第一条EP1 四十九条賭場物語 紺桔梗ノ歌 (コンキキョウノウタ) | 劇部屋24シアターズ

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劇部屋24のオリジナル作品「月羽妖夢伝」制作近況や
劇部屋24での上演記録を残していきます!!

第一条  四十九条賭場物語 エピソード1
<登場人物>(比率1:1:0)
サヤカ>とある組の構成員。とはいっても、もっぱら賭場を開いて腰元を行う「賽振り」
武器:小刀(ドス)日頃から訓練は行っている。
服装:日常は羽織物。賭場では紺色か紫の花魁コスに近いもの
アキラ>やくざの世界で横行している賭場ネタをダシにイベントを開いている、
アマチュア「賽振り」。もちろん、当人はカタギの人間である。
武器:小刀(ドス)。サヤカと逃避行をするようになってからは、

自分で自分の身を守らねばならなくなったため、訓練は行っている模様。
服装:日常は和服

N>話は元禄の世。戦乱無く太平なりし頃の話。表の世では町人文化華やいだ世の中となっていたが、

その背景裏側では、止められぬ闇がひそんでいた。
ここは東西7区画、南北7区画に、碁盤目状に開発された、町人の都 通称「四十九条街(しじゅうくじょうがい)」。
そしてここは、四十九条の中でも最も西北に位置する第一条。
四季があり、肥沃した土地に覆われた 農耕地。
これは そんな都市で起きたことの事件簿。
その渦中を駆け抜けた、男と女のちょっと変わった物語。
コス劇企画ボイスドラマ「四十九条賭場物語 
第一条 紺桔梗ノ歌 (コンキキョウノウタ)
第一話」
 
アキラ>サアサアサアサア、みんな寄ってらっしゃい見てらっしゃい!
お待ちかね!丁半勝負の時間だよっ!取り決めは簡単。
種も仕掛けもないこのサイコロ。こうやって入れ物の中でカチャカチャして
出てきた目をあてるというものだよ~
サアサアサアサア賭けた賭けた!丁か半か、さあ、さ、はったはった!!
サヤカ>・・・・
アキラ>サアサアサアサア・・丁がでました半もでました。
その割合は丁がちょっと多いか?
さてみなさん!いかがでしょう?いかがでしょう?
サヤカ>フン!・・・
アキラ>(ちょっとムッとして)・・さあ。出そろいました~出そろいました~
いかさま、八百長、口八丁に手八丁、その類の仕事はやっちゃいませんやりません。
ささ、はったはった~~~~
アキラ>(でたことを確認してから)さてまいります!よござんすねっ!
しょうぶ!!
アキラ>丁!でございましたっ!!
 
アキラ>さてさて、お客人方・・宴(えん)ならぬ賭場(とば)たけなわではございますが・・・ここいらでおひらきといたします。今宵のごひいき、まいどありがとうございました・・・
 
サヤカ>ちょいと・・・
アキラ>!?ん?
サヤカ>・・・あそばせてもらいます
アキラ>おい、おい、だめだよお。
もう花会はおひらきなんだから。
またこんどきなよ?な?
サヤカ>そんなこと言ってにげるのか?
アキラ>!?
サヤカ>あたしはただ、あそばせてほしいというただけだ。
長居するとは一言も言っていない
アキラ>・・・
サヤカ>それとも、おぬし、アタシがこわいのか?
アキラ>そ、そんなわけ・・ないだろ・・・ただ・・
サヤカ>ただ・・なんだ?
アキラ>ここは、もう時間だ。出ないと迷惑が掛かってしまう
どうしてもやりたいなら、別に場所を取らないと
サヤカ>なるほど・・確かにな
 
アキラ>近くの旅館に、部屋を借りることにしよう。
どうだ?
サヤカ>いいねえ。文句はない。
アキラ@ところで君、誰?
名前くらい教えてくれてもいいだろう
サヤカ>サヤカだ
アキラ@サヤカか。いい名前だ
僕はアキラだ。

アキラ>早速なんだが、これは、いったい何の真似だ?
サヤカ>?
アキラ>こうやって、勝負を挑むことの意味だよ・・・
モノホンの賭場でやるとどうなるかわかっているの?
サヤカ>わかってるさ。
なにかを賭けて戦うということなるんだろう?
そうさな・・・アタシはこれでもかけようか。
この身、一夜(いちや)。どうだ?
アキラ>!!大きくですぎだ!! 
この身一夜(いちや)なんて、非常識だろ!!
サヤカ>なんだ?臆病風にでもふかれたか?
アキラ>・・・わかったよ・・おれは・・・おれは、負けたら、

