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リーンのガラパゴスサロン~趣味や娯楽の広場

「リーンのガラパゴス批評」の兄弟ブログです。趣味に関する記事はこちらでどうぞ。

 

 類まれな剣の使い手、丹下典膳(山本耕史)は花見に出かけたお寺で、気を失った娘を介抱する……。


 というわけで始まったBSドラマ『薄桜記』ですが、NHKも当世に合わない静かな物語をつくったものです。つまり、


 ナレーションが一切なし。


 説明が一切ない。時代背景が見ただけではわからない。まあ、ホームページを見ればあの有名な事件につながっているのはわかるんですけどね。ドラマの進行に沿って、もったいぶって説明するのはやめましょう。


 で、何の事件かって?


 ヒント。吉良上野介が出ていますね。いいですね、長塚京三さんの洒脱な演技。吉良の地元では上野介は名君とたたえられているのですから、このドラマがすこしは汚名をそそぐことになればいいですよね。


 ドラマは事件のキナ臭いにおいを一切感じさせず、旗本の結婚話からスタートする。典膳は昔のしきたりに従って婚儀当日まで妻の顔を見ることはない。新婚初夜、妻となった娘が


「わたくし、花見の日に助けていただきました」


 と告白する。この千春(柴本幸)の告白、時代劇によくあるパターンですね。顔を見合わせて初めて露見する。そこまで夫となった典膳はまったく気がつかない。男はいつの世も間が抜けているいるってことなんでしょうね。


 だが、新婚家庭にささやかな幸せは続かない。典膳が大阪への勤番を命ぜられる。江戸の丹下家を守るのは母のぬい(檀ふみ)と嫁の千春、女だけが残るとよからぬことが起こるのは世の常です。幼馴染の三之丞(石垣佑磨)に手籠めにされて……。


 時代を揺るがす事件の前に、主人公の身辺に不穏な空気が起こる。時代劇の常道ともいえる進め方によって物語は進んでいきます。悲劇の匂いはそこかしこに漂っております。


 それにしても、ナレーションがいっさいないとは、NHKも思い切ったことをしたものです。かなり不親切です。この番組を地上波で流したら視聴率はとれないでしょうね。まあ、私はドラマにナレ-ションはいらないと思っているのでこのドラマの制作姿勢を好ましいとおもっています。地上波では朝ドラや大河ドラマでネットスズメが喧々諤々やっていますが、それを尻目に静かにこのドラマを書いていきましょうかね。

 

 去年の準々決勝でジョーに敗れた試合、そして全米オープンでのノバック戦の敗戦はつらいものだった。


                              ロジャー・フェデラー



 2012年ウィンブルドン男子シングルス決勝。第4セット第10ゲーム、フェデラーのサービスゲームで40-30。ネットに詰めたフェデラーの横をマレーのパスが襲う。サイドラインに入ったかのように見えたショットがわずかに切れた。自国の英雄を応援していたセンターコートの観客は、アウトの判定と応援する行為を断ち切られたことが信じられず、一瞬どよめきと沈黙をもたらした。そのなかでフェデラーが膝をおり、仰向けになり、両手で顔を覆って感激をあらわにした。勝利者に贈られるはずの拍手が巻き起こらない、それは異様な優勝決定の瞬間だった。しかし、この瞬間、絶対王者といわれたロジャー・フェデラーがテニス史上のなかでも史上最強と言われる高みに駆け上がったといってもいい。4年前王者を追われたときからの苦闘と、勝利に賭ける執念が史上最強への輝きをさらに光沢あるものにしている。


 2008年ウィンブルドン決勝。ロジャー・フェデラー対ラファエル・ナダル。第1シードと第2シードの頂上決戦。その前の全仏でロジャーに4ゲームしか与えず完勝したラファが常に主導権を握る。ロジャーはバックハンドのミスが多発し、思うように展開できない。それでも延々とストローク戦が繰り返される。ラファの強烈なトップスピンに対するロジャーのバックハンドスライスとフォアの逆クロス、超ヘビー級ボクサーどうしが見せるハードパンチのノーガードの撃ち合いのような迫力と緊張感、およそ今までのウィンブルドンのようなサーブとボレーですぐにポイントが決まる今までの展開にはなかった濃密な試合にこちらは魅せられた。

