雪音版~四十九条賭場物語 エピソード1~ | 劇部屋24シアターズ

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劇部屋24のオリジナル作品「月羽妖夢伝」制作近況や
劇部屋24での上演記録を残していきます!!

雪音版~四十九条賭場物語 エピソード1~

<登場人物>

ツボミ>元とある組の構成員。今は要請などにより賭場を開いて、腰元を行う「賽振り」
和服を着用し、両肌、もしくは片肌脱ぎをしている(袖があると邪魔になるため)

年齢24 口調は現代風 一人称 アタシ

アキラ>やくざの世界で横行している賭場ネタをダシにイベントを開いている、アマチュア「賽振り」

もちろん、当人はカタギの人間である。赤いさらしを巻き、和服を着用。こちらも、両肌、もしくは片肌脱ぎをする。
年齢22。口調は現代風 一人称 ボク

N>話は元禄の世。戦乱無く太平なりし頃の話。表の世では町人文化華やいだ世の中となっていたが、その背景裏側では、止められぬ闇がひそんでいた。
ここは東西7区画、南北7区画に、碁盤目状に開発された、町人の都 通称「四十九条街(しじゅうくじょうがい)」。

この都市では、今日も事件が起きようとしていた。
これは そんな都市で起きたことの事件簿。
その渦中を駆け抜けた、男と女のちょっと変わった、物語。
オーディオドラマ「四十九条賭場物語 第一話」

 

アキラ>サアサアサアサア、みなさん寄ってらっしゃい見てらっしゃい!

お待ちかね!丁半勝負の時間だよっ!取り決めは簡単。

種も仕掛けもないこのサイコロ。こうやって入れ物の中でカチャカチャして

出てきた目をあてるというものだよ~

サアサアサアサア賭けた賭けた!丁か半か、さあ、さ、はったはった!!

ツボミ>・・・・

アキラ>サアサアサアサア・・丁がでました半もでました。

その割合は丁がちょっと多いか?

さてみなさん!いかがでしょう?いかがでしょう?

ツボミ>フン!・・・

アキラ>(ちょっとムッとして)・・さあ。出そろいました~出そろいました~

いかさま、八百長、口八丁に手八丁、その類の仕事はやっちゃいませんやりません。

ささ、はったはった~~~~

アキラ>(でたことを確認してから)さてまいります!よござんすねっ!

しょうぶ!!

アキラ>7!でございましたっ!!

 

アキラ>さてさて、お客人方・・宴(えん)ならぬ賭場(とば)たけなわではございますが・・・ここいらでおひらきといたします。今宵のごひいき、まいどありがとうございました・・・

 

ツボミ>ちょいと・・・

アキラ>!?ん?

ツボミ>・・・あそばせてもらうよ

アキラ>おい、おい、だめだよお。もう花会はおひらきなんだから。

またこんどきなよ?な?

ツボミ>そんなこと言ってにげるのか?

アキラ>ええ!?

ツボミ>アタシは ただ、あそばせてほしいといっただけだ

アキラ>・・・

ツボミ>ははーん さては、、おぬし、アタシがこわいのだな?

アキラ>そ、そんなわけ・・ないだろ・・・ただ・・

ツボミ>ただ・・なんだ?

アキラ>ここの場所が、閉館時間なんだ。

どうしてもやりたいなら、別室にでも、行かないと

ツボミ>なるほど・・



アキラ>近くの旅館に、部屋を借りた。どうだ?

ツボミ>うん。いいね。文句はないよ。

アキラ>ところで・・・これは、いったい何の真似なんだ?

ツボミ>へ?

アキラ>こうやって、勝負を挑むことの意味・・・わかっているのか!?

ツボミ>わかってるよ。なにかを賭けて戦うということ。でしょ?

そうねえ・・・アタシはこれでもかけようか。この身、一夜(いちや)。どう?

アキラ>どう?って・・・大きくですぎだ!! この身一夜(いちや)なんて、非常識だろ!!

ツボミ>どうしたの?臆病風にでもふかれた?

アキラ>・・・わかったよ・・ボクは・・・ボクは、負けたら、君の言うことをひとつ、かなえるよう、努力してやろう。これで、どうだ?

ツボミ>そうか。それでいい。

アキラ>では・・・はじめるぞ・・・

ツボミ>いいよ。はじめよう。

アキラ>よござんすね・・・・勝負!

ツボミ>丁!!

アキラ>はやい・・・?

ツボミ>へへーんだ。丁だよ。はようあげな

アキラ>なっ・・・!あああ!!

