★★★四十九条賭場物語エピソード2 鉄の章後編★★★
アキラ>時は流れる。木々が芽吹いた季節はどこへやら。すっかり周囲は緑に萌え繁った葉っぱに覆われてしまった。ボクは緑のガーデンにいるのかも知れなかった。
明日香>夏へとまっしぐら。セミのなく声がひび少しずつうるさく感じられるようになってくる、これはそんな時節の話だ。
アキラ>かつてない 緊張を味わった賭場からはやひと月。ボクはまた町中で配達人に精を出す。そういう生活に戻っていた。
明日香>そんな悠々自適な生活をしている彼の前に、私は立った。
アキラ>そんなボクの眼前に、近くの神社の巫女さんが現れた。
アキラ>明日香さん・・・!
明日香>アキラ!・・・ひさしぶり。元気してた?
アキラN>その瞬間、ボクの、いや僕たちの止まっていた時間は再び動き出すのだった。
明日香>四十九条賭場物語2 鉄の章後編
アキラ>ま、まあ・・・元気でしたけど・・・・
明日香>・・・・
アキラ>偶然っすね。こんなところで出会うなんて・・・あれから、どうしてたですか?
明日香>・・・別に・・
アキラ>べつに・・・って、またまたあ。
表では人々のために働く巫女さん。
裏ではプロの賽振りの黒巫女さん。
めっちゃ安定した収入でウハウハなんじゃないです?
明日香>・・・だから・・・べつに・・・
アキラ>・・・えっ?
明日香>その・・さ・・・そんなに甘い話じゃなかったみたいなんだ・・・この世界
アキラ>ど、どういうことですか?
明日香>・・・やっぱやめとこう・・今の君には必要の無いことだ。
アキラ>そ、そんな・・いいかけておいて、卑怯だな。そうやってのけ者って良くないと思うな・・
明日香>うっさいなああ!!
明日香>いいわよ 知りたいんなら教えてあげる。そのかわり、長いわよ。わたし、終わるまで帰らないから。
アキラ>あ、明日香さん・・・
明日香>そうだ。仕事の途中だったのよね。先にやってきて。私のことは気にしないで。決して迷惑はかけない。
アキラ>じゃ、じゃあ・・
明日香N>5時間後。
アキラ>おまたせ!仕事、今終わったよ!
明日香>お疲れ~。アキラ。酒~
アキラ>明日香さん! どうしたんですか・・・・
明日香>いいから。お酒。お酌して~~~
アキラ>しょうがないなあ・・・ハイ。どうぞ。
明日香>ありがと。 かーーーっ!うめぇ!!
アキラ>なんか、今日の明日香さん、おかしいですよ?
明日香>おかしい?そう? おかしい? ハハ! さあ!笑って わらって!
アキラ>相当・・・おかしいですよ?
明日香>・・・こうなるのだって、別におかしくないわよ。
アキラ>え?
明日香>あのさ、このあいだ監視役やってた、イケメン2人、覚えてる?
アキラ>ああ!たしか、政さんと辰さん。
明日香>そそ。イケメン2人ね。
実はさ、あの2人ね・・・死んじゃったんだ・・・・
アキラ>!!なんですって!いつ!?
明日香>三日くらい前。しかも、突然、パタ・・・っと。
アキラ>どっか・・・わるかったんすか?
明日香>ぜんぜん・・・どこも悪くなかったよ・・・ぜんぜんね・・・
アキラ>そうっすよね・・・あのときも元気そうでしたものね・・・
明日香>うん・・・・
アキラ> で、供養とかはおわったんすか?
明日香>・・・おわってないよ・・・
アキラ>いいんですか?しないと!・・
明日香>うん・・・やりたかったけど・・できない・・・
アキラ>な、なんですって・・・どういうことなんですか?
明日香>わたしも、2人の死後すぐにお骨を焼いて供養して・・・それで終わりになるとかんがえていたんだ。
だけど、それで終わりにはできなくなったんだ・・・・
アキラ>なぜ?
明日香>あとにね・・なんにも残らなかったからなんだ。なんにも。
アキラ>は?はあああ???
明日香>遺骨が残らないのは。あの二人、シャブやってたからだろうっていわれた・・・
アキラ>そんな・・・!実際のところは、どうなんですか?
明日香>・・・わからない・・・プライベートまで関与してたわけじゃなかったから。
アキラ>そ、そうですよね・・・
明日香>でも、自分達から足を踏み入れるようなバカでもないと思う・・・
アキラ>ま、そうでしょうけどね・・・
明日香>それと、もうひとつ・・今のままやっても、意味がないから
アキラ>意味が、ない?
明日香>うん・・・
明日香>政と辰とはね・・殺されたんじゃないかっておもう。
アキラ>・・・!
