バスにのって
バスにのって
とおくへ いくところです
空は ひろくて
風は そよっとしています
まだ バスは きません
ぼくは ラジオを つけました
はじめてきく おんがくです
トントンパットン
トンパットン
まだ バスは きません
~~~
いろんな人が
とおりすぎて
夜に なりました
ラジオもねむりました
バスは きません
~~~
きました きました
砂けむりを あげて
ようやく バスが きました
ゴォーッ
けれども バスは
満員です
のることが できません
「ムリですか」
「ムリだね」
バスは すなけむりを あげて
いってしまいました
トントンパットン
トンパットン
トントンパットン
トンパットン
すこしまちましたが
バスに のるのは
やめました
トントンパットン
トンパットン
ぼくは
あるいて とおくへ いくことに しました
トントンパットン トンパットン
「バスにのって」~荒井良二
何かでちょっと困ってしまった。なんて時に読むのがこれ。
そういう時は、無理に元気な振りをして、明るく振舞ってしま
う。けれどやっぱり、無理は禁物、すぐに元通りにもどってし
まった。そして手にしたのは「バスにのって」。バスにのれな
かった主人公は、大量の荷物を背負って、涼しげな顔で歩
いて行ってしまう。彼のように淡々と、一歩一歩を味わい続
けて、軽く瞼を閉じてみると、ちょっとづつ気持ちが晴れてい
ったりする。
時を釣る 2
「おはよう・・」 ん? 朝6時、妻と長男が何やらゴソゴソ。
今日は祭日、自分も仕事は休み、子供たちも学校や保育園
がお休み。いつものような慌しさとは違う朝のはずだが・・・・。
「いってきまーす」 「いってらっしゃーい」 妻の提案で長
男7歳は、”早朝電車トレーニング”だそうだ。電車に一人乗っ
て通う習い事のために、万が一乗り過ごした時の疑似体験を
今日しておくという。勿論親の僕らが不安だからなのだが、不
安に思うくらいなら練習しちゃいましょう!って発想は前向きで
素晴らしい。それに何より・・・!面白い。今日は天気予報こそ
一日雨マークだったが、今のところ雨もない。行楽の家族連れ
がワイワイ乗ってくるであろう電車に、電車トレーニングの母子
二人組。この景色を想像すると、何とも言えないほのぼのとし
た幸福感に包まれる。そして我が家の中も・・・・。5歳次男と5
ヶ月の長女は、共にすやすやと寝息を楽しんでいる。
何と静かな朝なのだろう。小鳥のさえずりがやけに大きく響い
てくるではないか。さて、自分は何をするのだろう。ちょっと客観
的に、観察気分で間を楽しんでみる。気持ちの余裕が生んだ
濃密な空虚さ。三年番茶とクッキーを二枚、先日入手した整体
の雑誌をパラリ。これはまるで聖路加病院の日野原先生の昼食
ではないか。確かあの方は、朝がジュースとコーヒー。昼はクッ
キー二枚と牛乳がルーティーン。いわゆるご飯のようなものは
夕食に少し・・・もっとも100歳に近い方と41の自分を比べても
意味はないが、偶然舞い降りた静かな朝に、医療の聖人の真似
をしてこころ癒された。
ボリュームを絞ってラジオをパチリ。抜けるような青空の似合う
爽快なアルペジオ。「アイマ カイト アイマ カイト~」ボニーピン
クの新曲が・・・。「自由なんてないこの社会で こころだけは僕の
ものさ~」 自分のものだ、と意固地にならずに、もっとこころを解
放できたなら、糸につながれたままの、風や天候といった自然の
影響に逆らうことの出来ない自分のことを、「自由だなぁ・」と感じ、
すべてを委ねることができる時がくるのだろう・・・。
時を釣る
午後三時からの遅いスタート。
横横(高速の愛称)をとばして葉山一色海岸へ。
漁港近くに埠頭のポイントを見つけ、長男次男と三人で糸をたらす。
隣のお兄さんはタナゴやアジの稚魚を釣り上げ、息子たちも一緒に
興奮。おーと、向こうのおじさんがフグを上げた。「すっげー、フグだ
ってー」 「毒があるんだよ」 次男五歳が得意気にコメント。
結局僕らはボウズ(戦果なし)だった。途中次男が多少ごねはした
ものの、最後まで、日没までがんばった。前回三浦で釣りをした時は、
何十と上げて家でフライにしたんだった。この空しい結果を二人よ、ど
う受け入れるのか、興味津々やや不安。しかししかし、その二人の顔
は、すっかりと事をやり遂げた充実感に満ちており、「また来ようね」と
僕を元気付けてくれたのは長男だった。
穏やかな日和にそよぐ浜風を頬に感じながら、富士山の方向に浮か
ぶ大きな夕陽に両目を照らされながら、決して結果を求めるわけでもな
い釣りに興じる。こんな贅沢な時間を満喫できたことが、何よりの成果
なのであった・・・・!
