★★★四十九条賭場物語エピソード3 SATORI編★★★ | 劇部屋24シアターズ

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★★★四十九条賭場物語 エピソード3 SATORI編★★★

アキラN>それは、とある初夏の日のこと・・四十九条のなかで、いつも通り、ボクは配達屋を営んでいた。そんなボクのところに、よく見たお馴染みが駆け込んでくる。
明日香>アキラ!おるか?
アキラ>明日香さん!どうしたんですか?こんなときに
明日香>ふふふん!実は、今日はな。素敵なニュースをもってきたのじゃぞ!
アキラ>素敵なニュース?ですって?
明日香>ああ、そうじゃ!実はな、先日のことで、陣場組は事実上解散となってしまってな、ここの祭事を以前のまま、任されるようになったのじゃ
アキラ>へえ。そうなんだ。すごいじゃないですか。よかったよかった。
明日香>うんうん
アキラ>それで?わざわざそれを報告に来てくださったんですか?
明日香>まさか。今日、ここに来たのは他でもない。おぬしを引き抜きにきたのじゃ。引き抜きに。
アキラ>ええ!?そうなんですか?こ、こまるなあ・・仕事もあるし
明日香>そんなにその仕事が好きなら、こっちでできる仕事を頼む。こうみても、運ぶものというのはたくさんあるのだぞ。祭壇とか、お経の書物とか、御真影とか・・
アキラ>ぽか~ん
明日香>こいつ・・・いいぞ。そっちがその気なら、これにモノ言わせて毎晩泣いてやるからな。朝起きるときツラくってもしらないぞ~
アキラ>わかった、わかった、わかったよお!
血の契約をそんな風に使うと、バチあたりますよお!
明日香>血の契約には神や仏は関係ない。これは、ただ単に、わらわのまじない なのじゃからな。
アキラ>う・・したたかすぎる。この巫女さん
明日香>なんかいったか?
アキラ>いえ、なにもありません。それでは、こんどの週末にでも移動しますよ。
明日香>お?本当か?
アキラ>ええ。仕事の方には「のれんわけ」「支店の出店」あたりで大丈夫でしょう。ウチの部下はみんな優秀ですから
明日香>よし。きまりじゃな
アキラ>次の週末。ボクは明日香さんの協力もあり、三重(みつえ)神社に居候になることになった。でも、正直、乗り気ではなかった。
明日香>アキラ。どうしたんじゃ?
アキラ>えっ?
明日香>なんか、今回のことが不服そうで、きになってな・・・
アキラ>それは・・突然のことでしたし・・・
明日香>なんと?おぬしは、独り身であったし、いまの仕事場までは自宅から30分以上もかかっていた環境であったはずじゃ。それが、あるいて10分の環境になろうと言うのじゃぞ。それのどこが嫌なのじゃ?
アキラ>・・・・。
明日香>気持ちがうわついておるな
アキラ>・・・
明日香>そなたが面白くないのはわかる。されどな、血の契約を交わしたものとして、どうしても、無視することはできんのじゃ。
アキラ>・・・
明日香>さあ、苦しゅうない。すべて話してみるがよい。
アキラ>血の契約・・隠し事もできなくなるんですね・・
明日香>命をわけておるからな・・致し方のないことよ・・
アキラ>わかりました。おはなしします。実は・・・家族を持つことが怖いんです
明日香>家族をもつことが、こわい? どういうことじゃ?
アキラ>じつは、ボクはずっと独り身立ったわけではないのです。
明日香>ほう
アキラ>じつは・・家族がいたことが、あるのです・・血の繋がらない家族が・・・・
明日香>そういうと、アキラは過去をポツポツと話し始めた。

アキラ>あれは・・何年前のことだったかな?まだここにきて配達屋をやって日も浅かったときのことだったな・・俺のダチにフウスケってやつがいたんだ。フウスケはいつも朝早くにおれのところに子供を預けてから、仕事に出掛ける男だった。
その子供の名前をサトリといったんだ。
そう・・あの日もサトリは近所の子と一緒にあそんでいたんだ・・・・