ツボミ>どうした?結果はどうだった?

アキラ>ち・・・ちょう・・・・

ツボミ>ふふふ・・・あーっはっはっは!アタシの勝ちね!


アキラ>く・・くそ・・・望みはなんだ・・・・

ツボミ>手を・・・

アキラ>え?

ツボミ>ここにこうやって・・・手をさしだして。

アキラ>手‥を? なんだ、これ、注射!?
 

うああああああ!!・・・ぁぁぁ・・・・・

ツボミ>悪い。ひとつはひとつだ・・・・

 
 

アキラ>どれだけねむったのだろう。ボクはぼうっとしたあたまで周囲をみる。ここが何かの会場なのはわかった。

ツボミ>お、やっと目覚めたか

アキラ>こ、ここは・・・?

ツボミ>ここか?ここは、あれだ。

アキラ>なになに・・・第37回記念特別花会 開催会場・・・? 

ツボミ>そのとおりだ。それでな。あと1時間で賭場が開く。準備をしてくれ。

アキラ>え。ええええええええ・・・・・

ツボミ>早く準備しな。さもないと殺されるよ。

アキラ>・・・!!ひ、ひいい・・・ホンモノ、ホンモノだああ!!

ツボミ>おっと、うろたえるんじゃないよ~。何度か賭場は経験してるんだろ?

緋色の晒の賭場師「(ひいろのさらしのとばし)アキラ」くん

アキラ>そ、そりゃそうだけど・・・よく その 通り名をご存じで・・・

アキラN>ボクは急に背筋がピンとなるのを感じていた。同じムジナのナントカというやつだろう

アキラ>た、たしかに、初めてじゃない・・・・はじめてじゃないけど・・・・唐突すぎるよ・・・

ツボミ>・・・すまないな。

アキラ>これだけはハッキリとしてほしい。どうして、こんな真似をしたんだ?ボクなんて、そんじょそこらに転がっている一般人じゃないか!

ツボミ>だけど、立派な賭場はひらいていたじゃないか

アキラ>!

ツボミ>・・・この記念特別花会はな、来賓ふくめて50人ほどの規模で行われる大規模なものだ。おまけに、ここに来る奴はみんな血気盛んなやつらばっかだ。

アキラ>50人・・・だとっ!

ツボミ>なにかコトが起これば、責任を取らされてこの世とオサラバ。そんな状況で賽打ち押し付けられたら、キミならどうする?

アキラ>・・・・・! たぶん・・緊張のあまり・・なにも手につかないと思う。

ツボミ>そうだろ?アタシもいっしょだ。緊張のあまり、フラフラとあの場に立ち寄ってみてたんだ。そしたらキミが見事な賭場をひらいてた。

アキラ>・・・!

ツボミ>それをみていた私は、喉から手が出るくらいに君が欲しくなった。

アキラ>・・・・!

ツボミ>・・・その喉から手が出てしまったということさ。まあ、諦めてくれ。

アキラ>・・・・ああ、わかったよ・・・今宵のことは・・・あきらめよう・・・

ツボミ>さすがだな。物分かりが早くてたすかる。

 

アキラN>僕たちは化粧をしたり、衣装に着替たり、道具の確認や差し入れの手配などに手を焼いた。そうこうしているうちにあっという間に時間は過ぎ、開場の6時を迎える。

ツボミ>ささ、みなさま、今一度静粛におねがいします。開場までいましばらくおまちくださいませ

アキラN>言うが早いか、ツボミは2人に目配せを送る。

アキラ>!?

ツボミ>ああ、君には言ってなかったな。あそこにいるのは、雅(みやび)と辰(たつ)。私の部下だ。

アキラ>そ、そうなんだ・・・で、彼らとあわせて4人で、どう動くんだ?

ツボミ>アタシがおもうに、彼らには順番に壺振りをやってもらおうと思っている。

アキラ>ちょ・・・ちょっと待て!ひい・・ふう・・・みぃ・・・

アキラ>じゃ、じゃあ、中盆は?もしかして一人でやろうっていうんじゃないだろうな?

ツボミ>そうだが・・・

アキラ>やめておけ。危険すぎる!監視が甘い!もし、誰かが物言いを打ち上げてみろ・・・見張りが薄いと指摘され、場は壊れる!

ツボミ>なっ・・・では、どうしろと!

アキラ>提案だが、中盆は最低でも3にしてはどうかと思う。雅さんと辰さんはぼくらと合わせて4人で座ればいい。

ツボミ>!