明日香>このあいだ、配置をかえたでしょ?上からはそのせいで負けるように仕組んだんじゃないかって、疑われたそうなんだ
アキラ>・・・!
明日香>この世界、失敗しちゃったら即、死だってきいた。だから、あのひとたちが・・・
アキラ>明日香・・・考えすぎだ・・・
明日香>そうかもしれない。だけど、考えずには・・・いられない・・最近ね・・あの2人の死に鉄蔵の指示があることがわかったの
アキラ>鉄蔵の・・指示?
明日香>ことあることに神社の敷地っていう鉄蔵をいさめるために、2人はたてついたこともあったというわ。
アキラ>そいつを疎ましく思っての犯行というわけか・・・
アキラ>ちょっとまて。やっこさんは、どうしてそんな執拗に神社を狙うんだ?
明日香>それは鉄蔵が陣場組を仕切りたいからよ。
アキラ>ええ!?
明日香>今年、鉄蔵は若年寄に昇進した。それで、今度は若頭を狙っているってわけ。
アキラ>なるほど。若頭か。その上が副組長、組長だもんね。上をねらうために示しをつけるために、因縁のある三重(みつえ)神社の問題はうってつけってわけか。
アキラ>ところで、その鉄蔵ってのは何者なんだ?
明日香は相当嫌ってるみたいだが?
明日香>鉄蔵は悪いやつよ。 ちまたでは ドス作り鉄として有名でね・・・。くる日もくる日もドスばっかつくって喧嘩ばっかりしてたの。あの荒い性格もあって、いまでは組きっての暴れん坊よ
アキラ>・・・!
明日香>今年だけでも、あいつ、何件の喧嘩を起こして、どれだけのヒトを傷つけたことか
明日香>・・・神社の夜の賭場で・・もちきりなのよ・・あいつの悪評・・・
アキラ>それほど・・ひどかったのか。
明日香>ええ。だから私は今回のことは鉄蔵のせいじゃないかと思う。
アキラ>・・・!
明日香>実際、今度の事件を境に、あいつは名を馳せるようになった。
アキラ>・・・
明日香>自分に従うもの、言うことを聞くものを中心に、それ以外は始末するか、追放していった・・
アキラ>何だって・・・
明日香>組のなかでもう、文句を言うものは誰もいない。長老連中を説き伏せるために、神社をおとせば、あとは好き勝手できる・・・
アキラ>なんだって!!
明日香>今宵、あなたに声をかけたのは、鉄蔵に打ち勝つため・・・
アキラ>・・・・!
明日香>怖い・・・
アキラ>!?
明日香>おねがい・・だからもう一度・・一緒に来てほしい。
アキラ>・・!
明日香>・・・おねがい・・
アキラ>わ、わかりましたよお・・考えてみれば、僕たちは血の契約で結ばれた2人でしょ?
明日香>・・・・ありがとう
アキラ>彼女、明日香は席を立つ。それはYESという返答の代名詞だった。
アキラN>そのときだった
明日香>アキラ!あっぶない!
<ガラス割れるおと>
アキラ>!!
明日香>鉄蔵の手の者か?
明日香>そうか。では、頭に伝えるがいい。私は、逃げも隠れもしない、とな・・・
<遠ざかっていく足音>
明日香>行ったか・・・大丈夫だったか
アキラ>ああ。ボクは・・大丈夫だ・・・大丈夫だけど・・・
明日香>・・・・?
アキラ>もう・・後戻りは・・できないね・・・
明日香>・・・すまん・・・
アキラN>瞬間、再び、生活は一変することを暗示していた。少しくらい失敗しても文句はいわれないし、ひとつ一つの挙動に生活を賭けなくてもよい・・・そんな快適な生活から離れてしまうと言うことでもあった。
★★★
明日香>私はアキラを連れて、神社の離れにはいる。そして、肌脱ぎ姿になると、その半身にちからを込めた
明日香>はああああ!!
アキラ>う・・ぐう・・・あつい・・両腕が・・・あつい・・・
(エコー)
明日香>・・アキラ?大丈夫?聞こえる?
アキラ>・・ああ、聞こえる・・きこえるよ・・・
明日香>良かった。あの・・アキラ・・?
アキラ>えっ?
明日香>抱いて・・・
アキラ>ええっ・・・こう?
明日香>そう・・もっときつく・・ぎゅーっと・・
アキラ>こう?