明日香>四十九条賭場物語 SATORI編

サトリ>さあ、準備はいいわよ。どっちにいれる?
ヒカル>えっと・・・んじゃ、ボク、シモにしようかな・・・
サトリ>残念でした! 答えはカミよ。あたしの勝ち!
ヒカル>お姉ちゃん、強いよ!
サトリ>あんたはクセがありすぎるのよ。次、どんな答えで攻めてこようかって考えているか、まるわかりだもん。
ヒカル>えええっ クセ? そんなあ。気をつけているんだけどなあ
サトリ>気を付けているだけで直せるなら、苦労はいらないわよ。いい?ことわざで「無くて七癖」聞いたことない?
ヒカル>あるよ。そのくらい。たしか、気がつかない間に人間はクセが出てしまうってことだろ?
サトリ>そうよ。分かっているなら、今度からは気をつけなさい。
ヒカル>はーい。わかりましたぁ センセイ。
サトリ>よろしい!返事は良くできました。さてと、それじゃあ・・!
アキラ>それじゃあ、どうするんだ?
サトリ>あ・・・!おかえりなさい!今日は早かったんですね!
アキラ>はやい?別にはやくないぞ~ もう、とっくにお日様は落ちてるし~
ヒカル>え!?マジで?やっべえ!帰んないと! んじゃあ、これで帰ります! さよなら!
サトリ>ああ~わすれもの あるわよ!ヒカル!  ヒカル!!

アキラ>ん?これは??さては、まった サイコロ遊戯やってたな・・・まったく・・・やつら・・しょうがねえな・・
サトリ>はあ・・・はあ・・はあ・・
アキラ>お~ 帰ってきたな どうだった?
無事、追い付けたか?
サトリ>なんとかね。最近の若いのは 足、早いのなんのって・・・ なかなか追い付けないんだわ、これが。
アキラ>そりゃそうだろ。男の子はこれからが成長期本番だ。いまのうちから何かあったんじゃ、心配な未来というやつだよ
サトリ>ま、それはそうかもしれないけど、原因はあたしにもあるの。わかってるの
アキラ>原・・・因・・・?なんだそれ
サトリ>足よ!足! 悪いのはこの足! 遅いのなんのって・・・もう・・頭に来ちゃう!
アキラ>どういうことだ・・・?
サトリ>カ~ッ! わかってるくせにっ!いいわよ!白状するわよっ!リスナーさんのためにも!ワ・タ・シ! サトリは
足が遅いんですう!かけっこなんて クラス最下位ぶっちぎりなのよっ!
アキラ>おいおい、そんなに 開き直らなくても・・・
サトリ>いーわよ どうせ! ふーんだ!!
アキラ>お、おい!サトリ!! ゴハンは!? バンメシは!?
アキラ>・・って しょうがねえなあ・・・ さて、今宵も鍋にすっかな・・・ちょうど、キャベツ1玉でっかいのもらったからな・・・こいつを調理してだな・・と
サトリ>きゃーっ 雨よ雨!雨が降ってきた!洗濯物取り込まなくっちゃ!
アキラ>あん?雨? 表に干してある洗濯物なら、取り込んでおいたぞ?
サトリ>ちがうちがうちがうのっ! 裏にも干しておいてあるのっ!
アキラ>えっ!?そうなのかっ!?
それは大変だ!急がないと!

サトリ>ふう。なんとか取り込み、成功~~~。
アキラ>ちょっと濡れちゃったけどな。
サトリ>別にいいのよ。すぐに使うものじゃなかったし。とにかく、手伝ってくれて、ありがと。
アキラ>それより、サトリ。もっと急がなきゃいけないことがある。
サトリ>なになに?
アキラ>鍋だよ鍋!今夜のゴハンだよ!急がないと炭になっちゃうぞ!
サトリ>そりゃ大変!
アキラ>今宵はお前好みの味付けだ!たんと召し上がれ!

サトリ>パクパク。うん!おいしい!この肉、サイコー!
アキラ>お気に召したようで、良かったよ
サトリ>濡れた髪の毛も乾いたし、ゴハンは美味しいし、ワタシは幸せだな~
アキラ>お!?機嫌がなおった。良かった良かった。
サトリ>あれ?アキラ?どうしたの?全然食べてないじゃない
アキラ>ばかいえ。食べてるよ。俺はこの野菜をガッツリ食べてるんだよ
サトリ>でも、それじゃ肉がない!栄養が無いよ!?
アキラ>ところがそうじゃないんだな。肉から染み出る栄養分がスープになって、これまた体にいいんだ。変に肉食べるとお腹がふくれちまう。
サトリ>ふーん そうだったんだー
アキラ>だからさ、肉はサトリがたべるといい。お前はまだまだ成長期まっただなかなんだからな!
サトリ>ありがと!アキラ!

