★★★四十九条賭場物語2 鉄の章前編★★★
<登場人物>
明日香>三重(みつえ)神社の当主。昼は巫女夜は黒巫女の格好で賭場で「賽振り」をして生計をたてている。巫女というだけあり式神を使うこともできるが、神社の敷地問題で地元のやくざと抗争状態にある
アキラ>24条の入り口で「配達屋」を営む。アマチュア「賽振り」の腕も疲労することができる。もちろん、当人はカタギの人間である。緋色のさらしコス。
ツキ>明日香の持つ式神のうちの一体。亜麻色の毛と毛並みが綺麗なショタ狐。化けることが得技。
コーエン>明日香の持つ式神のうちの一体。限りなく人間に近い狼男。火を使った攻撃をすることができる。鎮魂の力もあり、夜中、月に向かっての遠吠えは、さまよう霊達を鎮めている。
ヒスイ>明日香の持つ式神のうちの一体だったが、先の襲撃で損傷し、修復中。
ハヤト>明日香の持つ使い魔。おもに偵察の任に就く。野生のカラスに混じって生活するため、バレつことはない。
アキラN>話は元禄の世。戦乱無く太平なりし頃の話。表の世では町人文化華やいだ世の中となっていたが、その背景裏側では、止められぬ闇がひそんでいた。
明日香N>ここは東西7区画、南北7区画に、碁盤目状に開発された、町人の都 通称「四十九条(しじゅうくじょう)」。
アキラ>この話はそんな都市で起きたことの事件簿。その渦中を駆け抜けたいわば青春群像劇。
明日香>コス劇企画オリジナルボイスドラマ「四十九条賭場物語2 鉄の章」
アキラ>サアサアサアサア、みなさん寄ってらっしゃい見てらっしゃい!
お待ちかね!丁半勝負の時間だよっ!取り決めは簡単。
種も仕掛けもないこのサイコロ。こうやって入れ物の中でカチャカチャして出てきた目をあてるというものだよ~
サアサアサアサア賭けた賭けた!丁か半か、さあ、さ、はったはった!!
明日香>・・・・
アキラ>サアサアサアサア・・丁がでました半もでました。その割合は丁がちょっと多いか?
さてみなさん!いかがでしょう?いかがでしょう?
明日香>・・・
アキラ>・・さあ。出そろいました~出そろいました~いかさま、八百長、口八丁に手八丁、その類の仕事はやっちゃいませんやりません。ささ、はったはった~~~~
アキラ>(でたことを確認してから)さてまいります!よござんすねっ!
しょうぶ!!
アキラ>7!でございましたっ!!
アキラ>さてさて、お客人方・・宴(えん)ならぬ賭場(とば)たけなわではございますが・・・ここいらでおひらきといたします。今宵のごひいき、まいどありがとうございました・・・
明日香>ちょいと・・・
アキラ>!?ん? お巫女さん?
明日香>・・・あそばせてもらいます
アキラ>おいおい、お巫女さん。だめだよお。もう花会はおひらきなんだから。
またこんどきなよ?な?
明日香>そんなこと言ってにげるのか?
アキラ>!?
明日香>わらわは そんなに 長居するとはいうておらん。ただ、あそばせてほしいというただけ。
アキラ>・・・
明日香>それとも、おぬし、ちょいと腰抜けになったのではあるまいな?
アキラ>そ、そんなわけ・・ないだろ!
明日香>ほう・・じゃあ、向き合え。わらわの目の前で。
アキラ>あああっ!明日香さん!
明日香>ひさしぶりじゃな。アキラ。
アキラ>おひさしぶり・・です。あの・・明日香さん。そんな格好で来てもよかったのか?巫女って神様にお仕えする身の上だろ?
明日香>ああ。別に気にするでない。日本の古来から、賭け事の嫌いな神様はおらんのでな
アキラ>ああ。なるほど・・・理解した。それでもな・・でも・・ただ・・
明日香>ただ・・なんじゃ?
アキラ>ここの場所の期限時刻が近づいている。
どうしてもやりたいなら、別室にでも、行かないと
明日香>なるほど・・
アキラ>近くの旅館に、部屋を借りた。どうだ?
