一日は扉を開ける事から始まる

挨拶をする前に

人と接する前に扉がある

服だって扉の一部だ

普段着になる時

仕事着になる時

朝日を浴びながら感情を解き放つ

それが旅先でも友達の家でも同じだ

 

そして口を閉じ服のボタンを閉める

出発時には必ず扉を閉める

人はこの開閉の行為を呼吸と同じ頻度で行う

それは開けたままと閉めたままの世界線が同じだからなのだろう

扉を開けたままにすると招かざる者が侵入し

大事なものを奪われかねない

閉めたままにすると誰かに扉を破壊されるか

自分自身で何重にも鍵をかけ出られなくなってしまう

 

木の扉、アルミニウムの扉、プラスチックの扉、鉄の扉

犬小屋の扉、鳥籠の扉、物置の扉、棚の扉、金庫の扉、心の扉

全てが同じ世界線なのだ

互いに背を向けるからこそ開閉出来る仕組みなのだ

 

もうすぐ夜が明ける

太陽も空のどこかで扉を開けてやって来る

その時月はどこかで扉を閉める

 

 

 

 

 

大好きなんて言われると

魔法の様に、嘘の様に(騙されているみたいに)平和を祈る

言葉の秘密基地から狼煙が上がっていて

口びるの傷跡から出る言葉は

明日にでも天変地異が起こりそうな単語だ

経験の名が付く引き出しには整理整頓された感情が並べられ

迂闊に手を出す事は出来ないはずなのに

 

嬉しいと哀しいがシーソーで遊んでいる

がたん ごとん

その音は故郷に帰る列車に似ている

擬音語の引き出しを赤ん坊が見つけた

僕は赤ん坊を抱き上げて雲が流れるのを見ている

この前まであった憂鬱な気持ちに後ろめたさを感じた

擬態語の引き出しを少年が見つけた

つるつるした夢は宝石みたいにきらきらしていれ

思わず少年とジャングルジムで遊んだ

この前まであった失望は青空へ飛び立った

 

大好きだってまた言われた

夕日に向かって手なんか繋いでいると

みんなに秘密基地の場所がばれてしまいそうだ

 

 

 

 

 

テレビがずっと過去の番組の再放送なら

私が歳を取ってもアイドルは永遠の二十歳

ブラウン管を消した後の残像のまま外へ出れば

可愛いさ振りまきながら舞い踊れる

 

電子レンジにて偏りがち食事のターンテーブル

スマホにて趣向に合いすぎた動画のストリーミング

プラズマに刺激された孤独は寂しさを容易に壊せる

都会の夜景はどこもありきたりだ

モニターひとつの心の世界

無視したらもっと素直になれる、君に優しい朝が来る。

 

 

 

 

 

緻密な計画で高度な夢を叶えようとすると

絶妙な絶望に幼気な感情が騒ぎ立てる

根拠のない自信に縋り付くのは革命の一つだ

かつて火炎瓶が飛び交ったこの場所は電波で犇めき合う

時代はあらゆる物の形を変える、トイレは綺麗になった

 

海の向こうに憧れを抱く時

この島国が小さく見える謎に

文化は徐々に歴史に葬られ始めている、英訳を添えて

日本語は8時間労働で英語は24時間営業のコンビニエンスストア

でも誰もが回顧する祖父母宅の記憶に革命は起きない

 

安易に孤独になれる時代に物価高と二酸化炭素

暇が創造する偶像に堕ちゆく日々はエンタテインメント

友人が賃金の上昇を求めて行う転職活動の話

革命を見るより私は海を見ていたい、青空が溶け出す程

 

 

 

 

 

想像以上に暗い部屋で破壊された太陽の模型

星の種類が厳選されたプラネタリウムが動く

窓には下界を遮断するように結露が現れ

幸福の常套句は届かない構造だ

 

南京錠付きの日記で頭を殴られた日

気絶したふりをして君が落とした鍵を盗んだ

助けようとは思わない

ただ君の瞳の煌めきが忘れられなくて

閉ざされた言葉を読み返した

 

光を探していて

希望を太陽の熱で爆破させた

その残骸に美しい記憶が埋め尽くされ

終いに太陽を恨み破壊した

 

