フェデラーは勝った。ジュリアン・ベネトーに勝った。会場に満ち満ちたであろう下剋上の雰囲気にも負けなかった。
ナダルが2回戦で敗退したことで、選手はあらためてテニスの怖さを知ったのではないか。そして、もしかしたら、自分がチャレンジャートロフィーを頭上に掲げることができるのではないかと野心をたぎらせルに違いない。ドローに残ったビッグネームがジョコビッチであっても、フェデラーであっても。
ジョコビッチは第1セットを落とした。明らかにトーナメントの第1週を調整に充てている。精神的に高揚するところまでいっていない。ただ相手のステパネクはストローク戦で対抗できなかったので脅かすところまではいっていないので第1シードとしては心のギアをあげるところまではいかないのだろう。全仏の映像を見ていないので比べようがないが、不完全燃焼で終わらなければいいが、と危惧の念をいだく。
ジュリアン・ベネトーはステパネクではなかった。サーブは早い。ストロークは互角。フランス人だからクレー育ちのプレースタイルかと思ったら、いやいや芝生の上でも実力をいかんなく発揮して第3シードを2セットダウンに追い込んだ。下剋上の濁流にもう少しで飲み込むところまでいった。あと2ポイントまで。
フェデラーのプレーには特徴がない。フォアハンドもは相手より絶対的にはやいわけでもなく、サーブもビッグサーバーと冠されるほどでもない。3回戦ではアプローチが甘く、ボレーがなかなか決まらなかった。ベネトーはストロークで圧倒してきた。第1、第2セットを連取した。
ストレート負けもあり得る中、フェデラーはここから立て直した。その武器になったものは、30歳になっも衰えないスタミナとフィジカル、そして追い込まれてから冷静になる強靭な精神だ。ベネトーが脚に問題を抱える中で逆に平静さを取り戻して3セットを取り返した。技術で絶対的に優位に立てなくてもメンタルで勝てる。そこが10年以上世界のトップであり続けた原動力だろう。それにしてもあのバックハンドスライスは軌道がえもいわれず美しい。
ビッグネームが苦戦するのはセンターコートの屋根が閉じた時ではないか。天然のコートの上に人工的に作られた開閉式の屋根、インドアコートになったとき若手が台頭する。フェデラーが順調に行くなら、そのときはコートから空が見えているときかもしれない。まだ、優勝の夢をテレビ桟敷で見ることができる。やっぱりロジャーがいなくちゃね。