パラダイス
猫は大丈夫ですか?」
訪問で理美容を営んでいる以上、様々な「大丈夫ですか?」をお伺いします。
曰く「寝たままでも大丈夫ですか?」又、「車椅子のままでも大丈夫ですか?」とか、しかし、「猫は・・・」は初めてでした。
もちろん猫をカットしてくれと言う意味でないのは、すぐ分りますし窓の向こうに猫ちゃんが見えたので、猫アレルギーの心配かと思い「家でも飼っております」とお答えし、中にお邪魔した所、な、なんと床、カーペット、ソファー、ありとあらゆる所に猫が寝転んでいるのです。
全部の猫が野良の捨て猫だったそうで、キジ、三毛、長毛、ブチと様々な猫が存在しています。
その数15匹、しかも、全部避妊をした上ワクチン接種済みだそうで、これだけの数の猫をキチンと飼っていらっしゃる方には、初めてお会いしました。
かなり山の上に住んでいらっしゃるので、近所に迷惑を掛ける心配も無いそうです。
その中でも、私の目を引いたのは、ブチの猫でした。
ブチの黒い所が、丁度ずれたカツラのようになり、鼻の下のブチがコントのメイクのような情け無い顔ですが、初対面の私にも愛想良く振る舞います。
その愛想の良さだけで、迷子になって半年も他の家の人に飼われていたそうです。
愛嬌だけで生きている私の指針にしたい猫です。
私の妻の口癖は、「宝くじが当たったら捨て猫を全部拾って来る」ですので、そのお家は、彼女の夢そのものだったのです。
そのお家からの帰り道「いくら宝くじが当たっても、あれだけの数は無理だよねー」と言うと「何で?」と言う答えが返って来ました。
・・・やる気です。
竜舌蘭
みなさんは竜舌蘭と言う物をご存知でしょうか?
メキシコや中南米に自生するサボテンの一種で、お酒のテキーラの原料になります。
めったに花を付けませんが60年に1度だけ花を付け、花が終わると枯れてしまいます。
しかし、おかしな事に花が咲く寸前につぼみを摘んでしまうとそのままの姿でずっと立ち続けます。
昔、マンションに住んでいた時に長男の同級生で長女にとてもなついていた少女がいました。
それはそれは可愛い娘さんで、毎日のようにご飯とお風呂を終えるとパジャマ姿のまま我が家に遊びに来ていました。
もし諺通りなら幸せの半分は彼女の物でした。
私は、その子のプクプクしたホッペが大好きで「こんばんわ」の挨拶に来ると、両手でほっぺを包みクニュクニュ
するのが日課でした。
彼女は嫌だったでしょうが、それが通行料だと思っていたのでしょう。いつも苦笑いを浮かべて我慢していました。
何年か過ぎ、少女の一家が引越し、私たち一家も引越しをし、段々と疎遠になっていきました。
長男の成長にその子の成長も重ね合わせ時々思い出し、家内に「もうホッペは触れないね。」と言っていました。
ある日、その子のお母さんから電話が入りました。
自殺したとの連絡でした。
新聞にも出ていたそうですが、読んでも結びつくはずが有りません。
一家そろってお悔やみに伺うと想像通りに美しくなった姿の遺影が私達を迎えました。
原因は色々取り沙汰されましたが、皆違うでしょう。
きっとその日さえ乗り越えれば、普通の日常が続いていたのだと思います。
自殺は竜舌蘭です。
咲くはずの蕾がもがれた竜舌蘭は何時までも変わらぬ姿で心の中に立ち続けます。
しかし、その場所は本物の竜舌蘭と同じく砂漠です。

シューター
昨日ウォーキングと書きましたが、本格的な人と比べると、とてもウォーキングなどと言えないと気付きましたので、「お散歩」と変えさせていただきます。
お散歩をしていると、色々な人とすれ違います。
どちらかのカカトをつけたまま、もの凄い速さで歩いていく競歩の人、小ぶりのバーベルを振りながら歩く人、絶対に大丈夫では無い様子(止めるのが人として正しいと思えるほど)で走るお年寄りと様々な人と出会います。
その中でも目を引いたのが、自分の背丈ほどの細い棒を持って歩くお年寄りです。
杖の代わりにも見えませんし、武器としては細すぎます。
さらに、毎日違う物(竹だったり葦だったり長さもまちまち)を持って歩いているのです。
その疑問は有る日解けました。
私がお散歩する道は、皆さんマナーが良くて、ゴミや犬の糞が見当たりませんが、たまに捨て置かれた糞を見かけます。
その日は、糞を見かけると同時に「棒のおじさん」も見かけました。
「棒のおじさん」も糞を見つけたらしく、おもむろに近づくと糞の手前に棒を立てると棒をスコーンと蹴飛ばしました。
糞は奇麗に弧を描いて土手の草むらに飛んで行きました。
猫なら死んでいるほどの好奇心の持ち主の私は、おじさんに話を聞きました。
おじさん曰く、他人の犬の糞を持って返る気にはならないが、そのままにも出来ないので遠くの草むらに蹴飛ばしている。靴で蹴飛ばすときたないので、棒でワンクッションいれているとの事でした。
さらに、棒も1日使うと汚くなるので、毎日変える。
糞の大きさ、硬さに応じて蹴る角度、強さを変えているとの奥深い話を伺いました。
私も1週間に1回は、タバコの吸殻を拾う事にしました。
しかし、落ちている棒は触らない事にしています。