 第4セット、タイブレーク。ラファが得た2度のチャンピオンシップポイントをロジャーがサーブと起死回生のバックハンドパスでしのぎ10-8で取る。ファイナルセットは雨天中断を挟みながらサービスキープが続く白熱した展開。“ロジャー”コールと“ラファ”コールが巻き起こり、センターコートは興奮のるつぼと化した。しかし、試合には終わりがつきものだ。ボールが見えなくなるなか、第16ゲームでロジャーのフォアハンドがネットにかかりついにクレーの王者が芝生の王者をその得意とする舞台で破った。絶対王者はNo.1を追われ、若手の後塵を拝することになる。

「また、この舞台に帰ってくる」

 試合後のインタビューでロジャーはウィンブルドン優勝への強い意欲を見せた。だが、過去にウィンブルドン5連覇を達成したビヨン・ボルグは連覇が途切れた後ほどなく引退を表明した。ロジャーとて勝利への意欲を持ち続けることは難しいように思われた。


 実際のところ、連覇が途切れた後、フェデラーはグランドスラムで4勝(08全米、09全仏、09ウィンブルドン、10全豪)している。だが、09全豪でナダルに主導権を取れずに敗れたこと、またナダルの早期敗退や欠場によって優勝した印象が強く隙間狙いという感がぬぐえなかった。元・絶対王者にたいへん失礼な見方をしていた。だが、10年はナダルが3冠、翌年はジョコビッチが3冠と、脂の乗り切った二人の強者がツアーを席巻し始めた。そこで冒頭に取り上げた発言につながる。10年のウィンブルドンはジョー・ウィルフリード・ツォンガに2セットアップから逆転負けした。芝生の王者の神通力は失せたのか。続く全米の準決勝ではNo.1のジョコビッチを追い詰めた。自身のサービスゲームでマッチポイントを握った。そこでジョコビッチは山を張ったかのような一か八かのリターンを放つ。そこからフェデラーは逆転負けを喫した。


 どうして今、自分が敗者としてここにいるのか分からない……。僕にはあのような場面で、あのようなショットを打つことが信じられない。僕は堅実な組み立てが報われると信じているから。


    (スポーツナビ『斜陽と言われたフェデラーが聖地で示した“正しさ”』。冒頭の発言も含む。)


 多彩なショットメーキングでオープンコートをつくる組み立てで相手を理詰めで追い詰めるフェデラーにとって、狂気的な博打をかけて一発のショットに賭けるジョコビッチはこのとき異質に映ったかもしれない。やがて12年の全仏までナダルとジョコビッチが4回連続で決勝を競うことになった。フェデラーの自信は揺るがなかったのだろうか。


 2012年、ウィンブルドン。2回戦でナダルが負けた。男子テニス界は4強(ジョコビッチ、ナダル、フェデラー、マレー)以外にも才能ある選手がいることが明らかになった、1,2回戦を完勝したフェデラーにとっては優勝のチャンスが広がったように感じた。しかし、好事魔多し、3回戦では2セットダウンに追い込まれ、4回戦では腰を痛め、メディカルタイムアウトをとる事態に追い込まれた。30歳を超えてもはや体力も限界にきていたのだろうか。

 ところがその試合をドロップショットを多用し技術で切り抜けると、準々決勝では近年見られなかったスピード感あふれる試合巧者ぶりがよみがえった。

 迎えた、準決勝。相手はノバック・ジョコビッチ。

 第2セットまでお互い取り合ってむかえた第3セット。ここでフェデラーが少しづつオープンコートをつくってストローク戦で主導権を握れるようになる。第6ゲームでの26本のストローク戦でもノバックが逆クロスに打ってきたところをバックのダウンザラインで打ち抜いて見せた。そしてセットポイントはフォアをダウンザラインに2本打って相手の足を止め、空いたオープンコートにアプローチを打ち最後はジャンピングスマッシュを打って決めて見せた。理詰めで決めたポイント、昨年の全米での困惑と不安を一気に解消して見せた。第4セットはもはやフェデラーのペースで試合が進んだ。芝生の上なら、いまだにフェデラーは実力が衰えていないことを証明した。


 いよいよ決勝戦。相手は英国人の久しぶりの優勝の期待を背負ったアンディ・マレー。フェデラーにとってもランキングNo.1がかかった重要な一戦である。最初に緊張していたのは百戦錬磨のはずのロジャーだった。ストローク戦はほとんど歯が立たず、アンフォーストエラーも多かった。無残なストレート負けもあり得た。ところが徐々にアジャストし、スイートスポットにボールが当たりだす。そして迎えた第3セット第6ゲーム。逆クロスのリターン。ミスしても何度も執拗に繰り返す。マレーも応戦するが苛立ちも隠せない。10度のジュース、6度のブレークポイント。20分に及ぶ攻防。そして、フェデラーがブレイク。ここで優勝の行方は見えたかもしれない。