明日香>なるほど。文句はないな
アキラ>ところで、いったいどうしちゃったって言うんだ?突然。
明日香>・・アキラ・・聞いてくれるか?
アキラ>まったく。血の契約だってあるのに、わざわざ出向いてのおねがいってどういうことなんだ?
明日香>すまん。アキラ。折り入って聞いてほしいことがある
明日香>実は・・だな・・
アキラ>ハイ・・・
明日香>神社が、襲撃された。
アキラ>え!?えええええ?それは本当のことか?
明日香>ああ。世話になったことのある君には、正直、話そうかどうか迷うところではあるのだが・・この際だ。
アキラ>襲撃されたって・・・誰に?
明日香>それが・・・陣場組なんだ・・・
アキラ>また、ですか?
明日香>ああ。また、なんだ・・・
アキラ>なんでなんですか?
明日香>おそらく、それだけ境内の土地がほしいのだろう
アキラ>う~ん。もう、こうなったら、少しだけでも売ってあげたらどうです?
明日香>ならぬ。
アキラ>それはなぜ?
明日香>そういう掟だからじゃ・・・あいつらに売ると・・ロクなことがおこらん・・・
アキラ>考えすぎなんじゃないか?・・・!?ど、どうしたんですか!?その傷だらけの手首は!?
明日香>すまない・・こう追い詰められると、自分を傷つけてしまうのじゃ・・
アキラ>明日香さん・・・
明日香>それで・・・本題なんだが・・・・
もういちど、神社に戻ってきてほしい
アキラ>えっ・・・
明日香>やつら、こんどは乗り込んできたというわけじゃ。ここはひとつ、追い払わなくてはな・・
明日香>・・・なんなら、勝負をするか?
アキラ>えっ?
明日香>・・もちろん、ただとはいわん。
わらわは・・これを賭けよう。
この身・・一夜。(いちや)
アキラ>!!大きくですぎだ!! この身一夜(いちや)なんて、非常識だろ!!
明日香>なんじゃ?臆病風にでもふかれたか?
アキラ>・・・わかったよ・・おれは・・・おれは、負けたら、君の言うことをひとつ、かなえるよう、努力してやろう。これで、どうだ?
明日香>そうか。それでいい。
アキラ>では・・・はじめるぞ・・・
明日香>ああ・
アキラ>よござんすね・・・・勝負!
明日香>丁!!
アキラ>はやい・・・?
明日香>丁だ。はようあげんか
アキラ>なっ・・・!あああ!!
明日香>どうした?結果はどうじゃ・・・
アキラ>ち・・・ちょう・・・・
明日香>ふっつ・・・わらわの勝ちじゃな・・・
アキラ>く・・くそ・・・望みはなんだ・・・・
明日香>手を・・・
アキラ>え?
明日香>手をさしだしてくれ・・
アキラ>手‥を?うああああああ!!
明日香>悪い。ひとつはひとつだ・・・・
アキラ>どれだけねむったのだろう。ボクはぼうっとしたあたまで周囲をみる。ここが何かの会場なのはわかった。
ツキ>お、やっと目覚めたか
アキラ>こ、ここは・・・?
ツキ>お?ここは?じゃないぞ。このねぼすけめ
アキラ>ツキ!ツキじゃないか!
ツキ>ああ。ひさしぶりだな。アキラ
コーエン>よう、やっと起きたのか。心配したぜ。薬、強すぎたんじゃないかって思ってたところだったんだからな
アキラ>コーエン!!
コーエン>再会の宴はまたあとからだ。とにかく、ここは、主様のために・・・
アキラ>ああ。わかった。それより・・・
コーエン>わかってる。状況を説明しよう。ただ、準備をしながら、で、頼む。
明日香>そのころ、私は華会の準備で手一杯だった。
アキラ>明日香!おまたせ
明日香>アキラ!すまぬな
アキラ>大丈夫だ。ことの次第はあいつらから聞いた。
明日香>あいつら?そうか・・ありがとう
アキラ>で?なになに・・・第37回記念特別花会 開催会場・・・? こりゃまた、でっかい企画モノだな・・・
明日香>そのとおりだ。それでな。あと1時間で賭場が開く。準備をしてくれ。
アキラ>ああ。わかってるよ。それで、こっちはどんな布陣で行くんだ?
