★★★四十九条賭場物語エピソード4 遠い過去編★★★ | 劇部屋24シアターズ

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劇部屋24のオリジナル作品「月羽妖夢伝」制作近況や
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★★★四十九条賭場物語エピソード4 遠い過去編★★★

 

明日香>そういえば、わらわもいっていない過去がある。
アキラ>なんですか?それ?
明日香>わらわも一人ではなかった時期があるということじゃ
アキラ>ど、どういうことですか?
明日香>わらわには 兄弟分がおったのじゃ・・・
アキラ>そうなんですね・・・
アキラ>そういや、明日香さんはいつごろから賭場はじめてるんですか?
明日香>いつからだったかな。もうずいぶん経つなァ
アキラ>へえ。そんなに。そんなに一人でおやりになっているんですか?
明日香>いや?そうでもない。2人でやっていたこともあるよ
アキラ>そうなんですか?
明日香>ああ。そうだ、ちょうどいい。ここいらで休憩しよう。
アキラ>いいんですか?
明日香>かまわんさ。これは、おぬしに話しておきたい過去じゃからな
アキラ>そういうと明日香さんは、ポツポツと話し始めた。
明日香N>あれは・・まだ弟分と2人きりで賭場を切り盛りしていた時のことだ。売り上げもそんなになかったから、二人はいつでも必死だったさ。
明日香N>日中のうちに上がった気温は、夜になっても下がらず、賭場の熱気と相まって蒸し風呂のようになっていた。
明日香>はい!今日もありがとうございました~またのお越し、お待ちしております!
明日香N>流れる汗もそのままに、笑顔で客を送り出していたっけ。
明日香>じつは、あたしは親分に賭場のことを一から十まで教えてもらってたんだ。
アキラ>なるほど・・だから・・上手いんだ・・・
明日香>・・上手いかどうかは、一概にはいえないさ・・
アキラ>え?どういうことだ?
明日香>実は、そいつ、おれよりも遥かにうまかったんだぜ。張り方、賭け方、客の扱い方、おまけに、イカサマのやり方まで・・
アキラ>そ、そんなに・・・
明日香>天賦(てんぷ)の才能って、ああいうことをいうんだなって、正直、悟ったね。
アキラ>じゃ、じゃあ、その人は、今や若くして、名人か殿堂入りに?
明日香>いや・・・それが、そうもいかなかったのさ・・実際、俺も、あの日までは、そう思っていたんだけどな・・
★回想★
明日香>・・あいつ・・さすがだな・・もう100万はもうけただろ・・俺の1年ぶんだぜぇ・・・はぁ・・参ったな・・・
兄弟>サアサアサアサア!よってらっしゃいみてらっしゃい、今宵もおいらの賭場へようこそ。賭けてください、、賭けてください、大賭場とはこのことだよお!
明日香>そのまんまだったら、普通の場だった。だけど、予定外なことが起きたんだ。
兄弟>・・・!札束!!わ!10個、20個・・・うわあ、すげえ!始めてみた!!すっげえええよ!すっげえええええ!俺ってすっげえええよお!!
明日香>あいつは明らかに舞い上がり始めた。目は泳ぐし、余計なことは口に出すし、礼儀は忘れるしで・・みちゃいられなかった。・・と、その時、やつに異変がおきたんだ・・
兄弟>うひひひひ・・・今回勝てば、札束10個・・今回勝てば、札束10個・・今回勝てば、札束10個・・
明日香>なにかに取りつかれたかのようだった。お経のように、うわ言を口にしだして・・そのときだった。あいつは開く手のひらに札を一枚隠し持った。いわゆるイカサマだ。
兄弟>・・・!明日香!なにをする!!
明日香>ダメ!イカサマ!!ダメ!!
兄弟>・・・!
