薔薇よ、バラよ

気品重んじて咲く姿に突き出す棘の鋭さは

柔らかな花びらに対峙する想いのあらわれかな

世界中のどこかの誰かの愛に添えて

貴女には多くの水が必要だと存じております

 

梅よ、ウメよ

寒空に屈せず絶え抜く姿に纏う仄かな香りは

凛と構えた高潔な想いのあらわれかな

忠実な言葉に身を潜め朽ち果て

貴女には細かな手入れが必要だと存じております

 

桜よ、サクラよ

微熱の様な春の陽気に花舞う淡色は

祖国を誇る純心な想いのあらわれかな

人々を雲の上に誘いもてなし

貴女には散りゆく美学も必要だと存じております

 

向日葵よ、ヒマワリ

強烈な日射しに立ち向かう果敢な振舞いは

崇拝と情熱な想いのあらわれかな

夏の終わりに俯く姿にも

貴女には羨望の眼差しが必要だと存じております

 

咲く花にひとつ想いを馳せて

散る花にひとつ歳を重ねる

私は幼さから遠く離れて

広い大地へと巣立ってしまった

 

椿よ、ツバキよ

遥かな願いと反比例する気取らない美しさは

誰もが持つ心の想いのあらわれかな

原色の世界に鮮やかさを与える

貴女には少しの狂気も必要だと存じております

 

 

 

 

 

またひとり 住人が去った

 

この街に吹く風は人の匂いを運んでいた

都会にも引けを取らない程の活気に満ち溢れていた

お祭りでは神輿が担がれ声を埋め尽くし

街灯の下で宴に酔い知れていた

 

自然に朽ちた廃屋は

怖いもの見たさの訪問場所となり

錆び行く橋の先は

開拓者が見た世界へと還ろうとしている

 

故郷の人々はこれを見て

何を想うのだろうか

涙するのだろうか

懐かしむのだろうか

静かに過ごす事を決めた私は

風に問いかけてみる

 

廃墟とは

人間の所業なのでしょうと

神社の大樹は街に語りかけていた

 

 

 

 

 

幸福の風格に支配されている視界では

歩道のひび割れは景観を汚す

いつかの事件現場の交差点で人は

己の日常に駒を進めている

 

コンビニおにぎりの新しいフレーバー(味)は

定着せずにディスプレイ(棚)から外され

100円ショップの新商品は

流行歌の様に目まぐるしく変わる

 

サイレンの音がして振り返ってみると

救急車の確率が高い気がする

両親は元気かな

兄弟は元気かな

(そういえば)友達は何してるかな

砂時計の終わりの様な黄昏の家路で

出来合いの夕食を買う私のため息に

制服は振り向かない

 

 

 

 

 

甘いリンゴはおしりが黄色くて重たいものを選べば良いと

言われたけど今日の私は酸味が欲しい

酸っぱいミカンは丸い形で色が薄いものを選べば良いと

言われたけど今日の私は甘味が欲しい

美味しさ 甘いだけじゃない事を知っているから

見極めを否定してみたくなる

 

スイカの栄養素はシトルリンやカリウム、リコピンを含んでいて

むくみ改善や疲労回復に効くと

そう言われると無性に吸収したくなる

バナナの栄養素はエネルギーや食物繊維、ビタミンを含んでいて

カロリー摂取や腸活に効くと

そう言われると明日の私に必要だと感じる

栄養 敏感になる程の生活ではないけど

偏りがちな社会の食事を助けてくれる

 

こうして出来上がったフルーツバスケットは

私の身体を鍛えてくれそうな重さで

家に着いた途端 バナナを頬張るのであった

 

 

 

 

 

桃の果実の甘みを知る時

畑に拡がる幾多の野菜の花

都会で暮らす祖父母からの電話で

朝もぎの桃を持って車で向かう

古い記憶では農地だった一画は

活気に満ちた宅地に変わっていて

デパートの桃と家の桃を

思わず食べ比べてみたくなる

電話ではし辛い会話が終わると

次会う時は野菜を持ってきておくれと

言われた日には笑みがこぼれる

帰り道に見た農家さんの野菜販売の看板に

触発されるような気分で少し浮かれる

 

畑に戻りいつもの作業を終え

つい貰ってしまったデパ地下のお惣菜と

昨年の蓄えたお米を食べながら

心の自給自足の大切さを時代に教わる

 

 

 

 

 

滝行の最中であるかの様に

感情が手招きしていても

欲望が頬をかすめてきても

高貴な明日に向かう為の行いの一つなのだ

 

喧騒の中に身を鎮めると

二人きりでは成立しない言葉の壁や

孤独では日の目を見ない心の周波数が

善くも悪くも俯瞰できてしまう

 

何に耐え

何を貫くのかは

碁盤の目の迷路で弄ばれるのだけど

時間が止まってしまう様に(愛に対して)

雲間から光が射す様に(夢に対して)

地上へと虹が架かる様に(希望に対して)

結語を探し求める今日この頃であった

 

 

 

 

 

 

好きすぎた君の瞳を見るのが怖くて

街灯の下でキスができない

天使にも悪魔にもなれる鼓動が送り出す言葉は

辻褄が合わなくなり狂喜乱舞する

 

手を繋ぐ事が許されるイルミネーション

独りで鳴らすと罰が当たる幸せの鐘

夕食を上品に食べれば食べる程

窓に映る偶の存在に自惚れてしまう

 

絶妙な間が空いた後の会話は

明日より遠い未来を夢見ているようだ

語彙力が吸い取られる甘い音楽で

雪の結晶すら見えそうになる

 

強い雪風がすり抜けた瞬間

時計の短針が飛んで行ってしまった

 

 

 

 

水面に浮かぶ波紋

 何かが - 誰かが - 触れて拡がり

  海辺へ - 川辺へ - やがて繋がる

 

静寂に投げつけた言葉

 何かに - 誰かに - 聴こえ拡がり

  心が - 感情が - 震え繋がる

 

忘却の彼方へ行きそうな出来事

 歪な - 偏屈な - 形で拡がり

  愛となり - 憎しみとなり - 変わり繋がる

 

都会も - 田舎も -

 人間も - 動物も - 

いつしか - いつのまにか - 風の如く拡がり

どこかで - すぐ傍で - 空の如く繋がる

 

 

 

 

 

小麦粉をばら撒いた様な

初見だったら銀世界とも謳える

靴底の模様を見せ合う歩道で

子供達の雪玉はすぐ水に変わる

 

連日連夜流れる降雪のニュースは

南国へ手紙を送る様な物事

雪国の初冬は美しさと心構えを

わきまえる大切な出来事

 

お家が白い息を吐いているのは

全て物がきちんと生きている証

 

春の桜でもなく

夏の海辺でもない

舞い落ちる秋でもなく

寒さに震える冬でもない

 

 

 

 

 

文明は川の傍から始まると

教育の中で学んだように

たとえば僕が住んでる街もかつては

森の一部でしかなかった

開拓者たちは確固たる理由を持って

生きる場所を選び

土を耕し村を創った

 

僕が産まれた時の街の記憶は朧気だが

生活の基盤を支えた跡だけが残る

それはまるで儚い夢のように消えるが

地球は今宵も廻り続けている

 

総ての人が開拓者であるから

老若男女 戦わずに共生して欲しい

街がどんな形に変わろうとも

そう願うばかりである