君の言うことをひとつ、かなえるよう、努力してやろう。これで、どうだ?
サヤカ>そうか。それでいい。
アキラ>では・・・はじめるぞ・・・
サヤカ>ああ ・・・

アキラーー勝負 は丁半で。いいか?
サヤカーーああ。構わない。
アキラ>では始めるよ・・・
よござんすね・・・・勝負!
サヤカ>丁!!
アキラ>はやい・・・?
サヤカ>丁だ。はようあげんか
アキラ>なっ・・・!あああ!!
サヤカ>どうした?結果はどうじゃ・・・
アキラ>ち・・・ちょう・・・・
サヤカ>ふっつ・・・わたしの勝ちだな・・・
アキラ>く・・くそ・・・望みはなんだ・・・・
サヤカ>手を・・・
アキラ>え?
サヤカ>手をさしだしてくれ・・
アキラ>手‥を?うああああああ!!
サヤカ>悪い。ひとつはひとつだ・・・・
 
 
アキラ>どれだけねむったのだろう。

ボクはぼうっとしたあたまで周囲をみる。ここが何かの会場なのはわかった。
サヤカ>お、やっと目覚めたか
アキラ>こ、ここは・・・?
サヤカ>ここか?ここはな 賭場の会場だよ
アキラ>え?
サヤカ>アタシの仲間達と運営している賭場でな
今宵は敵対している団体と全面対決の場というわけだ
アキラ>な・・・なんだって・・・
サヤカ>それでな。あと1時間で賭場が開くんだ。
わるいが準備をしてくれ。
アキラ>え。ええええええええ・・・・・
サヤカ>君は私んところの助っ人ということで登録してある。
早く準備しな。さもないと殺されるよ。
アキラ>・・・!!ひ、ひいい・・・ホンモノ、ホンモノの抗争だああ!!
サヤカ>おっと、うろたえるんじゃないよ~。
何度か賭場は経験してるんだろ?
緋色の晒の賭場師「(ひいろのさらしのとばし)アキラ」くん
アキラ>よくぞ その名前をご存知で・・・
そ、そりゃそうだけど・・・
アキラN>ボクは急に背筋がピンとなるのを感じていた。
同じムジナのナントカというやつだろう
アキラ>た、たしかに、初めてじゃない・・・・
はじめてじゃないけど・・・・唐突すぎるよ・・・
サヤカ>・・・すまないな。
アキラ>これだけはハッキリとしてほしい。
どうして、こんな真似をしたんだ?ボクなんて、
そんじょそこらに転がっている一般人じゃないか!
サヤカ>だけど、立派な賭場はひらいていたじゃないか
アキラ>!
サヤカ>いいか今日は敵と味方がここで博奕で戦うんだ・・・
だから!!ここに来る奴はみんな血気盛んなやつらばっかだ。
アキラ>なん・・・だとっ!
サヤカ>もしも無様な真似をすれば、
責任を取らされてこの世とオサラバ。
そんな状況で賽打ち押し付けられたら、キミならどうする?
アキラ>・・・・・! 
たぶん・・緊張のあまり・・なにも手につかないと思う。
サヤカ>そうだろ?私もいっしょだ。
緊張のあまり、フラフラとこの場に来てみてたんだ。
そしたらキミが見事な賭場をひらいてた。
アキラ>・・・!
サヤカ>それをみていた私は、
喉から手が出るくらいに君が欲しくなった。
アキラ>・・・・!
サヤカ>・・・その喉から手が出てしまったということさ。
まあ、諦めてくれ。
アキラ>・・・・ああ、わかったよ・・・今宵のことは・・・あきらめよう・・・
サヤカ>さすがアキラ。物分かりが早くてたすかる。
 