明日香>・・・うん・・・
すっかり夜のとばりが落ちた神社の一室にて
僕たちはお互いにお互いを確かめ合う。
やがて、朝日が顔をのぞかせる窓のそば・・・
明日香は汗みどろの体で・・ボクの腕のなかに堕ち、静かに眠りについていた。
乱れた髪の毛が、その凄まじさを物語る・・・
そして、あとにのこるは、右肩にひかる、華の紋章。朝日の中で、それは凛々しく光り輝いていた。
アキラN>そして、・・・僕たちは作戦を開始した。
明日香>アキラ・・・ではここで、手はずを説明しておこう
まず、組のほうで行われる記念行事での花会。ここに2人で参加して、ありとあらゆる手を使って、陣場組を負かせる。ひとつは私たちがグルになっていること。あとは、私の、コレ。刺青。女だてらにこんなことする奴は過去にいなかったから、印象にのこること間違いなしだ。
アキラ>なるほど。さすがだな。すべてがいい方にうごいてくれればいいのだが・・・問題の華会は1週間後か。その間、練習とかしなきゃな
明日香>うん。
明日香>そして1週間後。華会当日。これで、すべてが決まる。
私たちは連戦連勝。陣場組からは巨額の勝ち金をせしめていた。
このまま バレずにいけば 計算どおりだった。
アキラ>だが、運命は狂い始めた。それは終わりごろの話だ。
鉄蔵>そや!せっかくの華会、ワイに粋なアイデアがある!
アキラ>!
明日香>!?
鉄蔵>ひとりはおなごで、覚悟の入れ墨をほった者。ひとりはカタギあがりでこの世界に惚れた者。なんともおもしろい顔ぶれや。これも一興というもんや。ここは一風変わった決め方してもバチはあたらへん。そやな・・・そうや、サシできめまひょ。3本連取が勝利条件。決着がつくまでやりましょ!!賽ふり同士の、覚悟、ワイにみせてもらおうか!?
アキラ>その場は異議を唱えるものはいなかった。いったん、休憩をはさんでから、またはじまることになった。
明日香>休憩時間・・私はアキラに思いを送る。
(エコー↓)
明日香>アキラ・・・きいてる?
アキラ>・・・・・
明日香>どうするの?これ?
アキラ>・・・・・
明日香>手加減、絶対できないからね。
アキラ>・・・・・
明日香>ばれちゃったら、二人ともあの世行きだから。
アキラ>・・・・・
明日香>断っとくね。それじゃ!
アキラN>ボクは、なにも答えなかった。
やがて、休憩がおわり、戦いがいま、始まろうとしていた
ミサキN>勝負第1場賽ふり私明日香。
明日香>はじめは私の番ね。はいります・・・しょうぶ!
アキラ>は・・はやい・・・
明日香>さあ、どうぞ・・・?
アキラ>・・・。
明日香>しょせん カタギはカタギ。こんなとここないでおとなしくやっていればよかったのに・・・ね?
アキラ>うるさい・・半だ!!
明日香>ふっ・・・バカ・・
アキラ>4ー5の丁・・・し、しまった!!
アキラ>ボクは、全身から汗が吹き出るのがわかった。
アキラN>勝負第2場賽ふりボク
アキラ>では、はいります・・・しょうぶ!
明日香>・・・ふっ
アキラ>なにが可笑しい?
明日香>相変わらず・・素敵な賽ふりだと思ったから、笑みがこぼれたの
アキラ>なっ・・・
明日香>だけど・それは素人相手のはなし!私には通じないわよ!半・・・
アキラ>2ー5の半・・・くううう・・・
明日香>勝負第3場賽ふりわたし。
明日香>それじゃ、はじめるわよ?それとも、降参する?
アキラ>・・・フン!
明日香>後悔してもおそいわよ・・・はいります!・・・
アキラ>・・・・
明日香>・・・さあ、どうぞ。
アキラ>まった!
明日香>!?
アキラ>まった、だ!
明日香>な、なにいって・・・
アキラ>その賽をしらべてくれ!!至急だ!
明日香>な、なにやってんの!!ただじゃすまないわよ!!
アキラ>うるさい!とにかく、改めてくれ!!
明日香>あっ!
アキラ>・・・! ほらみろ!なんだこの賽は!3が3つも!偶数は2の目一つじゃないか!!
明日香>ううう・・・あんた!裏切るのね!?
アキラ>なんのことだ!
明日香>ひどい・・・わたしは、あなたを信じてすべてをさらけ出したのに・・あんたはそんな私をみても、まだ裏切るのね・・・
アキラ>親分、鉄蔵さま・・すみません。この女のいうこと、真に受けちゃいけませんぜ
明日香>アキラ!
アキラ>生来、女という生き物は化けるもの。いわば、女狐(めぎつね)とよばれる妖(あやかし)なんです。色気を武器に、涙を武器にして、男を手玉に取って生きようとするものなんです。
明日香>女狐(めぎつね)だとっ!!かなしみの涙を武器にだと!!ひどい!あんまりだ!!この横着者め(おうちゃくもの)偽善者がっ!