空白の椅子取りゲームを照らす明かり

思い上がりに湧き立つ焚き火の炎

夢に燃える人々の情熱の模様

暗闇で見るあの一筋の光

 

灯りの骨組みは誰もが描く太陽の形

私は世界を少しだけ嫌った

君の日記に再び鍵をかけて

 

 

 

 

 

ひび割れた青空に敗戦の弁を聞くようだ

乾いた葉巻を咥える真似をする大人達は

幼心と弱き心を葬るかの如く演じる

 

恋をしているときの花屋で過ごすようだ

鮮やかな花束を抱える満面の笑みときたら

人間の感情に恨みなどないと錯覚してしまう

 

泣き出したいのさ

誰よりも大きく

得体の知れない不安に対して

詩になりたい言葉の切れ端の倒置法

楽曲になりたい交差点の口笛の音符

デモ隊の講義が終わった後のサイレン

未来は誰かが変える物ではないんだと感じる

 

不確かさ

不確かさこそが社会の原動力なのだと

青空は語る、花は語る

元気いっぱいのダイオキシンも、放射能も。

 

 

 

 

 

柔らかな日差しが厚着を剥いで

卒業証書を手にする頬はパール色

合格発表の掲示板に未来を感じたら

出会いと別れの演劇の幕開けだね

南極の氷河は崩れ落ちていくのに

私たちの生活は恒久的な平和

疑いの目は世界じゃなく普遍的な偽善

冬枯れの木が蕾を持ち始めると

春を待つ息吹が真珠のように存在すれば

自然に還らぬプラスチックごみは地球の心の形

誰かが放つさよならが永遠の別れだとしても

不思議じゃない春の風は時折嫌らしく感じる

自転車が車に負けじと走り抜ける

踏切の向こうで大人になる少年少女

漠然とした不安の池が解氷される頃

辺りに集う白鳥の群れに舞う粉雪はパール色

 

 

 

 

 

憂鬱が理解されるのなら

孤独な口を塞ぐ冷凍食品が溶け出すだろう

誰にも見せない表情が好きだ

白い日記が創り出す世界

最後に見る夢はやっぱり

優しさに追従した物語が良いな

心の奥の方をえぐる

闇の正体を暴くのは御免だ

 

感情って何だろう

たとえば君が僕を好きと思う気持ち

勘違いだとしても心房細動を刺激する

この小さな揺れから地球が産まれたとすれば

僕の生命も少しは誇れる物だろう

 

都会という電磁波に支配されているから

悩み事はいつも昼夜逆転して巡る

会えない時の言葉を恋文にまとめても

愛する顔が歪になってしまう

美しいふりをする太陽に何の未練もないよ

 

 

 

 

 

虹が七色しか見えないのは

瞳の中のパレットが足りないかららしい

心の中の引き出しが足りないかららしい

 

赤色 信号機の色か サイレンの色か

橙色 蜜柑の色か ガーベラの色か

黄色 雛の色か バナナの色か

緑色 草原の色か ピーマンの色か

青色 海の色か イルカの色か

藍色 朝焼けの色か クジラの色か

紫色 葡萄の色か ラベンダーの色か

 

それぞれの色の中に

また色が広がっているらしい

俺の色を無くしているのは何か

眩しすぎる街の灯か

暗すぎる闇の帳か

白黒つけたがるこの資本主義の策略か

 

 

 

 

 

煌びやかな若い日の夢は食卓をか細くさせる

憧れたバンドの解散コンサートの映像は

エンディングが終わった途端に記憶の遺灰と化す

夢が必ずかなうなんて、大嘘だ。

とはいえ、幸せの型から外れている訳ではなく

都会の人口を忘れてしまう程の友人はいるが

会えば思い出の引き算をしあって

共に過ごす回数は減る一方だ

 

常套句で開ける幾つかの扉の向こう側

分別の効いた笑顔が待ち構える

ため息ひとつ吐いたらもう窓を全開にしたくなる

楽園にでも行ってみたいな

 

明ける夜毎に募る想いを経験値と云うのなら

私はゲームの主人公で今、相当なレベルに達しているだろう

最後のボスは天国に行かないと戦えないと攻略本に書いているから

「人間は嫌いだ」と黄昏に笑う、結局。