明日香>盆のとなりにわらわとおぬし。そのとなりには政と辰だ。
アキラ>政と辰?誰だ?そりゃ
明日香>なんでも、今日の日に応募してきた胴師みならいなんだってさ。
アキラ>う~ん うさんくせえな・・・
俺だったら・・だな
明日香>どうするんだ?
アキラ>まず、ツキとコウエンをひとの姿にして、一緒にならんでもらう。
明日香>な、なんだと!?あいつらはヒトじゃない!そんな賭博のことなんか、理解できないぞ!?
コーエン>そいつはどうかな?
ツキ>丁・半 いかさまはご法度。その辺はわかってるよ。簡単じゃないか。
明日香>こら!アキラ!!余計なこと教えてはダメではないか!
アキラ>俺はなにもおしえてないよ。なぁ?
コーエン>そうだ誤解だ誤解。主様
ツキ>そうだよ。誤解だよ。俺たちは勝手におぼえちゃったのさ
明日香>なっ・・・
コーエン>あれから、おれたちは交代した直後とかにちょくちょく遊んでいたんだ。
ツキ>そうだよっ!
コーエン>こいつ・・すぐイカサマなんかしやがって・・・まったく
ツキ>いいじゃねえか!勝ってナンボのもんなんだよ!こういう博打ってのは!
コーエン>こんなんだから、ちょっとカッとなって、何回か耳をかじったこともありましてね・・・
ツキ>そうだぞ!あれは痛かったぞ!損害賠償モノなんだからな!?
アキラ>なんか・・あいつらのほうが乗り気だぞ?いっとくが、俺はなにもしてねえからな?
明日香>みたいじゃな。よい。それでは、彼らをとなりに座らせよう。
アキラ>でも、こいつらの衣装はどうするよ?まさかスッポンポンってわけにもいかんだろう。
ツキ>その辺は大丈夫!おいら、持ってきたもんね
明日香>ツキ!おぬし!
ツキ>大丈夫!おいらは主様とサイズぴったりだもんね!だから もってきちゃったんだ 巫女服
コーエン>おいらは幸い人間に近い。故にサラシステテコ姿であればバレないと思う。
アキラ>てなわけだ。いかがかな?
明日香>いいじゃろう。配置についてはわらわが申し入れておく。そなたたちは準備を怠らんようにな。たのむぞ。
明日香>そうじゃ。忘れるところじゃった
ふんっ!
アキラ>うわっ・・・腕に刻印が浮かび上がった!
(↓エコー)
明日香>聞こえる?アキラ
アキラ>ああ。きれいに聞こえるよ。
明日香>よかった。じゃ。
アキラ>ああ。
(↑エコー)
アキラ>開場15分になって、ツキが話しかけてきた。
ツキ>あれ?どうしたんですか?アキラさん、ふるえているんですね
アキラ>あたりまえだろ・・・お前らとは・・違うんだよ・・
ツキ>しっかりしてくださいよね・・・主様に信頼されてくれないと、ホント困りますから。
アキラ>わかってるよっ!あ、そうだ!ツキ!
ツキ>なんだよお
アキラ>それ・・・その服・・・よく似合ってる。
ツキ>な・・なにを突然!
アキラ>あと、耳、ちょっとごまかしきれてない。
ツキ>な、なんですと~
コーエン>ふふふ・・・はははは・・・
明日香>コーエン!
コーエン>いや、とても・・・ほほえましいと思ったものでな
明日香>そう?
<↓この話の前日談でヒスイが死ぬ話がある。ヒスイが犠牲になって、いまがあるのだが、コーエンはそのときの自分達の力のなさを悔いている。ちなみに前日談の話ではアキラは呼び出されていない>
コーエン>あのときも・・・ああしていればよかったのかもしれません
明日香>ああ、していれば?
コーエン>ハイ。アキラを呼んでいれば少々変わることはあったのかと・・・
明日香>よせ、コーエン。
コーエン>すみません。主様。しかし、自分はあやつが必需かと
明日香>それは、この難局がすんでからだ
コーエン>ああ・・そうだな・・・
明日香>みんな準備はいいか?まだなら早く準備しな。さもないと殺されるよ。
アキラ>ふう・・・フゥ・・・
明日香>アキラ・・・うろたえるんじゃないよ~。何度か修羅場は経験してるんだろ?