アキラ>それがし、かたぎの者ではございまして、あまり怒りを露にすることはしない性分なのではございますが、
こう・・偽善者といわれたからには・・オトシマエはそれがしに取らせていただきたく存じますが。
明日香>うううっ・・・!
アキラ>オトシマエの件、了承いただきまして、至極恐縮。それでは、失礼します。
明日香>く、くっそう!!くっそう!!アキラ!!のろってやる!のろってやる!死んでも呪い続けてやる!
アキラ>見苦しいぞ。ミサキ。それに、助けを請うのは人間だけができること。貴様みたいな女狐がやってよいことではないのだぞ。
明日香>うううう・・・あんたを信じた、アタイがバカだった!雅!辰!いま、あたしも逝くからね!
アキラ>泣け!わめけ!ほら、親分の目の前につれてきてやったぞ!
明日香>ああっ・・・
アキラ>ミサキ!今生のわかれを親分にするんだ!そのあと、その首を親分に献上となるがな・・
明日香>!!
アキラ>ひとつだけ、おしえてやろう。貴様の方に掘られた、桜色の桔梗。それが指す花言葉のことだ・・・
明日香>なっ・・
アキラ>花言葉は・・・薄い幸せだ・・・
明日香>・・・!
アキラ>入れ墨は、真実を語ったな・・覚悟!
明日香>くっ・・・・もう・・ダメだ・・・
アキラ>名刀、備前長船よ・・・この女狐を浄土の旅へ・・誘え・・はあっ!
鉄蔵>ぐ・ぐああああああっ!!
アキラ>隙あり! ミサキ!
明日香>てぇいっ!
アキラ>大丈夫か?ミサキ!
明日香>うん!ばっちり打ち合わせのとおりだもん!言葉、ちょっとチクッときたけどね・・
アキラ>すまない・・皆のものよく聞け!貴様たちの悪行、すべて、この、鉄蔵が仕組んだもの!
明日香>こいつは、我が友、雅・ならびに辰を暗殺した張本人!
アキラ>この咎(とが)否めるものはかかってくるがいい!
明日香>われらもこの刃に乗じて、加減はせぬ!さあ、こい!!
↓殺陣しながらのセリフ。
アキラ>くうっ・・くうっつ・・ああはいってみたけど、かかってるもんだな・・
明日香>そうね・・・でも、こっちも負けない!
アキラ>でも、このまんまじゃラチがあかない!どうする?どうやってきりぬける?
明日香>もうすこし、数を減らしてから、出口へむかう!ついてきて!
アキラ>わかった!!そこは、まかせる!相方!
明日香>うふ♪アキラってば・・・つづきは抜けてから!
いくわよ!3、
アキラ>ああ!、2
明日香>1、突撃!!!
アキラ>そして、ボクたちは、バラックから脱出して、地下道へと逃れた。その地下道の先には・・森があった。
明日香>私たちは、森の、開けたところで、一息ついた。
アキラも私も、汗と返り血でびっしょりになっていた。
アキラ>はあ・・・はあ・・はあ・・・ミサキ・・追手は?
明日香>こない・・どうやら、引き返したみたいだ・・
アキラ>そうか・・・よかった・・・
明日香>アキラ・・怪我は?
アキラ>大丈夫だ・・誰も命をねらってこなかった・・奇跡だ!
明日香>もともと鉄蔵の組は、仲たがいしてできたような組。鉄蔵を殺そうという話は前々からできてくらいだから・・・
アキラ>向こうにとっても都合がよかったということか・・・よかった
アキラ>なあ、ミサキ・・
明日香>・・・・ん?
アキラ>これから、俺たち、どうしようか?
明日香>そうね・・・旅に出ようと思うの
アキラ>旅に・・?
明日香>そして、いろんな人に出会うんだ。いろんな人にこの賽子遊戯(さいころゆうぎ)を楽しんでもらうんだ。
それで、いろんな人の笑顔をみていたいな。
アキラ>そっか・・・素敵だ。
明日香>もちろん、ついてきてくれるんだよね?
アキラ>えっ・・・
明日香>そこまで含めての血の契約なんだからね
アキラ>ああ!わかったよ!!その約束、引き受けた!
明日香>ふふふん♪引き受けられた。
アキラ>いつしか太陽は水平線の近くに沈もうとしていた。
明日香>オレンジの光のなかで、わたしたちは将来をちかう。
アキラ>お互いの吐息を感じ、お互いの体温を確かめられたこのひととき・・・
明日香>遠い空に、2人の幸せへの誓いとして、ふたり、唇をそっとあわせる。
アキラ>肌と肌がお互いのぬくもりを感じられたこの日から・・
明日香>わたしたちの新しい話はまた、幕をあける・・・
それは、また、今度のお話だ
エピソード2 おわり