運命が目に見えるのならば

満員電車で書いたラブレターが

誰かの心の扉に挟まって

終着駅で恋に落ちるだろう

三大夜景では場所が足りなくて

町ごとに幸せの鐘を鳴らす

デートスポットが創られるだろう

結婚式場も一年後まで予約が埋まり

聖なる愛を毎日唱える神父に見慣れるだろう

 -恋をした時の運命はいつだって都合が良い

 

誕生日ケーキのロウソクが

寿命の長さに見えるのならば

生きる事を可視化した運命であり

目に見える事で誰もが幸せになれるかと言えば大間違い

流れ星に願い事を託したつもりが

宇宙の塵が肉眼で見えただけだったのは

夢が儚い事を可視化した運命なのである

 

運は慣性に好かれるから

靴が片方脱げたまま目的地に辿り着いても一日が終わるけど

命は感性に導かれるから

靴がなければ痛みを抱えたまま一生が終わるね

(私に関わる全ての人々が運命である事を歓迎できたなら

 問題はより簡素化されるはずなのだが)

 

 

 

 

 

世界中の人と知り合えたとしても

私、孤独の一塊に分類されていて

一目惚れをして恋に落ちても

話題は決まって天気のお話

まるでタクシードライバーね

それならいっそ「孤高を目指す」と

絵馬にも書いてみたものの

飾った横の願い事を見て

神さまにも本音を言えないのでした

義務教育に「喋り」の授業があったなら

私も人並みに話せる事が出来たのかなと思う

相変わらずの他力本願が

食べる口だけを大きくしてしまう

 

明日から大声で挨拶してもようと

心変わりをしてみたら

知り合いを驚かせてしまうのかな

それより自分の心に太鼓の名人が現れて

私の自我が崩壊するだろう

わかっているから幸せ者なんだ、納得する

 

自分の殻から抜け出せないのか

それとも自分を守っているのか

愛する事が世界を救うのなら

自己愛だって同意義だろう

お喋り好きな人は私と真逆の自己愛だ

誰も不幸になんてしていない

 

君が好きだから、ダメなんだ

明日の天気はなんだろうな

 

 

 

 

懐かしさ催す持ち慣れたお盆で

恒例のオーディションが開幕する

 

いきなり出くわした荒くれ新参者はチーズとんかつだ

功労者の貪欲な姿勢に早速目を見張る

連覇を狙うハンバーグは今宵もアピールせずに人気だ

常連のからあげや焼魚も返り咲きに虎視眈眈

風が運ぶ野の香りに誘われ小鉢部門へ

彼らの色彩は定食の名に華を添える

おひたしに時の儚さを感じながら

カレー ラーメン 丼ものが奇襲をかける

火花を散らす厨房の音が刺激的

 

 店の扉を開ける前の青写真は忘却の彼方

 いつのまにか本能の下絵にすり替わっている

 昨日の絵画は満員電車の形相だ

 

大ベテラン、肉じゃがの微笑みは

何故か自然に泣けてくるべや(方言)

玉子焼きは悟りの世界

味噌汁の匂いが謎に目に染みて

幼心の蕾が咲こうとしている

 

お腹の号令が響き渡れば

誰よりも大きないただきますに

新たな歴史を刻もうとしている

 

 

 

 

 

 

薔薇よ、バラよ

気品重んじて咲く姿に突き出す棘の鋭さは

柔らかな花びらに対峙する想いのあらわれかな

世界中のどこかの誰かの愛に添えて

貴女には多くの水が必要だと存じております

 

梅よ、ウメよ

寒空に屈せず絶え抜く姿に纏う仄かな香りは

凛と構えた高潔な想いのあらわれかな

忠実な言葉に身を潜め朽ち果て

貴女には細かな手入れが必要だと存じております

 

桜よ、サクラよ

微熱の様な春の陽気に花舞う淡色は

祖国を誇る純心な想いのあらわれかな

人々を雲の上に誘いもてなし

貴女には散りゆく美学も必要だと存じております

 

向日葵よ、ヒマワリ

強烈な日射しに立ち向かう果敢な振舞いは

崇拝と情熱な想いのあらわれかな

夏の終わりに俯く姿にも

貴女には羨望の眼差しが必要だと存じております

 

咲く花にひとつ想いを馳せて

散る花にひとつ歳を重ねる

私は幼さから遠く離れて

広い大地へと巣立ってしまった

 