バイラーギャ 離欲
ヨガの習熟に欠かせないのは、アビヤーサ(学習)とバイラーギャ(離欲)
です。なんてお話も、いざ自分の事となれば未習で執欲なことばかり。そん
な未熟な自身の在り方にさえ、サントーシャ(知足・・・今の自分に充分満足
し、状況に感謝している感じ)の心で落ち着いていること。今日の自分にでき
るかな・・・?
携帯電話が壊れてしまいました!何度電池を入れ替えて、充電をしなおし
ても、そこに広がるのはミニマルアートの世界。寒色系のストライプに挿し色
のイエロー。5歳の次男とベッドで格闘中、ポケットからひらりと舞い落ちる四
角い物体あり。「ゴツッ」とハードボイルドな低音でフローリングとの邂逅。それ
までテニスとヨガの仕事のやりとり、プライベートレッスンの予約など、留守電
とメールを駆使して大活躍の君が・・・。大きなのっぽの古時計のごとく静かに
息絶えてしまった。縦縞の模様だけを画面に残して。全身の空気を搾り出すよ
うに、とーても大きなため息一つ・・・「はぁーっ」
本当は感謝こそすれ、恨むなんてとんでもない話なのです。君の事。今まで
本当にありがとう。すっかり頼り過ぎてしまって、ちょっときつい時もあったかもし
れない。落としてしまったことだって、今回の一度だけなんて事は勿論ありえない。
時には砂に埋まり、川に潜って慌てて2日間天日乾しにしたり、さんざんワイルド
な生活につき合わせてしまっていたね。今まで一緒について来てくれたことが奇
跡なんだよ。そんな感謝の気持ちと、一角の希望を胸に、明日ソフトバンクに参
詣いたします・・・・!
試合
「生の間は、ものすごく間抜けでいい。やがて僕らは優しくなれるから」
~友人Yのコメントから
「昨日試合、行ってきました。えっと、栄区の大会、とゆうものでして、女子
ダブルスです」
木曜のRさんは昨日、区民大会だったらしく、少し興奮を抑えるように、控
えめなトーンでお話して下さった。
「A、B、Cとレベル分けがされていて、私達はCだったんですけど、6チー
ムしか出場してなかったんで、総当りで5試合させてもらったんです。結果
は全てに勝った、なんてものではないんですけど、何か今までにない充実
感みたいなものが感じられたんで、よかったです・・・。まあ、パートナーに
恵まれたことが大きいんですけど、初めて組んだ方なんですけど、ぜんぜ
ん気負いなくできたんで・・・気持ちよかったです。たぶん私に似ているんだ
と思うんですけど、勝ち負けではないところでやれた感じがするんです」
もちろん、試合は、テニスは、勝ち負けを争っているのだけれど・・・。それが
ゆえに潔い美しさや、執着による醜さなど、人間の持つ性分の生の部分が
露呈される残酷な場面に遭遇することが必定だ。月に1~2回のペースで試
合に挑戦しているRさんは、そんな殺伐とした試合の中において、まるで幾度
となく演じてきたオペラを、パリのオペラ座で演じる劇団のメインキャストのよう
な晴々とした心持で臨み、満員の観衆のスタンディングオベーションを浴びる
エンディングまでの緊張ですら、”心から楽しむ”ことができたのだ。
何とハッピーな試合の報告でしょうか・・・!