サトリ>ふぅ。たべた~~~
アキラ>ごちそうさまでした。っと
サトリ>あ、そうだ!アキラ!
アキラ>なんだよ?
サトリ>裏に干しておいたの、だいぶん乾いたからさ、アキラの前でご披露したいな~と思ってさ
アキラ>そういえばそうだった。いつの間にそんなん買ってたんだよ。あんまり無駄遣いは勘弁してくれよ?
サトリ>大丈夫。この衣装、そんなに高くないから。
アキラ>衣装?衣装だったのか。それ。
サトリ>ふふーん 気になってきたでしょ
アキラ>そりゃ気になるよ。
サトリ>それじゃあ、着替えて国家なこようかな?ちょっと待っててね♪
アキラ>自信ありげだな。いいよ。慌てず、ゆっくり、やっておいで。
サトリ>はーい お言葉に甘えて♪

アキラ>雨・・・まだしつこく降っているんだな・・
アキラ>激しい雨だ・・・
あのことを思い起こしてしまいそうだ・・・
そう、それは5年も前のことだったか・・・
女番頭>イカサマだ!そいつ!ひっとらえてくれ!
フウスケ>どけ!そこを開けろ!どいてくれ!このドスの餌食になりたくなかったら、おとなしく言うことを聞くんだ!
アキラ>!・・・・!!!
フウスケ>誰だお前は!ちょうどいい!こい!!
アキラ>!・・・!!

フウスケ>はあ・・・はあ・・・誰も追ってこねえようだな・・・はあ・・はああ
アキラ>おまえさん、いったいなにやらかしたんだ? 姉御はイカサマだ!っていってたけど、本当なのか?
フウスケ>ああ、そうだよ!手本引きで手札にイカサマしたの、キレイサッパリ バレちまったのさ!
アキラ>なんだ、そうだったのか・・・うちのあれは参加したら最後、絶対に負けるように出来てるんだ。
フウスケ>な、なんだとお!?
アキラ>法外な参加料金にどうして気がつかない?入場で一回、場に参加で一回、胴師が変わるので一回、差し入れ後でさらに一回・・・手数だけでこんだけとられるのに、どうして、勝つことなんてできると思う?正気の沙汰とは思えんぞ?
フウスケ>う・・うるせえ・・・俺にはとにかく、金が必要だったんだ!だからだよ!
アキラ>白いさらし・・・お前、外道に手を染めたのか!?なぜだ!?なぜそんなに急にお金が必要になった!?
フウスケ>子供・・ガキを育てるために必要だったんだよ・・・
アキラ>が、ガキ? ・・・・!!  女の娘・・か、かわいいな・・・
フウスケ>そ、そうだろ・・・ハハハハハ。おれの血は引き継いでいないが、俺のガキだ。よろしく頼む
女番頭>イカサマ野郎のフウスケ!どこに逃げた!?隠れても無駄だ!でてこい!
アキラ>姉御がものすごい怒ってる・・・一度や二度じゃねえなイカサマしたの。しかも、エライ派手にやったな?すまんが、大人しく出ていっても、無事ではすまないぞ?
フウスケ>わかってるよ。そして、そんな俺を匿った、お前も このままだとタダじゃすまないんじゃないのか?

 

アキラ>そ、そうだが・・・
フウスケ>いい取引がある。おれのかわいいこいつを引き取ってくれないか? 報酬はたんとはらうからよ
アキラ>払うったって、お前、文無しじゃないのかよ
フウスケ>大丈夫だ。俺にはフトコロのフトコロがちゃんとあるんだ。
女番頭>イカサマ屋のフウスケ!どこだ!でてこい!
フウスケ>声が近くなってきた・・・なあ、頼めるのか、頼めないのか!?
アキラ>・・・・・わかったよ。請け負ってやるよ
フウスケ>ほ、本当か!?
アキラ>ああ。
フウスケ>じゃ、頼んだぜ!おりゃぁ!うわああああ!
アキラ>おい!フウスケ! 首をドスで掻ききりやがった!!
女番頭>ン!?フウスケ!! あ、アキラ!ありがとう!あなたが殺ってくれたのね!本当に、ありがとう!みんな!はやくこいつを運んで!!