アキラ>してないよぉ明日香。ボクなんて、そんじょそこらに転がっている一般人じゃないか!
明日香>たしかにな・・・だけどな、君は立派な賭場はひらいていたじゃないか
アキラ>!
ツキ>この規模で行われる華会だ。大規模なものだ。おまけに、ここに来る奴はみんな血気盛んなやつらばっかだ。
コーエン>なにかコトが起これば、責任を取らされてこの世とオサラバ。そんな状況で賽打ち押し付けられたら、キミならどうする?
アキラ>・・・・・! たぶん・・緊張のあまり・・なにも手につかないと思う。
明日香>そうだろ?私もいっしょだ。緊張のあまり、フラフラとしていた。そしたらキミが見事な賭場をひらいてた。
アキラ>・・・!
明日香>それをみていた私は、喉から手が出るくらいに君が欲しくなった。
アキラ>・・・・!
明日香>・・・その喉から手が出てしまったということさ。まあ、諦めてくれ。
アキラ>・・・・ああ、わかった
明日香>さすがだな。物分かりが早くてたすかる。
アキラN>僕たちは道具の確認や差し入れの手配などに手を焼いた。そうこうしているうちにあっという間に時間は過ぎ、開場を迎える。
明日香>ささ、みなさま、今一度静粛におねがいします。開場までいましばらくおまちくださいませ
アキラN>言うが早いか、政と辰はお互いに目配せを送る。
アキラ>!?
明日香>どうした?アキラ
アキラ>あ、いや・・・なんでも・・ない
アキラ>まさか、いかさま?しかし、こんな冒頭から!?
アキラ>盆はボクが進行を担当し、あとの二人は俺たちの隣に座って、ひたすら不正がないかを見張る。明日香はそのまま壺振りを担えばいいようにした
アキラ>丁半のばあい、イカサマをするのは賭け手のほうだ。ゆえに、目の前にいるのはみんな野獣だと思ったほうがいい。やつらがヘンなことをしないよう、いざこざが起きないよう、管理するのだ。
明日香>いよいよか・・・!
アキラ>いいか。忘れるなよ。秩序と公正だけが今の僕たちの味方だ・・・・
明日香>アキラ・・・
ツキ>さあ、時間だ。
コーエン>はじまりだ・・・場がひらく・・・・
明日香>そして、私は、声を発した。
明日香>みなさま今日はよろしくいらっしゃいました。この席に座す、わたくしめは、名を。明日香ともうします。
身にまといしは 黒き巫女服。
闇の賭場に咲き乱れまする花のように絢爛たる(けんらんたる)振る舞いを御披露いたします・・・
なにとぞよろしくおねがいします。
アキラ>さすがは、サヤカさん・・・すげえな・・貫禄がちがう・・・
明日香>でははじめます・・・・・よござんすね・・・・方々、いざ尋常に!・・しょうぶ!!
アキラN>サアサア どちらさまも はったはった! 上方さまも 下方さまも、かけ忘れはご法度ですよ~
さあはった!さあはった! 丁が15、半が11.半はおらんか 半はいませんか・あ、半に賭けますか。半ですね、半ですね。
はい、そろいました!! 賭け、成立しました!!
明日香>では、アガります。・(ふんっ!・・・・)・・・丁!!ニロクの丁!!
アキラ>途端に眼前の盆台(ぼんだい)で金子(きんす)が駆け巡る。右へと左へと左へと右へと・・・
明日香>場が進むたび、賭けに出される金子の量が少しずつ増えてくる。あわせて、場の空気も上気してくる・・・
アキラ>こういう時に物言いがつくと、場は一気に崩壊する・・・それは、カタギの催し物のときも変わらない。だから、ボクは常にそれを恐れていた。
明日香>アキラ・・・そこのつづら・・・
アキラ>えっ?・・ああ!
アキラ>そこには氷嚢で冷やされた、食べ物が用意されていた。ボクは一区切りついたところで
声を上げる。
アキラ>さて、さて、さて~ここでちょいと一服いれましょう!
手前どものこしらえました「鉄火巻き」でございます。どうぞ、めしあがれ。
さ、さ、コーエンにツキ。手伝ってくれ。お客様へのおもてなしだぞ?
