじゃって!
アキラ>:!?
ツボミ>:びっくりしたよ。サイコロの話しの途中、熟睡しちゃって・・・
起こしても起こしても起きないんだもん。
アキラ>:・・・・ご、ごめん
ツボミ>言い忘れてたけど、サイコロの1の目が赤いのは、製造業者のせいなんだってさ。
諸説あるけど、一番これが有力らしいよ。
アキラ>そう・・:なんだ・・・そっか・・・あれは 夢か・・・
ツボミ>ん?なに? あれって・・・・
アキラ>:なんでもないよ! さあ、今日もがんばろっ!
また、週末には賭場をださなきゃいけないしな。
ツボミ>:ああ、そうだねっ! きょうもがんばろう!!
ツボミ>あ、そうだ・・・・
アキラ>え?
ツボミ>妖狐は狼に噛まれても死なないんだよっ
アキラ>え、えええええええ・・・・・・
夢じゃ・・・なかったのか・・・・
=END=