選択
僕は、あらゆることで迷っている。
「これだ!」と即決できることは、とても少ない。
ジュースの自動販売機の前で、何を飲むかですら悩む。全部、飲んで
みたいのだ。
貴重な百二十円を使って、どれを選ぶか?
そこで、選択がはじまる。「これは違う」という品を脱落させて、選択肢を
減らしていく。最後の二つまではなんとか絞り込める。
ところが、この二つは甲乙つけがたい。ファイナル・アンサーの重みが
迫る。
最後まで決めきれずに、二つ同時にボタンを押して、ジュースが二本出
てきたことが過去二回ある。
・・・・・・・「中田主義」 中田宏著 ~講談社
40年以上住んでいる横浜の前市長さん。考えに考え抜いた末の結論は!
「えーい、両方同時に押してしまえー」 運を天に任せるのだ。・・・そして結
果は!「両方出てきちゃったよ。どうなってるんだ!」 うーん、好嫌のこだ
わり、贅沢な逡巡タイム。何時までも迷っていていいのだよ、柔らかな日差
しを届けてあげるから。・・・と、やがて判断の時。しかし最後まで判断はつ
きませんでした。ピタッ、まったく同時にボタンを押したなら、双方のジュース
が飛び出すこともまた必然。うじうじ考え込んでいた今年の夏。そのあとに
やってきたのは、たわわに実の実った収穫の秋なのでした。
めでたしめでたし・・・。
笑顔でこんにちは
朝の鎌倉街道。対向車側の歩道をこちらに向かって、
サンタさんの袋を担いで女性が猛ダッシュ。追いかける
先にはゴミ収集車。サンタ袋はゴミ袋、満面の笑顔で追
いかけます。すれ違う男性とも笑顔で挨拶。その笑顔の
エネルギーが届いたのか、信号待ちの収集車からお兄
さんが降りてきた。女性の笑顔パワーには、神々しいオ
ーラが宿っていて、思わずお兄さんの顔にも笑みがこぼ
れた。「ありがとうございます!」 するともう少し後方の
マンションから、勢い込んで飛び出してきたカップルあり。
男性が信号待ちの収集車を見つけてスタートダッシュ!
・・・ととと急ブレーキ。奥様らしき女性が、車に乗り込むお
兄さんを確認したらしく、ご主人の腕を必死で掴まえた。
振るっていたのはここからだ。二人の様子を見守っている
と、まずご主人が「やっぱだめかー!」と100点の笑顔。
そして腕を掴まえた奥様はそれ以上の笑顔で、おたがい
アングラ演劇の喜劇俳優のごとく大声で笑いあっているで
はないか。「わはは、わはは、わはは本舗・・・!」 いやー
まいってしまった。ラジオではカガミリュウジ監修の星占い。
水星と冥王星が120度の角度(だったかな?)。何だか不
思議な魅力に惹かれる日になりそうです・・・とな。いやはや
ダイナミックな笑顔パワーに圧倒されて、不思議な心地よさ
から一日のスタート。こちらも暑さにやられないよう、笑顔で
いきましょうか・・・!
