その83 若者から中年へ、過渡期のあなたへ
28歳からのリアル 人生戦略会議 WAVE出版 1470円
この本はあなたがまだ自称オヤジになっていないなら、一読の価値はあるかもしれません。
思うに自分のことを「中年」とか「オヤジ」とか呼ぶようになるには、ある意味「諦め」が必要だ。と同時に”ラク”にもなる。足掻くことがなくなるし、かっこつけなくて良いから。
私はそういう意味で、30代後半にして立派な「オヤジ」なっていたと言わざるを得ない。結婚をして、子どもが出来て、仕事もぼちぼち。いろいろ不満はありつつも、現状に甘んじている状態だ。先が見えてきた状態といっても良い。「萎えたオヤジ」と呼ばれるには抵抗があるが、否定もできない。
私が20代にこの本と出会っていたら、もしかしたら今とは人生が変わっていたかもしれない。もう少し、人生の選択場面で熟慮して戦略的に考えていたかもしれない。「20代に出会っていたら」と書いたのは、28歳でははっきり言って遅いと思うからだ。この本を読むのは25、6歳が相応しい。本書にも書いてあるが、実際に行動に移して効果が出るのに2年ほどかかるからだ。
例えば「30歳で結婚したい」と思っていたとしよう。あなたにはまだ彼女・彼氏はいない。まず、結婚相手に相応しい相手を探すことからやらなければならないのだ。彼女が欲しいな~と思っていたって、結婚相手に相応しい相手なんてそう簡単に現れやしない。だから出会いの場を自分から求めていかなくてはならない。とても運よく?3ヶ月後に彼女・彼氏ができたとしよう。1年ほど付き合って、自分は結婚を考えていたのに相手にはその気が全くないことに気がついた。そこでまだ付き合い続けるか悩む時間が必要だ。更に半年ほど付き合い、相手も結婚する気に傾いた。両親にごあいさつ。ん、何か違う?また悩む・・。若しくは相手に決定的な私にとっての欠陥?が見つかった。言い古された事だけど、恋愛と結婚は違うんだよな~。
人生の岐路に立たされる諸問題、仕事・転職・お金・結婚・住宅・健康・親の老後、そして萎えたオヤジと呼ばれないためのライフスタイルについて、夢見がちな20‘sに「バシッ」と現実を叩きつける本です。「あ~あ~、川の流れのよう~に~」という人生も良いけど、人生経験が足りないと大抵良くない方に流れて行ってしまいます。あの歌は人生を思い返す歌。若い人が川の流れのように生きていたら下流にドンドン流れて行ってしまう恐れがあるので気をつけよう。
中年男子の「26歳で読んでいたら人生が変わっていたと思った」度 ★×4
- 新版 28歳からのリアル/人生戦略会議
- ¥1,470
- Amazon.co.jp
その82 お金甘いか、酸っぱいか
お金の味 金森重樹 大和書房 1680円
普通の人には参考にならないと思う。
著者は1970年生まれ、東京大学卒業。お金持ちになることを夢見て上京するも、きっかけをつかめず卒業後はフリーターを続ける。25歳の時に先物取引で5400万円の損失を出す。現在は借金も返済し、不動産会社経営、ホテルチェーン経営、行政書士事務所経営を行う株式会社金森実業社長。
本は自分がなかなか体験できないことを疑似体験できるから面白いし役に立つ。この本もその一つではあった。
著者は親が公務員の普通の家庭に育ち、地元の公立高校を卒業後、東京大学に進学する。東京で「ひと山当てる」という野望は抱くものの、上京早々から服を購入する際に80万円のローンを組まされるという純真無垢さであった。その後も野望を成就するために、大学を卒業するも就職はせず、手段を模索してフリーターを続ける毎日。そんな中、アルバイト先に出入りしていた先物取引業者に騙され、親から預かっていた800万円を投資。損失を取り戻すために投資を繰り返し借金地獄にハマっていく。最終負債額は5400万円。その融資をしたのは、アルバイトの雇用主であったが、それは著者から金利を貪りとって元本は一向に減らない、現代奴隷とする罠であった。恐らく、同じような罠に陥っている現代奴隷は一杯いるでしょう。
東大に行くような頭脳の持ち主でも、金融商品知識や社会のダークサイドを知らないと、簡単に彼らの餌食にされてしまう。彼らは素直に大企業や研究者、エリート官僚になるには問題が無いのだろうが、著者の様に東大に進学しながら校風や同級生に馴染めず、卒後に敢えて茨の道を歩もうとすると、東大プレミアは通用せず苦労を強いられることになるのだろう。
確かに私たち中年世代は「努力すれば報われる」と親や教師から教え込まれた最後の世代だった。だから、何の疑問も持たずテストの点数上げる努力をしたし、その最高峰が東大だった。私が中学生の頃、年配ホームレスが若者から襲撃され、社会に衝撃を与えたが(その頃はホームレスもあまりいなかった)、当時の私が抱いた感想は「若い頃に努力をしなかったからだ」と思い込んでいた。イソップ童話の「アリとキリギリス」のように。
