竹内まりや様降臨す。 SWEET LOVE SHOWER 2012 山下達郎登場編(4) | リーンのガラパゴスサロン~趣味や娯楽の広場

リーンのガラパゴスサロン~趣味や娯楽の広場

「リーンのガラパゴス批評」の兄弟ブログです。趣味に関する記事はこちらでどうぞ。

 

 甲高いギターの音、ミディアムテンポの軽やかなメロディー、それに誘われて袖から現れた女性は、倦怠期の夫婦がテーマの曲を軽やかに歌い始めた。


 06、家(うち)に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)


 恋するには遅すぎると 言われる私でも ……


 まさか、竹内まりやがご自分の持ち歌を歌うなんてねえ。せめて「September」ぐらいだろう。と、高をくくったが予想を大きく超えた。ちなみにまりやさんがご主人のコンサートに登場して持ち歌を披露するのは08年に大阪フェスティバルホールが建て替えのために閉館する折にアンコールに登場したときを含め08-09ツアーで3回だけ、そのあとは一度もなかった。


 (ちなみに、その時歌ったのは3回とも「September」。大阪では加えて「人生の扉」。今年のツアー最終日に登場した時はご主人と「Let It Be Me」をデュエットしただけ)


けっしてしゃしゃり出る人ではない。だから今回はコーラスには登場するだろうと思っていたが、まさかの出来事。ましてや「家(うち)に帰ろう」を歌うのは自分のコンサート以外では初めてのはず。驚いた。本当に驚いた。サプライズとはまさにこのこと。



 まりやさんの顔が雪のように白い。曇り空の下でいっそう表情が映える。アイラインがくっきりしていて、ジャケット写真よりも目がパッチリしている。まるでリカちゃん人形を熟年化したようだ。まりやさんもけっこうな御年なのだが、相も変わらず反則気味におキレイだ。いったい御主人は毎日何を食べさせてあの美貌を保っているのだろうか。一方御主人はというと……。



 まりやさんの声は、変な表現だけどスタジオ録音の声とそっくりに聞こえた。TOKYO FM主催の武道館での復帰コンサートの録音を聴いたときはアルトのやや低音のところが強調して聞こえ、意外に声が太く感じたが、今日はソプラノ部分の高いところがのびやかに聞こえるた。歌いにくそうに声をつまらせるところなどなかった。いっぽう御主人は年相応にやや声が太くなった。そのくせ裏声も健在で、ハイトーンを保ちながら迫力が増している。女性の声は年を重ねてもそれほど変わらないが、男性は如実に変わる、その好例を山下夫婦がこのステージで身を持って示している。でも、おふたりとも今日は声がよく出ている。



サハシ!!」



 と一声かける。ギター担当の佐橋佳幸さん(蛇足ですけど松たか子さんのご主人)を舞台中央に呼び込む。佐橋さんは無言で正面にせり出しギターソロを演奏する。まりやさん自身のコンサートではいつもやっているはずの手慣れた演出が繰り広げられる。その後ろで達郎さんは口びるを固く結び、すこしうつむいてギター演奏に集中している。渋い男の色気を醸し出す。じつに男前。こりゃ奥様、ほれるわな。それにしても、歌伴をする達郎さんを見られるなんて本当にレアだ。



 冷蔵庫の中で 凍りかけた愛を


 温めなおしたいのに


 見る夢が違う 着る服が違う


 夫婦の擦れ違いを歌った曲だから、この場にはそぐわないと思ったが、達郎サウンドのギターの甲高い響きが中和させているように思えた。不倫、倦怠期、親としての娘の結婚、人生の扉を開き続けた身近な出来事を盛り込んだ奥様の曲に御主人がアレンジを加えることによって、日本ではほかの誰にもできない不思議な温かさを醸した曲が作られた。この曲はラジオ番組で達郎さんが、まりやさんの曲のなかでもっともアレンジがお気に入りの一曲として名前を挙げていた。そんな絶妙な曲が山中湖に響き渡る。ロックばかり聞く若いファンはこの曲を聴いて何を思っただろうか?


「Sweet Love Showerみなさん楽しんでますか? さっきまで雨が降っていましたけど、西の空の方がすこーし晴れて明るくなってきました。これから『元気を出して』を歌います。よかったら、いっしょに歌ってください。『元気を出して』」


 07、元気を出して


 山中湖にロックテイストがふり払われ、歌謡曲ムード満載になっている。実にメロウでやわらかい空気に包まれている。ざっくりいってしまえばまりやさんは日本の歌謡曲の雰囲気があって歌いやすいのに対し、達郎さんは完全に洋楽テイストのソリッドなつくりで、キーを外しやすく歌いにくい。


 涙などみせない 強気なあなたを

 

 そんなに悲しませた人は誰なの?


 失った恋を超えて前に進もう、といったささやかな応援歌が繰り広げられる。まりやさんが右腕を挙げ左右にゆっくり振る。ステージ前のファンも応えてスピードを合わせて振る。どうやら会場全体でかなりの方が手を振っている。


 そして、みんな歌っている。


 わたしも、歌わせてもらいました。気持ちよく。


 人生はあなたが思うほど悪くない


 早く元気出して あの笑顔を見せて


 そうだよな、って心の中でつぶやきながら。見渡すと、普段ロックを聴かないような熟年の方も散見される。そんな人にとってはまりやさんからの最高のプレゼントだった。それぞれの人生に寄り添うまりやさんの曲にみんなが酔いしれた。そして、最後に達郎さんがメロディーラインをギターで静かに弾いた。まりやさんの短いオンステージが終わりを告げた。


Sweet Love Showerこの後も楽しんでいってください。どうもありがとうございました


 御主人に主役を戻すように舞台のそでにまりやさんは消えていった。ファンは拍手で見送った。


ちょっとお得な気分でしょ?」


 はにかみながらも達郎さんはしてやったといったいたずらな顔をした。天才の極上の演出に酔いしれた。ここからは主役が戻って、ロックで激しいステージが待っていた。


                                (次回に続く)