 屋根が閉まったセンターコート。フェデラーが2-1とリードして迎えた第4セット第10ゲーム。フェデラーのサービスゲーム。最後も理詰めにオープンコートにアプローチを打って決めて見せた。


 これでウィンブルドン7回目の優勝、同時にランキングNo.1を手に入れた。今年は同じウィンブルドンで五輪が開催される。まさか4年前にフェデラーが金メダル候補として残ろうとは思っていなかった。年下のライバルに押されながらも現時点で世界1位にいるのはとても信じられない。いまだに勝利を追い求め、いまだに心技体を充実させている。フェデラーの強さは揺るがないメンタルの強さだが、勝利にいつまでも飢えている渇望感がその源泉になっている。敗北の悔しさを力に変えてまた優勝という獲物に向かっている。08年にナダルにウィンブルドンといういわば自分の庭で負けてから、それからの4年間に積み重ねたグランドスラムタイトル5個、そして年間3冠を成し遂げたふたりのライバルがいる中でウィンブルドンを勝ち取ったこと、これがフェデラーの競技人生にいっそう輝きを増す。これが史上最強と呼んでいい理由だ。


 ロジャー・フェデラーはやや西に傾きながらもいまだに煌々と輝いている。だが、その恒星の輝き、質量はナダルよりも、ジョコビッチよりももともと大きいのだ。偉大なる一等星のもとでテニスという星座は神々しく星空を彩っている。

 準決勝でフェデラーが勝った。


 対ジョコビッチ戦を見ての感想は、


「やっぱり、ナダルはフェデラーの天敵なのだなあ」


 と、3年連続決勝で対戦した宿敵のことを思い返した。スペインのクレーキングのショットはスイスの元・絶対王者のバックに高く跳ねあがる。それが展開の速さを失わせ、バックハンドのミスを増やすことになった。打っても打っても相手からスーパーショットが返ってくる。ネットに詰めれば鋭いパスで抜かれる。世界のトッププロの、それもテニス史上に残る3選手のだれもが打球のスピードが遅いはずはない。しかし、フェデラーにとってナダルとのストローク戦は本数が増えるほどに相手に間合いがとれて攻め手が無くなり最後には無理をしてミスが重なる。コンマ数秒、足を止めてヘビー級ボクサーのパンチの撃ち合いを見ている気になるが、そのことがナダル戦での勝利を難しいものにしている。フェデラーがナダルに、特に全仏や全豪で勝つチャンスはないに等しい。


 ジョコビッチとの試合はナダルのそれとは、同じストロークを主体にしていてもまったく異質のものだった。かなり直線的なストロークで打ち合いになるので、フェデラーがバックハンドを打ちにくそうにしているシーンは見受けられなかった。

 だが、第2セットを見終えたところではフェデラーが勝つのは厳しいとみた。ストローク戦で長くなればほとんどジョコビッチがものにしていたからだ。展開が遅い。今回の対戦がクレーや遅めのハードコートでは勝ち目は薄かっただろう。だが、ここはウインブルドン。フェデラーがもっとも力を発揮できる芝生のコート。


 白熱してきたのは第3セット。第6ゲーム、ジョコビッチのサービズゲーム。


 30-30。ダブルフォルト。

 30-40。23本のラリー。

 2度目のジュース。ジョコビッチのパスがネットイン。

 3度目のジュース。ナダルのショットにフェデラーのバックハンドスライスでの切り替えし。それが2度、3度。ジョコビッチのフォアの逆クロス。フェデラーのバックハンドのダウンザライン。26本のラリー。

 

 結局このゲームはジョコビッチのサービスキープに終わるが、このあたりから徐々に白熱してきた。そして第10ゲームの最後はフェデラーがフォアのダウンザラインを2本打って追い詰め、アプローチを打ってネットに詰め、最後はジャンピングスマッシュで決めた。1日空いて冷静に振り返れば第3セットをフェデラーが取った時点で勝敗も決まっていたのかもしれない。第4セットに入るとジョコビッチに苛立ちがみられた。そうなると、精神的に揺るがないフェデラーにはかなわなかった。ある記事ではジョコビッチは数日間体調に問題を抱えていたことをあきらかにしたという。それも微妙に影響したのかもしれない。


 フェデラーの勝因はやっぱりメンタル面にあった。終始攻め続けなければ勝てない相手に対し、ずっと落ち着いて戦ったことにある。そしてこの日は体全体から戦闘オーラが充満していた。追い詰められると異常に強いジョコビッチだが、この日はそれが発揮するところには至らなかった。芝生のコートでは逆転するのは難しい。