時が経ち、団塊ジュニアの私たちが社会人になると景気が怪しくなっていた。「アリとキリギリス」のように、世の中単純じゃないと身に沁みて知った。自分の努力だけではどうにもならないことが殆どであることを知った。
著者は極端な事例だ。著者が凄いのは、借金苦の中で更に借金して事業を興し、5年後、裁判所の和解の下に元本5400万円と減額された利息分1500万円を返済したことだ。著者はどうしようもできない問題に直面した時は、とにかく寝るのを信条としているが、その時見た夢で女の子が現れ「お金甘いか、すっぱいか」と歌っている。その夢にインスパイアされて200万円の金を借りて事業を起こしたようなのだが、その部分に創作っぽさを感じたし借金苦の人に更に融資をすることって実際あるのかな?と疑問が残りました。
殆どが借金苦に至る経緯を書いてあり、ハラハラドキドキ面白いですが、再起の切っ掛けとなった事業の詳細部分は余りページを割いておらず、同様の状況に陥っている方は勇気をもらうかもしれないですが、多分参考にはならないと思います。
日本の教育にも月一回ほど、外部講師を招いて「騙されない金融」を教えて欲しいと思いました。(教員が教えたらだめよ。教員も騙されている人多いようだから)
ここからは、いざという時の参考になった個所です。
影響の大部分はお金持ちになるのにマイナスの影響を僕たちに与えます。
人間と動物の違いは、動物はただ自らがおかれた環境に順応することしかできないのに対して、人間は自らが置かれた環境が目的達成の足を引っ張ると考えれば、環境に働きかけて環境を変えることができることにあります。
僕がこの時に身につけた生きる上での大切な知恵は「ヤバい状況になっても寝てしまえばなんとかなる」ということです。
ギャンブルとテレビゲームには、嵌らないようにコントロールできる自信がない限り近づかないことです。
制服を着ることは没個性だという人がいますが、僕は制服着用することによって、世の中の価値基準を学校に持ち込まないで金持ちの子も貧乏人の子も平等に勉強に集中できることから、学校での服装は没個性でいいと思います。
結局、人間はその立場にならないと理解できない主観に満ちた世界で生きているんだと思います。
人間というものはどんな状況に置かれても、もしかしたら1%でも助かる可能性があるのではないかという淡い期待を抱く生き物なんですね。
既知の問題だけに対応していたのでは、一生を一つの業界、業種で過ごす羽目になります。それは、世間を狭くすることに繋がります。
僕が会社に入って初期の段階で学んだことのうち一つを挙げるとすれば、「世の中には金持ちになるのが簡単な業種もあれば、非常に長い時間を必要としたり、膨大な社員を必要とする業種もある」ということでした。
財閥系不動産会社は国の金融政策とか、銀行の融資規制とかの流れを自分たちで作る力を持っているわけです。そして金融工学の虚と実の境界線も知悉している。それで、10年単位のスパンの中で、毎回新興不動産を太らして捕食するということを繰り返してきたのかなという気がする訳です。
人間は、その中にどっぷり浸かっていると、見えなくなってしまうことも多いものです。
給料の差し押さえくらいしか手段はありませんが、給料の差し押さえは全額出来る訳ではなく、月額21万円を超える部分しかできません。
絶対に助かりそうもない落とし穴に落ちてしまったら「積極的にあきらめる」ことです。あきらめるのは、決してそれで絶望してやめてしまうというわけではありません。
人間の感情と思考の回路が無限のループに入り込んでしまうと、神経症とかうつ病になってしまいます。僕はこれまでに色々なトラブルに遭遇していますが、そんなときでも平気でいられるのは「よく寝る」からです。眠っている間に見る夢というのは、昔の友人が突然出てきたり、自分が突然知らない場世に居たりと、理屈の通らない無茶苦茶な内容ですが、ロジックから離れた無茶苦茶な内容にこそ、実は答えが眠っている可能性があります。無限ループは無限ループなんですから、そのループ以外のところにしか答えはないのです。
中年男子の「やっぱ、東大卒はすごい」と思った度 ★×4
- 借金の底なし沼で知ったお金の味 25歳フリーター、借金1億2千万円、利息24%からの生還記/金森 重樹
- ¥1,500
- Amazon.co.jp
その81 いざという時、国はあなたを見捨てるかも。
今後の日本を占う本で、内容が自分の考えと合った本でした。
