風が止まる

夢にはしゃぐ声が響く

私は日に日に夕陽に近づいていると

時の戯言で感じる事がある

 

例えば夕凪にパレットを持って

毎日絵を描いている人がいたら

生涯に一度だけ同じ景色を描く事になるだろう

平穏で特別な日々の中に

過去に戻れる日があるのであれば

その人はその日をどう思うのだろう

 

友はみんな

この海を渡りました

音を奏でるような漣はきっと

彼らの心の波紋を演じている

 

 

 

 

 

雪の少ない北国

暖かな冬の街

それでも着込むダウンコート

これが普通だと思えばいい

これでいいんだと思えばいい

 

蒲公英なしの20℃の春

雪解けと桜が早くなり

新緑のない暑い日差し

これが普通だと思えばいい

これでいいんだと思えばいい

 

君がいない景色

宙ぶらりんの右手

クラスが変わった時の焦りと孤独

これが普通だと思えばいい

これでいいんだと思えばいい

 

昭和 平成 令和 未来

元号が変われば生き方が変わる

生き方が変われば心の形も変わる

全て普通だと思えばいい

全ていいんだと思えばいい

 

 

 

 

 

「明日は日中、快晴の予報です」

外れました。

空には綿あめの雲が泳いでいました

「快晴の定義は雲の量が1割以下」

子供たちは外で元気に遊んでいて

私自身も楽しかったというのに。

 

「明日は夜から雨の予報です」

外れました。

服が濡れる程ではありませんでした

「雨の定義は降水量1ミリ以上」

たいしたことなくてよかったと

笑っている人もいるというのに。

 

「明日は一日中、曇りの予報です」

当たりました。

太陽と出会うことはありませんでした

「曇りの定義は雲の量が9割以上」

なのに人の気持ちはどこか沈んでいて

淋しそうに映るというのに。

 

人の心の予報士になってみたいと切に願いながら

今日も天気予報をしながら反省している私を

お天道様が見て空を動かしていると思うと

予報と反省は運命共同体であると定義出来るはずだ。

 

 

 

 

 

 

ひとつの屋根の下に

ふたつの日常がある

ひとつの鍋に向かって

ふたつの食器が並ぶ

床に僕より明るいカーペットが敷かれる

数年前の記憶が薄れ始める

 

四季の二回転目を迎えて

「あなた」と呼ぶ声が響く

カレンダーの海で漂流しかけては

日常の音に反応して我に返る

 

部屋の床が軋み始めたとき

ひとつの鍋に向かって

みっつの食器が並ぶ

転居の時期を探っているときに

初めて孤独の弱さを知る

 

 

 

 

 

ストーブを片付ける

お礼を告げる

少しだけ残った灯油タンクを物置にしまう

相変わらず冬は寒かったが

暖冬はやはり物足りない

窓を全開にすると

大晦日から生まれた埃が舞い踊る

カイロを思い出す春の陽射しに

鳶が高らかに唄を奏でる

出会いと別れが訪れ

子供は喪失感を覚え

大人は疾走感を抱く

 

土が顔を出した

花が咲き始める

夏の嵐が来る前に

歳の数ある記憶を正す

 

 

 

 

おはようございます(^^)/

 

この度、ココア共和国2024年4月号

私の作品「落ちてた長靴」

傑作選Ⅰに収録される事となりました(^^♪

 

紙の本、電子書籍版

両方ともに収録されます!

 

今月号は、

第9回YS賞受賞

第4回秋吉久美子賞

第4回いがらしみきお賞

これらの受賞者の作品も収録されているので

いつもより内容の濃く編集されているとの事ですので

楽しみです(^^)

 

発売日は4月1日となっておりますので

よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

水たまりに手のひら合わせて

「汚い」と親はきっと言うけれど

叩くと拍手が聴こえるよ

地球の鼓動の音なんだ

 

洗いたての白い服装で

僕はそこに飛び込んだ

羽があるように一瞬感じたけれど

泥汚れと少しの痛みが残った

口に含んだ水はおいしくなかったけれど

本当の自然に触れ合えた気がした

 

大人になったら忘れるのかなぁ

 

 

 

 

 

拾い上げた壊れた歯車

落ちていた高価なボタン

心の中の呟きが集まる喧騒で

ぬくもりのない光を浴びる

 

夢は結局 長生きの為の玩具だと

提言出来る程の生命じゃないけど

寂しさを埋める為の行動だと

希望への距離は縮まる事はない

 

金の切れ目が縁の切れ目だと

朝焼けに吹いた風が云った

砕け散った鏡を覗いて

失意に寝癖がつかない事を知った

 

 

 

 

 

落ちてた長靴 誰のもの?

大抵のものは

くたびれてないのが落とし物

雪解け水が 羽を広げる国道で

捨てられたのか 脱げたのか

はたまた自ら そこに居るのか

防水加工の特性で

おまわりさんの目につきそうだが

 

そうなりゃ とある野良猫が

羨ましそうにこちらを眺める

ひと月前に都会を追い出された君は

裏切られた人の様な 寂しい瞳をしている

あの長靴が歩く力を持っていたなら

君の様に世界を彷徨うのだろうが

 

長靴が欲しいと尋ねてくる靴屋さんには

今日も新品の物が並べられている

 

 

 

 

 

二人 交わした口づけが

前髪 飾った 粉雪 溶かした

この暖かさが 春の兆しなら

別れも 好きになれる気がする

 

夢の中 怯え続けた「さよなら」

今の私からすれば ただの「だいすき」

 

レースのカーテンが 空に染まる日には

君は進化する街の 一つに埋もれるけど

誓った永遠が 頬を染める日には

私は愛を一縷の望みに変えて 纏う

 

 

二人 交わした言葉は

空港 ロビー 合図に 消えた

この淋しさが 春の訪れなら

別れも 好きになれる気がする

 

心の中 抱え続けた「さよなら」

今の私からすれば マジな「がんばれ」

 

映画のエデンが 脳裏を霞める時は

君は進化する街の 景色と重なるけど

誓った永遠が 瞳を占拠する時が

私の愛も強くすると信じて 待とう