 今日は決勝戦。相手は英国中の期待を背負うアンディ・マレー。この対戦もフェデラーにとっては相性が悪く、非常に難しいたたかいになる。ストロークで意図的に緩急をつけられたら展開を早くできないのでかなり苦労するかもしれない。第1サーブの確率が悪ければさらにストローク戦が増え、そうなるとマレーの術中にはまる可能性も大きい。フェデラーの強さはやはりメンタル。マレーが準々決勝で見せた苛立ちがつのるようだとかなり厳しい。国の期待を背負うことがプレッシャーになってくる。


 ウインブルドン7回目の優勝、さらにランキング1位をかけるフェデラーと、約80年ぶりの英国人優勝を目指すマレー、最後にテニスの神様は粋な対戦を用意したものだ。またまた、見るのが怖い。

 フェデラー、準決勝進出。


 6-1、6-2、6-2。


 完勝! 


 だけど、4回戦でメディカルタイムアウトを取って腰の治療をしただけに、安心して見ていられなかった。元絶対王者が試合中にロッカールームに引き上げるなんて見たことなかった。


 フェデラー時代は終焉を迎えた。


 覚悟をした。


 だが、スライス、ドロップショット、を駆使して技術で勝利した。


 迎えた、準々決勝。


 フットワークが細かかった。リターンとアングルショットで圧倒した。解説の土橋さんが


「最近はいってなかったですけど、“フェデラーエクスプレス”って今日は言っていいと思います


 と、賛辞を贈っていた。超特急のように早く、力強く、そしてしなやかなフェデラーが戻ってきた。グランドスラム33大会連続ベスト8進出、32回目の準決勝進出、空前にして絶後の記録をつくったことでも、フェデラーはプロテニス史上最高の選手といえる。


 腰を痛めたことがかえって力が抜けてプレーにいい影響が出ている。もしかしたら、神様のプレゼントかもしれない。


 さて、準決勝の相手は現在の世界No.1、ジョコビッチ。楽しみな試合だ。でも、きっと、怖くて見られない。 

 フェデラーは勝った。ジュリアン・ベネトーに勝った。会場に満ち満ちたであろう下剋上の雰囲気にも負けなかった。


 ナダルが2回戦で敗退したことで、選手はあらためてテニスの怖さを知ったのではないか。そして、もしかしたら、自分がチャレンジャートロフィーを頭上に掲げることができるのではないかと野心をたぎらせルに違いない。ドローに残ったビッグネームがジョコビッチであっても、フェデラーであっても。


 ジョコビッチは第1セットを落とした。明らかにトーナメントの第1週を調整に充てている。精神的に高揚するところまでいっていない。ただ相手のステパネクはストローク戦で対抗できなかったので脅かすところまではいっていないので第1シードとしては心のギアをあげるところまではいかないのだろう。全仏の映像を見ていないので比べようがないが、不完全燃焼で終わらなければいいが、と危惧の念をいだく。


 ジュリアン・ベネトーはステパネクではなかった。サーブは早い。ストロークは互角。フランス人だからクレー育ちのプレースタイルかと思ったら、いやいや芝生の上でも実力をいかんなく発揮して第3シードを2セットダウンに追い込んだ。下剋上の濁流にもう少しで飲み込むところまでいった。あと2ポイントまで。


 フェデラーのプレーには特徴がない。フォアハンドもは相手より絶対的にはやいわけでもなく、サーブもビッグサーバーと冠されるほどでもない。3回戦ではアプローチが甘く、ボレーがなかなか決まらなかった。ベネトーはストロークで圧倒してきた。第1、第2セットを連取した。

 ストレート負けもあり得る中、フェデラーはここから立て直した。その武器になったものは、30歳になっも衰えないスタミナとフィジカル、そして追い込まれてから冷静になる強靭な精神だ。ベネトーが脚に問題を抱える中で逆に平静さを取り戻して3セットを取り返した。技術で絶対的に優位に立てなくてもメンタルで勝てる。そこが10年以上世界のトップであり続けた原動力だろう。それにしてもあのバックハンドスライスは軌道がえもいわれず美しい。


 ビッグネームが苦戦するのはセンターコートの屋根が閉じた時ではないか。天然のコートの上に人工的に作られた開閉式の屋根、インドアコートになったとき若手が台頭する。フェデラーが順調に行くなら、そのときはコートから空が見えているときかもしれない。まだ、優勝の夢をテレビ桟敷で見ることができる。やっぱりロジャーがいなくちゃね。