著者は1943年福岡県生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、東京工業大学大学院で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院で博士号取得。マッキンゼー&カンパニー日本支社長、本社ディレクター、アジア太平洋会長を歴任し、95年に退社。現在ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長。
麻生首相がオバマ大統領との会談で「世界第一位と第二位の経済大国が・・・」という発言をしたとき、「ああ、まだ日本は第二位の経済大国なんだな」と意外な印象を私は持ちました。しかし、日本がいつまで今の地位を維持できるかどうか、大いに疑問の残るところです。
アメリカは今後も人口が3億人程度まで増える可能性があり、移民を多く受け入れてきた多民族国家。多様な考えと柔軟性を持ち合わせ、黒人初の大統領を生み出し変革に向けて動き出した。
一方、日本は自民党の政治が続き、世襲議員が幅を効かせる旧態依然の政治。時代の流れに政治が追いついていないし、未だ変革の兆しが見られない。
GDP一位、二位でもこれほど今後予期される状況が違う。著者はブラジルがハイパーインフレに陥ったとき、国民がすぐにドルに換金する姿勢を例に挙げて、日本人も日本政府に対してそれぐらいの強かさを持つべきだと述べています。日本政府に頼り切ってはいけない。日本の円も世界の中の一つの通貨と考えるべきなのです。
現在、日本政府の借金は国債と借入金を合計すると800兆円。更に年金の隠れ債務が800兆円あり、合計で1500兆円を超える。この金額は増税を続けても、もはや返済が不可能な数字なのである。
では、どうするか?
今、日本国民の金融資産はちょうど1500兆円あるらしい。この金融資産に手を突っ込んで帳尻合わせをすると、解決する。えぇっ!うそでしょ。いや、すでにしようとしていたのです。2004年に新札が発行される際、ATMで旧1万円札と新札8000円を等価交換する目論みだったらしい。が、事前に漏れてしまった。今度は国債のデフォルト(債務不履行)が現実味を帯びてきたそうです。
極論に感じられるけど、借金はいつかは返さないといけないですから。それが出来ないとなると個人なら自己破産。国家ならデフォルトです。アメリカの通貨も輪転機を回し続ければ、いつかは暴落するので、アメリカから縁遠い国に投資をしとけとも。
めいいっぱい不安感を煽っておいて、「大前研一の株式・資産形成講座」を第5章と6章を割いて宣伝しているのが玉に瑕ですが、本の内容は大変考え方の参考となる本でした。
ここからは大前研一氏の経済予測です。
経済が動く根本は、国民一人一人における将来への期待に追うところが大きいが、ほとんどすべての経済は民衆の心理に左右されるといっても過言ではない。
オバマ時代は経済的な観点から眺めれば、残念ながら暗い予測しか立てられないのだ。今後十年以上、経済回復は期待できないかもしれない。
経済は「ふくらし粉」がないとやっぱりダメなのだ。今回のアメリカ発の金融危機は、一つの時代の終焉であることは確かだが、はたして次なる「ふくらし粉」をどうやって生み出すのか、答えはまだ誰にも描けていない。
アメリカのドルが落ちる瞬間が、2009年のどこかの時点であるはずだ。ヘッジファンドのなどの解消でドルが大幅に不足しているから、今はドルが高くなっているが、これが一巡すれば、アメリカは今のドルのレベルは支えられない。アメリカ政府はほぼ無制限に約束手形を切っているからである。
日本は100兆円以上、中国は200兆円以上の外貨準備がある。現在、能力的にも蓄えの上でも仕組みの上でも、ヘッジファンドと戦えるのは日本と中国しかいない。
ドルとユーロは乱高下を繰り返しながら、基軸通貨としての地位を争うだろう。世界で唯一の規律のある通貨がユーロなのである。
日本はもはや世界第二位の経済大国とはいえない。何故なら、2005年に日本人の平均年齢は50歳を突破し、国民の改革に対する意欲が年を追うごとに薄れていくのは目に見えているからである。
国民が自国の政府や金融機関を無条件で信頼している国など、世界を見渡してもほとんどないのである。
国が国債のデフォルト(債務不履行)をやってくる確率はかなり高いと、私は踏んでいる。要するに将棋で言えばこの国はもう詰んでいる。もっと言えば、国家に任せておいて安心できる要素は一つもないと言っていいのである。
中年男子の「定額給付金を配っている場合か」と思った度 ★×3.75
- マネー力 (PHPビジネス新書)/大前 研一
- ¥840
- Amazon.co.jp