アキラ>俺が進行を担当し、あとの二人は俺たちの隣に座って、ひたすら不正がないかを見張るんだ。君はそのまま壺振りを担えばいい。

ツボミ>なっ・・・

アキラ>カタギのボクがいうのも変だが、どんな状況でも不正はしこりをのこす。未然に防ぐこと、それは雰囲気よりも大事な鉄則だ。ちがうか?

ツボミ>アキラ!・・・

アキラ>丁半のばあい、イカサマをするのは賭け手のほうだ。ボクがやってる時も一緒だったさ。いいか。目の前にいるのはみんな野獣だと思ったほうがいい。やつらがヘンなことをしないよう、いざこざが起きないよう、管理するのだ。

ツボミ>・・・!

アキラ>大丈夫だ。これで、秩序と公正は、保たれる・・・・

ツボミ>アキラ・・・

アキラ>さあ、時間だ。はじめよう・・・場がひらく・・・・

ツボミ>そして、私は、声を発した。

ツボミ>みなさま今日はよろしくいらっしゃいました。

頭に座す、わたくしめは、名を。ツボミともうします。

身にまといしは ?色の羽織。

つらづらと咲き乱れまするは、?の花。

そして、この絢爛たる絵図(けんらんたるえず)の姿にあやかりまして・・・

通り名を・・・桜花(おうか)のツボミと名乗っております。

なにとぞよろしくおねがいします。

 

アキラ>さすがは、ツボミさん・・・すげえな・・貫禄がちがう・・・

ツボミ>でははじめます・・・・・よござんすね・・・・方々、いざ尋常に!・・しょうぶ!!

アキラN>サアサア どちらさまも はったはった! 上方さまも 下方さまも、かけ忘れはご法度ですよ~

さあはった!さあはった! 丁が15、半が11.半はおらんか 半はいませんか・あ、半に賭けますか。半ですね、半ですね。

はい、そろいました!! 賭け、成立しました!!

ツボミ>では、アガります。・(ふんっ!・・・・)・・・丁!!ニロクの丁!!

アキラ>途端に眼前の盆台(ぼんだい)で金子(きんす)が駆け巡る。右へと左へと左へと右へと・・・

ツボミ>場が進むたび、賭けに出される金子の量が少しずつ増えてくる。あわせて、場の空気も上気してくる・・・

アキラ>こういう時に物言いがつくと、場は一気に崩壊する・・・それは、カタギの催し物のときも変わらない。だから、ボクは常にそれを恐れていた。

ツボミ>アキラ・・・そこのつづら・・・

アキラ>えっ?・・ああ!

アキラ>そこには氷嚢で冷やされた、食べ物が用意されていた。ボクは一区切りついたところで

声を上げる。

アキラ>さて、さて、さて~ここでちょいと一服いれましょう!

手前どものこしらえました「鉄火巻き」でございます。どうぞ、めしあがれ。

アキラ>ツボミさん・・・

ツボミ>賭けのレートが急に上がり始めたから一息いれたんだ。

アキラ>なっ・・・

ツボミ>場の雰囲気が狂気に変わらないように、な・・・

アキラ>暑い・・ボクの緋色のさらしは腹のほうまで汗でびっしょりになっていた。
思わずツボミをみやる。 ツボミは額に汗を浮かべながら凛とした顔つきで場の動向を統べていた。一重の瞼が時折引きつけを見せる。緊張が最高潮に達している証拠だった。
ツボミ>ふぅ・・・暑い・・・・

アキラ>その声に、ふとその背中をみやる。ツボミは胸から上をすでに脱ぎ去っていたが、さらけ出した肌は汗でびっしょりに濡れていた。

アキラ>ボクは布を出すと、汗しぶきを拭きぬぐってやることにした。
ツボミ>!ッ
アキラ>不意に敵意と憎悪を感じたボクは思わずその手を止める。
アキラ>ごめん。拭き上げてあげようかと思ったものだから、つい・・・
ツボミ>・・・あ、いや・・
アキラ>・・・・
ツボミ>続けてくれ。頼む。

アキラ>ツボミさん・・・

ツボミ>すまない。後ろを見せるのは嫌いなのでな・・
アキラ>・・・・・・・・じゃ、はじめるね・・・
ツボミ>ああ・・・

アキラ>・・・ほんとに・・・ゴメンネ・・・

ツボミ>勘違いするな。背後を預けるのはお前ががはじめてなだけだ。

アキラ>・・・・!

ツボミ>よろしく頼む。あと、鉄火巻き・・・

アキラ>・・!