コーエン>あ、ああ
ツキ>がってんだ!
アキラ>明日香・・・どうだ?
明日香>賭けのレートが急に上がり始めたから一息いれたんだ。場の雰囲気が狂気に変わらないように、手を打ったんだ・・・
アキラ>なるほど。ボクは相づちをうつ。
しかし、ボクの心配は尽きなかった
アキラ>暑い・・ボクの緋色のさらしは腹のほうまで汗でびっしょりになっていた。
思わずサヤカをみやる。 サヤカは額に汗を浮かべながら凛とした顔つきで場の動向を統べていた。一重の瞼が時折引きつけを見せる。緊張が最高潮に達している証拠だった。
明日香>ふぅ・・・暑い・・・・
アキラ>その声に、ふとその背中をみやる。サヤカは胸から上をすでに脱ぎ去っていたが、さらけ出した肌は汗でびっしょりに濡れていた。
アキラ>明日香。ちょっといいか?
明日香>!?
アキラ>汗びっしょりだぞ。拭き上げてやろう
明日香>あぁ・・ありがとう。続けてくれ。頼む。
アキラ>明日香・・・
明日香>すまない。ヒトに後ろを見せるのは嫌いなのでな・・
アキラ>・・・・・・・・じゃ、はじめるね・・・
明日香>ああ・・・思えば・・・
アキラ>ん?
明日香>背後を預けるのはお前ががはじめてだなと思ってな。
アキラ>・・・・!
明日香>よろしく頼む。あと、鉄火巻き・・・
アキラ>・・!
明日香>キミのぶんまで準備がなくって申し訳ない。
アキラ>あ、いや・・・そこは気にしなくっていいよ・・・
アキラ>・・休会のあいだも、明日香の肌からは汗がとめどなく噴き上げてきていた。
コーエン>あのさ・・・ツキ・・・?
ツキ>なんだ?コーエン
コーエン>・・・やっぱり、気になる
ツキ>そう・・?
コーエン>ああ。政と辰。会場のなかでの警備をお願いしたのに、なかには一歩すら中に入ろうとしない
ツキ>うん
コーエン>そればかりか、目配せばかりがおおい。
やつは明らかに別のなにかに集中しているぞ
ツキ>うん・・・目の動き・・2回、1回、2回
間違いない。何らかのメッセージだ・・・
(↓エコー)
明日香>(エコー)どうした?アキラ
アキラ>(エコー)あ、いや・・・・雅さんと辰さん・・・両名の動きがおかしいみたいだからさ・・。
明日香>おかしい?どういうことじゃ?
アキラ>先ほどから なにやら 観衆に目配せを送っている。
明日香>なんですって!
アキラ>本来、賭け手との不正をみつける役目だから、観衆に目配せを送るのは場違いだ。用心を。もしかしたら、勝負のときの数字を教えているのかもしれない。
明日香>了解した。だけどな、アキラ・・・
アキラ>!?
明日香>残念だが、それにあまり意味はない
アキラ>どういうことだ?どうしてだ?
明日香>外部から盆の中のサイコロには細工はできないし、できたとしても、すでにそれに対処することはできないからだ
アキラ>じゃあ、どうやって勝つんだよ!
明日香>その状況をふまえた状態で勝つんだ。
アキラ>なっ!
明日香>これが。賭場破りなんだったらそれでもいい。だがな、本日の私たちの役目は、まず第一に賭場の仕事をおわらせることじゃ。
アキラ>たしかに・・そう・・だな・・・
明日香>しかし、あの2人がなにをしているのかは、無視できないことだ。そこは、コーエンとツキに引き続き監視してもらうことにする。それで、いいか。
アキラ>わかった。
明日香>ありがとう・・・さあ、そろそろこっちに集中してくれ。作戦の再開だ!
アキラ>さあ~さあ~さあ~次です次です、次の場に入ります。
僕たちはまた、緊張の渦中に飛び込んでいった。
再開後、第一場 サンミチの丁
第二場 グサンの丁
第三場 サブロクの半
第四場 サニの半
そこまで来た時に、恐れていたことが起きた。
アキラ>はい、そろいました!! 賭け、成立しました!!
