荘境石シリーズの前段として、ここで天竜川の話を整理しておく。

 

以前、天浜線・気賀駅の近くで堀川城址を通り掛かったことがある。確か三ヶ日駅から浜名湖に沿って延々と東へ歩いた時だったと思う。あの時にボンヤリした疑問が芽生えた。

 

<天竜川下流域にて>

 

(1)大天竜と小天竜

説明板に大天竜、小天竜と書かれているのをあそこで初めて見たからだ。堀川城址が石碑だけだったので、そのままやり過ごしてしまった。その後、NHK「どうする家康」を放送していた頃に三方原の戦いで武田の進軍マップを見ていたら、その大小2つの天竜川がようやく天竜川と馬込川なんだと分かってきた。

※三方原の戦いブログ

 

(2)暴れ天竜

天竜川はかつて暴れ天竜と称されていた。治水に携わった人として金原明善は有名だ。天竜川下流域の歴史について以下サイトが詳しい。川の名前も遠州地方では時代によってあらたま川、引馬川、てんちうという川などいろいろに称されていたようだ。

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【東に移る】いまの馬込川・安間川・天竜川・磐田市天竜のあたりに河道が残る分流の、少なくとも三つの大きな流れにと東部に移った。

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※出典

https://adeac.jp/hamamatsu-city/text-list/d100010/ht011540

 

上記の「磐田市天竜のあたりに河道が残る分流」とは、おそらく磐田市のパンフレットに書かれている仿僧川(ぼうそうがわ)のことだろう。

 

ここまでつらつらと文章を書いてみたが、絵で理解するのが最適だろう。磐田原台地と三方原台地の間はどこも天竜川だったのだ。大天竜が現在の天竜川、小天竜が馬込川だ。
 

<天竜川下域の絵図(2)> ※出典を失念

 

 

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下流部の遠州平野では浜松市天竜区二俣付近を扇頂として、東名高速道路の天竜川橋付近に及ぶ扇状地を形成しています。このため、三方原台地と磐田原台地に挟まれた低地を自由に流路を変えていました。

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<天竜川下流域は毛細血管みたい>

※出典(文と図とも)

https://www.mlit.go.jp/river/toukei_chousa/kasen/jiten/nihon_kawa/0505_tenryu/0505_tenryu_01.html

 

(3)天竜峡のポットホール

上流のJR飯田線・天竜峡駅の近くで見つけたポットホール。天竜川の傍にあったのはホントだが、現在の川の高さとは全然異なる、10mくらい上の散策路にあったのだ。河川の両岸が隆起したとか、何らかの地殻変動があったのだろう。

※天竜峡のブログ

 

(4)穏やかな伊那谷

JR飯田線で天竜峡駅から先は険しい渓谷になっている。ところが、その上流である伊那谷を歩いているとそこが切り立った谷筋ではなく極めて穏やかな斜面だと分かる。木曽駒ケ岳が聳える駒ヶ根市だとそうでもないのだが、南箕輪村・伊那市でそう感じた。

※参考

 

ただ、この伊那谷においても、かつては激しい河道改道があったようだ。

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上流部の伊那市では、(伊那)大橋を挟み上位下流は乱流し、現在の市街地となっている部分も、その多くは天竜川の河原であったことが伺えます。

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※出典(図は省略)

https://www.mlit.go.jp/river/toukei_chousa/kasen/jiten/nihon_kawa/0505_tenryu/0505_tenryu_01.html

 

(5)他の河川について
河川改道はいろいろな川で起きているようだ。私が最初に気になったのは中国の黄河。
※参考ブログ

 

国内でもいくつか例がある。


天竜川の支流に当たる二俣川については以下ブログで触れている。

※参考ブログ


天竜川と同じく遠州灘に面している大田川と原野谷川が該当する。

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地図の西側に太田川と原野谷川が流れており、当時は原野谷川が遠州灘のすぐ北側を蛇行して東に流れていたとか。どうやらこの影響で付近の海抜が遠州灘付近より低くなっている。……(中略)……太田川も原野谷川も治水工事を施しているため当時と今では流れが変わっており、ストレートに遠州灘に注ぐようになっている。

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※出典

 

他にも、石巻でカヤックした折に石巻駅前で「旧北上川」と書かれているのが気になり検索してみると、江戸・明治期などに複数期に分けて北上川の河口を東側に付け替えている。こちらはかなり大掛かりなプロジェクトだ。


<ネットで見つけた旧北上川と北上川の位置関係> ※出典を失念

 

七里の渡し(桑名市)の展示には木曽三川の治水について書かれていた。ここも毛細血管みたいな状況。

※参考ブログ

 

【2025.11.15追記】二俣川に関して加筆した。