ツボミ>キミのぶんまで準備がなくって申し訳ない。

アキラ>あ、いや・・・そこは気にしなくっていいよ・・・
アキラ>・・休会のあいだも、ツボミの肌からは汗がとめどなく噴き上げてきていた。

アキラ>あのさ・・・ツボミ・・・?

ツボミ>・・・どうした?

アキラ>あ、いや・・・・雅さんと辰さん・・・両名の動きがおかしい。

ツボミ>おかしい?どういうこと?

アキラ>先ほどから なにやら 観衆に目配せを送っている。

ツボミ>なんですって!

アキラ>本来、賭け手との不正をみつける役目だから、観衆に目配せを送るのは場違いだ。

何かが起ころうとしている。用心を。

ツボミ>了解した。だけどな、アキラ・・・

アキラ>!?

ツボミ>本日の私たちの役目は、まず第一に賭場の仕事をおわらせることだ。

アキラ>そう・・だな・・・

ツボミ>あの2人がなにをしているのかは、ここがはけた後で、私が直々に聞いてみることにする。それで、いいか。

アキラ>わかった。

ツボミ>ありがとう・・・さあ、時間だ。再開しようか

 

アキラ>さあ~さあ~さあ~次です次です、次の場に入ります。

僕たちはまた、緊張の渦中に飛び込んでいった。

再開後、第一場 サンミチの丁

第二場 グサンの丁

第三場 サブロクの半

第四場 サニの半

そこまで来た時に、恐れていたことが起きた。

アキラ>はい、そろいました!! 賭け、成立しました!!

ツボミ>では、アガります。

鉄蔵>ちょ~~いと まてや!

ツボミ>!?

鉄蔵>とぼけんじゃないわい!このアマ!わりゃ、イカサマしかけおったな!

ツボミ>イカサマとはおだやかじゃないな。貴様はだれだ。まずは名をなのれ!

鉄蔵>ワイか。ワイは金属の鉄の蔵と書いて、鉄蔵っちゅうもんや。

休会後の四回の賭場。なんかおかしゅうないか?

ツボミ>おそれながら、どういうことでしょうか。

アタシはこの場をただただ公正にとりしきっているにすぎない。

不躾な侮辱は、賽打ちとして、断固、ゆるさないよ!

鉄蔵>それじゃあ、聞くが、前後の四回の結果はなんぞ!?

四回のうち四回とも一つの賽は三から動いてはおらん

これをどう説明する!

ツボミ>それは・・・賽の目の気まぐれよ!

声>なんだと!

ツボミ>お天気様(おてんとうさま)でも、次の目は予測できんと嘆いた賽の目。所詮は人では測れないのではなくて?

声>ぐぬぬぬぬ・・・

ツボミ>そこまで言うのなら、賽をあらためてよ!さあ!!

もし、いかさまや、細工があったらアタシらは喜んで罰を受ける。

声>おう、しかれば、すぐに!

ツボミ>だけど!!もし、賽に小細工がなかったとしたら、鉄蔵さん、オトシマエつけていただきますからね!

声>望むところだ!さあ、賽をみてくれ!!

ツボミ>アキラ! さあ!

アキラ>ツボミさん・・・

ツボミ>かまわん!アキラ!!やりいや!!あけや!!

アキラ>(冗談・・きついぜ・・・)

ツボミ>アキラ!!!

アキラ>・・・・・!!!・・・・・どうぞ・・・・

ツボミ>賽の目は・・・・・・ピンゾロの丁!!・・・

ツボミ>くりかえす!!賽はピンゾロの丁!!

声>くそう・・・・くっそう・・・くっそう!!!・・・・絵図かきやがったな!!

ツボミ>結果は出ましたえ。 これでよろしいでございましょう?

雅、辰。この場のオトシマエはそなたらにおまかせしましたえ。

アキラ>お客人方!今一度もうしあげます!

厳粛に行われしこの場は残念ながらあれてしまいました。

今宵はこれでお開きにしたいとおもいます。本当にありがとうございました!

 

ツボミ>こうやってこの日は乗り切ることができた。

 

ツボミ>アキラ・・・今日はありがとう。

アキラ>いや。キミがすばらしかったからだよ。そして、君の部下も、すばらしいじゃないか・・・

ツボミ>ありがとう。

アキラ>それじゃ、ボクはここいらで。

ツボミ>はい。また・・・・

ツボミ>そのとき、私は背後から鋭い視線の存在を感じる。

気のせいかなと考えていたのだが、この気のゆるみがこのあと、

事件を引き起こすことになろうとは考えてもみないことだった・・・・

エピソード1 END

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