明日香>では、アガります。
鉄蔵>ちょ~~いと まてや!
明日香>!?
鉄蔵>とぼけんじゃないわい!このアマ!わりゃ、イカサマしかけおったな!
明日香>イカサマとはおだやかじゃないな。貴様はだれだ。まずは名をなのれ!
鉄蔵>ワイか。ワイは金属の鉄の蔵と書いて、鉄蔵っちゅうもんや。休会後の四回の賭場。なんかおかしゅうないか?
明日香>おそれながら、どういうことでしょうか。
わらわはこの場をただただ公正にとりしきっているにすぎん。
ツキ>そうだそうだ!不躾な侮辱は、この場において、断固、ゆるさぬぞ!
鉄蔵>それじゃあ、聞くが、前後の四回の結果はなんぞ!?
コーエン>どういうことだ?なにがいいたい?
鉄蔵>ええか?四回のうち四回とも一つの賽は三から動いてはおらん。これをどう説明する!
明日香>それは・・・賽の目の気まぐれではないのか?
鉄蔵>なんだと!
明日香>お天気様(おてんとうさま)でも、次の目は予測できんと嘆いた賽の目。所詮は人では測れないのではございませんのか?
声>ぐぬぬぬぬ・・・
明日香>そこまで申されるのでございますれば、賽をあらためてくださいまし!
万が一、細工が発覚いたしましられば、我らは喜んで責任をお取りいたします。
鉄蔵>おう、しかれば、すぐに!
明日香>まちなされ!ただし、もし、賽に小細工がなかったとするなれば、鉄蔵さん、オトシマエつけていただきますからね!
鉄蔵>望むところだ!さあ、賽をみてくれ!!
明日香>アキラ! さあ!
アキラ>サヤカさん・・・
明日香>かまわん!アキラ!!やりいや!!あけや!!
アキラ>(冗談・・きついぜ・・・)
明日香>アキラ!!!
アキラ>!!!・・・・・どうぞ・・・・
明日香>賽の目は・・・・・・ピンゾロの丁!!・・・
明日香>くりかえす!!賽はピンゾロの丁!!
鉄蔵>くそう・・・・くっそう・・・くっそう!!!・・・・このアマ!絵図かきやがったな!!
明日香>結果は出ましたえ。 これでよろしいでございましょう?
雅、辰。この場のオトシマエはそなたらにおまかせしましたえ。
アキラ>お客人方!今一度もうしあげます!
厳粛に行われしこの場は残念ながらあれてしまいました。今宵はこれでお開きにしたいとおもいます。本当にありがとうございました!
鉄蔵>くそう・・くそう・・・くっっっそう!!
ツキ>こうやってこの日の賭場は乗り切ることができた。
コーエン>いちゃもんをつけてきた鉄蔵がどうなったのかは、おれたちは知らない。
アキラ>そんなものに気をとらわれる暇などなく、片付けをすませ、撤収したからだった。
明日香>アキラ・・・今日はありがとう。
アキラ>いや。キミがすばらしかったからだよ。そして、つき、コーエン。君たちも、すばらしかったよ・・・
コーエン>ふっ・・テレるぜ
明日香>ありがとう。
コーエン>ふっ・・そこは あったりまえだのクラッカーってな!
アキラ>それじゃ、ボクはここいらで。
明日香>ああ。あの、また・・・・
アキラ>ん?
明日香>また、会おう。かならずじゃぞ!!
アキラ>ああ。かならず。
ツキN>話は元禄の世。戦乱無く、太平なりし頃の話。表の世では町人文化華やいだ世の中。背景裏側では、止められぬ闇がひそんでいた。
コーエン>そして、ここは東西7区画、南北7区画に、碁盤目状に開発された、町人の都 通称「四十九条(しじゅうくじょう)」。
アキラ>これはそんな都市で起きたことの事件簿。そしてそれを描いたいわば青春群像劇。
明日香>コス劇企画オリジナルボイスドラマ「四十九条賭場物語2鉄の章前編はここまで!」
明日香>ちょうどそのとき、私は背後から鋭い視線の存在を感じていた。気のせいかなと考えていたのだが、この気のゆるみがこのあと、大事件を引き起こすことになろうとは考えてもみないことだった・・・・
前編 END