アキラN>僕たちは化粧をしたり、衣装に着替たり、道具の確認や差し入れの手配などに手を焼いた。

そうこうしているうちにあっという間に時間は過ぎ、開場の6時を迎える。
サヤカ>ささ、みなさま、今一度静粛におねがいします。開場までいましばらくおまちくださいませ
アキラN>言うが早いか、サヤカは2人に目配せを送る。
アキラ>!?
サヤカ>ああ、君には言ってなかったな。
あそこにいるのは、雅と辰。私の部下だ。
アキラ>そ、そうなんだ・・・で、彼らとあわせて4人で、どう動くんだ?
サヤカ>私がおもうに、彼らには順番に壺振りをやってもらおうと思っている。
アキラ>ちょ・・・ちょっと待て!
ひい・・ふう・・・みぃ・・・
アキラ>じゃ、じゃあ、中盆は?
もしかして進行役を一人で
やろうっていうんじゃないだろうな?
サヤカ>そうだが・・・
アキラ>やめておけ。危険すぎる!監視が甘い!
もし、誰かが物言いを打ち上げてみろ・・・
見張りが薄いと指摘され、場は壊れる!
サヤカ>なっ・・・では、どうしろと!
アキラ>提案だが、中盆は最低でも3にしてはどうかと思う。雅さんと辰さんとぼくらと合わせて4人で座ればいい。
サヤカ>!
アキラ>俺が進行を担当し、
あとの二人は俺たちの隣に座って、
ひたすら不正がないかを見張るんだ。
君はそのまま壺振りを担えばいい。
サヤカ>なっ・・・
アキラ>畑が違うボクがいうのも変だが、
どんな状況でも不正はしこりをのこす。
不正を未然に防ぐこと、
それは雰囲気よりも大事な鉄則だ。ちがうか?
サヤカ>アキラ!・・・
アキラ>丁半のばあい、
場の信頼がモノをいう。
賭けが片方だけに寄ったら、
差額は胴師が負担しなきゃいけない。
信頼が崩れ、極端によるようになったら
胴師は破産に追い込まれる。
サヤカ>アキラ!・・・
ボクがやってる時も一緒だったさ。
いいか。目の前にいるのは
みんな野獣だと思ったほうがいい。
やつらがヘンなことをしないよう、
いざこざが起きないよう、管理するのだ。
サヤカ>・・・!
アキラ>大丈夫だ。これで、秩序と公正は、保たれる・・・・
サヤカ>アキラ・・・
アキラ>さあ、時間だ。はじめよう・・・場がひらく・・・・
サヤカ>そして、私は、声を発した。
サヤカ>みなさま今日はよろしくいらっしゃいました。
頭に座す、わたくしめは、名を。サヤカともうします。
身にまといしこの羽織。
つらづらと咲き乱れまするは、紺桔梗の花びら。
そして、この絢爛たる絵図(けんらんたるえず)
の姿にあやかりまして・・・
通り名を・・・桔梗のサヤカと名乗っております。
なにとぞよろしくおねがいします。
 
アキラ>さすがは、サヤカさん・・・
すげえな・・貫禄がちがう・・・
サヤカ>でははじめます・・・・・よござんすね・・・・方々、いざ尋常に!・・しょうぶ!!
アキラN>サアサア どちらさまも はったはった! 上方さまも 下方さまも、かけ忘れはご法度ですよ~
さあはった!さあはった! 
丁が15、半が11.半はおらんか 
半はいませんか・あ、半に賭けますか。
半ですね、半ですね。
はい、そろいました!! 賭け、成立しました!!
サヤカ>では、アガります。・
(ふんっ!・・・・)・・・丁!!ニロクの丁!!
アキラ>途端に眼前の盆台(ぼんだい)で金子(きんす)が駆け巡る。右へと左へと左へと右へと・・・
サヤカ>場が進むたび、賭けに出される金子の量が少しずつ増えてくる。あわせて、場の空気も上気してくる・・・
アキラ>こういう時に物言いがつくと、場は一気に崩壊する・・・それは、カタギの催し物のときも変わらない。

だから、ボクは常にそれを恐れていた。
サヤカ>アキラ・・・そこのつづら・・・
アキラ>えっ?・・ああ!
アキラ>そこには氷嚢で冷やされた、食べ物が用意されていた。ボクは一区切りついたところで
声を上げる。
アキラ>さて、さて、さて~ここでちょいと一服いれましょう!
手前どものこしらえました「鉄火巻き」でございます。どうぞ、めしあがれ。
アキラ>サヤカさん・・・
サヤカ>賭けのレートが急に上がり始めたから一息いれたんだ。
アキラ>なっ・・・
サヤカ>場の雰囲気が狂気に変わらないように、な・・・
アキラ>暑い・・ボクの緋色のさらしは腹のほうまで汗でびっしょりになっていた。
思わずサヤカをみやる。 サヤカは額に汗を浮かべながら凛とした顔つきで場の動向を統べていた。

一重の瞼が時折引きつけを見せる。緊張が最高潮に達している証拠だった。
サヤカ>ふぅ・・・暑い・・・・
アキラ>その声に、ふとその背中をみやる。サヤカは胸から上をすでに脱ぎ去っていたが、

さらけ出した肌は汗でびっしょりに濡れていた。
アキラ>ボクは布を出すと、汗しぶきを拭きぬぐってやることにした。
サヤカ>!ッ
アキラ>不意に敵意と憎悪を感じたボクは思わずその手を止める。
アキラ>ごめん。拭き上げてあげようかと思ったものだから、つい・・・
サヤカ>・・・あ、いや・・
アキラ>・・・・
サヤカ>続けてくれ。頼む。
アキラ>サヤカさん・・・
サヤカ>すまない。後ろを見せるのは嫌いなのでな・・
アキラ>・・・・・・・・じゃ、はじめるね・・・
サヤカ>ああ・・・
アキラ>・・・ほんとに・・・ゴメンネ・・・
サヤカ>勘違いするな。背後を預けるのはお前ががはじめてなだけだ。
アキラ>・・・・!
サヤカ>よろしく頼む。あと、鉄火巻き・・・
アキラ>・・!
サヤカ>キミのぶんまで準備がなくって申し訳ない。
アキラ>あ、いや・・・そこは気にしなくっていいよ・・・
アキラ>・・休会のあいだも、サヤカの肌からは汗がとめどなく噴き上げてきていた。