アキラ>一事件終わったって感じかな・・それにしても、こいつ、死を選ばなくても良かったんじゃないかな?
女番頭>そんなことないわ。アキラ。
アキラ>姉御!そんなこと・・
女番頭>イカサマ師は命がけで仕事をするもの。本来は失敗したら、その時点であの世行きなものなのよ。
アキラ>そ、そんな・・・
女番頭>だから、イカサマには手を染めちゃいけない。これは賭場師として鉄則なのよ。あ、あれ?
アキラ>!?
女番頭>あら かわいい。この娘は?
アキラ>俺の、娘だ・・・
女番頭>え?そうなの?顔は全然似てないけどね
アキラ>ああ。俺の血は全然ひきついでいないけど、正真正銘の、フウスケから受け継いだ、俺の娘だ。
女番頭>フウスケから?アナタ、正気?いい?この娘はね・・・
アキラ>・・・・

アキラ>こいつが人間ではないと言うことを俺はこのとき、はじめて知った。フウスケはその養育費のためにヤクザな道に入ったのは容易に予想はついた。もっとも、もともと金には節操のない男だったそうで、賭け事好き、浮気好き、酒好き、遊び好き
女好きで、とてもとても子供を養えるような環境ではなかったそうだ。
アキラ>姉御との話し合いで、店の空き部屋と金銭援助を受けることで、子供をモノゴコロがつくまで育てることにしていた。そして、3年前、教育上の理由から、俺の家で同居、学校へ行かせることにしたのだった。
アキラ(サトリでもOK)>カンのいいリスナーさんはここいらで気づくかと思うが、この娘は人間ではないので成長がちょっとおかしい。この娘は妖怪「サトリ」といって、人間で言う12歳までは倍速で成長する。それ以降は人間の二分の一のスピードで老化するのだ。フウスケはそのことを知らなかったので、養育にひどく手を焼いた。
アキラ>あれから・・・3年か・・・そのときだった

サトリ>お待たせしました~
アキラ>サトリ・・・ぶ!ぶへへへ!
サトリ>じゃじゃーん  サトリちゃんのさらし姿だよーん
アキラ>お・・・おまえ・・・なんだよその格好・・
サトリ>色っぽいでしょ?かっこいいでしょ?
アキラ>そんな問題じゃなくって・・それ、賭場師の格好なんだぞ!?
サトリ>わかってるわよ~ だから、色だって、気を使っているんじゃない。この色のさらしだったら、アキラとは敵対することは、絶対にない
アキラ>ったく、よく知ってるな、お前・・・
サトリ>そりゃそうよ。ワタシをだれだと思っているの?そこらの人間じゃないのよ?
アキラ>そりゃわかってるよ・・・
サトリ>本当にわかってる?・・・ワタシの能力にも?
アキラ>!? 覚醒したのか!? まさか!?
サトリ>カクセイ?なあに?それ?
アキラ>い、いや・・・なんでもない・・
サトリ>へんなの~~
アキラ>俺は、サトリが自分の能力を受け入れていることに驚きを隠せなかった。しかし、能力に覚醒はしていない。そのことに胸をなでおろした。サトリは妖怪の一種で、人の考えを読むことができる。その一方で、全能力に覚醒してしまった場合は、人の思いが怒濤のように流れ込むため、多くの場合、半狂乱となって精神的崩壊を引き起こし、ついには自滅する。妖怪サトリが妖怪であるにもかかわらず、寿命が短いとされるのはそのためでもあった。
アキラ>おい!サトリ!
サトリ>なによ?
アキラ>その格好、絶対に人前でやるなよ?あと、俺の前でも、みだりにやりつづけたら・・・
サトリ>ん?
アキラ>・・・・・・押し倒しちまうぞっ!
サトリ>・・・・いいよ。ゆるす。
アキラ>なっ・・・・!
サトリ>あたしに危険が訪れたら、そうやって守ってくれて、OKだからねっ!
アキラ>お・・おう・・・・
サトリ>外の雨はまもなく上がろうとしていた。