1983秋 2
「買ってクレープ」
中学2年の文化祭、部活の仲間でクレープ屋を立ち上げた。
仕込み、販促、チラシ配り、やる気漲る僕たちは、たたみかけ
るような戦術で、いざ当日を迎えた。アイデアマンの桂は「一
応利益率のいいポップコーンもやっとくべきだな」とリスクへの
配慮も怠らなかった。・・・・そのリスクとは・・・・「今日は何と特
売日。ただ今クリーム増量中!」 目の前で生クリームを追加
されると、お客様の表情は明らかに和らいだ。僕が担当したクリ
ームのトッピング。後先を顧みずに、ガツガツ、ガンガン、攻撃的
に生クリームをかけまくった。内容はともかく、「何だか凄いクリー
ムのクレープがあるよ!」と話題になり、またクリームに圧倒され
た方がポップコーンに逃げ込み、あれよあれよと売れまくった。我
らが「買ってクレープ」は文化祭の2日間で36万円を売り上げて、
最優秀新規模擬店賞に輝いた。朝一番から飛ばしまくった僕を見
かねて、山ちゃんはすぐさま生クリームを買出しに走った。桂はも
っぱら店にいなかったが、人の集まる場所を見つけては10円オフ
のチラシを配って歩いた。部活の時にはちぐはぐな僕らが、何処か
の誰かのために最高のクレープを提供する、を合言葉に一つにな
れた。今、みんなはどうしているのかな・・・・・。
音を聴く 4
「オーラ、オーラ!」 「オラー、オラー!」
何やら隣のコートから、とても下品で威勢のいい声が聞こえだした。
小学生一人一人の顔を見ると、目に輝きがあってコートの隅々まで
が活気づいている。リードするのはUジロー。若干17歳ながら、聞き
分けのない生意気盛りを相手に堂々とレッスンをおこなっている。旅
行中でお休みのアシスタントの代行を快く引き受けてくれた。
先日久し振りに再会して、その打球時の呻き声に感心したばかり。今
度はジュニアの生徒達に伝授するとは、あまりに快調な展開にまたま
た感心するばかり。よくよく耳を澄ましてみよう。
「声を出すのと出さないで打つの、どっちが打ちやすい?」
「声だしたほうが良く飛ぶみたい!」
「じゃーどっちが好き?」 「声だすほう!」
「きついボール出しと易しいの、どっちがいい?」
「きついの!」 ホント?
あれれ・・・・生徒の願望を聞いてしまって、選択しているじゃないか・・・!
選択理論byグラッサー博士・・でしたっけ監督!・・ぶつぶつ・・・・・
と、とにかく見事にモチベーションを引き出してしまった。
「ネットしないぞー、ボール良く見てー、元気良く打てー!」
言葉だけ並べれば紋切り型の常套句。テニスレッスンとはかくもシンプ
ルで力強いものだったのか・・・。
教え子とは、物事の本質や基本を伝授してくれる師匠に他ならない。
また来てくれ、Uジロー・・・・!
音を聴く 3
Uジローが横浜に帰ってきた。
アシスタントのA君と一緒に、クラブでテニスをした。Uジローは小学4年から
中学2年まで、僕のテニススクールで始めたテニスに没頭し、すくすくと上達
した。幼稚園から始めていた同級生の中で、なにも臆するところなく、初心者
のUジローが一番楽しそうにボールを打っていた。ご両親も彼に、否定や批判
はせずに長所に着目していたはず。いつも陰ながら支え、励まし続けていた。
中2で越した沖縄の地でも、一層のびのびとテニスを続け、高3になったこの
夏は、キャプテンとして臨んだインターハイ団体でベスト16、個人でも単複で
出場し、国体選手にも選ばれた。今の時期は丁度、各大学がセレクション前の
練習会を行うらしく、希望する都内の大学に近い横浜に戻ってきたのだ。
そしてテニス。「どすっ」というグランドストロークの打球音もかなりしっかりして
いたが、印象的だったのは、打球に一呼吸遅れて聴こえる「んーっ」なる呻き音
だった。なかば悲鳴のごとく絶叫する女子選手。ジャズなどの通奏低音に似た
落ち着きのあるバリトン。高音で「あーっ」とぬけるようなソプラノ。様々な個性溢
れる呻き音達。Uジローの一打一打に聴かれる呻き音に、彼がどれくらいの数の
ボールを打って、沖縄での日々を過ごしたのかが覗えて、静かな感動を覚えた。
練習の後3人で食事をし、沖縄での生活についてあれこれと聞いた。その間終
始僕の頭の中では、Uジローの呻き声が一定のリズムで、淡々と鳴り続けていた
・・・・。





