チャンチャカチャンチャカチャンチャカチャンチャカチャンチャン
あおいーいっ すーいへいせーんぅをーーっ
11、RIDE ON TIME
いま駆け抜けていく とぎすまされた 時の流れ感じて
コンサートで必ず聞きたいフレーズが流れてきた。サックス、バンド演奏、そしてコーラス。手拍子、手拍子。山下達郎おなじみのグルーブが繰り広げられる。早すぎず遅すぎず、ノリを失わない絶妙のスピードに観客が酔いしれてゆく。
前から10列目、達郎さんの正面で見ていた。
目を閉じ、マイクに口を近づけ、体の動きを止め、右手でギターをつま弾く。
RIDE ON TIME さまよう思いなら
やさしく受け止めて そっと包んで
一語一語丁寧に、かみしめるようにマイクに乗せていく。
この曲が生まれてから32年、コンサートでこの曲は欠かさず演奏されてきた。演歌歌手は一曲をキャンペーンするために歌うので飽きてしまうという話をテレビで見たことがある。達郎さんはどんな思いでこの曲を歌ってきたのだろうか。
基本的には僕のライブに対する考え方は「一期一会」。その日その時一度だけしか観られない人を第一義に考えてやってる。したがって、いわゆるリピーターと呼ばれる人たちの比較論的視点はまったく考慮していない。
『TATSURO MANIA no.82』
はじめて達郎さんを観る人のために曲を選んでいる。とすれば「RIDE ON TIME」は絶対に欠かせない。私にとっても「クリスマス・イブ」や「LET'S DANCE BABY」は無くても構わないが、この曲がないのは考えられない。山下達郎20代のやや細身の声よりも今の迫力ある声で、今のサウンドで、今のコーラスで聴きたい。だから、飽きもせずに聞きに行く。演奏されるとわかっていても聞きに行く。
自分の音楽を届けるために頑固な達郎さんが、今言葉を大事に歌っているのを見られただけで今日はわざわざ観に来たかいがあった。アルチザンの本領は「一期一会」を大事に行うことと見たり!?
「アトムの子」に引き続きまりやさんがコーラスに加わっている。コーラス編成が4人になったこの曲を聴くのは02年以来3回目だ。
まりやはアルトなので、コーラス隊3人のトップ・パートのオクターブ下を歌ってる。別にお飾りじゃなくて、ちゃんと4声目として声を出してる。4人になると、コーラスが厚くなって、「RIDE ON TIME」なんかは如実に変わるんだよね。
『TATSURO MANIA no.76』
でも今日の主役はまりやさんではなかった。
観客の主旋律を歌う声
がステージの演奏に乗っかった。私も歌いました。「元気を出して」でまりやさんが
「よかったら、いっしょにうたってください」
とMCを入れてくれたので、それが後を引いてみんな自然に歌えたようだ。私は達郎さんのコンサートで周囲に迷惑をかけないようにするため歌わない。しいて言えばこの曲だけは我慢できずに歌ってしまうというのが本音だが、今日はまりやさんのおかげで気兼ねなしに歌える。「SPARKLE」楽器のアンサンブルのきらめきに感動したが、「RIDE ON TIME」は人間がつくる一番自然な楽器である声のハーモニーに深みを感じた。この曲って、人間の自然な喜びを感じる曲なのね。いつまでも達郎さんのコンサートにこの曲が演奏されてほしい。
「今日はどうも、本当にありがとう。うちのメンバーを紹介します。
ドラムス、小笠原拓海
ベース、伊藤広規
ギター、佐橋佳幸
キーボード、難波弘之
キーボード、柴田俊文
サックス、宮里陽太
コーラス、国分友里恵、佐々木久美、三谷泰弘
どうもありがとう!!」
あのう、達郎さん、奥様をお忘れですが。まりやさん、ぜひとも突っ込んでくださいまし。
「みなさん、またどこかで、お会いしましょう」
と短いあいさつの後、後ろからお約束の物を取り出す。コンサートでは“ガラパゴス”といった達郎さんのコンサートで欠かせない作法のひとつ。
「タイ-----------------------------------ムゥ!!」
大阪フェスティバルホールでもらった拡声器をマイクにあててシャウト。ドラムもシャウト。他のパートも、コーラスも続く。
拍手、拍手。
山中湖で聴く一期一会の「RIDE ON TIME」が終わった。こんど聴けるのは来年だろうなあ。
「本当に今日はありがとうございました。いま大変な時代ですけど、皆さんの未来に素晴らしいことがありますように」
締めの言葉を言った後、
「もう一曲やります」
“ライジング・サン”でも最後に演った、ひと夏の思い出を閉じ込める曲が最後に待っている。このままじゃ帰れない。
12、さよなら夏の日
波打つ夕立のプール
しぶきを上げて
一番素敵な季節が
もうすぐ終わる
「時が止まればいい」
僕の肩で
とつぶやく君 見てた
さよなら夏の日
いつまでも忘れないよ
雨に濡れながら
僕らは大人になって行くよ
まりやさんとコーラス隊が消えたステージで、達郎さんがしっとり歌い上げる。SWEET LOVE SHOWERで達郎さんを聴けた奇跡を噛みしめる。
ごらん 最後の虹が出たよ
空を裸足のまま駆けてゆく
上を見た。空はまだ雲に覆われていた。でも色は薄くなって今すぐ雨が落ちてくる心配はなさそうだ。山梨の大空の下でソウルフルな歌声が響き渡る。
正面のスクリーンに女性が映し出された。キャップをかぶったその人は、最前列のフェンスにもたれかかっていた。
泣いていた。
目を開けていたものの、涙が止まらない様子だった。
画面がステージに切り替わる。
どうぞ変わらないで
どんな未来
訪れたとしても
達郎さんが客席の思いをすべて受け止めて歌い上げる。
さよなら夏の日
いつまでも忘れないよ
雨に濡れながら
僕等は大人になって行くよ
さよなら夏の日
僕等は大人になって行くよ
静かにすべてが終了した。
「この後はPerfumeです。僕も見て帰ろうと思います」
次のステージをさりげなく予告して、主役はバンドのメンバーと連れ立って去っていった。ひと夏の感激が終わりを告げた。
「めっちゃ、かっこええわ」
「若いもんに見せつけてくれたよね」
ファンが感激の言葉を口にしていた。携帯には“16:45”の文字が浮かんでいた。15分押しの興奮のステージだった。
まりやさんの登場はあったけど、セットリストの組み方は「一期一会」のもので“ライジング・サン”と大きく変わっていなかった。初めて見るファンのために選りすぐった曲を変わらぬテンションで演りきった。いつも聞く曲にまた違う魅力を見つけたことが大収穫だった。
さあ、帰りは混みそうだ。Perfumeも聞いてみたいけど、またの機会にして帰ろう。旅の御伴は『GREATEST HIT!』にしよう。
たった約2時間の滞在で山中湖を後にした。でも達郎さんが聴けたんだからいいじゃないか。
SWEET LOVE SHOWER 2012 山下達郎 SET LIST
01、LOVELAND,ISLAND(アカペラ、コーラス、インストゥルメンタルのショートバージョン。)
02、SPARKLE
03、DAYDREAM
04、DONUT SONG
05、僕らの夏の夢
06、家(うち)に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)~(歌唱、竹内まりや)
07、元気を出して~(歌唱、竹内まりや)
08、俺の空
09、BOMBER
10、アトムの子~(コーラスwith竹内まりや)
11、RIDE ON TIME~(コーラスwith竹内まりや)
12、さよなら夏の日