明日香>・・・その賭場ではイカサマは打ち首と決まっていたが、初めてなのと、まだ若いからという理由で、私たちに反省の場がもうけられることになった。
明日香>ねえ、アンタ・・バカだよ・・どうしてあんなことしたのさ・・
兄弟>もう・・限界なんだよ・・・ボク
明日香>!?
兄弟>盆の上で一度にみたこともないようなお金が飛び回るようになってしまって・・・もう、うんざりになっちゃったんだよ・・
明日香>アンタ・・
兄弟>ボク・・むいてない・・わかってたんだ・・手先は器用かもしれないけど・・器量がついていかないんだ・・
明日香>・・・アンタ・・
兄弟>こわい・・こわいんだよ・・明日香・・・
明日香N>おもわず、私は、うずくまった兄弟を、きゅっと後ろから抱き締めた。
兄弟>・・・!?
明日香>大丈夫だよ・・私がついてるから。
兄弟>・・・?
明日香>あんなのは、慣れだよ。そう、慣れ。お金の流れは水の流れがああなっているんだ、と思うようにすれば、大丈夫だよ。
兄弟>水の流れ・・?そっか・・そうなんだね・・アハハ・・
明日香>くすっ・・もう、大丈夫だね。さ、荷物をもって。許してくれるそうなんだから、早く組にかえろっ。
兄弟>うん。そうだね・・明日香さんだけね・・うわああっ!
明日香>・・・!アンタ!腹なんか裂いて・・なにやってんだよ!!
兄弟>ボクには!ボクには!こうするしかないんだ!!
明日香>アンタ!
兄弟>この気持ちなんて、誰もわかってくれやしない!!ボクは!ボクは!こんな自分が大嫌いで居なくなってほしいとおもってるだけなのにぃ!!このっ!このっ!このっ!
明日香>アンタ!!ちょっと!誰か!誰か来て!!
兄弟>なかなか・・死ねないもんなんだね・・・いままでイカサマがばれた・・ひとたちは・・ひといきだったというのに・・・
明日香>血が・・・血が・・血が・・!!
兄弟>ああああああ・・・・ああああああ・・・・手が・・手がふるえて・・・
明日香>アンタ!
兄弟>痛い・・痛いよ・・明日香・・助けておくれよ・・
明日香>・・・!?
兄弟>明日香・・・逝かせておくれよおお・・・・
明日香>アンタ・・・
兄弟>はやくぅ・・・はやくぅ・・目が・・目がァ・・暗い・・・明日香ァ!
明日香>その悲痛な声で、私のなにかが吹っ切れたのだと思う。
明日香>わかった。 覚悟!!
兄弟>サヤ・・カ・・
明日香>うわああああああああ!!!
明日香N>私は声をあげて、刃を振るった。激しい血潮と返り血が顔にかかったのがわかった。
アキラ>・・・・!
明日香>・・・ここから先は記憶がない。聞いたところによると叫び声をあげていたそうなんだが・・・気がついた頃には自分の部屋だった・・・という有り様だったんだ。
アキラ>・・・・・。
明日香>後日、アイツの遺品から、俺への手紙と一緒にこれが入っていたというわけさ。高いモノだったから一個師か買えなくってゴメンってかいてあったよ
アキラ>それが、口許の・・・
明日香>そう。本来、耳にするものかもしれないが、俺はあいつのぶんの痛みを忘れないように、と、あえて痛いところにこれをつけたんだ。
アキラ>そうだったんだ・・・・
明日香>どうだ?聞いて楽しい話だったか?暗くって、残酷なはなしで、俺の印象なんて一発で変わってしまう話だったろ?
アキラ>うん・・まあ・・そう・・だね・・・
んじゃ、ボクもイカサマバレちゃったら、明日香さんに殺されるんだね。ああいうふうに・・
明日香>いや。君は殺さないし、殺させないよ。
アキラ>え?
明日香>それが、アイツへのせめてもの供養だと、おもうから・・・
アキラ>話終えたとき、外は白んでいた。
暁の頃に聞いた明日香の話・・
夜明けを告げると共に、その一巻を終えるとしよう。