椿よ、ツバキよ

遥かな願いと反比例する気取らない美しさは

誰もが持つ心の想いのあらわれかな

原色の世界に鮮やかさを与える

貴女には少しの狂気も必要だと存じております

 

 

 

 

 

またひとり 住人が去った

 

この街に吹く風は人の匂いを運んでいた

都会にも引けを取らない程の活気に満ち溢れていた

お祭りでは神輿が担がれ声を埋め尽くし

街灯の下で宴に酔い知れていた

 

自然に朽ちた廃屋は

怖いもの見たさの訪問場所となり

錆び行く橋の先は

開拓者が見た世界へと還ろうとしている

 

故郷の人々はこれを見て

何を想うのだろうか

涙するのだろうか

懐かしむのだろうか

静かに過ごす事を決めた私は

風に問いかけてみる

 

廃墟とは

人間の所業なのでしょうと

神社の大樹は街に語りかけていた

 

 

 

 

 

幸福の風格に支配されている視界では

歩道のひび割れは景観を汚す

いつかの事件現場の交差点で人は

己の日常に駒を進めている

 

コンビニおにぎりの新しいフレーバー(味)は

定着せずにディスプレイ(棚)から外され

100円ショップの新商品は

流行歌の様に目まぐるしく変わる

 

サイレンの音がして振り返ってみると

救急車の確率が高い気がする

両親は元気かな

兄弟は元気かな

(そういえば)友達は何してるかな

砂時計の終わりの様な黄昏の家路で

出来合いの夕食を買う私のため息に

制服は振り向かない

 

 

 

 

 

甘いリンゴはおしりが黄色くて重たいものを選べば良いと

言われたけど今日の私は酸味が欲しい

酸っぱいミカンは丸い形で色が薄いものを選べば良いと

言われたけど今日の私は甘味が欲しい

美味しさ 甘いだけじゃない事を知っているから

見極めを否定してみたくなる

 

スイカの栄養素はシトルリンやカリウム、リコピンを含んでいて

むくみ改善や疲労回復に効くと

そう言われると無性に吸収したくなる

バナナの栄養素はエネルギーや食物繊維、ビタミンを含んでいて

カロリー摂取や腸活に効くと

そう言われると明日の私に必要だと感じる

栄養 敏感になる程の生活ではないけど

偏りがちな社会の食事を助けてくれる

 

こうして出来上がったフルーツバスケットは

私の身体を鍛えてくれそうな重さで

家に着いた途端 バナナを頬張るのであった

 

 

 

 

 

桃の果実の甘みを知る時

畑に拡がる幾多の野菜の花

都会で暮らす祖父母からの電話で

朝もぎの桃を持って車で向かう

古い記憶では農地だった一画は

活気に満ちた宅地に変わっていて

デパートの桃と家の桃を

思わず食べ比べてみたくなる

電話ではし辛い会話が終わると

次会う時は野菜を持ってきておくれと

言われた日には笑みがこぼれる

帰り道に見た農家さんの野菜販売の看板に

触発されるような気分で少し浮かれる

 

畑に戻りいつもの作業を終え

つい貰ってしまったデパ地下のお惣菜と

昨年の蓄えたお米を食べながら

心の自給自足の大切さを時代に教わる

 

 

 

 

 

滝行の最中であるかの様に

感情が手招きしていても

欲望が頬をかすめてきても

高貴な明日に向かう為の行いの一つなのだ

 

喧騒の中に身を鎮めると

二人きりでは成立しない言葉の壁や

孤独では日の目を見ない心の周波数が

善くも悪くも俯瞰できてしまう

 

何に耐え

何を貫くのかは

碁盤の目の迷路で弄ばれるのだけど

時間が止まってしまう様に(愛に対して)

雲間から光が射す様に(夢に対して)

地上へと虹が架かる様に(希望に対して)

結語を探し求める今日この頃であった

 

 

 

 

 

 

好きすぎた君の瞳を見るのが怖くて

街灯の下でキスができない

天使にも悪魔にもなれる鼓動が送り出す言葉は

辻褄が合わなくなり狂喜乱舞する

 

手を繋ぐ事が許されるイルミネーション

独りで鳴らすと罰が当たる幸せの鐘

夕食を上品に食べれば食べる程

窓に映る偶の存在に自惚れてしまう

 

絶妙な間が空いた後の会話は

明日より遠い未来を夢見ているようだ

語彙力が吸い取られる甘い音楽で

雪の結晶すら見えそうになる

 

強い雪風がすり抜けた瞬間

時計の短針が飛んで行ってしまった