アキラ>あのさ・・・サヤカ・・・?
サヤカ>・・・どうした?
アキラ>あ、いや・・・・雅さんと辰さん・・・両名の動きがおかしい。
サヤカ>おかしい?どういうこと?
アキラ>先ほどから なにやら 観衆に目配せを送っている。
サヤカ>なんですって!
アキラ>本来、賭け手との不正をみつける役目だから、観衆に目配せを送るのは場違いだ。
何かが起ころうとしている。用心を。
サヤカ>了解した。だけどな、アキラ・・・
アキラ>!?
サヤカ>本日の私たちの役目は、まず第一に賭場の仕事をおわらせることだ。
アキラ>そう・・だな・・・
サヤカ>あの2人がなにをしているのかは、ここがはけた後で、私が直々に聞いてみることにする。それで、いいか。
アキラ>わかった。
サヤカ>ありがとう・・・さあ、時間だ。再開しようか
 
アキラ>さあ~さあ~さあ~次です次です、次の場に入ります。
僕たちはまた、緊張の渦中に飛び込んでいった。
再開後、第一場 サンミチの丁
第二場 グサンの丁
第三場 サブロクの半
第四場 サニの半
そこまで来た時に、恐れていたことが起きた。
アキラ>はい、そろいました!! 賭け、成立しました!!
サヤカ>では、アガります。
声>ちょ~~いと まてや!
サヤカ>!?
声>とぼけんじゃないわい!このアマ!わりゃ、イカサマしかけおったな!
サヤカ>イカサマとはおだやかじゃないな。貴様はだれだ。まずは名をなのれ!
声>ワイか。ワイは金属の鉄の蔵と書いて、鉄蔵っちゅうもんや。
休会後の四回の賭場。なんかおかしゅうないか?
サヤカ>おそれながら、どういうことでしょうか。
わらわはこの場をただただ公正にとりしきっているにすぎん。
不躾な侮辱は、賽打ちとして、断固、ゆるさぬぞ!
声>それじゃあ、聞くが、前後の四回の結果はなんぞ!?
四回のうち四回とも一つの賽は三から動いてはおらん
これをどう説明する!
サヤカ>それは・・・賽の目の気まぐれではないのか?
声>なんだと!
サヤカ>お天気様(おてんとうさま)でも、次の目は予測できんと嘆いた賽の目。所詮は人では測れないのではございませんのか?
声>ぐぬぬぬぬ・・・
サヤカ>そこまで申されるのでございますれば、賽をあらためてくださいまし!
万が一、細工が発覚いたしましられば、我らは喜んで責任をお取りいたします。
声>おう、しかれば、すぐに!
サヤカ>まちなされ!ただし、もし、賽に小細工がなかったとするなれば、鉄蔵さん、オトシマエつけていただきますからね!
声>望むところだ!さあ、賽をみてくれ!!
サヤカ>アキラ! さあ!
アキラ>サヤカさん・・・
サヤカ>かまわん!アキラ!!やりいや!!あけや!!
アキラ>(冗談・・きついぜ・・・)
サヤカ>アキラ!!!
アキラ>・・・・・!!!・・・・・どうぞ・・・・
サヤカ>賽の目は・・・・・・ピンゾロの丁!!・・・
サヤカ>くりかえす!!賽はピンゾロの丁!!
声>くそう・・・・くっそう・・・くっそう!!!・・・・絵図かきやがったな!!
サヤカ>結果は出ましたえ。 これでよろしいでございましょう?
雅、辰。この場のオトシマエはそなたらにおまかせしましたえ。
アキラ>お客人方!今一度もうしあげます!
厳粛に行われしこの場は残念ながらあれてしまいました。
今宵はこれでお開きにしたいとおもいます。本当にありがとうございました!
 
サヤカ>こうやってこの日は乗り切ることができた。
 
サヤカ>アキラ・・・今日はありがとう。
アキラ>いや。キミがすばらしかったからだよ。そして、君の部下も、すばらしいじゃないか・・・
サヤカ>ありがとう。
アキラ>それじゃ、ボクはここいらで。
サヤカ>はい。また・・・・
サヤカ>そのとき、私は背後から鋭い視線の存在を感じる。
気のせいかなと考えていたのだが、
この気のゆるみが このあと、事件を引き起こすことになろうとは
考えてもみないことだった・・・・
エピソード1 END